小太りな女性
・・・ん?
何で?どうして?
どうして私、こんな所にいるの?
「和宮様!」
私はびっくりして、
「誰よアンタ!?」
とかなり失礼な言葉を浴びせてしまった。
「これ、和宮様!帝の娘として、それは恥じるべき御言葉っ。」
帝の・・・娘?
何言ってんの、この女の人。
えっと、中年で小太りでいかにも、「学」って感じ(語彙力)。
詳しく言えば、中年の教育係って感じかしら。
「ねえ、カレー食べたいんだけど。」
「か、かれえ?何ですかそれは?まさか、あの、ぺるりの人々が食べる物?」
「ぺるりじゃない、ぺりる。」
私が言い返すと、中年の女性は驚いた顔をして言った。
「まあ、和宮様っ。一体誰がぺるりなんて野蛮な事を・・・」
そこへ、若い女性が通りかかった。
中年の女性も、若い女性も、綺麗な着物を着ている。
「そこのあなた、聞いて。」
若い女性はびっくりしてこちらの方を見る。
「和宮様ったら、ぺるりみたいな野蛮な事を・・・」
「まあ、梅様ったら。ぺるりではなく、ぺりるでございましょう?そうですよね、和宮様。」
「はい。ぺりるは浦賀の港に押しかけ、強制的に日米和親条約を結んだのです。」
「まあ、御立派。私の子より相当賢いわ。将来が楽しみね。きっと有栖川宮様もお喜びになられるのでしょう。」
ありすがわのみや?
誰だろう?
「有栖川宮って誰?」
「・・・」
その場にいた一同は、皆、口をぽかーんと開けていた。
「和宮様っ、御自身の婚約相手に向かって何をおっしゃいます!?」
こ、婚約相手?
「嫌よ、私見ず知らずの奴に嫁ぐなんて無理。」
「・・・和宮様っ、いい加減にしないと怒りますよ。」
バカ。
もう怒ってんじゃん。
「有栖川宮って変な名前ね。」
「・・・和宮っ、ふざけるな!」
・・・ついに言ったなこいつ。
ふざけてんのはお前だよ。
見ず知らずの奴に嫁ぐとか、気ィ狂ってんだろうか。
「ふざけてんのは、お前だよ。見ず知らずの奴に嫁ぐとか、気ィ狂ってんの?婚約は破棄。婚約者は私が決める。」
「・・・もういいわ、あんたたち、もう戻りましょう。」
中年の女性は、失望して去って行った。
「ふう。」
邪魔者がいなくなったとばかりに、私はため息をつく。
頭から血が下がっていくのを感じた。