何で俺だけ「悪夢は次々に」
激しい爆発と熱量。これほどの威力の魔法で攻撃されれば、いくら四天王と言えど最弱と言った触れ込みの魔族だ。傷を負わない訳が無い。
そう思ってこの六人は「やったか!」と声を出して喜色満面と言った感じになっていた。
それもそうだろう。この魔法は最終魔法と呼ばれる程の強力な魔法使いの切り札とも言えるものだったからだ。
ソレを今この様なパーティが今のレベルで放てるものでは無いのだ。だが、このゲームはメインシナリオの他に大量のサブクエストが用意されており、その内の一つ、彼らは隠しクエストを運良く引き当ててこの魔法の獲得に成功したのだ。
そしてこの魔法で彼らは最前線を走る事になり、あれよあれよと有名人。攻略組の中で一番の強さと囃し立てられる事になったのだ。
ソレは実際にこの魔法に寄ってもたらされたパーティ全体の実力と言っても良いのだが、それに負けずに残りの五人も実力を上げて最前線に恥じないだけのレベルの獲得、連携の深度を上げて行ったのだからその強さはまやかしでは無いのだが。
それだけ、だった。強さを上げられた魔族、その四天王最弱に敵うまでには至らない。
「ほほう?これほどの力を持ってして我が元へと攻め入って来ていたのか。侮れんな。いつどのようにお前たちプレイヤーが強くなるかは予想ができん。この潜在能力、侮れん。確かに魔王様が敵とみなすだけの事はある。しかし、残念だな。私は無傷だぞ?」
これにパーティ全員が愕然とする。この魔法ですら敵に掠り傷一つ付けられないのであれば1パーティでは勝てない相手となる。
レイド、それは幾つものパーティが協力し合う戦い。この六人はソレを即座に考えた。
このゲブガルが魔王から強化されたのはここに彼らに攻め込まれるホンの少し前。ゲブガルは急に自分の目の前に現れた光の玉に触れた。
彼にはそれが魔王から分け与えられた「力」だと直ぐに理解したからだ。直感だ。いきなり自分の前に現れる光の玉をなんの疑いも無く触れようとするのは馬鹿か、そういった「悟った者」以外にはあり得ないだろう。
そしてゲブガルはその力を吸収し、強化された。そして彼は自覚する。自分へと攻撃を通す事ができるプレイヤーは現時点で存在しない事を。
ソレだけのパワーアップだったのだ。そしてその自覚はこうして証明された。
「そんな事あってたまるか!もう一度だ!俺たちが奴の隙を作るから!そこにぶち込め!」
そう言って中衛の二人が前へと無理矢理出て行く。前衛の盾持ちは後衛の二人をカバーするように後ろへと下がる。
斥候役のプレイヤーも静かにゲブガルへと近づいて致命の一撃を狙うために機を窺い始める。
しかし悲しい事に、彼らのその攻撃は一切通じる事は無かった。
彼らが攻撃をするたびに、ゲブガルの目の前に透明な壁が立ちはだかったからだ。
「私は四天王最弱。ああ、これは嘘では無い。そうだな。この拠点の森の周囲に居るスライムと同じだけの体力しか私には無い。私にお前たちの攻撃が一度でも通れば、私は死ぬだろう。だが、それはあり得ないと思え。」
魔法使いの放った魔法がこの壁に遮られていた事を彼らは悟った。そしてこの壁をこのゲブガルが生み出している事も。
だがソレだけではない。一番大事なのはこの透明な壁を今の自分たちで絶対に突き崩せないと理解した事だ。
「さて、これで絶望をしたかね?これ以上私へと諦めずに攻撃をしてくると言うのなら、私は反撃に出させてもらう。準備をするがいい。」
いきなり攻撃を仕掛けたりせずにゲブガルはしっかりと宣言をした。
しかしコレにプレイヤーたちは諦めを見せない。そしてまたしても「デッドエンド」が放たれた。