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君の騎士 ~君を守るために~  作者: 無乃海
第一幕 名栄森学苑1年生編【3部 秋の巻 編】
75/200

65話 体育祭の練習開始

 今回は、体育祭の練習風景がメインとなっています。

しかし、後半は趣が異なり、不穏な流れとなっています。読まれる際には、お気を付けください。


前半は、未香子視点となっています。後半は、……誰?

 今日は、2学期最初のテストの日であった。テスト範囲は、夏休みの宿題・課題の中から出題されるものが多く、ある程度復習していれば、そう難しいものではなかった。私も、夏休み中に、夕月(ゆづ)とばっちり勉強した為、手ごたえは()()()あったと思っている。ケーちゃんも、夏休み中に部活中の休憩時間で、一緒に勉強していたから、今回は手ごたえを感じているようね。


でも…このテストに関しては、平均点は高くなりやすいですから、僅差で順位が決まることになるでしょうね。ケーちゃんが歓喜する為、夕月(ゆづ)もせっちんもよっちゃんも誰も、言い出せなくなりましたの。少し…心配になって来ましたわ…。


そして本日から、体育祭の練習が始まることになる。ううう…。練習と言えども、本気で嫌ですの…。体育なんて()()()…、この世の中からなくなればいいのに…。

そう思うぐらいには、嫌いなのですわ。()()()熟せる夕月(ゆづ)が、羨ましい…。

この時ばかりは知らないうちに、夕月(ゆづ)を睨みつける自分がいて…。

そして、タイミング良く、夕月(ゆづ)とバッチリ目が合って、大爆笑されるのです…。

毎年…これを繰り返しをしておりますのよ…。


今もすぐ近くで、大爆笑する。夕月(ゆづ)の姿が…。もう ‼ こんな時にも、近くに居なくていいですからっ!そう言っても、夕月(ゆづ)が好んで近くに居る訳でもなく、競技の練習場所が、ただ単に近かっただけで。夕月(ゆづ)が悪い訳では、ないのですけれどね。

…あ~もう!神様の意地悪!…などと心の中で悪態をつく私…。


 「あれっ?…北岡君も、学年別リレーに出場するの?北岡君って、足が速いの?それなら、もしかしたら、アンカーに選ばれたりするかもね?」

 「…うん?萌々(もも)も?まあ確かに、去年までは毎年リレーのアンカーには選ばれているけどね…。」

 「えっ!毎年?!マジでそんなに速いの?!…でも、今回の学年別リレーって、確か…男女混合だよね?毎年アンカーで走っているんだったら、今回もアンカーに選ばれるのは、()()だよね?」

 「ハハハ…大袈裟だよ。取り敢えずAクラスで1番速く走れるから、選ばれただけなんだよ。今年もアンカーになるとは、限らないよ。」

 「それでも、凄いよ!超ビックリしたよ。どれだけ速いか、見て見たいな。私、陸上部の部員だけど、流石に男女混合のアンカーは、無理そうだもん。」


…本当に神様は、意地悪である。突然、夕月(ゆづ)の目の前に、萌々花(ももか)さんが現れた。

学年別リレーの選手だということは、学年の代表として走るということである。

本来なら、男子と女子と別れるけれど、高等部からは混合で走ることになる。

ですから、各組から男女2名ずつ、足の速い人物ばかりが集まってくる。

E組の女子代表の1人は、萌々花さんなのだろう。


一応、A~DとE~Hで分かれて、走ることになるらしい。A~Dは内部生で皆、誰が速いかをよく知っている。ですから、夕月(ゆづ)がアンカーに選ばれるのは、必然となることでしょう。E~Hは全員が走ってみてから、アンカーを決めることになるでしょうね。私は…すぐ隣のエリアで待っている為、夕月(ゆづ)と萌々花さんの2人のお話が、聞く気がなくても聞こえてきてしまう…。

特に萌々香さんの声って、高音でよく響きますのよ。


私が居るエリアには、借り物競争の出場の選手が集まっている。そして、すぐ隣のエリアに夕月(ゆづ)が居て、借り物出場選手も、チラチラと隣に視線を送っている。

更に、萌々花さんというイレギュラーな存在の登場に、皆が興味津々である。

「あの子、誰?北岡君とどういう関係なの?」という雰囲気で、数人の女子生徒が殺気立ちつつあった。1対1で、夕月(ゆづ)と対等に会話している彼女に、()()()の反応になりつつある。これは…少々不味いのでは…。


私に関しては、()()()()()を得ていて、最近は誰も文句を言って来ない。

しかし、他の女子生徒ならば、許せなかったりするようで…。

これは、1人だけ抜け駆けしていると思われても、仕方ないだろうな。

彼女に、その気がなくても…。周りの女子には、そう見えているだろうし…。


実際に、少し離れた所からも、こちらの方に強い視線を感じる。皆、気になって仕方がない様子である。中等部でこのような風に接していたら、間違いなく萌々花さんは、虐めに遭っていますわ。


2人は気にしないのか、気付かないのか、ずっと楽しそうに話し込んでいる。

夕月(ゆづ)が、全く気付かない筈もないのに…。萌々花さんの方はある意味、心臓に毛が生えていらっしゃるのでは、ないかしらね?


練習が始まれば、2人は別々のチームになり、その後はチームで練習をしていたようである。私達もやっと練習が始まり、自分の練習に集中していたので、私はすっかり忘れてしまっていた。他の競技に出場する周りの生徒達も、練習が始まっていますから、時折視線を感じるぐらいで…。私が見られているのかと思えば、相変わらず、夕月(ゆづ)達を見ている感じでしたし、特に気にも留めなかった。

夕月(ゆづ)が見つめられるのは、()()()()()()なのですもの。


しかし、これが今後波紋を呼ぶことになるとは…。

まだ私も、何も知らないことなのでした。






         *************************






 「…ねえ、皆さん。さっきの光景…見ましたぁ?」

 「ええ…。見ましたわ。何、あれ…。図々しいことですわね。」

 「本当に…。ねえ、あの子、誰なのかしら?知らない顔でしたわ。」

 「どうやら、外部生のようですわよ。何でも、特待生とか…。」

 「外部生!道理で…勝手な事をしていると、思いましたわ。暗黙の了解があることを、知らない訳ね…。…それならば、誰かが教えてあげる必要が、ありますわよね?…ねえ、皆さん?皆さんも、そう思わなくて?」


放課後の体育館の裏にある裏庭で、数人の少女達が集まって、何かコソコソ話し込んでいる。内容が()()()()物騒だなあと思い、校舎の壁に隠れて、彼女達の話を聞いていた。丁度、自分の競技の練習が終了したので、体育館倉庫に道具を仕舞いに来たのだ。その倉庫からの帰りに、倉庫から出て少し歩いた場所で、彼女達を見かけ、様子が変だと思って、見つからないように隠れたのが、今の現状だ。


誰のことを話しているのか、何をしようとしているのか、全く理解出来ずにいた。

しかし、何か物騒な予感がするのは、確かなんだ。今更出て行けば見つかりそうだし、大人しく壁に身を隠したままでいた。暫く密談したのち、漸く彼女達は去って行った。一体、何だったのだろうか?


誰かに教えようにも、注意しようにも、相手が誰なのか、彼女達が何を見たのか、全く分からなかった。ただ、外部生の生徒が標的にされたのだと、理解する。

一体、何が起こっているんだろう?


 「顔は…見えなかったな。あの生徒達は、多分、内部生だよな…。」

 「君……。何してるの?こんな場所で…。内部生がどうかした?」


どうやら俺は、独り言を言っていたようだ。後ろから声を掛けられて、超ビックリだな。おい…。行き成り、真後ろに立つなよ…。怖いだろうが!

そう思いながら振り向くと、そこには()()()()()が立っていた。顔を見て、驚いてしまう。今までも、殆ど話す機会がなかったしな…。

今日、話をするのが…()()()だったよな。


 「君、確か…同じ部の箕村(みのむら)君だったよね?…で、どうかした?」

 「…ああ。俺が、体育館倉庫に競技の道具を返しに来て、出て来た時に、丁度、この場所に数人の女子が集まっていたんだ。ただならぬ雰囲気を感じて、校舎の壁に隠れて聞いていた。そしたら…、何だか()()()()を話していてさ…。これからどうしようか、と思っていたところだったんだ…。」


俺の名前…知っていたんだな?まだ共演したこともないし、芝居の練習も別だったのにな。取り敢えず、()()()……勘が良さそうだし、話して置くか。

何か気になることがあるのか、柔和な雰囲気で、有無を言わせない雰囲気で話し掛けて来た。内部生同士ならば、何か知っているかもしれないもんな。

そう思って事情を話し出せば、俺の言葉に引っ掛かるのか、訊き返してくる。


 「…物騒なこと?……()()()に何を話してた?」

 「俺自身が、何のことかよく分かんなくて、理解出来なかったんだよなあ……。さっきの光景を見たとか見ないとか…?あの子が誰だって話で…、外部生とか特待生とか…?暗黙の了解を知らないとか?教えて遣ったらどうかとか?…そんな内容の話しだったかな?」

 「………。」


物騒なこと、と話した俺の言葉に、俺の目の前に立つ相手は、眉をギュッと顰めて首を傾げた。しかし、真面目な顔つきで、具体的な話をと続きを促してくる。

俺は思い出しながら、幾つかのキーワードを語ってみる。すると、コイツは片手を顎に当て、もう一方の片手で、その腕を支えるようなポーズを取り、さっきよりも深く考え込むような仕草をした。終始無言で…。


暫く目を瞑り、深く考え込んでいる。何か、思い当たる節でもあるのだろうか?

数分が立った頃、やっと、コイツは目を開けて、そして…。

俺の目を、強い意志のある瞳で真っ直ぐに見つめて来た。たった一言「話してくれてありがとう。」と礼を言い、立ち去ろうとした。俺には()()事情を話さずに…。


 「おい!()()…大丈夫なのか?心当たりでもあるのか?」

 「…あぁ。大丈夫。後は、こちらで何とかする。…騒ぎにしたくないんでね。」


俺が手伝わなくてもいいのか、と確認したのだが…。コイツには、()()()()と言われたようなもので…。一度だけ振り返り、そう返答すると、後ろ手に手をひらひらさせて、去って行く。俺は、ただ茫然と、その後ろ姿を見送っていたのだった。

 今回は楽しいお話から一転、暗いお話になりそうな感じになりました。


今回の「後半視点の人って、誰?」と思われたことでしょうね。

この人物、実は以前、名前(苗字)のみ出て来た、一応は新キャラなのです。今回行き成り、本人視点が出て来て、まだフルネームの紹介すらしていません。


さて、その新キャラと話す謎の人物、『意外な人』ということですが、誰だか分かりますでしょうか?本編中に、色々とヒントが隠されていますので、良かったら誰だか推理して下さいませ。

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