37話 三者面談
今回、4つの小文章に分かれています。
第1部分は、『未香子』視点となっています。第2部分以降からは、会話形式となっております。
会話形式での会話以外の箇所(各部分の1番最後の文章も含む)は、第3者視点のものになります。(筆者から見た時の様子と感想という感じです。)
1学期の最終テストも終了し、後は夏休みになるのを待つだけである。
しかし、その前に、学生にはテストよりある意味恐怖の、三者懇談が待っている。
私は、成績が上がっているので、特に問題はない。
ケーちゃんも、前回のテストで大幅アップで、「久々に、怒られないで済むわ。」と嬉しそうである。良かったですわね。
我が家は、お母様が来て下さることになっている。夕月の家も、多分小母様が来られるのだろうなぁ。うちのお母様はハーフなので、瞳の色が明らかに違っている。
栗毛の髪に薄いグレーの瞳で、鼻がすっと高くてハーフというより外国人っぽい。
明らかに外国人だと思われ、間違えられてしまう。母は、かなりの美人さんなの。
性格は、言いたいことをズバッと言うタイプ。意思もはっきりした人である。
キツイと思われがちである。私とは反対のアグレッシブな行動派でもある。
序でに、うちのお父様はと言うと、特別なイケメンではなくても、日本人にしてはまあまあの容姿である。仕事が出来る男として、割とモテている。
まあ、年齢相応な感じの人ではある。我が家では皆、年相応または、年齢より上に見られるぐらい、ではある。
対して、夕月ママは、顔も夕月達と似た可愛い系で、3人が一緒に居るだけで、親子だとすぐ分かるほど似ている。但し、必ずというぐらい、姉妹弟に間違われている。夕月ママは、年齢よりずっと若く見える人なので。実際の年齢は、私の母と変わらない筈なのに。羨ましいと、私の母が話していたわ。
性格は、穏やかでふんわりした感じの人で、滅多に怒らないみたいね。但し、本気で怒ると、物凄く怖いとのこと。(夕月談より)
私は、夕月ママが怒ったところを、拝見したことがない。夕月が怒った時と、似ているのかしら?でも、実感が湧かないわ。
そして、夕月パパはと言うと、年齢よりも若く見えるさわやか系タイプである。
間違いなくイケメンで、イクメンでもある子煩悩な人でもある。
性格は、意思の強い人で、自分の信念は絶対に曲げないタイプらしい。どうやら、夕月の性格は、小父様に似たみたいなのよね。
見た目は、武術とかに全く縁がない感じの人なのに。それなのに、一通りの武術が出来るらしくって。
武術の大会では、負けたことがなかったと、聞いている。一部の武術では、段を持っているらしい。何に関しても、隙のない父親だと、夕月が以前話していたわ。
小父様も小母様も、うちの両親と変わらない年齢だと、聞いたことがあるわ。
うちの家族が皆、年相応または、それ以上に見られる家系であるのに対して、夕月の家族は皆、年齢より若く見られる家系でしょうね。羨ましい限りですわね。
小父様は、武術も出来るカッコイイ人ですし、小母様はおっとりして優雅な人ですわ。とてもお似合いの夫婦ですわね。
ウチの両親も仲が良いけれど、夕月の両親も物凄く仲が良いのよ。だから、どちらも理想の夫婦だと思うわ。
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夕月ママ 「あらまあ、愛彦さんが担任なの?知りませんでしたわ。」
本田 「ええ、すみません。ご挨拶が遅れました。」
夕月ママ 「あら、いいのよ。どうやら、母が何か手を回したようですものね。」
本田 「……。」(やはりそうか)と心の中で思っている。
夕月ママ 「ごめんなさいねぇ。母は、心配しているだけだと思うの。だから、他意はない筈なの。」
本田 「そう願います。私が担任になったからと言っても、出来ることには限られていますから。」
夕月ママ 「あら、それでいいのよ。見守るだけで、いいの。」
夕月 「…。本田先生。お母様。私のこと、お忘れでは?」
夕月ママ 「あら、いけない。別に、忘れていたわけではないのですよ。」と、話を一旦切って、余所行きの顔になる。
夕月ママ 「先生、うちの子は、どうなのでしょうか?」
本田 「成績は、高等部でも首席です。文句のつけようがないほどの成績です。問題ありません。」
夕月ママ 「まあ、そうなの?それなら、何も言う事がありませんね。母も喜ぶことでしょう。」
本田 「四条のばあさ…お祖母様にもご報告されるのですか?」
夕月ママ 「ええ。母との約束でもありますから。それより…。」と、ここでにっこり笑う。目が笑っていない。
夕月ママ 「愛彦さん。今、『ばあさん』と仰られるつもりでしたの?」と、背景に怒りのオーラが見えるような雰囲気である。
本田 「いえ!見百合さんの聞き間違いかと!」と、内心の焦りで、汗がだらだらと噴き出す。
夕月ママ 「あら、そう?…でも、そのような言葉遣いはだめですよ。貴方は、生徒の模範となる教師なのですからね。」
本田 「…はい。申し訳有りません。以後、十分に気を付けます…。」
夕月 「お母様こそ、気を付けて下さらないと。本田先生のハトコだとは、秘密なんですから。」(ヨシ兄、貸しだからね。)と心の中で呟く。
夕月ママ 「あら、あら。そうなの?気を付けますね。」と話すときには、怒りのオーラが消えていた。
本田 「はい…。お願いします。」(助かった)と内心で、ホッと息を吐く。
…という一幕が、あったそうである。本田先生にとって、夕月ママは、『いとこおじ』の奥さんなんだから、頭あがらないよね。ご愁傷様である。
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未香子ママ 「先生、いつもうちの子が、お世話になっております。」
本田 「こちらこそ、よろしくお願いします。」
未香子ママ 「それで、うちの子は、どうなのでしょうか?」
本田 「高等部に入学してから、順位が上がりましたね。頑張っていますよ。特に問題ありませんよ。」
未香子ママ 「まあ、そうなのですか?よく頑張ったわね。」と、先生にまず返答してから、未香子の方を振り返って微笑む。
未香子 「はい。お母様。」と、母に褒められ、嬉しそうである。
未香子ママ 「それよりも、先生、何処かでお会いしたことがあります?以前に、お見かけしたような気がするのですが…。」と、首を傾げて考え込む仕草をする。
本田 「えっ‼いや、…いえ、…何方かとお間違えかと…。」と返答しながら、内心は焦っている様子である。
未香子ママ 「あら、もしかして……。そうなんですの?」と、何か閃いたような表情である。
本田 「………。」(もしかして、バレたか…。)汗がどっと噴き出す。
未香子ママ 「まあ、そうでしたのね。知りませんでしたわ。」と、何かを納得した様子で、自己完結する母。
本田 「いえ…、まあ、……何も…。」と、何とか誤魔化そうとして、逆にバレそうで止める。
未香子 「???」 母と担任の遣り取りが分からず、首を傾げている。
こちらはこちらで、未香子ママが一癖ありそうな感じです。本田先生、頑張って!
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ケーちゃんママ「先生、うちの子、また赤点でしょうか?」と、心配顔で、恐る恐る聞いてくる。
本田 「いえ、今回は頑張りましたよ。順位もかなり上がりましたし。」(心配性なんだなあ。)と、微笑ましく思っている。
ケーちゃんママ「では、赤点はないのですか?」と、まだ心配げな顔で聞く。
本田 「ご安心下さい。今回は1つも赤点は、ありませんよ。」と、安心させるように微笑んで話す。
ケーちゃんママ「本当に赤点ないんですね!ああ、良かったわ、本当に良かったわ。」と、今にも泣きそうな顔で喜んでいる。
ケーちゃん 「だから言ったのに!テスト見せても、全然信じてくれないんだから!」と、頬を膨らませて文句を言う。
ケーちゃんママ「本当ね。でも…、あんないい点数見たら、逆に不安になってしまって…。」と苦笑する。
ケーちゃん 「何でよ。赤点は、2回に1回程度でしょ!いつも取っても、1つだけだよ。」と、真面目な顔で言い訳している。赤点、毎回取っていたんだね…。
本田 「……。」(親子揃って、赤点にどんだけ拘っているんだか…。点数と順位は、どうでもいいのだろうか…。)
と、いうような出来事があった模様です。家族が違うと、対応も様々ですよね。
それでも無事、三者懇談は終了しました。ホント、教師は辛いですね。本田先生、ご苦労様でした!
三者面談は、会話形式としています。ある面談中の風景、という仕上がりになっています。
『夕月』、『未香子』、そして『ケーちゃん』の面談風景を、切り取ってみました。
『本田先生』を振り回しそうなメンバーを、選んでみたのですが。見事に振り回されて、困惑気味です。
夕月が勝手に、先生に『貸し』にしていますが、何を企んでいるのでしょうか?そして夕月ママ、怒らせると怖いようですね。流石、夕月の母親です。
未香子ママは何に気が付いたのか?夕月と先生がハトコだと、本当に気が付いたのかは、まだよく分かりません。
ケーちゃんママは、ケーちゃんと同じく、マイペースな人みたいですね。そんなに赤点ばかり気にしているのは、何故でしょうね?




