38話 初上映会
映像部としての初作品披露のお話です。
元々は、この映像で上映する演劇部のお話が作りたかった。
そこで、演劇部から映像部になったという、部の名称を変える形で無理矢理実現した次第です。
夏休みまであと少し、という時。やっと映像DVDが出来上がった。夏休み前に間に合ったようである。掲示板に、上映をする旨を記載したポスターを張り、映像部の舞台入り口前にも、張り紙をして告知をする。
自分のクラスメイトや知り合いにも、雑談途中に「上映するよ」と告知をしたり。
その成果もあったのか、北岡人気がある為か、上映会場つまり舞台会場には、大勢の観客の生徒が集まっている。演劇の上演時も、全生徒が集まったかのような感じであったけれど、今回も同様に満席である。
それだけ、映像部のお芝居が注目させているのかと思うと、自分が部員で良かったと、誇らしく思えてくる。
いつも上演している舞台は、元々、演劇部専用の舞台であった。現在は映像部に変わったので、映像も上映できるようにと、お金を掛けて改造したそうだ。
そのお金の半分ほどは、生徒会の方から立て替えてもらっていて、映像部は借金をしている形式となっている。残りのお金は、学苑からの援助である。
生徒達の将来への投資、という扱いらしい。小父様ったら、ナイスガイですわね。
では、借金は如何返すのかと言うと、実は、映像部の上演や上映を見るのは、タダではない。チケット代として、観客である生徒に購入してもらう。その代金の一部を部費に回し、残りの代金を返金に回すことになるらしい。
チケット代金は、芸能人やアイドルのチケット代とは異なり、生徒達のお小遣いでも十分購入出来る、金額設定となっている。何しろ、生徒には一般会社員の子供もいるので、高額のチケットでは購入出来なくなる生徒が、増えてしまう可能性が高い。それでは意味がない。
学苑では、部費を稼ぐことには意味を持たしているので、こういう稼ぎ方では、生徒会に部として認められなくなったりする。
部を認められないと、どうなるのか?それは、部の活動停止である。部費の稼ぎ方を改善しない限り、再度活動出来なくなる。
結果として、部の廃部に追い込まれることもある。生徒会は、学苑の代表者の集まりのようなものであり、理事長の代理でもあるのだ。
頻繁に理事長の指示を仰がなくていいように、生徒達の事は生徒達で決めるようにと、ある程度の事は任せている。この権利が、生徒会に全て任されているのだ。
と言っても、生徒会の人達が、学苑の理事長に直接会うことはなく、また私の遠縁の小父であることは、知らないと思う。実際に理事長代理をしているのは、この学苑の学苑長である。その学苑長が、生徒会に許可したり指示したりしている。
ただ、理事長の代理とした方が、生徒会の威厳が上がるでしょう?
そんな最高権限を持つ生徒会は、当然誰でも入れる訳でもない。
中等部までは、ごく普通の生徒会で在った為、私も入学するまでは、詳しい事情を知らなかった。実は入学後に、理事である小父様が入学祝いに来られた時に、簡単な説明を受けて初めて知ったのである。
生徒会に入るには、小学部・中等部で学級委員や生徒会役員などの経験があり、品行方正であり、また成績も優秀である必要がある。
高等部に入ると、そのような生徒に、学苑側から生徒会に入るか打診があり、自身も他に部活をする予定がなければ、生徒会に正式に任命されることになる。
私の場合、学苑関係者の身内になるので、どんなに成績優秀とかでも、生徒会には入れないという話である。しかし、理事の身内であることは、一部の教師以外には伏せられている事項であり、その事を知らされていない他の教師から、打診を受ける可能性もあったそうで。
小父様から「演劇部に入部すると思われているから、多分大丈夫だろう。もし打診があったら、絶対に断るように。」と。そして夕月もまた同じく、学年トップで学級委員の経験者でもあり、生徒会に入る資格を持っている。しかし、夕月にも生徒会には入らないでほしいと、小父様から頼まれていた。
でも結局、杞憂に終わったようである。どちらにしろ、私達は入学当初から、演劇を続ける気でいたのだから…。中等部で演劇部に入部していなければ、高等部で映像部に入部することはなかった、かもしれない。
あの部長がいる時点で、どうやっても結果は変わらないような気がするわね。
まあそういう訳で、他の学校のように、立候補したり推薦されたり、演説して投票をしてもらって、当選したら生徒会役員になる、という事はない。
小学部・中等部でも、実際にこのような事はなく、主に立候補で決まり、教師の推薦で生徒会に入る者も多かった。
実は、他の学校の事は、高等部で仲良くなった郁さん達、外部生の映像部部員から、聞いた話である。どうやら、うちの学院は色々と特殊みたいね。理事長が小父様だからかなぁ。小父様自身が、特殊な事を好む人だからかもね。
外部入学者は、生徒会に入れないの?そう思うでしょう?
外部入学者も同様の条件で、生徒会役員になることが出来るらしい。
生徒会役員は、生徒達を平等に扱う立場なので、内部生と外部生と半々で役員が構成されている、と小父様の談である。
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結果として、上映会は上演会と変わらず、非常に好評であった。
私達には初の試みであり、中々に難しいもので色々と問題もあった。
しかし、映像を見る限り、演劇とは違う迫力がある。編集効果もあるようだ。
思ったよりもいい出来上がりとなっていて、実は私達も驚いている。
演劇の時は、開演から終幕まで続くので、一発勝負みたいなものである。
しかし、映像の時は、カメラ目線に気を配り、細切れに撮るので、勝手が違って演技が上手く出来なかったりした。
丁度、役に乗っているところで一旦休憩になると、今度役を演じる時には、役柄に成り切れなかったりすることもある。
でも、映像は編集次第で、演技よりも迫力を持たせることが、可能だったようで。
映像の編集は、去年外部入学した2年生の西先輩が、主に1人で行っている。
今年入部した1年生では、編集部門として、外部生の男子生徒3人が入部した。
一応知識はある2人と、残り1人は、興味はあるけど全く知識がなく、実践経験がほぼない、まだまだヒヨコ状態であった。
それに比べて、西先輩は、お父様が映像関連のお仕事関係者なので、幼い時から本格的な機材を見て育ち、小5で既に本格的に編集の勉強を始めたらしい。
映像編集に関しては、今のところ他に出来る人がいないので、基本1人で扱い熟し、1年生は補助として見習い中である。
また、西先輩は撮影も熟すので、諒先輩は助監督の役割に専念出来ている。
諒先輩も学苑に通う前は、カメラ撮影を趣味にしていたようで、どちらかと言うと、ビデオ撮影よりも写真を得意としているそうだ。
毎回、映像部のポスター写真を取っているのは、諒先輩なのである。
偶に暇なのか、映像室で西先輩を手伝っているの姿を、よく見かける。同じ撮影の話で盛り上がったり、2人は気が合うようである。
西先輩は、分厚い眼鏡を掛けた、如何にもカメラオタクな雰囲気があり、話し掛けると気さくな感じで、映像関係を厚く語ってくる真面目な人である。
イケメンではなく、所謂フツメンの人。中の上ぐらいだと思う。
熱中すると周りが見えなくなるようで、映像編集室に籠っては、ずっと編集作業を続けている。それを、毎回止めに行くのが、諒先輩で。
「そろそろお昼だぞ~。」とか「もう今日は帰るぞ~。」とか、声を掛けている。
う~む。女子とは違う男子の友情って、何かいい感じですわね?
昔は、男子が意地悪するから大嫌いになったり、あの事件以降は、男性全てが怖い存在になったりした。今は、大分それらの感情も緩和されてきた、と言うか、夕月がずっと傍に居てくれたから、改善されてきている。
前ほど男子が、男性が怖くなくなって、お父様ともお兄様とも、触れても平気になっている。夕月の弟の葉月に対しても、夕月に接するみたいに、割と平気で、口喧嘩が出来るようになったし。
何で口喧嘩するのか、と思うでしょう?勿論、夕月の取り合いで、なのですわ。
夕月とは血の繋がった双子の弟なのに、あれは…恋してる瞳…だと思うわ。
だから…、葉月と私は、恋のライバルのようなもの…。
葉月の事が気になるのは、夕月の弟で…、ライバルだから…。其れだけなのよ…。
今回のタイトルの割には、生徒会の話や映像に関する部員の内容ばかりで、上映内容や状況は、殆ど出てきません。
特に考えてないので、さらっと流しました。まあ、内容は上演作品と似たもの、とお考え下さい。




