クラリティ王国へ ※挿絵
--セニア--
私とリンちゃんこと男装の麗人のレリンスと、ティーちゃんこと男の娘のティアーネ、そして保護者枠で神獣でライオンと虎が混ざったような見た目の黄昏の4人(3人と1頭?)でクラリティ王国へ向かうことになりました。
「セニア。忘れ物はないな?」
「大丈夫だよ。マジックバッグに入れっぱなしだから。それに、もらったのもその場で入れたし」
「なら良い。で、これが弁当だ。仲良く食え。」
「ありがとー!」
「グリム様、ありがとうございます。」
「ます」
「気にすんな。趣味だ。2人も気をつけてな。で、入学式には来れるようにするがセイたちまで全員となると正直無理とは言わんが難しいからな。場合によっては数日ずらして交互にやってくることになると思うがそうなったときはすまない。」
この間、よそから装備品の清掃をしてもらいにやってきていた冒険者のお姉さんたち(2~3ヶ月に1回は最低やってくる)に、領主様というか貴族のトップが毎日侍従を放置して料理をしてるのはおかしいって言ってたけどうちでは良くあることなので私たちはとくに気にしない。
と言うより、やりたいことをやって何が悪いとしか思わない。
「いえ!来てもらえるだけでも十分うれしいですから。それに、お忙しいのは父上含めて存じてますから!」
「苦労かけるが、ありがとうな。その分、弁当は奮発させてもらった。」
「ありがたくいただきます。」
「あ、後、これお前らの小遣いにしてくれ。セイたちとラウさんたちの分も含んでる。」
「は・・い・・どうも」
「・・・いくらになるかな?」
「さー?」
父様がくれたのは、ものすごくでっかい魔核。
たぶんSSSランクのモノだと思う。
それがそれぞれ5つ。
「あの・・お小遣いにしては多いのでは?」
「まー、気にすんな。どうせリーリスさんのとこで服を買うんだろ?ならその分も含む。」
「・・・ありがとうございます。」
「後、住む場所は昔リアたちと住んでたとこがあるからそこを好きに使ってくれ。リアの部下たちが整備をしてるからいつでも使えるようになってる。場所は、スリープシープがいるとこだからすぐにわかる。」
「わざわざありがとうございます。」
「家は使われてこそ喜ぶもんだ。だから気にすんな。」
「はい」
私たち3人「行ってきます!」
「行ってらっしゃい。」
「はぁ。グリム様は本当にお優しい。」
「見た目とのギャップすごいよねー。慣れたけど」
「私が生まれる前は今以上に乙女だったらしいよ?」
「・・今以上?」
「うん。母様が言うには、ほっぺにキスするだけで顔を赤くしてフリーズしてたって。」
「乙女どころか純情過ぎ?」
「それは何というか・・。」
「だから、今はそれが落ち着いた結果、見た目はアレなのに中身は立派な主婦。」
「料理が趣味で気遣いが出来る・・うん・・主婦だ。」
「主夫ではなく主婦・・いえてる。」
「それよりも、お主ら早く行くぞ。我の背に乗れ。」
「あ、私は途中まで走るから途中から乗せて?」
「うむ。承知した。」
「黄昏様、よろしくお願いします。」
「ます」
「気にするでない。我にとっては軽い散歩だ。それに、久方ぶりにあちらに行けばそれはそれで面白そうだ。他の者たちはフリージア様と離れたがらない故にそう言う好奇心はないがな。」
確かに。
とくにシャスティ
「あぁ・・フリージア様の獣魔の皆さんはフリージア様大好きですからね。」
「溺愛レベル突破。」
「我も、溺愛してはいるが、シャスティほどではない故な。こうして、時折好きにさせてもらっている。さてゆくぞ。」
「は~い。」
さて、移動しながら軽くお話ししましょうか。
私の装備は説明したけど、2人の装備を簡単に説明しておきますね。
まず、リンちゃん。
武器は2メートルはあるすごくおっきな剣を2本使う二刀流。サブで、同じくらいのサイズの戦斧と戦槌で、こっちはマジックバッグに入ってて大剣がダメになったときしか使わない。
防具は、胸当て、肩当て、肘当て、篭手、バトルブーツ、脛当て、膝当て、腰当て、ヘアバンド、ロングコート
下には、ちょっぴりゆったりしたシャツとぴっちりしたタイプの長ズボン。
シャツは、私のと同様で一見ただのシャツだけど実際はとんでもない数の素材を混ぜまくって出来た謎素材の最強シャツです。
ティーちゃんは、武器は軽く言ったと思うけど1メートルサイズの杖と、苦無とナイフと短刀が5本ずつに、鉄串が10本にスリングショット。
防具は、ローブに、刃が仕込んでるブーツ、篭手兼用のインファイターグローブ、肘当て、脛当て、鎖帷子、サークレット
で、その下は長ズボンにシャツと素材も含めてリンちゃんと同様なんだけど、シャツはふりふりとかがついてたりする。
で、ほぼほぼ同じモノを着てるのにリンちゃんだと凜々しくなって、ティーちゃんだとふわふわほわほわと可愛い感じになる不思議。
どれも、私の装備と似たり寄ったりな効果が付与されてるよ。
後、全員バッグにシャスティお手製のお薬と栄養剤のお団子は常備されてる。
いざって時にシャスティのは効きが良いから愛用してるしね。
一応マジックバッグの中身をざっくりというと、お薬とか食べ物とかは全員入れてるんだけど、シャワーセットとかお料理セットとか食器のセットに野営セットみたいな戦闘以外で使うような類いはほぼ全部私が持ってる。
他2人のは魔物とか倒したときや、採取したモノを収納するときに使うんだよ?
だから、私の分も2人のどっちかに入れてもらうことがほとんど。
強いて言うなら、外で拾ったりして手に入れたモノはリンちゃんとティーちゃん。
私はその他のを持ってる所謂荷物持ちって感じかな。
そのせいなのか、私のバッグの中はそうした便利グッズの巣窟と化しているから、リンちゃんたちからは言い方を悪くすると~が欲しいと言ったら大抵のモノは出てくる便利な人扱いされてる。
たとえると、シャワーしたいなー?、はい、シャワーセットどうぞ?
とか、
これなんだっけ?。はい、図鑑
とか、そういうのが普通に出来ちゃう。
そうなったのも、母様経由でもらった試作品を含む魔道具をため込み、詰め込んだままにしてるから何だけどね。
だから、近いうちに採取用で別でバッグをもう一個手に入れる必要があるかな?とか本気で思ってたりする。
まぁ、リンちゃんたちがいるからいらないけど。
で、話を戻すけど。
こうしてわかるように、リンちゃんはすっごい力持ちだからおっきくて重たい武器をメインで扱うんだよ?
ティーちゃんは、すごくいろんなのをいっぱい持ってるのは、様々な方法で時間稼ぎをすることもそうだけど、戦闘以外でも役立つから持ってたりするんです。
ナイフは採取の時に使えるし、鉄串はお魚とかお肉とか刺して焼くときに使えるし。
で、現在は私は風で体を軽くして、雷で肉体の瞬発力を高め、追い風で動きを早くしてる。
黄昏の本気の速度には追いつけないからまだまだだけど、速さには結構自信がある。
一応普通の馬の全力疾走並みには普通に走れるし、今だとそれを余裕で通り越すくらいは出せるよ。
理想は、全力のシャスティ並み!
頑張ろう、オー!
それもあって、暇があれば鍛錬の1つとして走り込みはしてるんだよ。
魔力面で速度を上げる魔法を鍛えてはいるけど肉体面も同じくらい鍛えないと意味がないからね。
これは父様からの教え。
父様は肉体と魔力の両方をむらなく鍛えて初めて接近戦でその力を発揮するから、片方だけでやってもすぐにぼろが出るって言うし。
まぁ、体がそこまで強くない母様は特別らしいけど。
母様の場合は魔力面を一般人の何倍も鍛えたからこそ肉体面を補えるほどの力を持ってるらしいし。
父様は、母様ほど魔力面に優れてないからこそ肉体も鍛えたんだとか。
すべては母様のためだけに。
そんな、まっすぐで一生懸命な旦那様を持てる母様はすごくすてきでうらやましいと思う。
いつかそんな人が私にも現れるのかな?
まぁ、まだまだ子供だし深く考える必要はないね。
さてさて、まだまだ走るよー?
限界の一歩手前になるまで頑張るよ-?
そのくらいいつも頑張らないと鍛えた気がしないからね。
なんか、ブラックの気配がとか聞こえた気がするけどスルースルー。
「相変わらず、セニアは足が速い」
「都一の脚を持つ、父さんの次に早いし。人外だとシャスティ様がダントツだけど。」
「だから、もっと鍛えればラウさんを上回れるかもとラウさんから言われてたでしょ?」
「うん。父さんも母さんもそう言って期待してた。そういうリンだって都一の力持ちに片足突っ込んでるよね?」
「ま、まぁ・・・僕自身まだまだだと思うけど、セニアの隣に立つならそのくらい出来ないとね。」
「けど、リンには癒やしの魔法がある。セイ様譲りの」
「母上には、まだまだ及ばないけどな。」
「あの人は例外。」
「まぁ・・フリージア様並みに規格外だからなぁ・・。この間だって、よその大陸からやってきた不治の病を持った人がわらにすがる思いでやってきたのをあっという間に治して女神様扱いされてたし。」
「顔すごい引きつってた。」
「まぁ・・気持ちはわかるけど。」
「あの後どうなった?」
「・・・なんかその場でお金を渡せなかった・・いや、母上がいらないと言ったせいなのか、定期的にその人の大陸の名産品なのかいろんな食材が届くようになった。」
「あ、それで最近珍しい類いのお裾分けが多かったんだ?」
「・・どうも聞いてると、死んでたかもしれない娘を救ってもらい、お金も受け取らない女神様への貢ぎ物は必須だ!って、その人の故郷で演説した結果、町全体で貢ぎ物を集めて毎年送ることに決定したんだって。」
「信者増えた。良かったね。」
「・・その分母上の顔が引きつったままだったけどね。一応期限を設けてなだめたらしいけど。」
「どのくらい?」
「相手が粘りに粘って10年間。しかも、来年の頭からカウントして」
「・・それ、ざっくり11年じゃない?」
「・・そこは笑顔でスルーされたとうなだれてた。」
「あぁ。まぁ、おいしいは正義だからもーまんたい。」
「まぁ、フリージア様も喜んでたし気にしないことにしてたけど。」
「フリージア様は食べるのが好きだから」
「うん。それは言えてる。」
なんか、話盛り上がってるし、私もそろそろ限界で視界がぼやけて意識がもうろうと仕掛けたから走るの辞めようっと。
そう思って、ひょいと黄昏の尻尾で補助してもらいながら背中に乗る。
「はい、お疲れ様。」
「うん、ありがと。」
リンちゃんに声をかけてもらい、ティーちゃんに都名物薬草茶をもらう。
うん、おいしい。
うちの薬草茶は、いろんなのを混ぜ込んで作った緑色のお茶で、ちょっとした病気とかだったらこれを飲んで1晩寝れば治るくらい結構すごいものです。
健康アイテムの中でも上位版って感じかな?
言うなら、薬膳料理の飲み物タイプって感じ。
味は、母様が言うところの緑茶に近いし、見た目もそれっぽい。
時折、よそからその薬草茶を買いに来る人もいたりするよ?
どこの国の人か知らないけど、健康のためとかで定期的に買いに来る執事さんもいるし、その執事さんも愛用してるらしいし。
お礼代わりにお代とは別に、その人の故郷の名物らしい食材が届くこともあるし。
「はぁ、満足。」
それからは、他愛ないことを話したりしながら黄昏の背中でぼんやりしてました。
「おい、3人娘。クラリティ王国に到着したぞ。」
「はい。それで、黄昏様は道中に何を狩ったのです?」
リンちゃんが黄昏に何か聞いてるからふと見てみると黄昏の尻尾にはおっきいお肉の塊というか魔物がいた。
「うむ、道中に邪魔だった故にな。ついでにこやつの血肉はうまいぞ?」
えぇっと、翠のお手製魔物図鑑だと・・あぁあったあった。
キメラミート
鳥の羽と羊の胴体、牛の頭、馬の前脚、豚の後ろ脚を持つ、4足歩行の謎生物だが、決して人為的に作り出されたヤバい生物ではない。
それぞれの部位が、それぞれの種族の部位のため、1頭で5度おいしい。
個体によって、鳥や豚などの種類が異なるため、味も変わってくる。
滅多に現れない希少な存在だが、少し目を離すと1頭から30頭にまで増えてたりするが、どのように増殖しているかは未だに解明されてないため、非常に謎の多い生き物。
獲得部位:魔石、全身の肉、謎の蹄、謎の牙(たまに嘴)、謎の骨、謎の眼球、謎の羽、謎の毛皮、血
これが、10頭ほど存在してたらしい。
ついでに言うと大きさは、平均で全長50メートルと結構でっかい。
そして、全身まるまる残る魔物だから、ちょっと珍しい。
基本的に魔物は倒すと獲得部位以外は全部どこかに消失してしまうから、全身残るのはそう言う個体以外はあり得ないんです。
とれる部位でなぞって書いてあるのは鳥なのか羊なのかなんの骨なのか混ざりすぎてよくわからないからそんな名前になってるんだって。
一応合成されたという扱いらしく普通のより頑丈というか優秀なのは確からしい。
後、骨も蹄も眼球も、調合薬に使うらしく、目とか筋肉とか骨とかにかかる疲労とか負荷に効くらしいよ?
それと、個体によって変わってくるっていうのは、例えば鳥の部分だったら鶏だったり鴨だったりみたいな感じでなんか違うらしい。
見た目は同じだから倒してみないとわかんないらしいけど。
で、血は、ブラッドソーセージにするとおいしいんだとか。
一応そのまま飲んでも良いらしいけど味は微妙だとか。
調理してもしなくても、栄養満点なのは確からしいけど、おいしい方が良いよね?
んー。
味が微妙なら料理してソーセージで食べたいなー。
とりあえずそのお肉たちは、リンちゃんのバッグに直されました。
と言うより、あんなでっかくてそこそこの数のお肉とかをよく尻尾だけで支えた状態で抱えて走ってたよね?
さすが神獣、器用だね?って言うべき?
「さて、気を取り直して並びましょう。」
リンちゃんが黄昏の隣に立って黄昏を連れて行き、門の前に並ぶ人たちの一番後ろに並ぶ。
私は、とりあえず座るくらいは出来るようにまで回復したから黄昏の背中に乗っかって黄昏の背中をもふってる。
で、ティーちゃんは黄昏の尻尾をもふってる。
ついでに言うと尻尾に座った状態でモフってる。
黄昏は尻尾自体もかなり強いから1人2人は容易く尻尾の上に乗ってても平気だしすごい安定するんだよ?
たまに、ブランコ扱いして尻尾にぶら下がって遊ぶし。
で、黄昏ってすごく体が大きいし、私たち子供3人だけでいるのがすごく珍しいらしくてすっごい注目されてるけど、母様を見習ってスルーしますスルー。
「こんにちは」
「?こんにちは」
私たちの後ろに並んでいたお姉さんたち(5人)の内の1人が黄昏の背中に乗ってる私に声をかけてきた。
なぜに近くで尻尾の上にいるティーちゃんでもなく、前方とは言え、普通に歩いてるリンちゃんでもなく背中に乗ってる私なのだろうか?
おまけに黄昏って大きいから普通に見上げる感じになるのに。
ちょっと疑問に思いつつ一応返事をする。
すると、私が首をかしげている理由に気付いたらしく苦笑して教えてくれた。
「あ、なんでわざわざあなたに声をかけたのか気になるのよね?」
(コクリ)
「えぇっと・・こう言ったらなんだけど、あなたが一番声をかけやすそうだったというか・・その・・」
「あぁ・・」
リンちゃんは凜々しくて孤高なるなんとかって言いたくなる感じで一見近寄りがたい感じっぽいし、
ティーちゃんは見た目はふわふわほわほわだけど、無表情だし結構淡々としてるから我が道を行くって感じでリンちゃんとは別の意味で声をかけにくい雰囲気してるしね。
「それで、どうしました?」
アルナさんに言葉遣いとか気遣いとかは習ってるから普通に丁寧語も出来るよ、えっへん。
「いや、たいしたことはないんだけど、子供だけでわざわざここまで来てるからちょっと気になってね。・・近くに保護者の方はいなさそうだし、身なりもきれいだから孤児とかじゃなさそうだし。」
あぁ・・
「一応言いますと、この黄昏が私たちの保護者役を母様から任されてるんですよ?」
「黄昏・・って、その大型獣のこと?」
「はい。母様の獣魔の1体です。」
「すごいお母様なのね。」
私の大好きな母様が褒められてうれしくてふにゃっと笑みを浮かべるとなぜかお姉さんたちが顔を背けてぷるぷるしてる。
「?どうしました?」
「・・可愛すぎる。・・コホン、何でもないわよ?それで、人はあなたたちだけ?」
そんなお姉さんの反応になぜかリンちゃんはそうだよね、そうなるよねって感じで頷いてる。
「はい。母様たちは忙しいので、私たちだけです。」
「わざわざ大変ねぇ。それでどうしてここに?ただのお遣いとかじゃなさそうだけど。」
「私たちここの学園の入学試験を受けるためにやってきたのが理由の1つです。」
「あぁ、ってことはみんな10歳なのね。」
「はい。幼馴染みなんです。」
「そう。・・それでもし良ければもう1つの理由も教えてくれないかしら?」
「え?対したことじゃないですよ?ギルドカードを作りに来たくらいですから。」
「あら・・カードを持ってなかったの?」
「別の証明書があったので困ってなかったので。」
「あなたたちの故郷にはギルドはなかったの?」
故郷にギルドがあればすでに作ってるだろうと聞いてくるので答えを教える。
「ありはしたんですけど、簡易ギルドなんですよ。」
「あぁ・・そういうこと。けど、今時簡易ギルドのままって言うのも珍しいわね。大抵は数年経たずに簡易ギルドから普通のギルドに変えるのに。」
「死にはしないから簡易で十分らしいです。」
「セニア・・それは答えとしてざっくりしすぎ。」
「えー?けど、ホントにそう言ってたよ?」
母様が、本気で言ってたよ?
私の受け答えが不満だったらしいリンちゃんが混じってきた。
「正しく言うと、元々ギルドなどの公共施設は存在しなくても困らない場所だったんです。けど、他の地との情報交換や、よそから来た人たちが不便するだろうということで簡易ギルドを立ち上げたんだそうです。」
「けど、それなら普通のギルドに変えた方が便利なのでは?」
「それもそうなのですが、領主様が言うには、よそ者のために存在した都ではないからとどまらせるようなモノは必要ない・・だそうです。」
「それ・・領主として大丈夫なの?」
「えぇ。独自のルールで動いてる場所なので。なので、都に足を踏み入れることが出来るのはある程度の制限があるんです。」
制限って言うより、ふるいにかけたって感じだけど。
「安全性を優先したのね。」
「その通りです。」
「けど、それだと経済の動きとかお金が入ってこないのでは?」
「そこは、問題ありません。名産品は色々ありますし、そう言う制限で動いていることでリピーターも多く安心出来ると契約相手も喜んでるそうなので。」
「後は、狂信者がいるから。」
「きょ・・狂信者・・」
そこで、ティーちゃんが混じってきた。
で、ストレートなティーちゃんのいい方にうなだれつつリンちゃんが補足説明をする。
「あぁ・・なんと言いますか様々な方面での腕に実力がある人たちが固まっているので様々なやり方で問題を解決したり、絶賛する人が多かったりするんです。」
「すごい人たちが多いのね。」
「えぇ。そう言えば、お姉さんたちは何をしに?」
「私たちは、この国にすごく優秀な洋服屋さんがあると聞いてね。そこを訪ねに来たのよ。」
「あぁ。もしかしてそこって、訳ありとか言われてたりしませんか?」
「あら、よくわかったわね。そこが気になってたのになぜかその情報は集まらないのよ。って、その言い方だとあなたたちは知ってるの?」
やっぱり、リーリスさんのことだ。
「えぇ。」
「良ければ教えてくれないかしら?」
「構いませんよ。店員さんもすごく優秀ですし、目利きも確か。品揃えも戦闘用からおしゃれ用まで揃ってるのですごく良いところですよ。それに、お値段も良心的ですし。」
「なのにどうして?」
「あぁ・・・見た目と中身の差がすごいと言いますかなんと言いますか。」
「んー?」
リリちゃんが遠回しに言葉を濁すので首をお姉さんたちはかしげてる。
そこで、ティーちゃんがストレートに答えを言う。
「中身女性の見た目男性。」
「・・・」
「・・・」
「・・ちょっと、ティア!そこまでストレートに言わなくても!」
「ん?どうせわかること。」
「だとしても・・言い方があるでしょう!」
「えー。これでも抑えたのに」
「なんて言おうと?」
「オカマ」
「うぐ・・ストレートすぎる・・なら確かにさっきの言い方がマシ・・けど・・うぅぅぅ。」
なんか、リンちゃんが身悶えてる。
と、そんなやりとりを聞いている間にお姉さんたちは正気に戻った。
「あぁ・・そういうことね。」
「ですが、あくまでもむっきむきな体でもふりふりふわふわな服を着てて可愛いモノが好きなだけで、すごく良い人ですよ?母様もおじいさまも愛用してますし、この国のトップはそこ以外はいやだって言う人も多いって母様に聞きましたから。」
「それは確かにすごいわね・・って、さっきから気になってたのだけど、あなたたち・・・の中でも、狐ちゃん?は、お嬢様なのかしら?」
「んー・・・リンちゃん、どう思う?」
お嬢様の定義ってよくわかんないんだけど?
「じゃないの?だって、セニアのご両親は領主でしょう?それに、貴族でしょうが。」
「それを言うなら、リンもそう。私は別。」
「ティアは、領主様のお父上の護衛筆頭だから、単純に平民とは言えないでしょう。」
元第一王子の懐刀だしね。
おまけにアリスさんは元クラリティ王国のギルドマスター。
なんか、数年くらいで、ルナールに行っちゃったから今はまた別のギルドマスターになってるらしいけど、すごく優秀なギルドの受付嬢だったって聞いてる。
「・・・あなたたち思った以上に大物だったのね。」
「気にしなくても良いですよ?母様なんて身分なんて相手の心をへし折るワザの1つだとしか思ってないですから。」
「それはそれで大丈夫なの?」
「はい。ワザで物理的にへし折って、言葉と威圧で心をへし折って、身分で精神的部分にとどめをさせ!が我が家の教えの1つですから。」
母様は本気で言ってます。
そして、その父親であるおじいさまもうんうんと満足そうに頷いてます。
ついでに言うと、フォルシェンファミリーの皆さんも同意してた。
「・・なんていう殺伐とした教え・・。って、あなたのお母様は実力者なのかしら?その言い方だと」
「そうですよ?母様の専属メイドさんが言うには、クラリティ王国最強ファミリー筆頭って言ってましたし。」
実際そうだしね。
名前とか身分とかきちんと言ってないから自意識過剰とか思われてる可能性があるけどスルー。
「そ、そう・・これ以上は聞かないでおくわ。・・聞いたら、後悔しそう。」
む?
なぜか引きつった顔になった。
で、なんでリンちゃんはそりゃそうだろって顔してるの?
「セニア。そろそろ我らの番だぞ」
「あ、は~い。」
「・・・・って、しゃべれたのね。」
「うむ、我は長生き故な。」
「なるほど・・。あえて種族とか正体とかは聞かないでおくわ。」
「ふむ、珍しいな。大抵の輩はすぐに聞いてくるが。」
「えぇっと・・聞くと別の意味で後悔しそうだからよ。」
「なるほどな。その感覚は、戦闘でも役立つ故、積極的に鍛えると良いぞ。危機感知に長けたワザを覚える可能性が高い。かなり有用だぞ?」
「あ、それは助かります。・・ちなみにアドバイスなどはありますか?」
「そうだな・・私生活において常にありとあらゆるモノに対して、危険かそうでないかその感覚を頼りに感じ続けると良いだろう。近いうちにその感覚はより鋭敏となり、より確率は上がる。」
「やはり場数を踏む必要があるのですね。」
「戦闘でなければならないと言うわけではないぞ?同じ果物を並べてどちらがおいしいか、どちらの魔石の方が魔力の質が高いか、どちらの薬草が効きが良いかなど、様々なモノを見比べれば良い。」
「え?そういうことで良いのですか?」
「うむ。その感覚は、毒の有無を本能で見極めることにも使える故な。様々なモノを遊び感覚でどちらが良いか悪いかを判別するだけでも十分だ。戦闘にしか役に立たないと言う輩は早死にするだけ故に捨てておけ。我が主は、そうおっしゃっていた。」
「あなたの主さんはすごい方なのね。・・・アドバイスありがとう。頑張るわ。」
「うむ。」
「何かお礼がしたいのだけど・・。」
「気にするでない。素直にお礼が言える・・それが最も大事なのだ。モノでは本当の心は通じぬ。素直に笑顔で感謝の言葉を言えば良い。年を重ねるとそれが出来なくなる輩が増える故に忌々しい。」
「・・そうね。そうさせてもらうわ。・・って、もう次よ。」
「む?確かにそうだな。」
黄昏とお姉さんが話をしてる間に私たちの番になった。
「はい次・・って、どういう組み合わせだ?・・まぁ良いか。とりあえず、その大型獣は?」
「母様の獣魔です。」
「その母様は?」
「お家でお仕事です。私たちの保護者として代わりについてきてくれたんです。」
「嘘はないようだが・・んー、あ、なぁ!」
ちょうど交代なのか別の騎士さんがやってきた。
「・・って、ことなんですけどどうしましょう?」
「ん?・・・もしや、黄昏様では?」
「む?久しいな、健在か?」
「えぇ、おかげさまで。って、このお方は問題ない。」
「え?そうなんですか?その獣魔の主が不在なのに?」
「はぁ・・その主は特別なんだよ、今は黙ってろ。失礼いたしました。」
子供である私たちにすごく丁寧だなこのお兄さん。
「って・・ちょっと狐のお嬢さん・・失礼だが顔をもっと近くで見てもよろしいだろうか?」
「ん?どうぞ」
とりあえず、黄昏の背中から飛び降りる。
「んー、どっかで見たことのある顔と雰囲気なんだが・・失礼だがこの国に前に来たことは?」
「今日が初めてです。」
「だよなぁ。・・・ん?黄昏様?まさか・・・・1つ訪ねても?」
黄昏のことを眺めて何か思い出したらしくなぜかすごく動きがぎこちなく、表情も引きつってる。
「どうぞ?」
「君のお母上は、もしや、幼女だったりしないか?」
全員「は?」
周りの人が全員何言ってんだこいつ?って顔になった。
って、その言い方だと
「母様のことをご存じで?」
「やっぱりか!では、君は・・いや、あなた様は!あのお方のご息女!?」
「えぇっと・・思い浮かんでる人物が同じだったらたぶん。」
「黒い天使の羽を持つ白髪幼女だろう?魔法の天才の殺伐思考の無口無表情の。」
あぁ、間違いなく母様だ。
無口かと言われると念話で話してるけど肉声は滅多にないからあってるかな?
後、表情は父様が言うには結構豊かになってるし、実際私には結構な頻度でささやかだけどふんわりとほほえんでくれる。
「えぇ。間違いなく同一人物ですね。」
「ようやく!ようやくお会い出来た!是非お名前を!」
「セニアです。で、こっちの男装の麗人がリンちゃんことレリンス。で、こっちのふわふわほわほわの男の娘が、ティーちゃんことティアーネです。私の幼馴染みなんです。」
「ほう!」
とびっきりの笑顔でそう言うといきなり私に対して片膝をついて跪いた。
気付いたら国に住んでるらしい露店のおじさんとかおばさんとか通りすがりっぽい他の騎士さんたちも同じ姿勢で跪いてる。
ちなみに、私の説明で性別と見た目が一致しない可能性があるっぽい2人のことはスルーされた。
たぶん私の家族のことのインパクトが強くて後回しにしたんだと思う。
母様のネームバリューって言うのは最強だって父様も言ってたしね。
それを見た周りの人は絶句してる。
とくにさっきまでお話ししてたお姉さんは。
「セニア様!お会い出来る日を心待ちしておりました!ようこそクラリティ王国へ!我らは、あなた様とそのご一行様を歓迎いたします!」
あ、ガチのこれガチのやつだ。
とりあえず、令嬢らしく振る舞った方がよさそうかな。
「あぁ・・一応この後、おじいさまのご兄弟の方と挨拶をする予定なんですけどお時間とか大丈夫ですか?」
「問題ありません。あなた様でしたら何よりも優先せよと伺っております。」
どれだけ母様愛されてるんですか・・まぁ、可愛いから当然だけど。
「そうですか。わかりましたありがとうございます。」
「いえ。」
「とりあえず楽にして下さい。私はただの子供ですから。」
安心させるようにふわりとほほえんでそう言うとなぜか泣かれた。
それと、他に跪いてる人たちなんて祈り始めたんだけど・・母様どれだけ笑顔を見せなかったの?
「うぅっ・・間違いなく姫様のご息女だ!姫様は幸せなのですね?」
幸せかどうかを先に聞くところを見ると本当に母様は大事にされてたんだとうれしく思う。
「はい。母様は毎日穏やかで楽しく過ごしていますよ。」
ホントに。
日々マイペースに飼い猫のごとくのんびりのびのびとしてますとも。
「それは良かった。・・あのお方は、幼い頃から大人も絶句するほどお忙しい方でしたから。・・10年前にようやく姫様とイリス様のお力なしで運営出来るようになったのです。・・あの方々の存在がどれほど大きかったのかとても実感させられました。」
「あぁ・・・」
確かに母様とおじいさまのお仕事は正直すごい。
文字通り1人で何人分とか生やさしいレベルで同時にお仕事出来るし。
母様なんて影さんを作り出したら何十人分をまとめてやってんの?って言いたくなるくらいすごい光景が目の前に広がるし。
で、母様の影響でつい癖で片手を上に上げると瞬時に騎士さんは片膝をついてうなだれる。
そして、いつも通りに頭を撫でるとすごく幸せそうにお礼を言ってきた。
「感謝の極み!」
あ、母様のことを知ってるから母様の癖も知ってたんだ。
だから、速攻で普通にそう言う体勢がとれるんだね。
ってことは、母様の撫で癖は昔からですか。
「あの先輩・・で、この子たちって何者なんです?って言うより、早く証明書を出してもらって行ってもらいましょうよ。列が伸びてますよ?」
さっきまで静かだった他の門番さんがそう言うとなぜか今まで私とやりとりしてた騎士さんがその人を殴り飛ばした。
「馬鹿野郎!!このお方をどなたと心得るか!」
あれ?
そのやりとり、翠の昔話で似たような言い方をする人がいたような・・。
「このお方は、セニア・クラリティ・エトワール様。かの有名な、クテン様と名高い、フリージア様のご息女であらせられるぞ!!」
全員「!?!?!?」
声なき悲鳴とはこのことを言うのだろうか?
と軽く現実逃避。
それと思った通り、このなんとかが目に入らぬか!とか言う奴だ。
「え・・うそだろ・・」
「マジかよおい・・」
「セニア様を嘘つきというか!!」
なぜか、エキサイティングしてる騎士さん。
「セニア様、ギルドカードはお持ちですか?」
「挨拶をした後で作る予定なのでまだ・・」
「と言うことは、儀礼剣を?」
(コクリ)
さすが、この国の人は優秀だと母様に聞いてたとおりだ。
すごく話が早い。
「大変申し訳ございませんが、黄昏様の背の上で儀礼剣を抜いて鞘とともに掲げては下さいませんか?出来れば紋章が見えるように」
「良いですよ?」
軽く脚に力を入れてひょいと黄昏の背に乗り、儀礼剣を抜刀して上に高く掲げる。
そこには、おばあさまの名と同じペチュニアの花の紋章が描かれている。
それをみた周りの人たちは絶句する。
「そ、その紋章は・・」
「そうだ!この紋章は、かの有名な、姫様であるクテン様のお母上でもある流星姫、ペチュニア様の名と同じペチュニアの花の紋章!つまりは、このお方は、エトワール公爵家令嬢であらせられるぞ!これでも嘘と申すか!!不敬罪として速攻で始末してくれる!」
むしろ、不敬罪云々の前に騎士さんが始末したいだけだよね?
私怨って言うか、母様が大好きすぎて。
全員「・・・」
「とりあえず、落ち着いて下さい。」
「はっ!失礼いたしました。」
「いえ。とりあえず、通っても?」
「はっ!どうぞお通り下さい。本日お泊まりの場所はいかがいたしましょうか?もしなければ、手配することも城へ部屋を確保することも可能ですが。」
「母様から、スリープシープがいるところに昔使っていた家があるからそこを使えと伺っているのですがわかりますか?」
「もちろん。陛下の指示により定期的に部屋の手入れをしておりますのでいつでも利用可能となっております。」
「そこを使えるようにしていただけます?」
「はっ!ご命令通りに。ご案内いたします。まずは城へ?」
「お願い出来ます?」
「喜んで!こちらへどうぞ。」
満面の笑みで案内してくれることになりました。
「とりあえず、ティーちゃん、リンちゃん行こう?」
「・・そうだね。」
「ねー、あ、お姉さんお話面白かったよ、じゃーねー」
「・・・え、えぇ。」
すっごい顔が引きつってる。
ついでに言うと足腰がぷるぷるしてる。
「セニア様、あの者は?」
「先ほどまで世間話をしてました。とても、優しい方ですよ?」
「ふむ、なるほど。では、ギルドランクを調べそのランクにそった我らが城のメンテナンスの依頼を頼もうか。」
「よろしいので?」
「セニア様がよしとおっしゃるのであれば問題ありません。」
なんか、母様を相手する信者さんたちみたいになってる。
後お姉さんにすごい指名依頼が飛んでくる可能性が高まったけど依頼があるのは良いことだし気にしないで良いよね!
だから・・まぁいっか。
そして、騎士さんに連れられてお城に向かいました。
なんか後ろで絶句してる人がすごくいっぱいいるけど私は見えない聞こえないし~らない!
「やっぱり、セニアは貴族令嬢だな。」
「令嬢モードは完璧だよね。さすがフリージア様の娘。」
母様は頭も良いから礼儀作法もすごく事細かく教えてくれるからわかりやすいんだよね。
後、令嬢モードとか言うな。
普段からそういう風にしてると疲れるって周りが言うからオンオフを切り替えてるだけですー!
あまりそう言うこと言うならリンちゃんのおっぱい揉んじゃうぞ?
ティーちゃんは、ズボン脱がせてスカート穿かせちゃうぞ?
2人ともお外でね!




