26話 テスト結果
※クリスマス特別編、並びに、お正月特別編(前後編)、にお付き合い頂き、大変ありがとうございました。本編が今と逆の季節なので、この時期らしいお話が書きたくて、書き切ったことに、ホッとしています。本編は、春から夏になる頃です。再び、また暖かい季節に戻るかと思うと、ちょっぴり辛いです。
今回のお話は、テストに関する短編のお話を、幾つか繋ぎ載せています。いつもよりも、少し短めです。前半、中盤、後半で、誰目線かも内容も異なります。
中盤は、意外な人のお話です。
※現在、見直しの為、改稿しております。当初より少しだけ追加しております。
内容も分かりやすくなるように、心掛けました。
改めて、よろしくお願い致します。
校外学習は、何事もなく無事に終了した。とうとう、教師陣が言うところの『お楽しみ』である、テスト返しが始まっている。嫌ですわ…。
生徒の立場から言えば、ちっとも、お楽しみではないのですよ!
名栄森学苑では、学年毎に、1位~10位までの成績順位が、職員室側の廊下の壁に、ズラッと張り出されるのである。これは、中等部からの恒例行事のようなものである。
流石に、小学部では、張り出しはなかったのですが。代わりにクラス順位が、担任教師によって、1位~3位ぐらいまで口頭で発表されていましたが。
中には1位だけ、1位と2位だけしか発表しない教師も、いたようですわね。
高等部では中等部同様に、1位~10位が張り出されることになっている。
夕月は、多分、首席だと思いますわ。いえ、間違いなくそうですわ!
ええ、そうに違いありません。夕月より上位を取れる人など、そうはおりませんものね。後は、外部生がどのくらい上位に入ってくるかが、心配なのですが。
問題は、私の方ですわね。
私は、中等部でも上位にはいた方なのですが…、流石に10位までには入っていなかったわね。高等部は、もっと無理なのではないでしょうか?
1年生の全生徒の中で、どのくらいの順位になるのかが、とても心配なのです…。せめて、どんなに成績が悪くとも、…50位以内には入りたいと、テストが終了した今は、願うことしか出来ないのですもの…。
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私は、1年A組の担任教師である。名を、『本田 愛彦』という。
此処、名栄森学苑の卒業生でもあり、私の年齢は30になったばかりだ。
まだ、結婚こそしてはいないのだが、今年中に結婚式を挙げる予定である。
私の婚約者もまた、この名栄森学苑の卒業生であり、私の後輩でもあるのだ。
但し、私とは少し年が離れており、私がこの学苑の教師の実習生として来た時に、生徒であったのが彼女だった。
つまり、私が21歳、彼女が16歳で高1の時に、初めて知り合ったのだ。
その時は、お互いにあまり気にしていなかったのだが…。
彼女も真面目で、勉強一筋という感じの学生であったし、私も実習生として、生徒達にチヤホヤされても、本音では恋などする余裕が、全くなかったからだ。
だから、私も彼女も再会してすぐは、気が付かなかったぐらいである。
お互いに、記憶にすら残していない相手だった。
私が正式に教師になって、彼女が大学生になってから、卒業生との合コンが行われた時に偶々参加して、そこで再会してから意気投合し、今に至る。
まあ、私の事情は、このぐらいでいいだろう。問題は、今現在のことである。
そう、今年は、私の生徒の中に、うちの親戚の子供がいるのだ。しかも、自分のクラスの生徒になったのだ。お互いに苗字が違うから、誰にも全く気が付かれていないだろうけどな。コイツと親戚だと知られたら最後、生徒達からどういう目で見られるか考えるだけで、ある意味怖いな…。逆に、他の先生方からは、同情の目を向けられそうで、其れは其れで…嫌だと思う。
学苑側にも特に知らせていないから、理事長と学苑長ぐらいしか知らないだろう。
まさかコイツのクラス担任になるとは思わなかったから、一応は、互いに知らないフリをしている。
別に、バレたら本当に困る訳でもないのだが、今更という感じで、やはりコイツと比べられそうで、嫌だいう一言に尽きる。
私学の学校では、親戚や親子が教師と生徒という話は、よくあることなのだが。
やはり他の生徒に、示しがつかない事態も起こり得る、と思う。教師達は兎も角、他の生徒達が知らない方がいい場合もある、ということだ。
「まさか…、お前のクラス担任になるとは、思わなかったよ。」
「そうだね。ヨシ兄が、担任とはね。何か、調子狂うよ。」
「嘘つけ!お前…、堂々としていただろうが。」
「ヨシ兄は、挙動不審な行動があったよね?」
学苑長から、クラス発表の話があった時から、分かってはいたのだが。(コイツには、理事長も知らせていない筈である。それをすると、情報漏洩になるだろう。)
やはりコイツと目が合った時に、動揺してしまった様だ。折角、色々と誤魔化したつもりだったのにな。
「くくっ。あれぐらいなら大丈夫。相手が私だから、バレただけだよ。」
コイツ、本当にいい性格してやがる。弟は真面目なヤツなのに、コイツは言葉遊びが好きで、よく人に振って相手を翻弄する。本当に、人をよく見ていると思う。
以前、趣味は人間観察とか、フザケタことをいっていた時期もあったな。
まあ、コイツにとっては真面目な趣味なのだろうが、観察される方は堪ったもんじゃねえよ!
「多分、ヨシ兄が担任になったのは、偶然じゃないよ。」
「はぁっ!マジか‼もしかして、四条のばあさんの圧力とかか?」
何だと!?やはりコイツのクラス担任になったのは、陰謀なんじゃねえのか?!
四条のばあさん、あんた、俺に孫の監視をさせる気だな?!
コイツはふっと笑って、その後は黙り込み、肝心な話はしない。当たらずとも遠からず、と言ったところか。何にせよ、厄介である。
兎に角、親戚だとは、色々な意味で知られたくない…。コイツ等の問題に巻き込まれるのは、…なるべく勘弁してもらいたい。
まあ、弟が一緒に入学して来ないだけでも、マシなのかもしれない。
弟は真面目と言っても、コイツ等は2人になった途端、色んな意味で質が悪くなるからな。1人でも居ない方が、マシである。
しかし、相変わらず頭がいい。うちの家系は、どちらかと言うと、頭脳派の家系だと思うが、コイツ等は特に飛び抜けていると思う。
今回の試験、他の教師にも聞かされたのだが、全教科ほぼ満点だった。これで、高等部でも首席で間違いないだろう。
あ~あ。俺は結局、貧乏くじを引かされたんだろうな。間違いなく、コイツのいざという時のストッパー扱いなんだろう…。
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一方、E組の教室では、こんな会話が躱されていた。
郁 「ねぇねぇ、萌々ちゃん、ナルちゃん、テスト順位どうだったぁ?」
萌々花 「私はね、思ったより良かったよ。学年順位が5位だったから、自分でもビックリしているんだよ。」
鳴美 「えっ!5位?じゃあ、廊下に張り出されるね、おめでとう!私はね、15位だったんだよね。」
萌々花 「ナルちゃん、惜しい!あと、もうちょっとだったね。」
郁 「そうなんだぁ?2人とも凄いね。あっ、私はね、6位なんだぁ~。」
萌々花、鳴美 「「えっ‼……。」」
郁って、漫画とか小説とかアニメの話ばかりだけど、物凄く頭いいんだね。
軽いショックを受けている、萌々花と鳴美なのである。
さて、もう一方のA組の教室では、こんな会話が躱されていた。
ケーちゃん 「ガ~ン。悪夢だぁ。」
そう言って、机に突っ伏すケーちゃん。その横から、ケーちゃんの成績表を覗き込む、勢木と吉乃。その順位を見て、2人共目を丸くする。
勢木 「おお、これはまた…。」
吉乃 「う~ん。外部生が入った分、順位が下がったんだね。」
ケーちゃん 「今迄も、赤点ギリ助かっていたぐらいなのに~。」
今にも泣きそうな顔になるケーちゃん。残りの2人は、顔を見合わせて
勢木、吉乃 「「よしよし。」」
2人で宥める様に、ケーちゃんの頭や背中を撫でている。
そして、その傍らで、こちらの2人は、こんな会話を交わしていた。
未香子 「初めてですわ‼このような順位は…。いつもよりも学年順位が上がっていますもの!9位ですって!…嬉しい!」
夕月 「うん、よく頑張ったね。」
未香子 「これも、夕月が、試験勉強に付き合ってくれたからですわっ!」
夕月 「そう?いつもより、厳しく教えた甲斐があったよ。」
未香子は、瞳を輝かせて、飛び上がらんばかりの喜びようである。お嬢様だから、ピョンピョン跳ねたりしないようですね。夕月も、そんな楽しそうな彼女を見て、目を細めて笑顔を向けていた。そんな2人の姿は、まるで、1枚の絵になりそうなほど、微笑ましいものであった。
ただ……。…夕月は、結構スパルタのようである。次回のテスト勉強に誘われたケーちゃんは、果たして耐えられるのだろうか?
26話タイトル通りの内容です。未香子視点は前半だけで、中盤は何と、A組担任教師視点となります。
実は、あの人と親戚関係なんですよね。意外な設定です、自分でも。
公立だと有り得ない事実なので、面白いかなと思って、こういう設定にしました。
詳しくは登場人物設定に、記載されていますから、ここで隠してもバレバレですね。
後半は、第三者視点となっています。登場人物の誰の視点でもありません。どちらかと言えば、筆者視点ですかね。
セリフ中心にしてみました。また気が向けば、こういう形式の第三者視点にするかもしれません。
※『四条のばあさん』は、本編後半の方で、登場予定のキャラです。まだ、登場人物一覧にも載せていません。




