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君の騎士 ~君を守るために~  作者: 無乃海
第一幕 名栄森学苑1年生編【3部 秋の巻 編】
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85話 体育祭が終わって

 未香子と萌々花の対立した裏側のお話です。

内容的には、81話の裏ではどうなっていたのか、というものになります。

前半が第三者視点、後半は萌々花視点となっています。

 体育祭が終了後、Aクラスの生徒達も皆、自分の荷物を持って、教室に向かって歩いていた。大勢の生徒達が、一斉に教室に向かい出した為、ケーちゃんが気付いた時には、未香子(みかこ)の姿が見えなくなっていた。


 「あれ?未香子ちゃんが居ないよ?私、ちょっと探してくる。」

 「待って。ケーちゃんの荷物は、私達が持っていくから。」


ケーちゃんが心配して、未香子を探しに行こうとすると、吉乃(よしの)がケーちゃんの荷物も持っていくと言い出し、勢木(せぎ)も同様にうんうんと頷いている。確かに荷物を持っていると、探すときに走ったりするから、邪魔になる。そうじゃあ、と厚意に甘えて、ケーちゃんは荷物を2人に預けて、校舎とは反対の方向に1人走り出す。


運動場に戻ったものの、未香子の姿はなかった。それならばと、校舎の裏庭の方へ行ってみる。するとそこには、未香子の()()()()()()、女子生徒の姿がある。

あれは…と思ってよく観察すれば、彼女はE組の(いく)ちゃんの親友だ、と気が付く。

然も、2人は何だか様子が、おかしかったのだ。これは…揉めそうな予感?!


ケーちゃんは慌てて、部活のある建物の方に向かう。確か…北岡君は、部長と一緒に部室に向かった筈だったわ。先程、体育祭で走った時よりも猛ダッシュで、北岡君を呼びに行く。一刻も早く…何とかしないと…。2人が揉めている所を、他の誰かに見られたら、それこそ学苑中が大騒ぎになるだろう。

そのぐらい、今は…()()()()()()()()()()()が、注目されているのだから。


あの2人を止められるのは、()()()()()よ!…そう思いながら、ケーちゃんは走って行く。もうすぐ部室だという所で、部長と夕月(ゆづき)が教室に向かって歩いていた。

ケーちゃんはハッとした後、「北岡君!」と大声で叫ぶように、呼び止めた。

夕月がすぐに気が付き、ケーちゃんを見た途端に、一瞬にして顔を強張らせる。ケーちゃんが簡潔に説明すれば、「知らせてくれて、ありがとう。」と、言うが早いか…走り出して行く。そしてケーちゃんも、夕月の後を追った。部長も2人を見送った後、生徒会長に報告を入れようと、()()()の為にと動き出す。


夕月が辿り着いた時には、既に未香子はケンカ腰の口調で、物凄く怒っていた。

相手の萌々花は一見して、落ち着いているようであったが、未香子を煽るような事ばかりを言っている。夕月は、2人から少し離れた所で立ち止まっている、その人物に気が付くと近寄って行き、彼女の肩にそっと手を置いた。肩に手を置かれた女子生徒は、ハッとしたように息を呑み込んで、夕月に助けを求めるように、困惑した顔で見上げて来た。…あれ?…彼女も、郁ちゃんの友達だ。確か…鳴美さんだったよね?ケーちゃんはそう思いながら、夕月の後ろから黙って見ている。

夕月は鳴美に向かって、そっと…しかし力強く頷き、それからゆっくりと2人の方に歩み寄って行った。


2人はまだ…激しい言い合いをしていた。一見すると未香子が激情して、1人だけ感情を丸出しにしているみたいだ。しかし…よくよく観察すれば、萌々花の方も、未香子の感情を煽っており、自分が言っていることを正当化し、自分勝手な感情を振り撒いていた。つまり…彼女も平静ではない。鳴美は…痛いほど理解していた。

夕月が現れた時、鳴美は咄嗟に…救いを求めてしまった。萌々花を嫌わないで欲しい…と。まるで…肯定するように、力強く頷いた夕月を見て、萌々花を嫌うことはないと思った。ホッ…として息を吐くと、気が抜けそうになった。そして、鳴海もケーちゃんも…成り行きを、ただ見守っていた。


萌々花の方が先に、夕月の存在に気が付く。この時の未香子は涙を瞳に浮かべて、怒りと悲しみで身体全体を震わせていた。…不味い、私、未香子さんを、ここまで怒らせてしまっていたの?…一瞬で…冷静になり、熱が一気に冷めていく。

未香子さんを泣かせてしまった私のことを、北岡君は…怒るかな……?


夕月は、未香子の肩を抱くようにして、「帰ろう」と声を掛けた。彼女を誘導するように肩を抱いたまま、萌々花には何も触れずに、萌々花の横を通り過ぎて行こうとして。萌々花は唯々…焦り、「北岡君!」と声を掛けても、何と言っていいのか分からなかった。そして…夕月からは、()()()()()()言葉が返って来て。

萌々花は…言い訳すら聞いてもらえず、ただ2人を見送るしかなかった…。






   ****************************






 私は、体育祭の借り物競争で、未香子さんに指名されて、舞い上がっていた。

これで彼女とも仲良くなれると、思い込んでいたのだ。しかし…()()()のだ。

肝心の借り物競争のお題が、『ライバル』だったのだ。紙に書かれたその文字を読んだ時、ショックだった。…あれ?…何に対しての…『ライバル』なんだろう?


未香子さん本人に、どうしても確かめたくなり、居ても立っても居られない状態でいた。体育祭の終了後、ナルちゃんと郁ちゃんと一緒に、教室に向かう。その途中で、1人で歩いている未香子さんを見つけてしまい、気持ちが抑えきれなくなり、裏庭に向かっている彼女を追いかけた。そこで声を掛け、未香子さんの前に回り、彼女の行く手を阻んでまで…。()()()()()()()()()、知りたくて仕様(しょう)がなくて。

彼女を無理矢理、呼び止めたのだ。


彼女は…とても疲れている様子だった。いつもの私が、こんな姿を見ちゃったら、「今度でいいよ。」と言っただろうけど、今の私は余裕がない。その時は…その違和感にすら、気が付かなかったのだ。…いいえ。敢えて…目に入れていなかったのかも、知れないけど。呼び止めたのに、何て訊いたらいいのか分からない。

何とか言葉にしても、未香子さんは、お題の通りの意味のライバル、だという素振りである。何のライバルなのか、具体的には教えてくれなくて。

それでも…私は、彼女の態度から何となく()()()()()()()、気がして。


はっきり知りたくて、食い下がるように問い掛ければ、私だけが…ライバルなんだと言い切られて。私も…確信を持つ。これは…『恋のライバル』なのだと…。

私は…未香子さんから、正式にライバル宣言されたのだと…。恋のライバルならば、未香子さんと私が共通する相手は、ただ1人…。私が自覚している人は、北岡君だけ…。…そうなんだ。私…北岡君が、好きだったんだ…。だから…北岡君には当然だけど、未香子さんの行動1つにも、一喜一憂してしまう程に、動揺していたのかもしれない。2人が両想いだと思っていたから…。


今の自分は…冷静ではなかった。未香子さんの怒りに飲み込めれ、拒否されそうになると、認めさせたくなる言葉を発していただけ…。一見…正当な言葉も、私は有り勝ちな考えを、自分ではよく考えずに発した。今思えば…酷いセリフだった。

彼女が、北岡君の正式な()()()()()()ことにつけ込み、私もライバル宣言をして。未香子さんは更にパニックになり、言葉使いも口調も…荒々しく変わった。

彼女は怒っていた。完全に…敵として捉えられたのだ。そして私も負けじと、彼女の弱点を突こうとしては失敗して、彼女を増々激情させてしまう。


私には、まだ恋という自覚がなく、初めての恋でもあり、未香子さんと同じ境遇なのだと、彼女にも無意識に認めて欲しいと、思い込んでいたのかもしれない。

ライバルよりは共闘に、近い気持ちだったのだろうか?…未香子さんが段々とイライラモードになって行き、私も初めての恋に戸惑い、彼女に自分の存在を認めてさせようと、そればかりが頭を掠め、他には何も考えられなかった。その場を北岡君に、見られてしまった。北岡君は…私の話を遮るように、拒絶の言葉を残して去って行った。()()()()()()()を連れて…。


私は暫くの間、呆然としたまま立ち竦んでいた。私…何をやっているんだろう。

私…馬鹿だ。本当に…馬鹿だった。北岡君には…愛想を尽かされただろうな…。

どのくらい、そのまま突っ立っていたのだろうか?…いつの間にか私のすぐ横に、ナルちゃんが立っていた。私の肩に手を置いて、一緒に教室に戻ろうと声を掛けてくれる。私は、のろのろと顔を動かして、こくんとタテに振って。2人で教室に向けて、歩き出したのだった。


体育祭後のホームルームには、ぎりぎり間に合った。しかし、先生の話も何も覚えてないくらい、私は…ショックを受けていた。ナルちゃんが「一緒に帰ろうか?」と、話しかけてくれる。今日は用事があると、既に郁ちゃんは帰ったようだった。

ナルちゃんと近くのファーストフード店に寄り、内部生の先輩方に聞いたという話を、ナルちゃんは教えてくれた。それは、北岡君と未香子さんの約束の話だった。


 「この前、私が話したこと、覚えてる?…()()()()()、って訊いたよね?もし、覚悟が出来ないのなら、北岡君のことはこのまま諦めた方がいい、と思う。但し…今回は、萌々ちゃんが悪かったよね?…あの2人の約束は、北岡君が率先して実行している約束だから、それを…反故しろなんて…。本来なら、北岡君の方がもっと怒っても、当然なんだよ。九条さんだって、北岡君には我が儘言うかもしれないけど、他の人には全く言わないって話だし…。あの2人の間の問題に、萌々ちゃんが言う権利はないよね?」

 「…私…途中からは、意味もなく…意地みたいになっていたみたい。お友達になりたいだけなのに、九条さんにあんなに否定される、と思わなくて。北岡君のことだって、同性の友達だと思っていたのに…。北岡君にも…嫌われちゃったよね。…どうしよう?…私…どうしたらいいのか、分かんなくなっちゃったよ…。」

 「取り敢えず謝っておいで。今の気持ちを正直に、2人に伝えたらいいんじゃないかな?…北岡君は本気で、怒ってはいないと思うよ?」

 「…そうかな?…うん。私…明日、謝ってみるね。それに…今すぐ告白とかじゃなくて、私…もっとよく考えてから、答えを出すよ。それから…今の私の目標は、()()()()()()()()()()になること…だよ!」

 体育祭の後では、実はこういう状況でした、という内容のお話です。


前半は、誰視点でもなく、誰がどう動いたのかという感じで、書いてみました。

後半は、萌々花視点となり、萌々花の心情を書いています。


未香子はライバル視するでしょうが、萌々花は当分の間は、友達として2人に接するようです。一応、関係は少しだけ前進したのかな?

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