66話 新入部員の思惑3 ~大夢~
前半・後半共に、新キャラ『箕村』視点となっています。前半は、自己紹介みたいなものです。
後半は、前回からの引き続きとして、語っている内容のお話となります。
俺の名前は、『箕村 大夢』と言う。3月1日に、15歳になったばかりだ。
小学と中学は、公立に通っていた。高校も、近辺の公立に行く予定だったんだが、親の仕事の都合で、今まで住んでいた地区から、微妙に離れた異なる地区に、急遽引っ越すことになる。3年時になって今更、引っ越すことになるなんて、「高校はどうすんだよ!」と言う話の流れで、この学苑を受験することになったのだ。
ホントにさあ…うちの両親って、子供の都合よりも、自分達の都合を優先して来るもんだから、マジ勘弁してほしいわ…。俺の両親は、音楽関連の仕事をしていて、帰宅もまちまちなもんだし、家にも帰って来ない日もあったりする。
決して、ミュージシャンとか、マネージャーとかではない。
何の仕事をしているか、あんまり興味ないから知らないけどさ。
俺は、音楽に特別には興味持ってないんだよね。ゲームなら毎日してるけど。
俺は1人っ子だから、兄妹とかはいない。だから、家に帰っても1人っきりだ。
幼い時は寂しい思いもしていたが、今は…1人の方が好き勝手やれるし、清々するんだよな。偶に家に帰って来ては、勉強とか言われてもなあ。普段は、中々自宅に帰って来ない両親にだけは、言われたくね~しな。
俺は、元々、そんなに成績が良い方じゃない。それなのにさあ、受験シーズン真っ最中になってから、引っ越すことになっちまって…。受験するはずだった公立は、ここから通うのに遠くなった。この地区の公立には、無理して受験してスベリたくないしなあ~。余程、俺の頭が良ければ、別だったんだろうが…。
そうなってくると、私学への受験しかなくて。マジ、この学苑しか受験変更が出来なかったんだ。これで…よく受かったなと、自分でも思っているよ。
この前のテストだって、この学苑では、丁度中間ぐらいの順位だったもんな~。
それに…引っ越す前の学校では、俺は結構女子にモテていた。自分で言うのもなんだが、中学ではそれなりのイケメンで、1番モテていたんだよ。しかし、俺は運動神経も、飛び抜けていい訳じゃないし、ごくごく普通だ。唯一、俺が目立っているのが、イケメンであるこの顔だけだというのに…。それも、この学苑では目立つことにはならず、全くという程モテていない。
中学までは、沢山の女子生徒を、いつも侍らしていたというのに、この学苑では皆無だという程に、通用しないのだ。ホントに…調子狂うわ。
この学苑では、何だか、男装した女子生徒の方が、女子に激モテしてんだよなあ。女子校なら兎も角、男女共学なのに有り得ないと思うわ…。
この学苑、色々と有り得ないことが、多いの何のって…。俺が入部した映像部だって、正直言うと有り得んわ…。あんな凄い装置とか、どれだけ金を掛けてんの?
映像部専用の舞台(しかも、高等部専用)だって、この学苑の敷地がどんだけ広いか、そういう話なんだよなあ。中等部も同じ敷地内らしいけど、まだ1回も中学生に会ったことないしなあ。マジでホント、色々とヤバイわ…。
部活も何に入ろうか、悩んだんだけどさあ。俺が目立ちそうなものって、演劇くらいかな~、って思って入部したんだが…。中学まで、クラスの発表会とかで、よく王子様とか演じていたし、自分は芝居上手なんだと、自信満々で入部したのに…。
いざ映像部に入部したら、全然レベルが違うし、退部したいぐらいだった。
マジで、北岡達の演技力は、芸能人レベルじゃないかと思うぐらいに、物凄い。
あれで、まだまだ未熟だと言うのだから、「何、言ってんだよ。」と愚痴りたくなったよ。客席で見ていた時は、あのぐらいなら俺でも出来るわ、とか思っていたんだが、間近で見学していたら、全然レベルが高かった。
あまりにも北岡達とレベルが違い過ぎて、俺みたいに高校から入部した奴は、北岡達とは別の演技グループにされている。一応は、俺はヒロインの相手役として、王子役のような役柄に選ばれた。しかし、そのヒロインは…おとこだったし…。
北岡達のグループのヒロインは、内部生でもあって、生粋のお嬢様だった。
俺みたいな中途半端な男では、相手役にならないよな…。
俺が入部した映像部では、内部生も外部生もなく、みんな仲良くワイワイと遣っている。しかし、俺は…何だか入りづらいと思っていた。俺のなけなしの矜持が、そう簡単に仲良くなりたくないと、意地になっているのだ。俺の相手役であるヒロインは、『千明』という名前の女装男子で、演技以外では女装していないし、普段はごく普通の男子だった。ただ単に、彼の顔が、女っぽく可愛いだけで。
千明は、とても人懐っこい性格で、内部生・外部生に関わらず、誰にでも話し掛けているし、誰にでも馴れ馴れしく振舞っている。つまり、俺と違って、誰とでも仲良くなるのが上手いのだ。俺に対しても、同じように接して来て、俺も最初は避けようとしていたが、演技上会話をするようになって、段々と絆されたみたいだ。
まあ、千明のことは嫌いじゃない。彼もモテるのだが、種類が違うモテだからか、あまり気にならない。話していても、気が楽だ。俺が同性の男子生徒と、こんなに仲良くかったのは、生まれて初めてかもしれない。
どっちにしても、俺にとって強敵なのは、北岡だと思っている。
俺にとっては、1番強敵なライバルが女子生徒とは、…複雑な心境だ。
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まさか…その北岡に、直接声を掛けられるとは思ってもみなかった。
然も、俺の名前も知っているなんて、驚きだ。北岡は、俺のことなんて、全く目に入っていないようだったし、名前も知らないだろうと、思っていたのに。
話してみると、北岡は案外鋭くて、何も目に入っていないようなのに、しっかりと周りを見ているんだな、と感じたぐらいだ。
俺の話を否定せず、真っ直ぐこちらを見る瞳に、一瞬ドキッとした。まるで、心の中まで、見透かされているような感じだった。所詮、どんなに男っぽく振舞っていても、女子には違いないと高を括っていた。実際には、女子にしておくのが勿体ない程、肝が据わっている。流石に万年首席で、新入生代表するだけのことはある。
一度教室に戻ってから、部活に顔を出しに行く。今日は、千明とセリフの練習をする約束をしていた。今度の上演は、俺達外部生だけの初上演だから、当然、気合が入っている。扉を開けて部室に入ると、扉付近に居た部長と九条さんが、俺の方を振り返って来た。…何だ?俺を見た途端、何だかがっかりされたような……。
「…ああ、箕村君だったのね。驚かせてしまったみたいで、ごめんなさいね。私達のことは、気にしないでいいから。」
「はあ…。…あの、何かあったんすか?」
「いえ、何もないわ。こっちは気にしなくていいから、いつも通り練習していて頂戴ね。」
どうやら、俺を誰かと間違えたみたいだな…。その後も、誰かがドアを開ける度に、2人は気になっている様子だ。一体、どうしたんだろう?この時は、部長が気にするなと言うものだから、暫くは気にも留めていなかったのだが…。
そしてその後は、ずっと千明達と練習に集中していたし…。
休憩を取り、外部生である他の部員達と話している時、千明が「あれ?」と何かに気付いたように、首を傾げた。俺が「どうしたんだ?」と訊くが、千明はすぐには答えず、部室の中を見渡すように、キョロキョロしている。
「あれ?やっぱり、居ないや。どうしたんだろ?」
「どうしたんだ、千明?誰が、居ないって?」
「う~んと、ね。北岡さん?俺も大夢も、今日は見掛けてないよね?」
「何で、疑問形なんだよ。見掛けてない…って、えっ?居ないって、…北岡が?そういや…居ないな…。」
「うん。どう見ても居ないよねぇ?ミカちゃんが来てるのに、彼女だけが来ていないなんて、どうしたんだろ?」
「!? ……。」
俺の質問には答えず、独り言のようにしゃべった千明だが、再度訊くと、やっと俺の質問に気が付いたように、返答して来た。ちょっと自信なさげに。
北岡が居ないと…。ミカちゃん…って、ああ、九条さんのことか…。千明は、九条さんのことを、そう親し気に呼んでいる。俺には、絶対に真似出来ないな。
…ん?北岡だけが居ない?…それって、もしかして……。
「あ、俺、ちょっとトイレ。」
そう言って、慌てて部室を出る。俺の慌てぶりは、千明達には気付かれなかったようで、他の部員とまた話し始めていた。俺は部室を出た途端、ダッシュして手当たり次第、例の人物達を探すことにした。成るべく怪しそうな教室とか、裏庭とか。
息を切らしながら探していると、やっとそれらしき人物を見つけた。
目当ての人物達は、普段は使用していない、空き教室の中に居た。見付からないように、そおっと窓の下まで移動し、そろそろと覗き込んでみた。この教室の中にまだ入ったばかりのようで、あの時の女子達は、椅子を丸く動かしていた。
1人の少女を囲むみたいに。その肝心の少女の顔は、後ろ姿しか見えない。
多分、この少女が、例の外部生なのだろう。きっと、例の彼女達に呼び出されたに違いない。一体、彼女達は、この少女に何をするつもりなのか。
これは、虐めでは…ないのだろうか?彼女達は、この少女に牽制でもするつもりなのでは…?…あれ?…それより、北岡は来ていないのか?来てないのなら、北岡はどこに行ったんだ?
…おい、北岡。お前…今、どこにいるんだよ?…対処するんじゃなかったのか?
この状況は…全然大丈夫じゃない、と思うぞ!
追加の人物(男子)が、漸くフルネームでの登場となりました。千明と違って、登場がかなり遅めになりました。イケメン顔以外は、ごく普通という少年です。
但し、割とゲームに嵌っている感じの、ゲームオタクという設定ありです。
さて、展開がやばい雰囲気みたいですね。箕村君、案外、他人を気にしたりして、良い人ですね。自分自慢がなければ…。
※前回の『意外な人物』は、誰か分かりましたでしょうか?




