何で俺だけ「押し寄せる波」
「手に入ったポイントはそこまで多くないけど、まあ、今の状態でどれだけ動けるかは分かったな。こっちの方がより比重を重くしていたし、結果はまずまず、って所か。」
俺はプレイヤーが全員居なくなった所でそう呟いた。ここでミャウちゃんが一言。
「いかがでしたか魔王様、プレイヤー共の手応えは?最後の一撃はなかなかの一撃でしたが。」
「そうだなあ。何となくだけど、あの集約した攻撃はなかなか食らったら痛かったかもね。でも、食らわなければどうと言う事は無い、って所だな。でも最終的には瞬発力のステータスをプレイヤーたちが上げてきたら防御に徹して防がなきゃならなくなるんだろうけどねー。あ、出す前に潰すのも良いか。」
ここでいきなり静かになるミャウちゃん。しかしこの玉座の間の隅に控えていたゲブガルとマイちゃんも何故か緊張した顔になる。
「どうしたのそんな顔して?・・・なんか気になる事あった?」
「どうやら不満を抱えたプレイヤー共がこちらに大勢攻めてきているようです。」
ミャウちゃんがどうやら城の外の様子を感知したらしい。俺もコレにマップを広げてみた。すると。
「うわー、青点が大量だな。これ、どうしよっか?・・・ん?不満?ミャウちゃんなんでそんな事分かったの?」
どうやらミャウちゃんは城の外のプレイヤーの様子まで分かってた。ならばそれはどう言った理屈かと思って訪ねたら単純だった。
「はい、私は糸を使います。その糸に掛かる振動で奴らの声を拾って聞く事ができるのです。」
どうやら糸電話の仕組みらしい。ミャウちゃんがそんな事までできるとは思っていなかったので俺は驚き、納得した。
「凄いねえ、そこ迄できるとか。超便利じゃん!なんてプレイヤーが言っているか、分かる?」
「お褒めに与り光栄です。はい、ではこの場に奴らの声が響くようにします。」
そう言ってミャウちゃんが右手をスッと無造作に上げた。すると。
「何で俺らが失格なんだよ!ドンダケ消費アイテム使ったと思ってんだ!」
「そうだそうだ!参加したんだから何か参加賞ぐらい寄こせ!」
「あの仮面野郎!俺たちを散々潰して「お前らは失格」とかぬかしやがって!」
「俺たちはあの時は人だかりが邪魔で外に出られなかっただけだぞ!?まだやれる!」
「そもそも何でルールを最初から明確に説明しなかったんだ!杜撰にも程がある!」
「そうだ!俺たちはそんなルール知らされて無かったんだぞ!無効だ!」
「レベル下げられた!死ね!俺たちがどれだけ苦労してレベル上げてきたと思ってんだ!あいつは殺す!」
「俺たちよりも雑魚が本戦進出?認められるか!ふざけるな!」
「魔王を出せ!俺たちにも何か寄こせよ!」
「レイド組んで強力しても良いなんて聞いてない!説明不足だ!だから俺たちを本戦に出させろ!」
何だかもう悪い方へと思考がぶっ飛んだ奴らしかいないらしい。それが大勢、そう、200名くらいの数で一斉に城の門の前まで近づいて来ていた。
「・・・えー、ミャウちゃんがあいつらに宣言してきてくれない?もう終わったって。それで、ゲブガル。一応門が抜かれない様に障壁で保護。それと、あー、マイちゃん。奴らが大人しく帰って行かなかった場合は、マイちゃんの魔法で殲滅してくれる?お願いね。」
俺はこの玉座の間から出ていけれない。なのでこのプレイヤーたちを直接この手で始末できないのだ。
恐らくだが、今の俺の「魔王」でも、あれくらいの有象無象、烏合の衆ならとある無双ゲーの如くに蹴散らす事が可能だ。
ちなみにそれ系のVRゲームもしっかりと幾つか種類が発売されていて、プレイ人口はかなりの数に上っている事もここに付け加えておく。
さて、このゲームでも似た事がこの「魔王」ならできそうなのだが、今はそれができないので残念に思いつつも、部下へと指示を出すのも俺の、魔王の仕事と割り切る。
最初から俺はそもそもシミュレーションゲーをしていた様なモノなのだから今更だ。
「はい、我らにお任せを。奴らの様な道理を弁えない者どもに鉄槌を下してまいります。」
ミャウちゃん、ゲブガル、マイちゃんが俺の前に揃って跪いて一礼すると、直ぐにこの部屋を出て行った。