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君の騎士 ~君を守るために~  作者: 無乃海
第一幕 名栄森学苑1年生編【3部 秋の巻 編】
80/196

70話 俺が見たもの ~大夢~

 今回は、前半・後半共に、大夢視点のお話となります。


大夢側から見た、萌々花と夕月の補足となっています。内容的には、66話からの続きで前回の途中までのもの、になりますね。

 空き教室の中には、内部生の女子生徒達と、例の外部生の少女が、円状に椅子を並べて座っている。俺は、教室の窓の下に、上手くしゃがみ込んでいて、彼女達の話を()()()()聞いていた。呼び出した彼女達は、北岡公認のファンクラブの会長と会員だと名乗っていた。


それを聞いた俺が、一番真っ先に思い描いたのが、女の園の宝塚だった。

俺は、宝塚には興味がないので、その気持ちはよく分からんが…。

まあ、大抵の女子は、そう言うのが好きみたいだよなあ。反対して勝手に作られるよりも、北岡の場合は、本人が把握していた方がいいのかも、しれないな…。

…しかし…ホント…マジで、スゲ~人気者なんだな。北岡って…。


彼女達の話は続いて、中等部時代の話になり、北岡を巡って壮絶な虐めが遭ったことが、会長と名乗る女子から語られていた。俺も、小中学生の時代には、女子に囲まれたりしていたから、女子が()()()()()()だとは、知っているつもりだったが。

俺の時は、女子同士の口ケンカが主で、(ののし)り合ったりしていたよな…。

偶に、髪の毛を引っ張ったり、頬をビンタしたりという、過激な時もあったっけ。

その度に、俺が仲を取り持ってはいたんだが…。お手上げ状態もあったよなあ。


…アレって、まだマシな方だったんじゃねぇの?表で遣り合う方が、全然マシじゃねぇの?それとも…俺の居ない所で、裏で虐めとかしていたんだろうか?

…有り得そうだよな。ここまで…女子が、面倒臭いだとは思わなかったわ…。

いや…そういう問題じゃないよな?…女子って…(こえ)~。超怖(ちょうこえ)~。

女子にモテた俺でも…、それなりにいい気になってた俺でも、退()くわ…。


しかし…北岡って、もっと穏やかな印象があったんだが。どうやら、全く違うみたいだな。どちらかっつうと、割と切れやすいみたいな感じがある、タイプかな?

そういや…ちょっと前も、九条さんの痴漢騒動で痴漢相手に切れて、電車の中で大捕り物したみたいだし…な。結構、荒々しい性格に近いのかな?


勉強も出来て運動神経も抜群、とまでは十分理解出来る。しかし、(だい)の大人の男とケンカまでして、然もそのケンカで男に勝つとか…。マジで…信じられんわ。

見た目は中性的な雰囲気だが、男子と並べば一目瞭然なんだよ。男子では有り得んぐらいに、身体の線が細いのだ。女子だと気が付かずとも、実際には、可愛い系の男子(イコール)()()()()()での優男、と言う雰囲気でしかない。


あんなに細い身体で、ケンカなんか出来そうにない。そう思う相手が、油断しているだけでは?…だが、それだけでは、説明が付かない面もある、と気が付いた。

北岡(ヤツ)は多分…()()()強いと思われる。男相手でも、十分に正統法で勝つだろう。

多分…いや…間違いなく、俺よりはずっと強い。それぐらい、俺にも分かることだったし…な。まあ、そう気付かされたのは、今日なんだが…。


そのまま話を聞くうちに、呼び出された筈の少女が、会長の女子と対等に話をしていた。…へえ~。この子、割と見かけによらず、心臓が強いんだな。

顔は相変わらず、窓から覗いても見えない。後ろ姿から想像した感想だけど、さ。


 「…ねえ。私は、未香子(みかこ)さん()()お友達になりたいの。だから…会長さん、許可してもらえる?」

 「…ええと…それは…、北岡君を狙っている訳では、ないの?」

 「…えっ?…狙うって?…私は、お友達のつもりだけど…?」


外部生の少女の言葉に、それ以外の女子生徒達が、目を丸くしキョトンとしている様子だ。暫らく無言が続く。…う~ん。話が食い違っているような…?

漸く返答したファンクラブの会長が、明らかに動揺している口調で話し掛けて。

北岡に近づくこと、イコール、北岡を狙っている、という認識だったのだろうな。


そりゃそうだ。男の俺だって、そう思うだろう。しかし、外部生の少女は、違った風に考えている。北岡とは純粋に、友達のつもりだったのか?

それなら女同士なんだし、友達として仲良くするのは、当たり前だよな?

ただ…北岡の人気ぶりを考えれば、ウソだろと疑いたくなる。それに、九条さんとも仲良くなりたいとか、俺なら「裏があるだろ?」って考えてしまいそうだな。


その時突然、廊下側の方から、誰かの大爆笑する声が聞こえた。…うん?この笑い声は…まさか……。俺は、そおっと窓から、教室の奥の方を覗き込む。

すると、やはり思った通りの人物が、教室の扉に凭れ掛かって、身体を折り曲げて大笑いしていたのだ。


…オイ、オイ……。何で、そこに居るんだよ?

もしかして、俺と同じで…初めから話を聞いていたのか?

…一体、どこに隠れていたんだよ。俺の()()()…返してくれよ…。






    *************************






 「…そこで何してるの?北岡君?」

 「ふっはははは…。…ん?何って…物騒な事件が起こるかなって、聞いたんでね。くくくっ…。…会長達が、物騒な密談していたって聞いてね?一応確認しに来たわけ。そしたら…さっきの話が聞こえてね?いやあ…君達って、話が全く噛み合ってないからさ。萌々が天然っぽいとは思っていたけど、これ程までとは思ってなくてね…。可笑しくて…。こんなに大笑いしたのは、久しぶりだよ。」

 「ええっ?!物騒な密談?って、…もしかして私達のこと?……。」


北岡の話す内容に、会長達全員が、顔を見合わせて驚いていた。自分達には覚えがない、という雰囲気で。…あれっ?…そういや、そんな感じじゃなかったな…?

牽制するつもりじゃなく、虐めの標的になるかもと、知らせたかっただけなのか?

…うん?そういや、北岡も…確認しに来ただけみたいだな?

それじゃあ…俺は、()()()心配しただけなのか?…俺の早とちりかよ…。


俺の心配は、取り越し苦労だったのか…。ホッとしたような、脱力したような…。

いつの間にか、教室では、北岡と外部生の女子だけになっていて、親密な様子で話し込んでいた。…なんか、仲が良過ぎだよな?普通の同性なら問題ないだろうが、

北岡の場合は()()だろう。皆が…勘繰るのも、分かるような気がしてきたわ…。


その時、昔の虐めの話に戻った時に、北岡の顔が正直ヤバかった…。あんな無表情で氷みたいな顔付きをするとは…。目は笑ってないし、マジで(こえ)~。

北岡こいつ…ホントに女子かよ?虐めの首謀者とは違う理由で、その首謀者よりも、()()()()(こえ)~わ。


そういや…北岡(こいつ)って、球技大会の時にも()()()()()だったみたいだもんな~。

俺のチームは対戦しなかったから、ラッキーだったけどさ。

クラスの男子共が、1番の強敵者だったとか話してたっけ…。俺も、最後の試合ぐらいは見学してたけど、確かに1番活躍してたよな。

普段の顔が、笑っている印象が強くてさ。その顔で、完全に騙されてるかもな…。


北岡は、その気になれば、男相手でも十分試合で対抗出来るし、見た目ほど優しい人物ではないのだろう。他の生徒達も、完全に見た目で騙されているんだろうな。北岡に限らず、見た目が優しい奴ほど、怒ると怖いと言うもんな。


俺は考え込んでいて、気付くのに遅れたようだ。いつの間にか、目の前に北岡が来ていて、窓から下を覗き込んでいた。俺の方をジッと見つめていたのだ。

…うわあ!気付かれた!俺、内密の話も、全部聞いちまったよ!

…ヤバイ!どうする、俺。たった今、来たことにしようか?…いや。千明(ちはる)に訊かれたらバレるし…。北岡の無言が…(こえ)~よ。


 「…そこで、何してんの?…ある程度、話を聞いていたんだよね?今の話、全て聞かなかったことにしてくれる?…今日、君は何も見なかった。それでいい?これ以上、面倒事にしたくないんだよ。」

 「…ああ。俺は…()()()いいよ。元々、大袈裟にするつもりは…なかったし…。結局、俺…何もなかったんだからさ。」

 「ごめんね?…本来なら、君が知らせてくれたからこそ、問題なく対処出来たのにね?君の()()奪うようで、悪いけど。」

 「いや…元々、俺の早とちりみたいだったしな。…あっ!俺、トイレに行ってることになっているから、…先に部室に戻るわ。」


北岡は、今日のことは全部内緒にすると言われただけで、俺は何も咎められずに済んだ。それより…逆に謝られたし、手柄奪うって言われたけど…。

聞いた内容が深刻だったから、仕方がないよな…。やっぱ、そういう気配り出来るところが、男女問わずにモテてる理由なんだろうな。俺には真似出来ない…。


北岡と話をしている間、問題となった女子生徒は、俺の方を振り返らなかった。

多分、顔を見られたくなかったんだろうな。北岡が俺に声を掛けた時、肩がビクッと動いてたから、気丈な少女に見えるけど、やっぱり見られたくないんだろうな。


この後は、俺が先に戻ったから、何があったか知らない。しかし、後で話題になったから、どうなったかは知っている。外部生の女子生徒の部活の部長に、偽の話を取り次ぎに行ったらしい。彼女が困らないようにだろうけど、普通はそこまでしないよな?…というか、全く気付きもしないと思うよ。本当に、よく気が利く奴だ。

道理で、女子の人気が、半端ないって思ったよ。


…しかし、その時はまだ、偽の話をするとは、思ってもみなかったからなあ。

北岡が一緒に行っても、いいのか?逆に目立つんじゃねえの?何で、一緒に居るんだってことに、なるんじゃないのか?


よく考えれば、北岡のことだから、何も考えていない筈はない訳で…。

口止めだけで済んだということは…、一応、俺、北岡に信頼されたのかな?

 今回は、前回の続きというより、少し前に遡った内容となっています。

視点が大夢になりますので、同じ内容が重なる部分もありますが、為るべくダブらないよう割愛したつもりです。


大夢は、教室についてからは、誰も彼女の名前を呼んでいないので、夕月が呼んだ時の『萌々』しか知りません。

また、顔は教室廊下側を向いていた為、大夢は顔も見ていません。

今まで一度も、萌々花と接触もしていないので、全く見当もつかない事でしょう、現状は。


大夢が最後に語っていたように、夕月はしっかり対策考えていますよ。それは、前回のお話で納得出来るかと。


実は、このお話の番外を考慮中です。夕月視点からも書きたいと思っていますが、いつになるかは不明です。

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