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君の騎士 ~君を守るために~  作者: 無乃海
第一幕 名栄森学苑1年生編【2部 夏の巻 編】
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47話 双子の姉弟

 愈々、双子の弟、表舞台に登場です。

いつものように未香子視点となります。


番外編と特別編(短編)にしか、登場していなかった夕月の弟。さてさて、波乱の予感が…。

 今日は、私達が部活のある日であった。部活だけなので、通常の通学時よりも、遅い時間に出掛けることになっていた。部活に参加する為だけに、制服を着てくる生徒は少なく、殆どの生徒が私服で登校している。だから、私も、夏休み中になってからはずっと、私服で通学していた。持っているブランド物の衣服の中でも、なるべく清楚で学生らしい衣服を選び、着用するように気を付けていた。


今日の登校用に選んだ私服に着替えてから、階段を下りて食堂に行くと、そこには既に、先客が座っていたのだった。両親は早朝に出掛けているので、誰も居ない筈でしたが、夏休みで帰省している兄が、代わりに待っていたようである。


 「おはよう、未香(みか)。今日は何処かに出掛けるの?」

 「おはようございます、お兄様。今日は、部活がある日なのですわ。」


そう、私の大好きなお兄様である。名前は『九条 朔斗(くじょう さきと)』、大学1年生の18歳。因みに、私はもう誕生日を迎えて、16歳になっている。これで、夕月(ゆづ)と同じ年齢になりましたの。何だか、夕月(ゆづ)に、より近づけたようで、嬉しいです。夕月(ゆづ)の双子の弟『葉月(はづき)』は、当然というべく夕月(ゆづ)と同じ年齢ですし、年齢通り学年も1つ上ですので、4人の中では私が1番年下なのです。やっと追いつけた感じがします。


それより、お兄様のことなのですが、昨日の夜に、突然の帰省だったのです。

そう、突然で…ビックリしましたわ。私、何も聞いていませんでしたのに。

お兄様が帰省したということは、勿論、葉月も帰省したのですわよね?

兄と葉月のお2人は、ほぼ毎回一緒に帰省するのですからね。


お兄様の帰省自体については、全く嫌ではありませんし、寧ろ大歓迎なのですが。

ただ、葉月に対してはと言うと、とても複雑な心境なのですよね~。

今までのように、私が、夕月(ゆづ)を独占出来なくなりますもの…。必ずと言ってもいい程、葉月が邪魔をしてくるのですから…。むぅ~。葉月のバカ!(脹れている)


夕月(ゆづ)だって、何かと葉月の方を優先するのですもの…。むぅぅ。(頬を脹らます)

夕月(ゆづ)と葉月は双子にも関わらず、普段はあまり会えないのだから、仕方ないとは思っている。でも…、()()()()()()()()なのです。…乙女心は複雑なのです。


今日は、部活登校だから、流石に関係者と言えど、外部の人間は学苑の中には入れない。どうしても入る必要がある場合は、事前に許可を取る必要がある。

だから、葉月が、部活について来られないのが、()()()()()であった。


最近は、不審者などが頻繁に出没するものだから、お金持ちの家の生徒が通う学校でもあるので、学苑側も非常に気を遣っている様子である。だから、生徒の関係者と言えど、例外の扱いはしない。その気になれば、関係者を装う悪人も、いないとは限らないからである。以前には、実際にそういう事例も遭ったそうですからね。


 「部活って、演劇部?」

 「いえ。今年から、映像部に名称が変更になりましたの。」


お兄様に、部活の名称が変更になった理由も、ともにお伝えすると、途端に不安そうなお顔をされたのです。あれ?今の部活の説明で、何かお兄さまが心配するようなお話をしたかしら?それとも、兄の大袈裟な心配の類なのかしら?


 「映像に残すのは、その、大丈夫なのかい?未香は、可愛過ぎるから、良からぬ映像も撮られないように、気を付けるんだよ?」

 「大丈夫ですわ。常に、夕月(ゆづ)と一緒ですもの。()()()()()は、夕月(ゆづ)が許しませんもの。だから、お兄様は安心してくださいね。」


兄は、心底心配そうな顔で、話し掛けてくる。…()()お話なのですか、お兄様?

一体、何の心配をされているのですか?相変わらず、妹への溺愛ぶりが凄いです。

暗に、夕月(ゆづ)が守ってくれるからと匂わせると、今度は眉を顰めているお兄様。

夕月(ゆづ)が守ってくれるというお話になると、必ずと言ってもいいほど、お兄様はお顔を顰める。お兄様は()()()()お優しいから、夕月(ゆづ)の事も心配しているのだろうな。


お兄様は、これ以上は何も話さず、「気を付けて、行っておいで。」と声を掛けて下さる。だから私も、これ以上は何も()()()お話は、しないようにしている。本当ならば、お兄様が守って下さっていただろうに、昔の私が、それを全て拒否してしまったのよね…。お兄様すら、男性という人間が、怖くて怖くて…。


あの頃は、一番辛いのは自分なのだと、思っていたのよ。実は、あの頃一番お辛かったのは、拒否されたお兄様の方だったかもしれない…。

今頃それに気が付くなんて、私は、何て自分勝手だったのでしょうか。出来ることならば、巻き戻して遣り直したいぐらいだわ。


「では、行って参ります。」と兄にも挨拶して、自宅を出る。悶々と考え事をしながらも、自宅の庭を歩いて行く。高校生になってからは、偶にではあるけれど、私の方からも迎えに行くようになっていた。今日も、約束の時間より早く支度が出来たので、私が迎えに行くのであった。






         *************************






 夕月(ゆづ)の自宅に到着すると、駐車場にはバイクが2台置いてあった。片方は夕月のバイクであり、赤と黒が入った、赤の印象が強いバイクとなっている。

それに対して、葉月のバイクには青と赤が入っており、青が強い印象のバイクであった。あっ、間違いなく、もう1台は葉月のバイクだわ。


玄関外のチャイムを私が鳴らすと、玄関まで出て来たのは、やはり葉月であった。やっぱり帰省早々に、邪魔しに来たのかしらね?私は葉月を見上げて、夕月(ゆづ)の背を抜かした葉月は、また背が伸びたようで、思いのほか高くなっている。


 「おはよう、未香子(みかこ)夕月(ゆづ)なら、今は朝食中だよ。」

 「…おはよう、葉月。それなら、待たせてもらえる?」

 「…どうぞ。」


家の中に入れてもらえないかも、と思ったけれど、あっさり入れてもらえて、肩透かしを食らった気分である。葉月が、玄関のドアを大きく開けてくれたので、私は遠慮なく家の中に入って行く。ダイニング兼リビングに、夕月は居た。


葉月が言った通り、食事中で。北城家(きたしろけ)はお手伝いさんがいないので、夕月(ゆづ)自らが作ったのだろう。葉月も、一緒に食事していたみたいね。私が来たから、開けに来てくれたのだろう。悪いことしたみたい。…でも、私、謝らないわ。


 「おはよう、未香子。もう少し、待っていてくれる?昼食に葉月の大好物を用意していたら、遅くなったんだよ。」

 「だから、いいって言うのに。僕なら、自炊も出来るんだよ。夕月(ゆづ)が出掛ける時ぐらい、自分で作るから。今後はいいよ。」

 「う~ん。昨日帰って来たばかりでしょ?今日ぐらい、作りたかったんだよ。」

 「何も今日、無理しなくても…。夏休み中はここに居るんだから。」


相変わらず、仲が良い姉弟である。余りに仲が良すぎて、妬けてしまうぐらいだ。

「そうだったね。」と言いながら、にこにこ笑っている。多分、分かっていての事なのだろうな。夕月(ゆづ)は面倒見がいい性格だから、単に世話をしたいのだろう。


食事中の葉月を、改めて観察する。顔は夕月(ゆづ)とよく似ているけど、昔ほどそっくりだとは思わない。葉月も中性的な顔だけど、夕月(ゆづ)ほどでもない。女性にしては、背が高すぎるので、もう女性には間違えられないだろう。


確かに同じ顔だけど、葉月は()()になっていた。顔もよく見ると、髭を剃ったと思われるし、眉も少し太めかも。今は夏で半袖を着ているから、腕がしっかり見えている。男性らしく腕も太いし、全体的にがっちりしている感じがある。


夕月(ゆづ)だけとか、葉月だけとか、では気が付かなかったのに、2人を同時に見てしまうと、全く違うと思ってしまう。こうして見ると、夕月(ゆづ)はやはり()()なのである。

葉月は、線が細そうに見えて、夕月(ゆづ)とは逆に案外がっちりしている。

何だか…、ちょっと()()()()してしまう…。


ん?何で()()()()してるの、私?…私は男性が苦手だから、別にいいはずなのに。

そうよ、葉月が男性らしく成長しただけである。私には、全く何も関係ないの…。

あれ?そう言えば、お兄様も男性だけど、何も気にしたことがなかったですわね。


不思議に思って首を傾げていると、視線に気が付いたのか、葉月とバッチリ目が合ってしまう。ギクっ。ヤバい。慌てて目を逸らし、あちこちに視線を動かす。

葉月は、すぐ目を逸らしたようだったので、私はホッとした。

しかし、今度は、夕月(ゆづ)と目がバッチリ合ってしまって…。


きゃあ、夕月(ゆづ)と目が合ってしまったわ。やっぱり、私は、夕月(ゆづ)()()()()のね?

そう都合よく思えば、顔がポッと赤くなって。しかし、その時、夕月(ゆづ)が意味ありげな笑みを浮かべていることに、私は気が付いた。うっ…、この表情は…。

夕月(ゆづ)のこの顔は、何かしようと思っている時の顔である。


ねえ、夕月(ゆづ)。今度は、一体、何をしようと思っているの?

何だか()()()()がするのは、何故なのかしら、ね?

 今回から、また未香子視点に戻ります。お話の内容的には、43話の続きの話になりますね。


到頭、本編に正式に登場した弟『葉月』。そして、同じくやっとセリフ付きで登場した、未香子のお兄様『朔斗』。この2人は、まだ人物一覧に載ってないので、どんな人なのかが全く分からないと思います。ただこの2人は、番外編と特別編には既に一応登場していますので、読まれた皆さんはご存じでしょう。(番外編の『朔斗』は、セリフなし・名前のみの登場なので、影が薄いですが。)


『葉月』は、既に43話に葉月視点がありましたが、表舞台には未登場だった為、筆者的には今回からとさせて頂きました。未香子とも、久しぶりに再会したようです。未香子にとっては、今のところ、ライバルのようですが…。

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