何で俺だけ「プロローグ」
第一章「俺」編
ここは何処だろうか?首から上、それと手、腕は動くが、自分の座っている椅子から立ち上がれない。
本来だったら俺は今、始まりの街に居るはずだったのに何故この様な御城の玉座の間のような場所に居るのか?
俺の座っている場所は床から一段?二段は高い場所にあり、この部屋の全景を見渡せるのだ。
冗談だろう?そんな風に思っている俺へと声が掛けられた。
「お目覚め、心の底よりお喜び申し上げます魔王様。憎き神々の封印が弱まったとは言え、魔王様ご自身の力にてここまでの復活、流石としか言いようがありません。」
美しくこの部屋に響いているのは長い銀髪、灼眼の瞳、こめかみ辺りから伸びている禍々しい角を持った、絶世の美女の声。
「我ら魔族総出で封印の弱体化を狙い動いてはいましたが、しかし我らの力はあと一歩の所で及ばず、情けない気持ちで一杯でございました。しかしこうして魔王様が姿を現された事で、喜びの感情で今は胸が張り裂けそうにございます。」
俺のリアクションなんて全く無視でその魔族、と言う女性はとうとうと自らの気持ちの高ぶりを口に出す。
「さあ!魔王様!そのお声を!意思をお示しくださいまし!我らを滅ぼさんとする愚かな人種共に鉄槌を!攻め滅ぼせと号令を!」
「あの、ちょっと待ってくれない?俺、何が何だか分からないんだけど?」
一人で盛り上がっているその女魔族に俺はようやっとツッコミを入れた。しかしこのセリフは予想外だったらしく、ポカンとされてしまった。そして嘆かれた。
「おお、おおおお、何と。長い年月を封印され、魔王様本来の力がまだ全てお戻りになっておられないのですね?ならばこのワタクシが全力を持って魔王様のサポートをさせて頂きます。」
そう言う事じゃねーんだよなー、と、何処か冷静に俺はその魔王の参謀NPCを見つめた。
そう、俺は今、超大型VRMMO・RPG「ブレイバーズ・シャイニング・オンライン」というゲームをしている。
今は「2XXX年」。VRが普及してかなりの年月が経った。バーチャルリアリティの世界は発展を遂げ、今では電子世界の中に「異世界」を再現する事すら可能で、その中へと我々は完全没入して遊ぶことが可能になっている。
そう言う訳で今では仕事なんてのも会社などに直接行かずにネット内での仮想空間でだ。家に居ながら仕事である。もちろんそうなれば通勤などと言った不要な移動時間は皆無となり、無駄に自分を縛る不自由は解消された。
人々はそうした中で有り余る時間を使い、様々な趣味へと没頭できる自由を手に入れ、それは大きく社会、世界を変えていっていた。
そんな世界で生きる俺「間島健斗」「27歳」「独身」「趣味・ゲーム」である。
当然この販売前から期待度200%の評価を受けていたこのゲームに飛びつかない訳が無かった。
でも結果はコレだ。何が言いたいのかと言うと、俺が思い描いていた展開とは全く違う、おかしな方向へと向かっていると言う事である。