51話 お兄様の心配事
今回も、痴漢事件の同じ日のお話です。いつも通り、未香子視点となります。
副タイトル通り、『お兄様』も後半チラッと登場します。
今日の部活終了は、この前の時よりも遅くなっていた。今日は、主役の私が遅れてしまったのだから、それも仕方がないだろうな。遅くまで付き合ってもらった他の部員達には、本当に申し訳ありませんでしたわ。
私達の登校が、あの痴漢男の所為で、警察の方からの被害届けのお話とかもあって、思っていたよりも遅くなってしまったのよ。
お陰で、私達抜きでの撮影は、余り進まなかったそうで…。
代わりに今日は、小道具係は先に帰宅することになり、もう既に帰って行った。
明日は、早めに登校して、片づけから始めるのだと話していたわね。
赤羽根部長は、また痴漢が出るかもしれないと考慮して、今日は男女で混じって帰るように、と部員全員に忠告していた。
確かに…、痴漢が電車の中だけに出るとは、限らないですもの。
私と夕月の帰宅時は、イケメン男子が一緒に帰ってくれることになったわ。
言わずもがな、飛野君・木島君・田尾君のイケメン3人組ですわ。
今日は、どちらかと言うと、護衛の意味合いが強そうね…。だって、飛野君の行動が、明らかにおかし過ぎるのだもの…。…挙動不審と言うか、何と言うか…。
「おい、晶麻。これじゃあ、お前の方が、余程怪しいやつみたいだぞ。」
「そうだな。余りにも、挙動不審っぽい動きだよな。」
「ええっ ‼ 俺は単に、怪しいやつが近くにいないか、見回してるだけだよ!」
「「「いや、その行動こそ、要らないからな!」」」
飛野君の挙動不審なおかし過ぎる行動に、先ずは木島君が突っ込みを入れ、それに田尾君も同意して、それに応答した飛野君の返事に、今度は夕月も含めて、3人で全否定していたわ……。その時の飛野君、一瞬ポカンとしていましたわね。
私は敢えて会話に参加しなかったのですけれど…、同じ気持ちなのですわ。
そういう気持ちを込めて、私も含めた皆が、飛野君をジッと見つめていると…。
飛野君は、この場にいる全員に反対されたと気付き、まるで飼い主に怒られた犬の如く、シュンとする。う~ん。飛野君って、案外、あざといですわね?
ううっ、可愛すぎます!…多分、本人は無自覚なのでしょうね。
「兎に角、お前はじっとしてろよ。」
「そうだね。何もしないでほしい。」
うわあ~。木島君にじっとしているように言われ、夕月にまで何もするなと通告されて、飛野君がすっかり落ち込んでいた。ガックリと肩を落として、明らかにションボリしている。この落ち込みようったら、もう笑ってしまいそうなほどのレベルなのよね…。ふふっ。好きな相手からの忠告が、1番堪えるみたいね。
今までは1番張り切っては、私達の先頭を歩いていたのに。
今は私達の後ろから、トボトボと付いて来るのよ。
あの飛野君が、ここまで沈んでいるなんて…。もう、立ち上がれないというぐらいに、落ち込んでしまったようね。
好きな人からの否定の言葉は、とてもキツイのでしょうね?
その上、頼りにしてません的な発言には、心が折れてしまいそうになる…。
…でも、飛野って案外、立ち直りが早い方なのよね。だから、大丈夫よね?
「でも、いざという時は、頼んだよ。」
「 ‼ …おおっ! 任せとけって!」
その時、夕月はクルリと後ろを振り返ると、飛野君の方に目線をやってから、彼へのフォローの言葉を掛けるのだった。一瞬、何を言われたのか、理解出来なかったようで、飛野君はキョトンとした後、目を見開いてから本当に嬉しそうな顔に戻って、慌てて返答している。これに対して、夕月は、思い通りに上手くいったとでも言いたげに、にっこり微笑んでいた。う~む。……悪魔の笑顔ですこと…。
ところが、飛野君の方は、夕月のその笑顔を見て、もう完熟トマトのように、真っ赤っ赤な顔になっていた。夕月が前を向いた後も、顔を赤くしたままの状態で、それはもう嬉しそうに、ニンマリしているのである。はあっ~。(同情の溜息が…)
夕月……。やり過ぎですわよ?…これ、態とですわね?
ほらっ、もう飛野君ったら、立ち直ってしまいましたのね。飛野君は、本当に扱いやすい単純な性格なのですわ。好きな相手から期待するような言葉を言われたら、
飛野君の場合は、簡単に機嫌が取れますわね。然も、その相手は夕月ですから、簡単にあしらわれてしまうでしょう。夕月ったら、彼で遊んでいるのでは、なくて?
木島君は、そのような2人の様子を見ていて、目を点にしてみていたけれど、段々と半眼の目付きになって来て、それから上を向いて手を顔に当てている。要するに、飛野君のことを、「あのバカ…」と言う具合に、呆れている様子であった。
田尾君は、飛野君を暫く冷静に観察して、その結果、今は苦笑していた。
同じく彼の事を「晶麻って、単細胞生物みたいだな。」と、1人呟いていた。
う~む。飛野君も、高等部に進学している時点で、頭の出来はそう悪くない筈なのですが…?まあ、飛野君は何かに夢中になると、周りが見えなくなるタイプらしいのです。しかし、これは単に騙されやすいだけでは…、とも思わなくもない。
もしかして、恋をすると周りが見えなくなる、と言うから、その状態なのかしら?
だとすれば、私も人の事を言っている場合では、ないのかもしれません…。
…嫌ですわ。飛野君みたいに単純扱いされるのは…。私も…気を付けましょう。
###人の振り見て我が振り返せ、と思い立った未香子であった。
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その後、私達5人は、まだ時間があるということで、この前のお店へ寄り、お茶してから帰宅することにした。当然、飛野君は大喜びで、今日は違うデザートを選んで食べている。私達も、この前とは違うデサートを頼んで。
今日も、美味しく頂きましたわ。うふふふっ。
電車の中では、私達はとても目立っていましたわ。何と言っても、私と夕月だけでなく、イケメン3人も一緒にいるものだから、ね。電車の中でいつも会う学生達で、夕月のことを知っている女子達は、夕月が男子と仲良く話しているので、とても気になっている様子であった。そわそわしながら、聞き耳を立てているのが、私には手に取るように分かっていた。
お陰で何故か、私達が乗車している車両だけが、異様に混雑していたようなの。
態々、他の車両から移ってくる女子も、いた様子なの。夕月を含めた4人は、その事に気が付いているのか、いないのか…。全く気にしている様子がないのよね。
今日は特別とばかりに、男子3人は、私と夕月の最寄り駅まで、一緒に乗車してくれたのだった。本当ならば、3人は途中で降りて行かなければ、いけなかったのに…。随分と遠回りさせてしまったわ。
夕月と共にお礼を言えば、3人共、とても素敵な笑顔で去って行ったわ。
私達と別れると、再び、反対の方向の電車に乗車して。
いやあ、イケメンは得ですこと。彼らイケメン3人の笑顔を偶然見た、乗り合わせていた乗客の女子達の反応ったら……。
あの笑顔が、自分に向けられたものではないのに、顔を真っ赤にしてきゃあきゃあ騒いでいたわよ?あなた達3人のファンも、出来たのではないかしら?
夕月が、私を自宅前まで送ってくれる。私が自宅の庭に入るのを見届けると、夕月も自分の家に帰って行った。私が玄関に扉を開ければ、内玄関にお兄様が仁王立ちしている。うわあ、ビックリしましたわ!こんな所で立ってみえるなんて、お兄様ったら、どうされたのかしら?首を傾げてそう考えていると、行き成り、お兄様が私を抱き締めてきたのだ。ぎゃあ!一体、何ですの?!
私は驚きのあまり、目を白黒させていた。お兄様に何が起こったというのか…。
「未香!…今日は、とても怖かっただろう?明日から、うちの車で行きなさい。何なら、僕が暫く送って行こうか?勿論、夕月も一緒に、だよ。」
「えっ!……お兄様、何を…?どうして…。もしかして…、何か…ご存じなのですか?…でも、どうして…?」
「勿論!未香の事なら、兄である僕は、何でもお見通しなのだよ。」
「??…え~と、………。」
…どうして、お兄様が知っているのだろう。夕月も、今帰ったばかりなのだから、夕月から聞いた訳でも、夕月から聞いた葉月に、とも思えないのですが…。
こういう時が、今までにも時折ある。でも、それはいつも葉月から聞いているみたいだった。夕月と双子の葉月は、夕月に何かあると、勘が働いてすぐ分かるらしいと、前に本人達から聞いたことがあった。うん、便利だね。双子って。
でも、私と兄は違うよね?私が帰る前から、知っているなんて…。
お兄様は…、何を、何処まで、知っているのでしょうか…?
前々から、不思議に思っていたのですが。それ…、どこ情報なのですか、お兄様?
副タイトルの割に、お兄様、後半最後の数行しか登場していません。今回は、名前呼びもなく…。今のところ、影の薄い人です。出番が増える日は、来るのでしょうか?
(注)今回も『###』が付いている箇所があります。
この箇所だけ、誰の言葉でもありません。
第三者視点の『締めの言葉』としてお考え下さい。




