81話 体育祭の後は…
今回は、体育祭が終了した後のお話となっています。
いつも通りの未香子視点です。内容はやや暗めです。
体育祭は全て終了した。結局のところ、学年優勝は、私達のAクラスが総合優勝となった。うふふふっ。思った通りになりましたわね。夕月は勿論のこと、鷹野君の活躍もありましたみたいで。あと、ケーちゃんとよっちゃんも、其れなりに活躍したそうですし、何よりですわ。
私はどうだったかと言うと、実は、借り物競争で何と1位だったのです。
他の生徒がお題に戸惑っていたお陰と、後は…、萌々花さんの爆走のお陰で。
私にとっては…あの暴走は、死にそうになる程苦しかったのですが…ね。
まあ、結果オーライでしたから、恨みは致しませんですことよっ!
体育祭の大きな荷物の片づけ等は、体育委員と生徒会の皆さんが引き受けてくれているので、私達は自分の荷物だけを、教室に片づければ良いことになっている。
これが、公立であったならば、全て自分達で行うということだから、私はこの学苑で良かったですわ。準備も片づけも時間が掛かるようですし、あれだけ走った後にも、まだ片づけをするなんて、絶対に私には…無理でしてよ。
今の私には、自分の荷物を持つのが、精いっぱいなのですからね。既に筋肉痛になり始めているようでして、足が痛くて重くて…。校舎までの道のりが、途轍もなく遠く感じていた。夕月は赤羽根部長に呼ばれて、一度部室に向かっていますから、今の私は1人で歩いていた。ケーちゃん達と皆で一緒に歩いていた筈なのに、気が付きましたら1人っきりになっていましたのよ。まあ…どうせだからと、少しでも近道しようと考えて、校舎の裏庭の方を通って行く。
後ろから、誰かに呼ばれたような気がした。でも、私は…疲れで振り向く気力もなくて、空耳だろうと思い込んで。しかし、今度こそ、はっきりした声が聞こえる。
そうなのです。「九条さん!待って!」という、女子の声が。そして、その声に聞き覚えがあることに、気づき…。この声は…萌々花さん…ですわよね?
私が歩く足を止めると、萌々花さんが透かさず、私の前に回り込んで来た。
どうやら、どうしても何か言いたいことがあるようで。多分…先程のお題のこと、なのでしょうね?私は…のろのろと、彼女の顔を見つめる。彼女は、自分で呼び止めて置きながら、思い切り困惑した表情である。代わりに私が無表情だろうな…。
…疲れているのですから、仕方がないのですのよ…。
「…あの…九条さん。あのお題の意味って、その……。」
「……菅さん。私…疲れておりますので、簡潔に言いますわね?…あのお題そのものの意味ですわ。私とあなたの関係は、それしかありませんもの。」
「…えっ?!…で、でも、…それって…意味は…。」
「…ですから、あなたと私は『ライバル』ですわ。そう、書いてありましたでしょう?私には、『ライバル』と言ってもいい人は、あなただけでしたので。」
「………。」
萌々花さんが決心したように、前のめりに訊いてくる。やはりお題の内容が、彼女には…理解出来なかったようですわね?ですから、ハッキリ言ったつもりですが、彼女は…まだ私の本心に気が付いていないのか、意味を聞いて来るのでした。
…ふう~。歯切れ悪そうに話し掛けられて、私は…イラっとして来る。
お題には『ライバル(あなたにとって、勉強でも何でもいいので、この学苑に居るそういう存在の人)』と書いてあったのです。ですから…私には、彼女しか思いつかなかったのである。恋のライバルとは書いてなかったのですが、普通はそう思うでしょう?…勿論、私もそう思いましたから。
本来ならば、葉月が1番に思い浮かぶと思う。しかし、この学苑に居る人という条件でもありましたから、彼女しか居なかったのですのよ。…飛野君が居るって?
飛野君は、私にとっては、心からのライバルではないのです。ごめんなさいね。
私のはっきり宣言した言葉に、萌々花さんが黙り込む。どうやら、全く自分の気持ちに、気が付いていない訳ではなさそうね。心当たりがあるという顔をしている。
それでしたら、私も…はっきりさせようと思います!
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「私…子供の頃から、夕月が大好きなのです。夕月は、私と約束をしてくれました。ずっと傍で守ってくれると。ですから、あなたには申し訳ないのですが、私は負けたくありませんし、譲るつもりもありません。『敵』という関係上、あなたと仲良くするつもりもありません。夕月から手を引いてほしい、とは言いませんけれども、私と仲良くすることで、夕月とも3人で仲良く出来るなどとは、考えないで下さいませ。」
「…私…そんなつもりは…。ただ…九条さんとも仲良くなりたいと思って…。」
「私は、夕月に本気で気がある人とは、仲良くなりたくないのです。あなただって、夕月が私を優先するのを、すぐ目の前で見続けられませんよね?…そういう事なのです。私も…あなたと夕月が、これ以上仲良くしているのを、すぐ目の前で見ているなんて、耐えられる訳がありません…。」
「私……私は………。」
私は、はっきりと心の底から、本音を語りましたの。萌々花さんは、確かに自分の利害を考えて行動していない、とは思う。しかし…それとこれとは、別なのよ…。
私は、彼女とは一定の距離を保ちたいの…。出来れば、夕月を諦めてほしい。
流石に…それは、狭量なことですし、したくない…。
反対に萌々花さんは、私の言葉にショックを受けているみたいだった。仕方がないのかもしれない。本来なら、女子同士で女子を取り合うことは、滅多にないことですものね?…私には、男性が好きになれない理由が、きちんとありますのよ。
でも、彼女には…特にないと思われる。偶々、本気で惚れてしまった相手が、夕月だというだけで。好きになった相手が、同性であっただけで。
「そういうことですから、無理してお友達にならない方が、いいと思いますの。私も…夕月の行動を制限したくないですし、私には…極力関わらないで、いただけますか?」
「………。九条さんは、北岡君の…恋人扱い…なの?」
「…はい…と言いたいところですが、そうではありません。でも、そうなりたいとは…願っておりますのよ。心から、私は…。」
「…私のことも、その『ライバル』だと…見てくれているんですよね?…それならば、『ライバル』に見てもらっても、私は一向に構いません。お2人が…恋人かも…と、思っていたので。…それでも、私は…2人の友達になりたい、と本心から思ったんです。九条さんの『ライバル』と認めてもらえるのなら、私も…本当は、負けたくありません!」
何と…萌々花さんが、超本気モードに!?…あれで、諦めていましたの?
私のライバルになって、負けたくない宣言をされ……。私は…泣きそうになって。
分かっていたのに、本気でライバル宣言されれば、今まで我慢していた出来事が、噴火のように飛びだして来て。もう、何が何だか分からない状態になって来る。
「先日は、私は…夕月とのご褒美デートでしたのに、あなたが厄介ごとに巻き込まれるから…。見過ごすことが出来ない優しい夕月は、あなたを助けに行って…。頬にキスなんて…絶対に許せない…!」
「…やっぱり…あの時、北岡君が九条さんを待たせているって…。デート…だったの?…北岡君だと分からなかったから、ビックリしたけど…。あれ…九条さんの為…だったの?」
「そうよ!夕月は…私の為になら、何でもしてくれるのよ。」
「それは…甘えすぎなんじゃない…?」
「…何も…知らない癖に!夕月は本当は、私の為に男装してくれているの!そちらこそ、勘違いしないで!」
「…九条さんって…我が儘過ぎると思う。北岡君は、今はフリーなんでしょう?それなら…北岡君は、誰のものでもないよね?」
「違うわ!夕月は、元々私の為にやってくれているのよ!あなたは、何も事情を知らないくせに!」
「…落ち着いて、九条さん。そうだとしても、それは、北岡君に我慢させているんじゃない?もういい加減、北岡君との約束を反故にしてあげたら…?」
「…何も…事情も知らないのに、良い人ぶらないで!…私から…夕月を盗らないで!…私には、夕月が必要なの!…絶対に!」
私は…涙を浮かべていた。周りの様子が白くボケて、見えにくくなっている。
唯々…萌々花さんが居る方に向いて、売り言葉に買い言葉で、言葉を吐き出す。
その時、私の肩を抱くようにして、声を発した人物に…ハッとして身体が震える。その仕草で…夕月だと気が付きました私…。私達の言い争いを…聞かれてしまったのね?…何処から…聞かれていたの?
「………夕月……私……。」
「…未香子。帰ろう…?」
私は…夕月を呼んでみるけれど、振り返っても視界がモヤが掛かっていて、見えなかった。夕月は…特に何も言わず、ただ「帰ろう?」と言って。私が…こくんと首を縦に振って肯定すれば、夕月はそっと私の身体の支えてくれて。
「行こうか。」と、私に声を掛けてから、一緒に前に歩き出して。
「…あっ!…あ…あの…北岡君!…私は別に……。」
「…萌々、ごめん…。私と…未香子のことには、誰にも…何も、口出ししないで欲しいんだよ。未香子との約束は、私にとっても…大切な約束なんだよ…。」
「…えっ…………。」
私達が歩き出そうとすると、萌々花さんが夕月を引き留めるように、声を掛けて来た。しかし、夕月は…彼女の言葉を、遮るようにして言葉を返した。
その言葉は、萌々花さんを拒否する言葉でもあって…。それに対して、彼女は目を見開いて驚き、何も…言えなくなり……。
私と夕月は…そのまま、彼女を置いて立ち去ったのである。この場では、夕月が…私を選んでくれてよかった…。でなければ…私は、どうなっていたのでしょうね?
体育祭の当日のお話、その続きpart4で、体育祭の行事終了後です。
未香子のお題について、内容がはっきりしました。
実は当初、『好きな人』にする予定でした。しかし、それでは当たり前過ぎる為、変更したのです。
何処かで未香子と萌々花の2人の確執を作りたかったので、今回がチャンスとばかりに詰め込みましたが。結果オーライで満足しています。
まあ、これで、萌々花も自覚したことでしょうね。




