入学式 その2
--セニア--
入学式があまりにもさっくりと終わったと思ったら、いきなりSクラスである私とリンちゃん、ティーちゃんの3人と他の入学生全員とネルさんと学園長のおじいちゃん以外の先生たち全員と戦うことになりました。
Sクラスであることを証明するために力を見せる必要があると言う理由らしいけど・・・・。
「学園長!?どうして我々も?!」
あ、先生達から抗議が。
「久しぶりに面白そうなのがきたんじゃ。お主らも入れぬと面白くないじゃろう。
わしが」
「学園長!?最後に何か言いませんでした!?」
「ぬ?ただの本音じゃ。気にするな。」
「あぁ、それならー・・・って、余計に嫌ですよ!学園長がそういう時は大抵とんでもないことになるのを知ってるんですからね!?というか、少しは取り繕って下さいよ!!」
「えぇ・・・ソンナコトアルヨ?」
「取り繕ってない!!そこは、あるじゃなくて嘘でもないって言うべきでしょう!?」
学園長のおじいちゃんは面白い人だと母様から聞いてたけど予想以上に面白い人のようです。
そのおかげで、他の先生たちは見事に振り回されてるっぽいけど。
「あぁもう!とにかく、Sクラスの3名と他全員との大規模模擬戦を開始させます!」
しますじゃなくてさせますなんだ?
で、おじいちゃんはと言うと
「そういえばセニアよ。お主の母親はな、今のお主と全く同じ状況になったとき、わしとネル以外全員を1人残らず瞬殺しておったぞ-。同時に入学したレリンス。お主の両親2人は一切手を出しておらぬ。」
そうだったんだ?
そうなの?とチラッと母様たちの方へ視線を向けるとコクリと全員が頷いた。
で、強制的に試合は開始された。
「歌で戦いのワザとなるなんて嘘に決まっているだろう!」
と、入学生の誰かがほざきだした。
「だから何?」
有象無象相手にどうして私が頭を抱えないといけないわけ?
「所詮貴様は、親の七光りだろうが!」
へぇー?
ザワリと私から濃密な威圧があふれ出し。
バチッ
私の全身を電撃と旋風が包み込み、纏い出す。
バチッ
バチッ
私の威圧が高まるのと比例してドンドン強くなる。
そして
バリバリバリバリバリバリ!!
ビュォォォォォォ!!
「ひぃっ!」
「良い度胸してんじゃねぇか。」
私の全身を風雷が纏われ、周囲を巻き込むように電撃と旋風が巻き起こる。
父様直伝の威圧を込めたどう猛な笑みへと私の表情を、纏う雰囲気すらも変えていく。
--ティアーネ--
あぁぁあ。
「あいつ終わったな。」
リンが若干遠い目をしながらそう言った。
まぁ、私も同じ意見だけど。
セニアは、自他共に認める超弩級のマザコン。
それは、どんなささやかなことであろうとも侮辱すればそれを言った人物と賛同した人物。
そして、否定しなかった人物全員が敵として認定される証となる。
で、私は2人分のかなり特殊な耳栓を取り出してリンへ1人分渡す。
リンは、受け取り、私と共に耳に詰める。
そして、私は防音と衝撃耐性、魔法耐性を込めたドーム状の結界を張り、私とリンを取り囲む。
え?
タダの耳栓じゃないのかって?
違うんだよ。
これは、耳に取り付けたときに魔力を込めると周囲の音をかき消す効果があるんだ。
それは、込めた魔力量に比例して威力が増加する。
耳栓をつければ聞こえないんだからその機能は意味がないだろうって?
そんなことないよ?
だってさ、こんな経験ない?
耳を指でふさいでても周囲の音が漏れ聞こえるのって。
故に、手動では完全なる無音の再現は事実上不可能。
と言うことは、タダの耳栓も指で塞ぐより多少はマシ程度にしかならない。
この耳栓は、そう言う部分すらも一切聞こえないようにさせるから耳栓としては最高品なんだよ。
と言うか、そのくらいしないとセニアがこれから行おうとしているモノは対処出来ず、耳がバカになる。
それに追加して結界を張ったのは、念押し。
で、更に念押しで両手で耳をリンと一緒に塞いでたら、コンコンと結界がノックされた。
音が聞こえないとしても、結界を張ったのは私だからそのくらいは軽く感知出来る。
でそこにいたのは、学園長とネルさんだった。
たぶん私たちの動きを見て何か感じ取ったらしい。
とりあえず、結界の一部を人が1人通れる程度の幅を開けて中に入れる。
そして、2人も同じく耳栓(こっちは普通の分を2人は持参してた)をつけて手で耳を塞いだ。
顔はどこか楽しそうにしてるから後ほど説明を求められる気がするけどまぁいいや。
で、セニアはと言うとスゥゥゥゥっと息を大きく吸った後、
っっ~~~~~~~~~!!!!!!!!
声として認識出来ないほどの高音・・・と言うより超音波と言いたくなるような声を大音量で学園全体に放った。
更に、電撃を纏った旋風と衝撃波が全方向にかなりの威力でまき散らされる。
耳を塞いでるからあまり聞こえないけど、私が張った結界が大きく揺らされ、学園どころか国全体が轟音と衝撃波によって大きく揺さぶられた。
おぉぅ。
かなり強めに作ったのにヒビが全体に入りそうになったんだけど。
というか、音自体は耳栓と結界で対策出来たと言えるけど心なしか頭がクラクラする。
リンも同じっぽい。
セニアのあの声は、別名”災厄歌”
純粋に肉声のみによる大声だけでも数メートル程度であれば容易く鼓膜破壊を可能とする肺活量をなにげにセニアは持っている。
それに加えて、魔力を使用した身体強化をのどと肺に行えば純粋に声のボリュームだけでも十分アップする。
そして、セニアの純粋な感情と気持ち、様々なワザが相乗効果を起こしてどんな障害も無視して脳や内臓と言った肉体の内部へ直接大ダメージを与えるまさしく災厄の歌。
それだけでもヤバいのに、衝撃波とセニアの属性魔法である雷を纏った風・・通称風雷。
アレが襲ってくるから物理的なダメージも膨大だ。
タダの風と思うべからず。
あの風は、擦ればそれだけで全身が揺さぶられ平衡感覚を失い、
直撃すればどんなに重量が重くとも踏ん張ろうとも巨大な鈍器で殴り飛ばされるかのように吹き飛ばされる。
更に電撃によって最低限全身を痺れさせ動きを阻害させ、ヘタすれば全身焦げることだってある。
更にその風を後押しするかのように別枠で衝撃波が飛んでくるから冗談抜きでヤバい。
それにおまけでかなり濃密な威圧付きだから心身ともにボロボロにさせるセニアの十八番。
このワザがあるからこそ、都で政治関係とか人員の教育に力を注ぎ日々楽しく過ごしているマルスおじいちゃん(元カタクリとかいう町のギルマスだったらしい)がセニアのことを”巻き添え系歌姫”とか”巻き込み系歌姫”と呼んでいるんだから。
その呼び方は、この惨状を見ると的確だと言える。
そして、5~10分という大声を出すにしては非常に長い時間セニアは叫び続けた。
で、チラッと父さんたちの方へ視線を向けると全員私たちと同じ特性の耳栓を耳につけてフリージア様の結界とイリス様の結晶による結界に包まれていた。
そして、平然とした顔をしているどころか、セニアの成長がうれしいのか感心したように満足そうに頷いている。
・・さすが、この国最強のファミリー。
とりあえず、セニアがふぅと軽く深呼吸して腰につけてるマジックバッグから水筒を取り出して飲み物を飲んでたからやり返しは終わったらしく、耳栓を取り外す。
「ふむ・・アレは、まさしく戦場の歌姫の名にふさわしいな。」
学園長のおじいちゃんは満足そうと言うかうれしそう。
「フリージアさんも似たようなワザを過去に炸裂させたことがあったけどそのときのと比べるとアレにプラスして物理的なダメージも追加してるからある意味ではフリージアさんを上回るワザだねぇ。」
軽くフラフラしつつも苦笑いしてるネルさんはそう言う。
というか、私たちが説明しなくてもなんとなく推測は出来てるらしい。
その辺りはさすがの一言だ。
母さんたちが何かあれば頼れと言うだけはある。
ちなみに、防御が成功した身内グループ以外の敵認定された入学生と先生たちはと言うと全員白目をむいて泡を吹きながら気絶してた。
全身ボロボロになった状態で。
で、余波でその他の観客も巻き添え事故を起こして白目むいて気絶してる。
ある意味すさまじい光景になってるけど・・
「こうしてみるとセニアの声はすごいなとしか言いようがない。」
「同意」
目の前に広がる光景はまさしく死屍累々。
「セニアの戦闘スタイルは噂に聞くモノと合わせるとフリージアとシリルの2人の割合が多いようじゃな。」
おじいちゃんは思い出すようにあごひげを弄りながらそう言う。
シリルって確か、フリージア様の弟子の1人で伝説の吟遊詩人である音の支配者だっけ?
「音の支配者でしたか?」
「うむ。お主らは、まぁ、身内が身内故に知っておったか。」
「えぇ、まぁ。都の図書館で歌が流れてますし、録音の魔道具も暇なときは良く3人で見てましたから。」
「セニアが歌を歌うようになったきっかけもその人が映った魔道具だった。」
「そうだったのかい?」
「えぇ。物心つく前からそのシリルさんの歌と踊りを見て聞いて育ちましたから。」
私たちも当然同じように見て聞いて育ったんだけど、セニアの場合はフリージア様に喜んで欲しいというタダそれだけの純粋な思いもあって余計に楽しげにキラキラした笑顔で歌い踊っていたシリルさんにあこがれを持ってたから。
密かにセニアってば、シリルさんのことを師匠と呼んでるし。
「なるほどのぉ。とりあえず、終わらせるか。」
そう言うとネルさんへおじいちゃんは視線を向けるとネルさんは頷き、声を響かせる。
「とりあえず、入学式は終了。各自怪我とかは自力でどうにかするように。んじゃ、解散。」
え?
9割以上の人数が気絶してるんだけど全員放置?
で、フリージア様たちも当然のようにスルー?
「あぁ・・・類は友を呼ぶ・・か」
リン・・。
あえて、追求はしないけど、それフリージア様の普段の行動とかがアレだからじゃないよね?
--セニア--
あぁ、スッキリした。
一応同級生になるわけだし、情けとして一撃だけで済ませたんだからありがたく思いなさいよね。
そう言えば、学園長のおじいちゃんが母様も全員を瞬殺したって言ってたけどどんな技だったのか後で教えてもらわなくちゃね。
それにしても、親の七光りとか侮辱するにもほどがあるよね?
普通なら、その言葉は親はすごくても子供はすごくないという意味だからその子供枠である私側への侮辱になるわけだけど、私になると話は別だ。
あの母様が自分の子供をキチンと立派に育て上げることすら出来ないと言いたいのか?
あ?
どんなに優秀でも天才でも子育てが出来ない、親として失格と言いたいのか?
ふざけんなよ?
そんな気持ちをたっぷりと乗せて私の技をフルに活用して全力放射しました。
まぁ、余波として端っこに構えてたり見学に来てた人たちもひとまとめにして殲滅しちゃったけど、この国は実力者の国。
それなら、私のような子供の技くらい防げって話だよね。
で、いつの間にか隣にいた我がファミリー総勢
「とりあえず、セニア。後片付けをしとけ。」
とか、父様が言いました。
「けど、父様。アレは、喧嘩を売ってきたそれの自己責任だよね?だったら、自業自得なんだから放置推奨じゃないの?」
「だが、関係ない連中も巻き添えだぞ?」
「それは、自己防衛出来なかった自己責任じゃん。それに、あの台詞を否定しなかった。・・否定しないってことは肯定した。つまりは私の敵だよね?」
敵には慈悲はない。
そう教えたのは父様だよ?
「そりゃそうなんだけどなぁ・・。」
頭をがしがしとかきながら父様が言いよどんでる。
{セニちゃん。}
母様だ。
母様は私のことをそう呼ぶ。
「母様はどう思いますか?」
{この場合は、恩を売ってありとあらゆる方面で敵に回せないようにしておくべきですよ。}
「・・つまりは、痛めつけるのも癒やすのも思いのままだからいつまでもエンドレスで痛めつけることが出来るよってアピールしろってこと?」
(コクリ)
なるほど
「そう言う考え方もあるんだ・・わかりました!」
よろしいという感じで母様は頭を撫でてくれました。
はぅぅ。
母様のなでなでは極上です。
ひと撫でで昇天し、ふた撫でで骨抜きにされます。
それ以上はどうなるのかって?
崇拝者になるんですよ?
そして、なでなでの数だけ崇拝者としての深度が高まるぅ・・いや、深まっていきます。
で、そんな私たちの会話に父様は(仮面で顔は見えないけど)遠い目をしている。
そして、周囲のメンツはと言うと
「相変わらずリアちゃんの教育は殺伐としてるというか・・いろんな意味で恐ろしいことを吹き込んでない?」
「セイ・・・それは言ったらダメなことだよ。僕たちの子だってそんな子の親友の時点で同類だから。」
「あぁ・・・」
苦笑しながら母様を眺めるユウさんと頭を抱えて苦悩中なセイさん。
そこで、更にカオスな展開に転がすのが私の母様です。
{ちなみに、セイちゃんは”冥界の魔女”。ユウちゃんは”ヴァルキリー”という二つ名で呼ばれているのはご存じですか?}
私&リン&ティー「マジで!?」
ユウ&セイ「リア!?なんで言っちゃうの!?必死で忘れようとしてたのに!」
「母上と父上に二つ名があるなんて初耳なんだけど・・」
「同じく。セイさんは女神様とか、ユウさんは都の王子様とか人に変身した精霊とか言われてるけど。」
「はいそこの性別詐欺2人!!聞き捨てならないことを言ったね!?そっちも初耳なんだけど!?」
うなだれていた2名の内、セイさんが先に復活してリンちゃんとティーちゃんの会話にツッコミを入れる。
「母上の場合は、今更だと思うのですが。」
「レリンスちゃんは何を言ってるのかなぁ!?」
リンちゃんが何を今更という感じでズバズバとツッコミを始めた。
「だって、何人不治の病で絶望マックスな人たちを片手間に治しましたか?」
「・・・」
私知りませんという感じで必死で視線をそらしてるセイさん。
「その後、お礼はいらないからそのお金で他に不幸な人生を歩みそうな人を助けてあげて欲しいという台詞で報酬をうやむやに何割の患者さんに伝えましたか?」
「・・・・」
「挙げ句の果てに、私はまだ勉強中ですからとか謙遜したのに加えて、調子に乗った連中を心身ともにボロボロにして真人間に強制改造して被害者を何人助けましたか?」
「・・・って」
「ん?母上どうしましたか?」
「だって!だってだって私は癒やすこと以外出来ないし、癒やすことは得意だから治しただけだし、こっちだって生活があるから治療費は食事1回分のお金だけ受け取ってるにもかかわらず、とんでもない額のお金とか宝石とか持ってくるんだよ!?
しかも、みんな地元で熱のこもった演説をして尾ひれどころか背びれに尻尾までつけたような賛美をしまくるんだよ!?わかる!?最近患者さんの7割が私の本名であるセイって名前を知らずに女神様としか呼ばなくなったんだよ!?さりげなく名前呼びをお願いしても、敬語も尊敬語もいらないって言ってもことごとくスルーされて女神様一択で、他の呼び名は全部聞かなかったことにするんだよ!?
だから、余計なお金は慈善活動に回せばみんなハッピーって思って言ったのに私の株だけ上がるし、それで救われた人もなぜかお金出した人じゃなくて私を崇拝するし!!!
この間だって、家のドア開けたらドアの前に貢ぎ物の山が3日に1回は必ずあるんだよ!?最近その頻度も高まってるんだよ!?誰が渡したかわからないから返品も出来ないし、横流ししようにも申し訳ないからリアちゃんとかのご近所さんたちにお裾分け的な感じで分けれそうなモノは分けてるのに出来たのがせいぜい2割なんだよ!?わかる!?最近内に転がってる複数のマジックバッグは全部その貢ぎ物を収納するだけのアイテムになってるんだよ!?
ユウなんて、マジックバッグごとに種類分けするし、この間だってそれ専用の倉庫を手配しようかって真顔で提案し出すんだよ!?タダでさえお金を使う頻度が減ってるのに手元で無駄に増えるし、それを募金とかでばらまいても全部貢ぎ物として他のブツに変換されて戻ってくるんだよ!?
どうすれと!!!」
・・・・・
ものすごくストレスがたまってたようです。
で、全員があまりに熱の入ったセイさんの意見に軽くどん引きしてる中、すべてをスルーするのはさすが母様です。
{何を当たり前のことをおっしゃるのですか?}
「リアちゃん!?なんでそんな当然のことを言ってるの?って不思議そうに可愛く首をかしげてるの!?」
{そう言うモノは堂々と、都の運営資金に回したり他の地の募金に丸投げすれば良いじゃないですか。何をどう扱おうが自分の勝手でしょう?}
「え・・それでいいの?」
{何も使わずに手元に放置されるよりはマシと思いますが。そうやって、私が売っているモノや都は出来たんですよ?}
「そう言えばそうだった!元々あの都はリアちゃんたちだけで作り上げたんだった!!と言うか、9割は自作だった!!」
都を囲む壁とか結界とか精霊樹やらなんやらかんやらほとんどが母様たちのDIYだそうです。
そこに住む人たちだって元々何かしら被害にあり、母様がお持ち帰りしてそのまま居着いた人たちらしいし。
おまけに、母様が売っている刺繍入りのハンカチやタオルなども元は趣味で作ったのを個人的に売り出してたのが初めらしいし。
今では、旅に出るときは必ず持っておくべき必需品という名の究極のお守り扱いされてるけど。
むしろ願掛けで、それらにお祈りを捧げる人すらもいるとか。
で、そんな母様によるツッコミでセイさんは言い返す気力と体力を使い果たしたらしくがっくりとうなだれ、ユウさんに慰められてました。
そして、そんな2人をスルーして話を続ける母様はやっぱりすてきです。
好き。
むしろ愛してます。
母様らぶ
{セイちゃんの二つ名の理由はどんな怪我や病を治してしまうので、生かそうが殺そうが思うがままという意味がこもってます。
そして、ユウちゃんの二つ名は見た目のかわいさと剣技のきれいさからです。}
なるほ・・ど?
「アレ?セイさんのはわかったんだけど、ユウさんのがよくわからないです。」
ユウさんは、柔らかい笑みが似合う美青年です。
それのどこが可愛いに繋がるんだろう?
幼い頃は美少年だからとか?
{見ていただいた方がわかるとお思います。}
そう言って、母様は1枚の写真を見せてくれました。
そこに映っていたのは今と違って黒い髪で黒い天使の翼のない母様と同じくらいの背丈のふわふわの黒髪の美少女と剣を持ったボーイッシュな美少女。
母様は黒髪でもやっぱり可愛い。
黒髪だと、イリスおじいさまよりも写真で見たペチュニアおばあさまに超絶そっくり。
むしろ幼さ以外に見比べることが出来ないレベルでそっくり。
「わぁ、幼い母上だ。幼さが加わっただけで今とほとんど同じだ。」
「フリージア様の髪が黒い・・。進化前は黒かったってホントだったんだ。」
「と言うより、このボーイッシュな美少女は?」
なんとなく想定がついてるけどあえて聞いてみる。
すると母様はアレとユウさんを指差す。
で、ユウさんは僕知りませんという感じで必死に視線をこっちに向けない。
そこで、さっきまで爆笑してた学園長のおじいちゃんとネルさんがひょいと隣から写真をのぞき込んできた。
「うわぁ、懐かしいなぁ。学園長。これ入学して半年くらいの頃じゃないですか?」
「そうじゃなぁ。フリージアやセイともかく、ユウは密かにファンクラブが出来るほどじゃったのぉ。」
「えぇぇぇ!?」
「マジで父上!?父上、本気で美少女じゃないですか!」
「イリス様と並ぶ性別詐欺がいたとは!」
口にはしないけど、性別詐欺は本気で驚いているリンちゃんとティーちゃん2人は人のこと言えないと思う。
「あぁ・・とりあえずセニア。色々とカオスなことになってるがさっさと治してくれ。」
転がってる連中が邪魔だからと父様が言う。
「はーい。」
父様・・最後に言ったその台詞が本音だよね?
その後、私は歌に癒やしを乗せて歌い、最低限動ける程度に心身を治しました。
まぁ、癒やしは私の歌というかアイドルとしての副産物みたいなモノだから完全回復は無理。
せいぜい精神的な部分だったら出来るけど肉体的な部分は無理。
その辺りに関しては、鍛錬の延長戦と言うことでリンちゃんが治しました。
で、あの暴言を吐いた人だけど、母様の信者がどこからともなく現れてその人たちをどこかに引きずっていきました。
その後、どうなったのかは知らないけどその人たちの知り合いがどん引きするくらい真人間になってモb・・・ゲフン、普通の人になってました。
「それにしてもお主ら、ひさしぶりじゃな」
{お久しぶりです。10数年ぶりですか?}
「そのくらいじゃな。・・・にしても、いつ見ても幼女じゃなお主。」
まじまじと母様(満面の笑みのアルナさんに抱っこされてる)を眺める学園長のおじいちゃん。
「リアちゃんは、冗談抜きであの頃から全く体格すらも変化がないからなぁ。」
「で、アルナはアルナで相変わらずじゃが・・飽きないのか?」
「飽きるわけないじゃないですか。」
何言ってるのこの人とでも言いたいような目で真顔で即答するアルナさん。
って、その感じだと昔から母様ラブだったんですかこのメイドさん。
気持ちはわかるけどね!!
そこでふと思い出したことがあり、おじいちゃんに聞いてみた。
「そう言えば、アルナさんはいつからこんなことになったんですか?」
「む?本人から聞いておらぬのか?」
それに関しては、結構前から聞いてはいたんだけどねぇ・・。
「聞いたんですけど、結果として帰ってきた返答は母様溺愛物語だけでした。」
学園長&ネル「あぁ・・」
「な、なんですかその残念な人を見つめるような目は!リア様が可愛いのは当然じゃないですか!つまりは愛でる一択でしょう!?」
そこは否定しないけど、アルナさんと母様の出会いの物語を聞きたいです。
「否定はせぬが、今はお主がフリージアとであった頃のことを話せば良いんじゃが。」
「なんだそっちですか。」
そっちも何も最初からそう言ってるんですけど・・。
口にはしないけど
「まぁ良い。せっかくじゃわしとネルが語ろう。」
「俺はフリージアさんがここに通ってた頃からSクラスの担任だったんだけどね。アルナさんは当初は体内で魔力を練る以外魔力を体外へ放出させる類いが一切出来なかったんだ。」
「そうだったんですか!?」
「うん。かなり珍しい症状だったらしいよ?なんかフリージアさんが言うには全身には目に見えないほど小さい穴がたくさんあってそこから魔力を外に放出させてるんだって。その穴が全部ふさがっていて外に魔力が出て行かなかったらしいんだ。」
「そう言う症状もあるんですね。」
リンちゃんが興味深そうに頷いてる。
「そこで、魔力を外に放出出来ないのに加えて、自身の属性も不明だったから実践では武器を使った接近戦以外出来なかったから当初は落ちこぼれ扱いだったんだよ。その分成績は優秀だったんだけどね・・・」
どこか言いにくそうにアルナさんを見つめるネルさん。
「大丈夫ですよ。続きは私が話します。」
苦笑しながらアルナさんは語ってくれた。
「私、虐められてたんですよ。魔法が扱えない落ちこぼれって。」
「え!?」
「想像がつかない。」
「うんうん」
一定の範囲内であればどんな相手も意のままに操ってしまうのに加えて、メイドさんとしても非常に優秀な護衛としてはこの国最強とも言われているアルナさんが・・・信じられない。
けど、魔法が扱えないなら・・わからなくもないのかな?
「え?この学園ってそういうのは事前につぶしてませんでしたか?」
「・・忌々しいことに無駄な知恵をつけた屑共が巧みに隠してたんだよ。」
どこかいらついた感じで父様が言う。
「で、そんないじめの光景を発見したフリージアさんが1人残らずさっきのセニアさんが使ったワザと似たようなので全員瞬殺したあげく、そいつらの関係している場所にエトワール公爵家に喧嘩を売ったって台詞付きで脅迫状が送られて、アルナさんはフリージアさんにお持ち帰りされたんだ。」
後の流れは言わなくてもわかるでしょ?とネルさんは言う。
「なるほど・・。」
その後は、母様の元で鍛えられ、魔法が使えない症状も治療され、虐めてた人たちを真正面から叩きつぶしたんだね。
で、命の恩人であり、雇い主であり癒やしの権化である母様を崇拝して溺愛したあげく、今のアルナさんが出来上がったんだね。
「なるほど・・それなら、アルナさんがそうなったのもわかる気がする。」
「僕も同じ立場ならそうなる可能性は非常に高い。・・フリージア様、その症状はどのようにして治したのですか?」
治療だから気になってたリンちゃんが訪ねる。
{全身のその穴を私が体外から魔力を流し込むことで穴を広げたんですよ。ただ、ものすごい激痛が走るのでその痛みの緩和をセイちゃんに協力していただきました。}
「なるほど。」
「とりあえず、今年から俺が担任になるからよろしくね。」
私たち「よろしくお願いします」
なんだか楽しい学園生活になりそうだ。
「そういえば、お主らはなぜに全員制服を着とるんじゃ。イリス様まで・・」
「え?体格だけならリアちゃんは混ざってても違和感がないよねって話になってね。同じSクラスの制服はあるしどうせなら紛れ込んだらどのタイミングで気付くかなってイタズラを思いついたんだけどね」
「そんなことするなら全員Sクラスの制服は持ってたので試しに全員で着ていこうかってなんだんすよ。」
「あぁ・・類は友を呼ぶか。」
ネルさんは苦笑して、学園長は笑ってました。
あぁ・・基本まじめなんだけど何かしらの拍子に遊びに走るんだよね、私のファミリーって。
私自身も同類だから否定はしないけど。




