54話 見守る会の結成
夏休み中のプライベートなお話、Part3です。未香子視点が続きます。
今回は、おかしな方向に向かう未香子のお話です。何か、頭のネジが1本ぐらい抜けていそうです。前回、葉月に振り回された、未香子の反撃の回だっだりして…?
今現在、私達は、とある人物達の行動を見守っているのである。
…えっ?見守るのではなくて、見張っている方の間違いですって?
ち、違うわ。だって、本当に見守っているのですもの。
何故、見守るのですって?そ、それは…。
「退屈だったからだよね?」
「ぎゃあ!…何故、耳元で話すの?それより、私の心の声を、どうして……。」
「はっ?いやだって…、さっきからブツブツ呟いてたよ?」
はっ!しまった…。どうやら、また私は、呟いて声に出していたのですわね。
それより…、先程から、葉月が近い!…近すぎるわ。うううっ。もう少し離れて欲しいのに…。私は思わず、葉月の身体をギュウギュウと横に押してみる。
しかし、全く、これっぽっちも、ビクともしない。…ううっ。全然動かせない…。
「何してんの?僕を押してきて…。狭いんだからね、我慢して。これ以上押されると、この柱から食み出して、あっちから丸見えだよ。」
う、嘘つき!全く動いていない癖に…。…確かに、これ以上柱から出てしまうと、向こうからは丸見えになりますのよね。…というより、葉月とこのように近くに、1ミリでも動けば、肩が触れそうなぐらいな距離に、居たことがないのだ。
私が動揺するのは、当たり前のことなの!もう、どうにかして…。
それに対して、葉月は全く動じていない様子である。しかも、セリフが一々、夕月と被っているのだから、困ってしまう。そして…、行動も同じく。
これではまるで、夕月と一緒に行動しているみたいだと、勘違いしそうで怖いの。まあ…、違うところもあるにはあるのですが。
今はこうやって、私は、葉月と一緒に行動していますけれど、サービスエリアで降りた際に、手を引っ張っられたぐらいで、それ以前もそれ以降も、葉月は、私に全く触れて来ないようにしている。多分、…そうだと思いますわ。
サービスエリアのあの時は、私が、ボ~と考え事をしていたものだから、何か危ないと思う事でも、あったのかもしれない。夕月も同様に、よくそうしてくれるわ。
思えば、葉月に手を掴まれたとかって、知り合ってから初めてのことかもしれないわね。私からも、今までは特に触れたことがないし、葉月もそうだったのよ。
…そうだわ。だから、触れたくないほど、嫌いなのだと思っていたのですわ…。
夕月と同じ行動をする、葉月だからこそ…、そう思ってしまったのだろう。
もしかしたら、私が男性恐怖症になってしまっていたから、触れないようにしていたのだろうか?私の為に、気を遣ってくれていたのだろうか?…そうなのかな?
葉月のことは、夕月の弟としてしか、今までは見ていなかったもの。
だから、今頃になって、気が付いたこともある訳で…。
それよりも、今は、あの2人を見守ることに集中致しましょう。そうでもしないと、頭が余計なことまで考えて、パンク寸前まで行ってしまいそうよ。
夕月と葉月を間違えそうになったことなんて、今までに一度もなかったものだから、余計に混乱してしまっているのだ。
それに、今の状態になったのは、葉月が原因なのである。
遡ること、数分前。退屈しのぎにと、葉月がある提案を提示して来たのである。「今日は、夕月と朔兄の2人を、僕達2人で見守ろう。」と…。
その時は、未だに混乱して、フリーズしていた私。そんな私を見て、葉月も当惑したのだろうと思う。前触れもなく、こんな提案をしてきたのだった。
「こんな機会、2度とないかもしれないから、2人の後を付けようか?案外、面白いものが、見られるかもしれないよ?退屈しのぎにもなるし…。」
「…はい?…面白いものって、どういうことですの?」
「うん。だからね。未香子の場合なら、朔兄の照れてる姿とか挙動不審の姿とか、結構面白いと思わない?」
夕月と兄の2人の後を付けるって言われても、何だかピンと来なかったの。
あのお兄様が、何か失敗するご様子は、私からは考えられないのですわ。
それに…、2人っきりでいる姿を見ていても、面白いことでもあるだろうか?
…でも、気になると言えば…、気になるかも…。
確かに、葉月と唯2人で回っても、今の私には、楽しいとは思えないわ…。
「じゃあ、2人を見守る会の結成だね。」
私の様子をつぶさに見つめていた葉月は、私の同意を得たとばかりに、無理に押し切ってくる。まあ、それしかないですわね…。はあ~。(気が重いと溜息を吐く)
こうして、私と葉月の夕月達を見守る会が結成されたのであった。でも、何だか、こういう何でも楽しむところも、夕月にそっくりだと思うのですが…。
逆に、2人の性格で、似ていない部分の方が、あるのかしらね?
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そうして、今の現状に至る。今現在の私と葉月は、人間が2人分ピッタリ収まる太い柱の陰から、夕月と兄のデート風景?を見ているのだった。
兄が話し掛け、夕月がそれに応えるように笑いかける。楽しそうな雰囲気に、私はいささか、やさぐれている状態ではある。
本音としては、2人が何を話しているのか、その内容が気になって仕方がない。
それでも、よく考えてみれば、お兄様が私を悲しませることをする訳もなく。
例え、ジャンケンでの勝負だとしても。この状況は何か意味があるのだろうか?
抑々、葉月は、兄に協力でもしているのでしょうか?
横に立っている葉月を、仰ぎ見る。葉月は、お兄様に焼いていないのかしら?
そう、チラッと思って見てみれば、そんな様子は全くなく、ただ冷静に見ている。
う~ん。葉月って、何故か、夕月よりも表情が分かりにくいかもしれないわ。
夕月と同じだと思っていたのに、やっぱり違うのでしょうか?
「うん?何?どうかした?」
「ううん。何もないのですけれど…。お兄様が、私の事を気になさらないことがあるなんて、本当に珍しいかなって思いまして。」
「ああ。うん…。朔兄が…、未香子の男性恐怖症を一刻も早く直したいと、最近話していたから、それも…あるのかな?」
「えっ?どうして…?前ほどではないですわよ?流石に…、大人の男性については、まだ駄目みたいですが……。」
「う~ん。僕も、上手く説明出来ないんだよね…?僕と練習して…とか、なのかなあ?⦅荒治療だとか言ってたし…⦆」
いつもは、私の事を心配して、私の周りに居る兄。でも、今日は全く気にしていない気がします。それを疑問にすれば、葉月が意外なことを言ってきた。私の男性恐怖症が関係していると。葉月も、イマイチ自信が無さそうに、兄の想いを語ってくれますが…、気になる単語が聞こえて…。…葉月と練習?何を…?
うん?でも、やはりそうなのかしら?…そうだとしたら、夕月によく似た葉月となら、確かに大丈夫かもしれませんね。お兄様は、やっぱり心配性過ぎるのですわ。
…お兄様を、何とか安心させられないものかしらね。手っ取り早く…。
…そうだわ。いい事を、思い付きましたわ!早速、葉月に協力して頂けねば。
「…ねえ、葉月。私が嫌ではないのなら、…協力してもらえるかしら?」
「ん?…何を?協力って…、何をする気なの?」
私の協力の申し出に、葉月は目を丸くして、キョトンとした表情をしていて、
もうこれが、これまた夕月によく似ていますのよ。
夕月だったら笑い転げそうな内容なのですが、葉月もそうなるのかしら?
「お兄様に安心してもらう為ですわ。葉月の協力が必要ですもの。」
「…一体、何をするつもり?」
「今から、水族館の中を、仲良く見て回るのですわ。2人で。」
「へっ?……。え~と。2人って、…誰と誰?」
私が協力を再び仰ぐと、葉月は怪訝な顔をして。協力の内容をお話すれば、今度は何だか唐突に、葉月は狼狽え出した。頭の中が混乱しているといった様子である。
あらっ?何だか、反応が微妙に夕月とは異なっていますわね?
葉月は、どうしたのかしら?私に協力するのが、やっぱり嫌なのかしらね?
誰と誰がと訊かれても、私達しかいないでしょうに。本当に分からないのかしら?
「もう…。私達のことですわ。私と葉月。」
「 ‼ 」
私と葉月の2人で仲良く回りましょう、と言っただけなのですが、そう話した途端に、葉月が全く動かなくなったのです…。フリーズしたみたいで…。完全に固まっていますわね。何をそのように、驚いているのでしょうね?…不思議ですわ。
少し待っても動きそうにないので、私は仕方なく、「葉月?」と呼びかけて顔を覗き込んでみる。あらあらっ?葉月が変!?…まあ、どうしたのかしら?
お顔の色が段々と、赤くなってきたような感じが……。
そのように、それほど目を見開いて、私を見なくても…いいではないですか…。
漸く動き出したかと思ったら、葉月は、思いっきり顔をプイッと背けてしまう。
あらっ?耳まで赤いようですね…。もしかして…照れていますの?
夕月では全く見られない反応に、私は興味をそそられていた。何だか、面白いわ。
何に照れているのかは、分かり兼ねますけれど。
うふふ。このような面白い葉月が見れるのでしたら、これからはもう少し、葉月とも仲良くするのも一興ね。…… ‼(突然、何かが閃いて)
ああ!そうなのですね、お兄様!私、葉月で練習の意味が、漸く分かりましたわ。
葉月と仲良くすれば、男性に対抗する手段も、有効になりそうですのね?
教えて下さって、ありがとうございます。お兄様。
副タイトルの意味は、本文に書かれている通りです。
今回ふざけている様で、2人共、行き成りタッグを組まされて、他の事に気を回そうとしている状態です。(一応、真剣)
未香子は、何だか今回の事で、初めて葉月を意識した感じですね。しかも、夕月と同等範囲内で。葉月も、未香子を意識してるのかどうか、よく分からないし…。
果たして、恋愛面で、2人が意識し合うことは、あるのかな?それとも、他の誰かなのかな?
※⦅ ⦆…この二重カッコ内は、セリフを言っている本人の小さな呟き声です。
話し相手には、全く聞こえていません。
( )…序でに、このカッコ内の意味ですが、未香子の動作を表しています。
第三者視点での動作表現となっています。




