正義の味方
「ところで、皆さんは一体どういった謂われの鎧なんです?」
『ああ、それを話すと長くなるが。まぁ俺らは元々高ランクの冒険者だったのさ。大昔の話だけどな、結構有名だったんだぜ?』
『当時の魔王と渡り合える程度にはな。』
『周りから持て囃されて、有頂天になっていたのよねー、それで隙をつかれて地下深くに封印されちゃったのよね。』
『…普通の人間からすれば、力を持ち過ぎた人間は笑顔の魔族と大差ない扱いなのだろう。』
『今思えば、皆私達と接する時はバカ丁寧だし、怯えた顔してるし、いつも化物扱いされてたのよ。』
確かに…もし魔王並の力を持った人が身近に居たら、自分も怖くて近寄れないかもしれない。
『だからよ、クリフ達がこの力を使うなら…』
化物扱いを覚悟しろって事か。
『他人にバレないように変身しなさい。』
「え?そっちですか?」
『そりゃそうさ。化物扱いを我慢すりゃ良いって話じゃねぇ。実際毎日のように暗殺を試みてくるし、仲間以外に仲良くなれる奴もいない。』
友人がいないのは性格が原因では?
『ちがわい、有名になる前からの友人も沢山いた。でもそいつらは俺らを庇って、次の日には何者かの襲撃を受けて死んだり再起不能にさせられた。』
「…」
『分かる?自分達が守ってきた人々に、自分が一番大切にしてる人を傷つけられていくって事の辛さ。』
…人間同士のいざこざに見せかけた魔族の作戦では?
『それならビャッコがすぐに分かる。』
『当時、この街の人の流入はすべてチェックしていたが、不審な人間はいなかった。魔族もだ。』
『そんな訳で、私達はもう当時の時代の人とは付き合わない事にしたのよ。』
『まぁそもそも封印を破れなかったんだけどな。とはいえ俺達にも寿命がある。このまま朽ちていくだけってのは性に合わねぇ。それで皆の力を合わせて自分の装備品に自分の魂を移すことにしたんだ。』
そんな話、聞いた事もない。
『成功率は低そうだったけど、もうそれくらいしか思いつかなかったのよね。実際空気穴も無い地下だったから、時間も残り僅かだったし。』
『ビャッコが魂の特定、ゲンブがその魂を保存して、俺が装備品に魂を定着させた際の拒絶反応をキャンセルさせてな。いやーあの時も何度か死にかけたな。』
『うまくいったらうまくいったで鎧の姿じゃ何もできないし…スザクが皆のストレスをキャンセルできなかったら結局精神がイカれてたわね。』
『そんなこんなで数百年。でも、最近急に封印の力が弱まったんだ。ビャッコの見立てでは、誰かが俺らの真上でとんでもねぇ魔力を放出した結界、封印に歪みが生じたんじゃないかって事だった。』
『後は私らに見合う使用者が現れるのを待つだけだったんだけど、意外に早く現れてくれて嬉しかったよ。』
『まぁこれから宜しく頼むわ。ただ一つ言わせてくれ。もし、お前らが俺らの力を使って私利私欲の為だけに使ったり、悪事を働くようならその時はもう二度目と協力はしねぇ。それだけは覚えておいてくれ。』
「分かりました。」
これだけの力があれば、悪事をしようと思ったら何でもできちゃうものね。
『それにしても…あいつだけ起きて来なかったな。』
『まぁ他に適合者もいなさそうだし、そのうち出てくるでしょ。元々お寝坊さんな所もあったし。』
「…ん?何か言いました?」
『いや、まぁどうでも良い事さ。これから宜しくな!』
そんなこんなで僕らはスザク達と出会い、それをきっかけにヴァンパイア達との戦いに見を投じて行く事になる。
それはまた、別の話。