1‐7
「…。」
はい来ましたお通夜モード!!デミアンさんすぐお通夜になーるー!!なんだよ!!幽霊さんがはがれるタイミングほぼ確定しただけ十分じゃん!!
…まぁ、まず私たちはデミアンさんのタブレット使って色々調べてみたが、あそこの地名がドレ工場跡であるということ以外にはどうやらもともと色々ヤバめの場所だということしかわからなかったので、私たちは午後六時ごろに幽霊さんがいないことを確認して家からでた。で、あの不気味なところまで行ってきたんだけど…なんもないんだよねー!!そもそも聞き込みしようにもあそこらへん全然人いないからちょっと離れたとこに住んでる人にしか話聞けないんだよね。精々掴めた情報でちょっとでもあの幽霊さんに関係ありそうだなーという情報は、
・ここのところ、女の叫び声が夕方ごろから夜にかけて聞こえてくる時がある
・ここ不気味だよね
…まぁ、これだけだった。結構頑張って聞き込みしたんだけどねー…。
「まぁ、明日なんかあるかもですし。」
「…こんなに聞き込みしたのに…?」
「まだ聞き込みできてない人もいますから。」
「ふん…。」
こんなに聞いてここまでないかーって感じだけどね。でも、調査なんて毎回こんなもんだよ。
とはいいつつ、現地調査以外もカラスなんかしてた気がするんだけど…なんだっけなー。
[昨日も再び女児が失踪しました。これまでの事件との関連性を考えつつ、現在も警察による捜索が続いております。…]
…あー思い出した。だけど、女児失踪のニュースをラジオで聞いて思い出すとはなんと嫌な思い出し方。というかまた失踪したの?そうだ、カラスは知り合いの探偵とか警察とか使ってたんだった。そうだそうだ。でもなー、カラスの知り合いでも私の知り合いじゃないし、しかもどっちもあの時点で結構おっさんだったからもう死んでる気もするんだよなー。だからって私の個人的な知り合いの警察も探偵もいないしなー。
「話は変わりますけどデミアンさん、警察とか探偵の知り合いとかいます?調査手伝ってもらったりしたいんですけど。」
「…いるわけないだろう。」
ま、だよねー。浮気調査とかしてればワンチャンと思ったけどさ。そういう系だったら色々巻き込まれてそうだし。
「とりあえず、まぁ明日も頑張りましょう。」
「…。」
「明日のために寝ましょう、ね?」
デミアンさんは私の言葉には反応せずにただ地面を見つめている。…どうしたのだろうか?いつもだったら私の言葉を無視こそすれなにかしらの反応はするのに。
「デミアンさん?」
「…僕は、本当にあいつから解放されるのか?」
「もちろ、
「本当か?本当なのか?こんななにもわからなくて、なにも進まないのに。君は幽霊は見えないし、霊力だってない。そんなので本当に僕のことを助けられるのか?ただ、金だけしぼりとって金がなくなったら僕のことを追い出そうと思ってるんじゃないのか?ただ利用しようとしてるんじゃないのか?本当に…本当に君のことを僕は信頼していいのか?君は僕のことを助けてくれるのか?」
デミアンさんは苦しそうに肩で息をしながら次から次へとこぼれる涙を拭いもせずにこちらを見つめている。救ってくれ、信じさせてくれとその瞳がただただ私に訴えかけている。
…そっか、そうだった。いつも依頼に来る人は追い詰められていた。みんなカラスに縋って今にも泣きそうだった。デミアンさんは気絶はするけど、なんだかある意味落ち着いていたから平気なのだと勝手に思い込んでいた。そんなわけがないのに。それに…私に霊力もなにもないなんてもっと不安だろう。
依頼してもらったのに不安にさせるなんて最悪だ。私は彼を安心させてあげなければならない。そして、彼のことを守り依頼を成し遂げる義務がある。
「…あなたのことは必ず私が守ります。依頼も必ず成し遂げます。…だから今日は体力をつけるためにも早く寝てください。」
そもそもさ、今日みたいに依頼主と危険な場所に行くって結構まずいよね。昨日はたまたまデミアンさんが走っていった先があそこだったから仕方ないけど。明日からは私一人で行ってデミアンさんはここで休んでもらおっと。…まぁ、私一人だと幽霊もなにも見えないからちっとなにか見逃すことぐらいはあるかもだけど、聞き取り調査は私一人でも十分だろう。ある程度固まったらデミアンさんを連れていけばいい。
「…本当に君のことを…信じていいんだな?」
「はい。」
深く頷きデミアンさんの手を両手で包み込むと、彼は少し落ち着いたようで何度か瞬きを繰り返すとやがて無言で私の手を振りほどきベッドへとそくさと向かっていった。
そして私に背を向けて寝転んだと思ったら、消え入りそうな声で一言「先ほどはすまなかった」とだけつぶやきその後動かなくなった。どうやら寝たらしい。
「…さーて、どうすっかなー。」
私は一応知識はある。実は魔物の方が得意だったりするが、まぁ一応幽霊もある程度はわかる。
だが、今回の幽霊結構イレギュラーな気がするのだ。なんたって塩も効かないし、他も幽霊にある程度効くものを試してみたりもしたのだがまったく効いている様子がない。…もしかしてあの幽霊さんは魔物?…まさかなぁ。でも一応退魔の札をつかってみよっかな明日。
「あの幽霊さん、事件にでも巻き込まれたのかな…。」
血まみれだしその可能性が高いと思うけど…どうなんだろう。とにかく今のままだと情報が少なすぎるから警察とかの知り合い欲しいなぁ…。
そんなことを考えながらいつの間にか意識を失っていた私は正真正銘警察の知り合いの存在を綺麗に忘れていたのだった。
* * * *
「おっはよぉー☆」
朝、目を覚ましたらそこは雪国でした。…正確に言うと視界が真っ白でした。
というか今の声は…
「ひぃいいいいい!!!また来たのかぁ!!!!帰れ!!刑事!!」
最近ちょっとこないなと思ったら!!!というかなんで勝手に家に入ってるんだ!!というか顔が近い!!
「久しぶりだね、カツオちゃん☆」
なんでこの男は私を魚介類にしたがるのか。というかその名前で呼ばれるくらいだったらワカメちゃんの方がいい。いやそんなことはどうでもいい!
「本当に帰ってください!困るんです!!」
「あれぇ、そういえばなんでベッドで寝てないの?運んであげるね。一時間後に逮捕するからそれまで寝てていいよ。」
ダメだ。こいつは私の話を全く聞いていない。いや待て勝手に私を持ち上げるな!なんで私が連行される宇宙人みたいなポーズをして運ばれなきゃならんのだ。いやそもそもあれ一人でやるもんじゃないし、腕痛い痛い!!ちぎれるよ!!
とか思ってた私はベッドの上の大問題の存在をすっかり失念していた。
「えっ、うぉっ!?なにが、
「え~、この子だれ?」
あー!!!忘れてたよ!!デミアンさんの存在!!なにこの見た目だけ修羅場みたいな構図!!すげぇ嫌だ!これどっちにも誤解されるやつじゃん!!
「デミアンさーん!!助けて!!」
「え、ええ…?」
「早く!!」
「あ、ああ。」
デミアンさんは寝ぼけているのかなにかを勘違いしているのか、まったく戦うつもりのなさそうなよくわからない構えをベッドの上でとっている。
「この子君の彼氏かなにか?」
「違います!」
「よかったぁ☆じゃあ心残りなく逮捕されてくれるね?」
嫌だよ!!心残りあるよ!!まだステーキ食べたいし、カレーだって食べたいし、家でごろごろしたいよ!!
「逮捕…?」
「違います!!誤解ですから!!」
デミアンさんその「そういう趣味があるのか…」みたいな顔やめて!!そういうプレイじゃないから!!マジで逮捕の危機だから!!
「とりあえず、ベッドあいてなかったからこのまま署まで連行するね。」
「あ、ベッド…。」
うわぁー!!誤解を生むような発言やめろ!!あとデミアンさん「カップルの邪魔しちゃったな…」みたいな顔マジでやめて!!本当に違うんだよ!!
「ベッド…大丈夫ですよ。僕はキッチンとかにいるんでお二人で楽しんでください。」
だめだ!デミアンさんの勘違いが止まらない!私はこの男と二人でなんか楽しみたくない!!そもそも楽しむもなにもリアル逮捕だから!!
「いいよいいよ。もういっちゃうから。」
なにもよくないよ!!デミアンさんも安心したようにベッドに座らない!!
「ちょ、ちょっと待ってください!!腕が痛いんです!!せめて持ち方変えてください!!」
ほら、置けよ!!地面に置いたら私はそのままトイレまで逃げ込んでやる!!
「えー、魔物なのに。ま、いっか。」
そういうと刑事は私の腕を上へぐいっとひっぱり、その反動で持ち上がった私の体をガシィっと掴んでそのままお米さんだっこへと移行した。いや、筋力やばすぎだし腕めちゃくちゃ痛かったんだけど!!
腕の痛みに小さな悲鳴が耐えられなかった私をみて刑事はにこぉっとすごくいい笑顔を向けた後、そのまま玄関へと輸送しはじめた。
「歩きます!!歩きますからこれはやめてください!!」
「逃げるでしょ、君。」
その通りでございます。でも、これはマジでいやだ!!離せ!!
「…お、おい君!!大丈夫なのか!!?」
これまで事態を呆けたように見ていたデミアンさんだったが、今更慌てたように声を上げ始めた。
大丈夫じゃないよ!!さっさと助けろ!!
「外はまずいんじゃないか!!?」
あ、ああー!!!忘れてた!!幽霊さん!!どうしよう!!今いる時間帯だよ!!だって朝だもん!!どうしよう!そんなこといってもこの刑事は止まるような男じゃない。
とか考えている間に玄関はもう目の前だ。え、え…もう私マジ死んだかもしれん…。
「デミアンさん…相談所のこれからは任せました…。」
「あきらめるなー!」
昨日決意表明したばっかりなのに…。ごめなさい…。私はそういう人間です…。
「なーんかさ、このドアの向こうって嫌な気配するよねぇ。」
と、止まっているだと…!?この暴走刑事が…!!?
「うーん、行きと同じように別のところから帰ろっかなぁ。」
別のところ…?え、玄関は一か所のはずで…あー!!窓が!!!窓が割れている!!これマジで警察がすることじゃないよ!!むしろコソ泥とかの類だよ!!
「け、刑事さん!!信じてくれないかもですけど!!」
「なぁに?」
「今、玄関の前に幽霊がはりついているんです!!今、その幽霊が原因でそこにいるデミアンさんが困ってるんです!!今その調査の協力してて!!」
「ふぅーん。で?」
「今私がいなくなっちゃうとそこの人困っちゃうんです!!だからまだ逮捕しないでださい!!もしこれ解決したら必ず自首しにいくんで!!あと、私普通に今この家から出たら幽霊に襲われます!!」
自首なんかするわけないけどな!!
「へぇー。調査かぁ。」
どうだ…!!頼む!!
「外に出ると襲われる、ねぇ…。だったらどうして昨日と一昨日の夕方外に出てたの?」
ひぇっ、なんで把握してるんだ!!
「午後六時から午後八時の間は幽霊さんが消えるんです!!!だからその間を狙って出かけてるんですよ!!」
「ふーん。そんな大切な外出可能時間になんでわざわざドレ工場跡に?」
ヒェッ!?そこまでバレてんの?というかこの人私たちの行動把握しすぎじゃない?マジでなんかGPSつけられてる気がするんだけど…。
「…私にGPSとかつけてますか?」
「…まさか☆」
いや今の間は絶対つけてるやつだ。今度探しておこう。つーか本当にこいつやべぇな。なんでそんな私を逮捕することに執心してるんだ。
「あそこ、僕たちの間では有名なところだよ。あそこの工場跡、もう誰もいないけどちっちゃな町みたいになってるでしょ?あそこひと昔前まで犯罪者ばっか住んでる犯罪の温床だったんだよ。あ、殺人とかってよりはお薬とか銃刀法に違反しちゃったりするようなものが一杯売ってる感じの。だけど、一回大規模な捜査がはいって、そこにいたやつらみんな逮捕されたからもう誰もいないんだよねぇ~。」
刑事はさっきの話を誤魔化すように早口で一気にしゃべった。というか、ヤバめの土地だというのはネットに出てたけどお薬とかはじきちゃん系だったのか。というか、こいつそういえば刑事だったわ。やったね!警察の知り合いいたよ!!
「でも私あそこで女の人の声を聞いたんですけど…。本当に誰かまだ残ってたりしないんですか?」
「近所の人の声じゃない?」
いや、あの声はそんなもんじゃなかった気がする。どちらかといえばゆうれ…
…そういえば、
「刑事さん、玄関のドアのすりガラスのところ見てみてくれませんか?」
「え~。」
刑事さんはそういいつつも普通に玄関のドアへと目を向ける。ククク…これで…
「なんにもないけど?それがどうしたの?」
「えっ、すりガラスのところ赤いの見えません?」
「みえないよ。」
え、ええー!!!?そんなことってある!?霊感のあるデミアンさんとまぁまぁ長めの時間一緒にいる&今も一緒にいるのに見えないだと!!?もしやこれは霊感0人間!?えーそんな人間ってありえるの?
「じゃ、そろそろ大人しく署まで
「あ、あそこで度々女の人の悲鳴が聞こえるらしいですよ!!」
「えーなにそれ。なんか事件でもあったんじゃない?」
悲鳴があがるような事件が度々あってたまるか!!
「なんかあったら困りますし、午後六時から一緒に見に行きませんか!!?」
なんでデートのお誘いみたいになってるんだ…!!切ない…!!デートなんかいっぺんたりともいったことないのに…!!
「えー…。」
「お願いします!!その後はおとなしく逮捕されるんで!!」
「…仕方ないなぁ。」
となんとか私は今すぐの逮捕はどうにかして回避したのだった。




