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喋る鎧達

「今のは?」

『あれがゲンブの能力だ、相手の攻撃を保存して、まとめてお返しする事ができる。奴と戦う場合、盾に攻撃を当てるのはアウトだ。それより、そろそろ落ちてくるぞ。』

「分かった!」

『雑魚に使うような武装じゃねぇが、俺の復活記念だ、第一兵装・必滅の槍、制限解除!一発で決めるぞ!!』

「えぇ!?僕槍なんて使った事ないよ!?」

『大丈夫だ、さっきまでと同じくぶん殴れ!』


右腕に鎧が少し形を変えるのを感じたけど、確認してる暇はない。

大地を蹴り、ちょうど上から落ちてくるヴァンパイアに向かって跳躍。

背中や鎧の各場所から爆風が吹き出し、僕の体は更に加速した、しかも途中から体が錐揉み回転をしだす。

突然の加重と回転に意識が遠のきそうになったけど、何とか意識を繋ぎ止めた。


『喰らえ必殺!アァァァクセルスピンッ!!ドラゴンアッパァァァァァ!!』

「うわぁぁぁぁ!!………うぷ。」


高速で近づくヴァンパイア目掛けて、無我夢中で腕を振るった。

視界の隅で拳の先から光の柱みたいなものが出てきたように見えた。

胃の中身がせり上がってきたけど、何とか我慢して着地。

ヴァンパイアの姿を確認すると、胸の位置に大きな穴が開いていた。

でも相手は2つ以上の心臓を持つと言われる上級魔族。


「こんな傷じゃ、吸血鬼は殺せないんじゃないの?」

『なぁに心配するな、奴を見な。』


確かに全く動き出す様子がないし、傷も塞がらない。


「な、何故だ…何故この程度の傷が癒えん!?まだ私の心臓は…」

『さっきまではこいつの霧化やシールドなんかのアクティブスキルを解除してた訳なんだが、さっきの武装は再生や魔力回復なんかのパッシブスキルを無効化するんだ、当然心臓のスペアも無効化だ。』

「(…何それ怖い。)ヴァンパイア、お前はもう急所に穴が空いた普通の魔物と変わらない。何か言い残す事はあるか?」

「こ、こんな事が…俺がただの人間なんかに、戦闘中に他人にうつつを抜かすような奴に負ける訳が…」

「確かに僕達はすぐに感情に流される。」


それに、僕は意思も弱い。

ガストンさんや僕を救ってくれたローガン君のように、見ず知らずの人間の為に命を張るなんて事はできそうにない。

もしくはカーラさんやエリーちゃんのように、初対面の人間を笑顔で迎え入れる度量もない。


「でも、大切な人の為なら僕みたいな腰抜けでも必死になれる。それが逆に人間の強さなんだ、お前のお陰で気付く事ができた。」

「馬鹿な、弱い者同士の馴れ合いが力になるだと?そんなものが強靭な魔族に適うものか!」

「お前には分からないだろうね。」

「ふん、私如きに勝った位で調子に乗るな。私の爵位は男爵…伯爵や公爵には足元にも及ばん。」

「誰が相手でも、この手が届く範囲の人だけは守ってみせるさ。」

「ふん…心意気だけではどうにもならない事もある。いずれお前も思い知る日が来る事だろう。」


言い残すと、体の端から塵になって消えていった。

後には紫色の石がぽつんと残された。


「うぉぉぉぉん!!」


な、何だ!?

魔物の咆哮のような声が、カーラさん達の方から…

振り返ると、ガストンさんが泣きながらこっちに走って来た。

そのままこっちに覆い被さってくる。


「おわっ!?ガ、ガストンさん!?」

「クリフー!!お前成長したなぁ!!俺は、俺はお前がやる奴だって信じてたぞぉぉ!!」

「ガストンさん鼻水、鼻水が出てます!!」


ガストンさんにもみくちゃにされた。

しかもガストンさんが飛びかかってくる直前にお互いの装備はきれいサッパリ無くなってしまった。


『キモ。』

『間一髪で回避できたな。』


どこからか女の人の罵倒が聞こえてきたような…


『気の所為よ。』


そっか、気の所為か。


『おい、クリフ騙されるな。今のがゲンブだ。あの涙と鼻水でぐじゅぐじゅになってるキモい男の鎧。』

『キモいは余計よ…実際キモいけど。』


スザクの声が首元から聞こえてきた。


「この声は?」

『ああ、変身してない時はネックレス型になっていようと思ってな、常にあの鎧状態じゃ面倒だろ?』


確かに…

常にフルプレートメイルなんて着込んでたら、ご飯の時やトイレの時に困りそうだ。


「お前ら、俺がこの日をどんだけ待ち望んだか!クリフ、よく自分を乗り越えた!嬉しいぞ!エリーが生まれた次に嬉しい!!」

「へ〜…じゃあ私は3番手以下ってわけだ。」


何だか周囲の温度が下がったような気がする…


「い、いや…カーラお前が大切じゃないわけじゃなくてだな?」

「前に、エリーが生まれた以上の喜びは無いとか何とか言ってなかった?」

「これは言葉のあやって奴で…」

「少々、話し合いが必要みたいね。」


あっちは見ない事にしよう。


「よう、何とかなったみたいだな。」

「ロニーさん、ロニーさんの援護のおかげで助かりました。さっきの武器は弓とは違うものでしたよね?」

「ああ、よく分からんが鏃の先みたいなものを打ち出す武器だそうだ。名前はり、リボバライとかそんなやつだ。」

『…リボルバーだ。』

「だそうだ。」


ロニーさんも寄って来て、お互い無事な事を確認し合う。


『ビャッコは相変わらず無口だな。』

『…必要な時はしゃべるさ。』

『まぁ全員寝起きの割にはよく動けたんじゃない?』


…いつの間にかゲンブさんが僕の手の平の上にネックレス状態で移動してきてる。


『夫婦喧嘩は犬も食わない、そうゆう事よ。』


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