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君の騎士 ~君を守るために~  作者: 無乃海
第一幕 名栄森学苑1年生編【3部 秋の巻 編】
93/196

82話 保健室での出来事は…

 今回は、体育祭の終了後に、未香子と萌々花が揉めた後の話となっています。


いつも通りの未香子視点です。内容は前回と違い、やや明るくなった感じです。

 夕月(ゆづ)はそのまま、私の肩を抱くようにして、暫くは校庭を一緒に歩いていた。

上靴に変えて校舎に入ってから、また暫く歩いて何処(どこ)かの扉の前で、突然ピタリと止まったかと思えば、「失礼しま~す!」と声を掛けてから中に入って行く。

当然、私も一緒に入ることになりましたが。…ここは…何処なのでしょう?


 「先生、すみません。暫く、此処(こちら)で待機させてもらっても、いいですか?」

 「…まあ、あらあら…。ええ、いいわ。何かあったのでしょう?…私は、今から職員室に行きますので、ちょっとだけ席を外しますけど、ここのお留守番をお願いしますね。勝手に治療してもらっても、構わないわよ。」

 「はい。お気遣い、ありがとうございます。」


夕月(ゆづ)が誰かに話し掛けている。どうも…保健の先生みたいですわね。…ということは、ここは保健室なのですね?2人の話し合いが終わったみたいで、ガラッと扉が開いた音がして、先生は出て行かれたようであった。他には誰も居ないのか、私と2人だけになったのか、シ~ンと静まり返っている。漸く私は、ポケットからハンカチを出して、ゴシゴシと目に滲んだ涙を拭く。それまでの私は、自分でも泣いていると思いたくなくて、流れ落ちた涙もそのままにしていた。やっと…自分に気が回るようになり、自分が泣いている事を認めて、ホッと息を吐く。


漸く周りがしっかり見えるようになり、最初に目にしたのは…私の顔を覗き込む夕月(ゆづ)だった。私の肩に手を置いたまま、真面目な顔付きで、ジッと私を見つめていたのです…。…うっ…恥ずかしい……。私と目が合えば…夕月(ゆづ)は、傍にある椅子に私を座らせてから、自分も近くの椅子に座る。私と向き合うと、話し掛けて来て。


 「…未香子(みかこ)。…少しは落ち着いたかな?…直球なんだけど、さっきの話の件で疑問が浮かんでね?…何時(いつ)、何処で、何を見て、勘違いしたのかは分からないけど、彼女の頬にキスは…()()()()()よ。」

 「 !! ………。何処から…お話を聞いていたのですの…?」

 「…う~ん。そうだね…。丁度、私が来た時には、未香子が怒って話していたんだよね。確か…頬にキスした、という辺りから…だったかな?」


夕月(ゆづ)は真面目な顔付きになり、萌々花(ももか)さんの頬にキスしていないと、否定する。

……何?…行き成り…()()()()()なの?…と目が点になりましたけれど、その頃からお話を聞かれていましたね…。…ううっ。イヤな部分から聞かれてましたわね?これでは…誤魔化しようがありません……。私は…息を呑み込んで観念し、あの日は目撃した人が居たことを伝えますと、夕月(ゆづ)は…僅かに困惑したような顔をして。

…あれ?…違うのですの?…目撃者の…()()勘違い?


 「…ああ。それなら…多分だけど、萌々に耳打ちした時の様子が、勘違いされた原因なのかな…?…見物していた人の角度によっては、そう見えたのかもしれない…。…ごめん…。そんな風に勘違いされているとは、夢にも思っていなかったんだよ…。」

 「………。…ええっ!……耳打ち。…頬へのキスは…勘違い…なの…?」

 「…そうだね。それ以外しか、私に()()()()()からね?」


私の…勘違いだったのね……。私の頭からは、ス~と怒っていた時の熱とか塊とかが、一切合切が抜け出て行くような感じであった。私は…腑抜けたようになって、唯々(ただただ)夕月(ゆづ)の言葉を、繰り返してみて。今度は逆に、頭の天辺から足の爪先まで、血の気がなくなっていく、感じであった。夕月(ゆづ)が完全否定しているということは、唯の見間違いで…。私はそれを鵜呑みにして…。


 「……ご…ごめんなさい!…私…夕月(ゆづ)に…確かめずに、…他人の話を鵜呑みにしてしまって…。…勝手に怒っていて、本当にごめんなさい !! 」

 「…ふっ。そんなに…必死に謝らなくても、いいよ。()()()()()()、私がそういう誤解を生むようなことをしたから、私の所為なんだよ。私こそ…勘違いさせてしまって、ごめんね?…どうしたら、未香子は…許してくれるかな?」

 「…ええっ…と。もう…許していますから。だって…元々が、勘違いだったのですもの…。それに、そのまま信じ込んだ私も、悪いのですもの…。」

 「この件に関して、未香子は…ちっとも悪くない。私が…全部悪いんだよ。しかし…う~ん。…困ったな……。どうやって…許してもらおうかな?」


一方的に責めていた私は、それはもう土下座でもしそうな勢い(実際にはしていませんわ)で、必死になって謝る。…ああ、私…最低です!これでは…信頼していないのと、同じです!それなのに…夕月(ゆづ)は、今回の件は全面的に自分が悪いと言い出して、反対に…私に許しを請う。…と言いますか、100%…私が悪いのですけれどね?…許すも許さないも…ないと、私にはそのような資格はありませんわ…。


そう考えて何とか伝えようと、私が意気込んだその瞬間、唐突に夕月(ゆづ)が立ち上がったと思えば、屈み込むようにして…私の頬に、そっとキスを…落としたのです。

……えっ?!…()()()…何事…?……はっ!…キス!?

……頬に、キスを…されましたの…!?

夕月(ゆづ)が、うっとりするような満面の笑顔で、低めの声でそう言いながら。



 「……未香子?…これで…()()()()()()かな?」






     ****************************






 …うふふっ。今の私の顔は、真っ赤な完熟林檎みたいに、なっていることでしょうね?身体中の力が抜けたみたいに、ヘニョっとなりながら。…恥ずかしいと思う傍らで、頬にキスされたのが…嬉しくて。夕月(ゆづ)からの…不意打ちで…。

今までにも、あったと言えばありますが、それは演技上必要で…が多くて。

今日みたいに、夕月(ゆづ)からは珍しい。顔が少し…若気にやけている私…。


突然ガラッと、勢いよく保健室の扉が開き、ケーちゃんが室内に入って来た。

彼女は、自分のカバンの他に、私のカバンと夕月(ゆづ)のカバンを持っていて。

…あっ…教室にまだ戻っていなかった…。…ということは…えっ?…もしかして…萌々花さんとのあの遣り取りを、他の生徒達にも見られていた…ってことなの…?

さぁ~と…身体中から、血の気がなくなっていくのが、自分でも分かる…。

顔が若気けた状態で固まってしまいましたから、嘸かし…気色悪いでしょうね。

しかし…今更、自分でも()()()()()()()()ことで…。頭の中はぐるぐる回っていまして、考えが中々纏まらない。


 「良かった~。ここに2人が居るって、保険の先生に聞いたので、2人のカバンを持って来たのよ。…あの時、未香子ちゃんが見当たらなくなって、私が1人で探しに行って…良かったよ~。()()()()放って置いたら、他の大勢の生徒達が集まって来たかも…。北岡君がすぐ駆け付けてくれたから、そんなに騒動にならなかったみたいだし…。…もう、クラスの皆は殆ど帰っちゃったし、他のクラスも…例の彼女(すがさん)も、帰ったみたいだし、もう大丈夫だと思うよ。」

 「ありがとう、おケイ。助かったよ、すぐ知らせてくれて。多分、知っているのは、おケイ以外には、萌々の友達くらいだから。大騒ぎになる前で良かったよ。」

 「私も、やれば出来る子なのよ。…北岡君、見直してくれた?」

 「そうだね。見直したよ。このお礼は、後日、させてもらうよ。…本当にありがとう、おケイ。感謝してるよ。」

 「…ふふっ。いいよ、気にしなくて。…話は全く聞いていないから、私もよく分からないけれど、()()()()()のは…一目で分かったわ。…彼女も…悪い人じゃないかもしれない。でも…何か、突っ走る傾向のある人だよね…。」


私の心配事を他所に、ケーちゃんと夕月(ゆづ)の2人で、あの時の事情を話している。

お話を聞いているうちに、段々と状況が分かって来た。ケーちゃんが…1番始めに、気が付いてくれたのね…。すぐに…夕月(ゆづ)を呼んでくれたみたいで。

だから…()()()()()()()()()()と…。…そうなのね?

萌々花さんの方も、友達が心配して駆け付けて来たのであろう。だから…彼女のことは、心配しなくても大丈夫。きっと…あの後一緒に、教室に戻った筈ですもの。

それでも、胸がチクッと痛む。彼女には…悪い事をしてしまったわ…。

謝りたいような、謝りたくないような、複雑な心境である。どうしよう…。


話しを終えたケーちゃんが扉を開けて、1人去って行こうとしていたのを見て…。

私は、彼女を引き留めるようにして、慌てて声を掛けた。咄嗟に声を掛けたのは良いのですが、その先を何も考えていなかった私は、言葉に詰まってしまって。


 「ケーちゃん!…あ、あの…その…。め、迷惑掛けて…ごめんなさい!」

 「…ううん。未香子ちゃんが…元気になれたのなら、良かったよ。」


彼女の温かい言葉に、私はまた涙ぐみそうになる。何とか耐えましたけれども…。

ケーちゃんは「また、明日ね。」と言い残して、一足先に帰って行った。

今日は体育祭だったので、どの部活もお休みとなっている。生徒達の中でまだ残っている、とするならば、生徒会役員と体育委員ぐらいかしら?

暫くして漸く、保健の先生が戻って来た。私の自宅に、連絡を取ってもらったそうで、「今丁度、お迎えがみえたのよ。今日はもう帰りなさい。」と言われ、私達はお礼を言ってから保健室を出る。


送迎時の時は、第一校舎の前に何台か駐車できるスペースがあり、そこで真姫(まき)さんが待っていた。今日の迎えは、真姫さんなのね?良かった…真姫さんで…。

まだ私の涙腺は緩いから、また涙ぐんでしまうかもしれない。真姫さん以外の人には、()()()()()()()()()もの。結局…車の中では、私も夕月(ゆづ)も2人共が沈黙して。そして…真姫さんの運転で、何事もなく家路に着いたのであった…。

 体育祭の当日のお話、その続きpart5で、体育祭の行事終了後のお話です。


未香子と萌々花の対立は、夕月によって強制終了し、夕月と未香子は仲直りしたという内容です。夏休みからの勘違いが、やっと未香子に真実が伝わりました。


これで、問題解決!として、このお話は終わりかと思いきや、あと少し裏話などを入れて、もう少しだけ続く予定です。

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