27話 部活動 ~とある部員の事情~
今回も、前半は『未香子』視点で、中盤と後半は2年外部生の部員が、それぞれの視点となります。
何故か、部長を差し置いて弟から先になりました。部長の視点も予定しているのですが。
今回は、新キャラ男子2人の登場です。以前から仄めかしていましたが、やっと正式での登場となりました。
時が経つのは早いもので、6月になっていた。雨期に入ったようで、このところは、毎日雨ばかり降っている。憂鬱になりそうな気もするけれど、私達1年生は、毎日忙しく過ごしている。
運動場でしか、部活が出来ない部などは、体育館や教室を使って、主にストレッチとか、イメージトレーニングを行っているらしい。運動部は、まともな基礎練習ぐらいしか出来ないので、この雨期の時期は大変だろうな。
我が映像部も新入部員が入り、発声練習や簡単なセリフの練習など、初めてお芝居をする部員達への指導が行われていて、部室はとても活気付いている。
本格的なお芝居が初めての、素人同然の部員達への指導を行っているのは、主に赤羽根部長である。
流石に、赤羽根部長のご両親が、芸能人を育てる養成所を、経営されているだけはある。やはり部長も、指導者としてとても的確である。
養成所では、芸人だけでなく俳優も育てているらしく、中等部時代の赤羽根部長は、お芝居の指導も、かなりの熱が入る程の手厳しさであった。
去年、男子校から編入した諒先輩は、部長の実の弟であり、映像関係を得意としている。今迄は、カメラやビデオの撮影を遣っていたそうである。中学時代は、写真部に入部していた、と聞いている。
しかし、我が部ではどちらかというと、助監督(現場監督)係が主体として行っている。更に他にも、映像処理の方も掛け持ちで遣ってもらっている。
今迄は、部長1人で監督係を遣っていたのだけど、来年以降の事を考えれば、監督係なども後継者が必要であった。赤羽根部長が高等部に進学してからは、中等部には、監督係を1人では出来る人材がおらず、演技の中心の部員数人で、お芝居を考えたり、演技を評価し合ったり、他の部員の指導も協力して行っていた。
但し、他の係は兎も角も、監督係が存在する方が、部員達のお芝居のに熱が入りやすい、とは思う。
諒先輩は、去年1年間の期間は、監督である部長に付いて、助監督としての勉強をしたそうである。やはり、部長同様に、しっかりご両親の影響を受けているようである。もう既に、立派な現場監督ぶりだと思う。それでも、部長から見れば、監督としてはまだまだらしいのだけれど。
やっと、我が部のお芝居をお披露目することになり、刻々と初上演の日が近づいて来ていた。その上演を皮切りにして、毎月1回程度の間隔で、お芝居を披露する予定となっている。
映像部としての活動の方は、映像形式でのお芝居を撮っていないので、まだ未定。
取り敢えず、初上演の評判を確認してから、ゆっくりと撮影に入ることになっているのである。
撮影したお芝居の映像は、きちんと編集してからDVD化にする。一般的な映画上映と同様に、学苑の生徒向けとして、公開することになるらしい。映像部専用の舞台会場にて、上映会をする予定である。
こちらは、上演のように毎月公開するのは、無理だと思われる。数か月から半年ぐらいの間隔で、1~2回が限度となりそうである。
部室の奥の部屋では、撮影カメラマン兼、映像編集係の『西 京太』先輩が、今年入部した1年生達に、撮影のコツや映像編集方法を教えていた。
京太先輩は、去年入部した外部生で、諒先輩と同じ2年生である。去年、まだ演劇部だった時に、映像関係の部員を募集していたので、学苑を受験した時に志願した、と聞いている。
彼の父親が、そういう関係のお仕事をされているそうで、自分も同じ仕事に就きたいと、よく話をしている。
ド近眼だということもあり、分厚い眼鏡を掛けていて、少しオタクっぽい感じの人に見える。でも、見た目と違って、明るくて優しい先輩である。
そして、私達の前に来ては、台本を手渡してくる『塚谷 星』先輩。
彼女も、去年入部した外部生で、諒先輩達と同じ2年生である。去年、まだ演劇部だった時に、脚本係を募集していたので、入部志望したそうだ。
父親が脚本家、母親は劇団女優という凄い家庭で育ち、本人も才能があるということで、赤羽根部長が小躍りするほど喜んでいた、という。
台本も素人にしては本格的で、中等部で演技していた役も生かしつつ、内容もまるでドラマや映画のようにしっかり纏まっている。
中等部では、夕月は、北岡役が主体の演技ばかりであった。(それ以外の演技だと、観客である生徒達から、大ブーイングを浴びて、お芝居どころではなかった。)この数冊の台本を見る限り、新たな夕月の役が開発されたようで…。
夕月の新たな役柄に、私は眉を顰めてしまう。それから、恐る恐る夕月の方を仰ぎ見る。すると、夕月の目は、何時もより輝いているようだった。それはもう楽しそうに。生き生きと。
うわぁ、これって楽しんでいる?そういえば、夕月って、楽しいことが大好きでしたわ。夕月には、ウケたってことなのね。
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俺は『赤羽根 諒』、この映像部部長の1つ下の弟だ。
今までは。5歳上の兄貴が通学した、同じ男子校に通っていたのに、何故にいつの間にか、この学苑に通うことになっていた。
俺の知らない間に、姉が両親を説得して、勝手に編入届けが出されていたのだ。
流石にこれには、呆然となったよ。親友も何人かいたのに…。
初めのうちは、姉が何をしたいのかが、全く理解出来なかった。突然、この学苑に編入させられ、部活も姉の所属する演劇部に、ほぼ強制的に入部させられ…。
姉は、昔から突飛な言動が多々あったが。「今回は酷過ぎるだろ!」と思った。
弟を、自分の道具にしか、見ていないのかと…本気で疑ったぐらいに。
だが、いざ通い出すと、悪くないと思っていた。姉は、この学苑で活き活きと輝いていた。俺は、今まではカメラ撮影にしか興味なかったが、監督業も悪くない。
俺は、映像処理も兼ねている。映像編集業界にコネのある『西』と共に、「其れなりの専用機材が、必要だ。」と姉に訴えた。あんな高価な機材が、即導入されたことには、驚くしかなかったよ。
そんな金、部費だけでは賄えない筈だから、寄付金なのかと思っていた。しかし、この学苑の仕組みは変わっていた。今迄も、演劇部上演のチケットとか、売ったりして稼ぐらしい。その稼いだ分と、残りは生徒会からの借金である。
生徒会は学苑運営費として、学苑側からかなりの金額を預かっているらしい。生徒会自体も、色々と商売みたいなことをして儲けを出す必要があるらしく、他の部の援助として金を貸しては、手数料を取っている。
ある意味、この学苑の金儲けの仕組みがスゲーわ!いや~あ、この学苑って面白すぎだな。姉が誘いたくなるの、分かるワ。
今は、姉に感謝してるよ。こんな経験が出来る機会なんて、滅多にないからな。
俺に違う世界も見せてくれた姉を、誇りに思ってるよ。
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『西 京太』、それが俺の名である。去年から、ココに通っている外部生だ。
それまでは公立小中学校に通っていたが、学校見学時に映像部が出来ると聞いて、不合格覚悟で受験した。
当然、合格した時から、部活は映像部に入ると決めていた。
俺の父親が映像関連の仕事をしているので、自宅にも、それなりの本格的な機材が設備されている。幼い時から将来は、親父のような仕事に就きたいと、ずっと思っていたのだ。
去年はまだ演劇部のままであったが、来年には映像部に変更になるという話だ。演劇部の副部長さんが太鼓判を押してくれたので、即入部届けを提出した。
俺は、撮影と映像編集の係となり、入部して僅か半年で、高額な機材の導入を申し出たにも関わらず、赤羽根副部長は即手配してくれていた。
まだ演劇の撮影はテスト段階だったが、やっと今年から本格的に動き出すことが決定し、俺もワクワクしている。
今年、部長になった赤羽根先輩の弟の諒とも、撮影の話で盛り上がるし、この部活には専門的な知識を持った人物も多くて、本当に為になる。
俺は残念ながら、奨学金を貰えるような成績ではなかったが、俺が合格したと話したら、父が「その分バリバリ稼ぐわ」、と言ってくれたので、気が楽になった。
後から母に聞いた話では、俺が「父のような映像関連の仕事に就きたい」と話したことが、相当に嬉しかったらしい。
まあ何にせよ、他の学校では経験できないような凄い体験が出来て、この学苑に入学して良かったと思う。
2年外部生の部員の残り2人、『京太』と『星』が登場しました。後は、『星』の視点だけですね。
やっと正式に、新キャラ2名男子が登場となりました。この2人は、お気に召したでしょうか?
部長、相変わらず部員から色々言われているのですけど、出来る女という感じが出ているでしょうか?
部長は演劇を愛しているタイプなので、周りを巻き込んででも演劇部を何とかしようと暗躍しているのです。
やり方は強引だけど、誰でも巻き込んでいる訳ではなく、才能があると思ったからというところでしょうか。
まあ、何だかんだと言っても、部員皆が認めている人、それが部長なんですね。
◆補足事項…諒と京太の違いについて
『諒』が軽いノリ系なので、ギャル系男子っぽいかも。髪の色は金髪ではないものの、茶髪。多分染めています。
『京太』は真面目系タイプで眼鏡と、『光輝』と似たキャラに見えると思いますが、色々と設定は違います。
『京太』は完璧な映像関連のマニアで、成績もそうパッとしない中間よりは上位の順位程度です。300人生徒が居れば、100位前後ぐらいの。ド近眼の為、かなり分厚いレンズの眼鏡を常にかけています。
『光輝』は特に演劇マニアでもないし、成績は常に学年2・3位で、眼鏡も掛けなくても見えるので、授業中しか掛けていません。
以上、人物補足でした。光輝についても記載したのは、同じ眼鏡を掛けたキャラとして、京太との違いを分かってもらう為です。
今後、機会があれば、本文でもこの補足事項を、記載したいと思っています。




