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君の騎士 ~君を守るために~  作者: 無乃海
第一幕 名栄森学苑1年生編【2部 夏の巻 編】
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41話 意外な出会い

 今回は、前回の部活のお話の続きからです。タイトル通り、意外な展開?になっています。

引き続き、暫くは、夏休み中のお話となりそうです。


 「カット!今日の撮影は、これで終了。」

 「そうね。演技組の人達は、お疲れ様。先に帰っていいわよ。悪いけど、裏方係と映像編集係は、残って頂戴ね。」


助監督係であるりょう先輩の声を引き継ぐように、赤羽根部長が、部員全員に向けて声を掛ける。演技組(舞台でお芝居をする生徒達の通称)の部員は、ホッとした雰囲気になる。他の部員は、自分の役割を全うする為に、一斉に動き出す。

最近の部員達の行動は、統率されたような動きで、()()()()怖いのですわね…。


裏方の部員には、脇役の人も含まれるけど、今回のような映像分野では、はっきり区別して分けられている。ちょい役程度なら何時(いつ)でも撮影可能と、別日程でもあったりする。だから今日も、部員全員が部に出て来ているのではなく、一部の完全に裏方のメンバーのみが参加している。


裏方係は、舞台でのセットも担当としており、同じように撮影時のセットの担当も行っている。その為、どうしても撮影時にも出席してもらわなければ為らず、後片付けをするまで帰れないのである。その上、撮影場所は、学苑内のあちこちで行うので、事前にセットが出来なくて、部活に顔を出す時間も、()()()()先に来なければならない。一番早く来て、一番遅く帰るのが、裏方だと言ってもいいわね。


中等部の時の部員なら、絶対に文句が出ていたわよね。今の部員は、裏方が遣りたくて入部した生徒ばかりで、文句を言う部員は1人もいない。

寧ろ、楽しんで遣ってくれているようである。以前と違って、部長もあまり口を出さず、裏方部員達の采配に任せている。主に采配を振るっているのは、2年生の『多々野(ただの)』先輩で、将来は演劇関連の裏方を目指している。


多々野先輩は所謂フツメンで、長く伸ばした前髪で目が隠れており、見た目は暗い感じの人である。子供の頃に、旅一座の役者と知り合いになり、特別に舞台裏の様子を見せてもらったり、色々と話を聞いたりしているうちに、裏方の仕事に興味を持った、と聞いている。裏方志望で入部したのは、去年の途中からという。


裏方をした経験が皆無ではあるけれど、ド素人でも知識は十分持っているらしく、今年からは完全に任せている。部長は総監督係という立場で、どの知識も幅広く持っていても、専門分野の人物には敵わないようなので、そういう時は遠慮なく知恵を借りている。最近の部長は、夏休み終了後には受験を控えている為、部活に来なくなるのもあり、見守りに徹している。


部長との馴れあいも、もうすぐ終わるかと思うと、少し寂しい気もする。

流石に大学は、皆バラバラになるだろうし。部長も、外部受験するという話を噂で聞いている。…何だか寂しいと思ってしまう。


 「未香子みかこ?どうしたの?…帰りに何処かに寄って行く?」

 「ええ、勿論!行きたいです。この前オープンしたばかりの、お洒落なお店がいいですわ!」

 「ははっ!そっか…。なら、そこに寄って行こうか?」


如何やら、顔に出ていたようでして。夕月ゆづが心配そうな顔で、声を掛けてくれる。

何時もは、私が寄り道しようって、強請ねだるのに。今日は、夕月ゆづから誘ってくれて。

心配して誘ってくれたのよね。本当に優しいのですから…。嬉し過ぎます!


今日は登校したと言っても、学苑の行事での登校ではないので、寄り道してもOKなの。夏休み中は、皆が私服で登校するみたいだから、私も私服で登校している。例え、撮影用に制服は持参していても、撮影時しか着用しない。

夕月ゆづは普段から私服だけれど、私はこの夏休み中だけだから、とっても新鮮に感じるのよ。それに、まだ午後のおやつ前の時間だし、寄り道しても暗くならないわ。


 「何処に寄るって?もしかして、甘味処とかか?」

 「うん。そうだね。新しく出来た、お洒落な茶店かな?」

 「おおっ!俺も行く!柊弥しゅうや光輝こうき、一緒に行こうぜ!」

 「ええっ!俺、甘いの苦手なんだけど…。」

 「う~ん。まあ、偶にはいいか。ストレスを感じた時に、甘いものを食べたいのは()()だからね。」


私達が帰ろうとしていた時、直ぐ近くまで来ていた飛野君が、私達の話に食い付いて来たのです。寄り道=甘未処って、どういう感知センサーをしているの?

それとも、おやつ時間が近づいているから、お腹が減っているのかしら?


何故か、私達と一緒に行くことになった、木島君と田尾君。

田尾君は、時々、甘いものも食べているようですわね。木島君は、甘いものはあまり好きではないみたいで…。()()()致します…。バレンタインチョコは、少量なら何とか食べられるようだけれど、毎年()()()をどうされているのかしら?

きっと、私達を横目に、ブラックコーヒーでも飲むのかしらね。お気の毒さま…。





        ****************************





 「おおっ!美味そうなのが目茶苦茶ある!どれにしようかな?」

 「うっ!スゲ~甘そう。もう腹いっぱい…」

 「良かったね、晶麻しょうま。久しぶりだからって、食べ過ぎるなよ。」


飛野君、木島君、田尾君達男子3人の会話である。私と夕月が一緒に並んで座り、向かいに男子3人が座っている。

飛野君は、メニューブックに載っているデザートを、目を輝かせて見つめている。

木島君は、物凄く嫌そうな顔をして、溜息を吐いていて。

田尾君は、飛野君の様子に呆れながら、しっかり釘を刺している。三者三様だわ。


私と夕月ゆづも、男子3人は取り敢えず放っておいて、何にしようかとメニューブックを眺めている最中であった。まだ先月オープンしたばかりのお店なので、日中にも関わらず混雑している。通常の茶店よりも店内は広くて、席も沢山用意されているのに、半分以上が埋まっているもの。


 「お待たせ致しました。ご注文は、お決まりになりましたか?」

 「 ‼ 」


店内には、店員呼び出しボタンがある。先程席に案内してくれた女性店員は、お水だけ用意すると引き下がって行った。私達は注文が決まったので、呼び出しボタンを押して、店員が来るのを待っていたのだけど…。私は、驚きの余り、声が出なかった。ええ!何故、()()()がここに居るの?


 「あれ?萌々(もも)?」

 「えっ!…北岡君?と…未香子さん?」


そう、私達の席に注文を取りに来たのは、萌々香(ももか)さんだった。夏休みになってからの()()()再会である。夕月ゆづは目を丸くし、萌々香さんは驚き過ぎて、注文を入力する機器を一瞬だけ落としそうになったようで、慌てて抱え直していた。

…相変わらず、そそっかしい人ですね、萌々花さん。


 「え~と、2人の自宅って、この近くなの?」

 「いや、違うよ。今日は、映像部の部活があったからね。その帰りに寄り道しようという話になったんだよ。」

 「へえ~。部活かあ。私は今日、部活休みなんだよね。」

 「それで、萌々は、ココでバイトしているの?」

 「うん。バイトというか、このお店、私の親戚が経営してるの。お手伝いしたら、バイト代、弾んでくれるって言うし…。暇な時だけ、手伝っているの。」

 「そうなんだ。まあ、何か落とさないよう、気を付けて。今も落としそうになったでしょ?萌々は、本当にそそっかしいよね。」

 「もう!何も落としてないから!」


…最近、2人とも仲がいいのですよね。夕月ゆづと萌々花さんの2人が話し始めると、私が会話に入れないくらい…なのです。

私は悲しくなってきて、顔をテーブルの方に逸らすと、目の前の男子3人が、ポカンとした表情でいた。あっ、…男子の()()を忘れているわ。


 「だ、誰?きたし…北岡の知り合い?」


飛野君が真っ先に我に返り、夕月ゆづに問い掛けた。夕月ゆづが、自分の知らない人物と仲良く話しているのを見て、彼は動揺したのか、挙動不審っぽい。

男子は、まだ彼女を認識していなかったのね。夕月ゆづとだけ話していた萌々香さんが、ハッとしたように男子達を見た。初めて気が付いたというように、目をぱちくりしている。彼女も、彼らを認識していないのね。


 「同じ1年生の菅 萌々花さんだよ。こっちは、飛野。それから、木島、田尾。全員、映像部の部員だよ。」

 「あ、あの…E組の『菅 萌々花』です。よろしくお願いします。」

 「ああ!外部生なんだ。俺、B組の『飛野 晶麻』。よろしく!」

 「俺は『木島 柊弥』、D組だよ。どうぞよろしく、菅さん。」

 「僕は『田尾 光輝』、C組です。E組の菅さんですね。よろしくね。」


夕月ゆづが、まず男子達に萌々香さんを紹介してから、萌々香さんにも3人を紹介していた。その後は、全員で挨拶して。飛野君は、夕月ゆづの話し相手が誰だか分かって、すっきりした顔である。

まあ、彼は、夕月ゆづが好きだから、誰だか気になっただけなのよね…。


 「あっ!ごめんなさい。私、注文訊きに来たんだった。何にしますか?」

 「じゃあ、私は、抹茶ケーキにしようかな?」

 「あ、これ。抹茶ケーキはうちの店の自慢なの。甘さを抑えて、苦みもすっきりしているの。」

 「え~と、じゃあ、俺はバニラアイスね。晶麻は、このぜんざいだっけ?光輝は、チーズケーキだよね?」

 「私は、フルーツタルトをお願いします。」


実は以前にも、校外学習の時に会っている。その時は、他にも沢山の女子が居たので、男子も特に気にしていなかったのだと思う。だから、男子が覚えていないのは仕方がない。しかし、萌々香さんの方は、彼らを見てもイケメンだから驚いた、というだけで、()()()()関心がなさそうな感じ。


飛野君も田尾君も気にしない中で唯1人、木島君が、萌々香さんの態度に、戸惑っている感じで。夕月ゆづには凄く好意的で、嬉しそうにケーキの説明するのに、彼らには無反応なのだもの。

木島君がさり気なく、彼女の説明を遮って、2人に確認しながら注文し、その後、銘銘めいめいが飲み物も注文したので、萌々花さんは厨房に戻って行った。


飛野君は、甘味のことで頭が一杯なのだろう。待ちきれないのか、にやにやしている。それを横目で見て、田尾君が「晶麻、顔、顔。」と注意している。全く、どれだけ楽しみなのだか…。飛野君は呑気ですわね。萌々香さんが、()()()()になるかもしれないというのに…。

 前回から、夏休み中の出来事となっています。萌々花とイケメン3人との出会い編と言ったものでしょうか。


いやあ~。忘れていました。萌々花って、男子3人とニアミスしてますね。危ない、危ない。自己紹介したのは、女子同士の班のメンバーですね。男子もしたのかと、一瞬思いましたよ。筆者も書いてないことですし、特に自己紹介はなかったということで。



≪補足≫


 萌々花について


  今のところ、男子には恋していませんし、部活(陸上部)とバイトで忙しい様子です。

  晶麻達を見て、イケメンとか、モテそうとかぐらいは思っています。 

  以前、3人と会ったことも覚えていますが、特に何とも思っていなかったようです。

  まだ夕月の事も、気になっている、男子みたいな女子友、という感じでしょうか。


以上、夕月が一歩リードしている、といったところでしょうか。そのうち、萌々花や他の人物の気持ちも書きたいですね。

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