番外 ある日の裏事情 その2
これが、今年最後の更新となります。ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
来年もよろしければ、お付き合い下さい。よろしくお願いします。
今回が、このお話最後の番外編です。引き続き、姉視点です。
本編のお話の、意外な裏話が隠されていたのが、このお話で分かるようになっています。
※現在、見直しの為、改稿しております。当初より少しだけ追加しております。
内容も分かりやすくなるように、心掛けました。
改めて、よろしくお願い致します。
それは、5月の連休中のある日の出来事、の続き。
あれから移動する時は、手を繋いで歩く。迷子防止(誰が?)も兼ねて、周りにいる大勢の男共にも、牽制できて一石二鳥である。未香子が、本当に嬉しそうにしてくれる。このぐらいの事なら、我が儘にも入らないよ。
未香子が望むのなら、キスだってするよ。頬にならね。…流石に、唇は避けるよ。
そこまで遣ったら、恋人のフリではなくなるからね。
何事にも、ケジメを付けることは、大切なことである。
あの日は、未香子が喜びそうなペア・アクセを買って、片方をプレゼントした。
その頃は、まだ順調であった。周りの人々が話す「可愛いカップルだね。」の宣言に、真っ赤になる未香子。ホント、可愛いよね。
こんな純粋女子なら、モテて当然だろうな。私と未香子が、逆の立場でなくて良かった、とつくづく思うよ。私には、こんな風に装うのは無理だからね。
いや、無理ではないけど、演技するということになるから…。純粋ではない。
ペア・アクセで、恋人繋ぎしていなくても、「恋人いますよ」のアピールになると思ったのに。隙あらば、声を掛けようとする男共がいる。
私も、それと無く牽制してはいるのだが。まあ、この中性的な顔と言えばいいのか、女顔と言えばいいのか…。この顔では、完全に追い払えていない。
気が付くと、私達のすぐ近くに、男性2人組がいた。まるで、男友達と遊びに来た、という感じではあるが、顔を隠すように深く帽子を被って、何だか怪しい。
だから、直ぐに気が付いてしまった。彼らが、誰なのか。
私は、隣の未香子に気付かれないよう、そっと溜息を吐く。
未香子は、振り返っても案外鈍いから、気が付かないだろう。だからって、そういう問題じゃない。頭が痛い。2人して、何やっているんだか…。
…どうせなら、徹底的に隠れて見守ってほしい。私の代わりとばかりに、変な牽制も止めてくれないかな?私がそう思っていても、悪くないと思うけど?
「どうしたの、夕月?誰か、知っている人が居たの?」
「いや、何でもないよ。見間違いだったみたいだ。」
その後も、私が、2人がいるだろう場所を見ていたから、未香子も不思議に思ったようだ。流石に、2人も堂々と見える場所には、居ないしね。
今は食事をする為、広場に居る。場所取りも必要だったから、心配だったけど大丈夫だと言うので、1人で注文をしに行った。未香子の好みは知ってるしね。
だけど、注文して待っている内に、未香子が待っている広場の方から、騒ぎが聞こえてきた。嫌な予感がして、店員に声だけ掛けて、その場を離れる。
走り出しても直ぐに人込みで、中々前に進めなくなる。何とか人をかき分けて戻ると、やはり未香子が、知らない男性2人組に絡まれていた。
男の1人が、未香子の腕を無理矢理引っ張って、椅子から立ち上がらせようとしていた。其れを見て、ふつふつと怒りが湧いてくる。
未香子を開放すべく、直ぐに行動に移す。男の腕を思いっきり捻り、言葉で撤退を促すが、この馬鹿な男共は気が付かない。
折角これぐらいで、見逃してやろうというのに。もう1人が殴り掛かって来た。
一応、これでも武術一通り、合格点(段も一部持っているが)貰っているんだ。
一目で、武術経験がないと分かった。この男共が、私に勝てる勝算はゼロ。
いや、私の怒りは頂点になっているから、マイナスだ。
案の定、この男共はかなり弱かった。どうやら、武術の心得がないどころか、真面に喧嘩した経験ない、という感じである。今までは、強そうな相手には、尻尾を巻いて逃げて来たのかな?
私の反撃に1人は気絶、もう1人はボー然としている。
「まだ遣るの?遣るなら手加減は出来ないけど?」
これを聞いて、奴らは顔を青くして、慌てて逃げて行った。多分、あの2人が後を追うから、任せればいい。私には、未香子のフォローという、大事な役割がある。
女顔だから弱いと、高を括ったのだろう。随分と、馬鹿にされたみたいだな?
実際には、女子なんだが。女に負けたと知ったら、どんな顔をするのかな?
騒ぎが大きくなりすぎて、遊園地の職員と警備員が、駆け付けて来た。
私達がまだ未成年なので、後の事は、警備員が対処してくれるとらしい。
私としては、まだ彼女が心配なのだけど、丁寧な対応をしてくれる大人の人には、敬意を払わなねばならない。
職員たちも去り、見物人が居なくなって、やっと周りが穏やかになった頃、未香子が私に抱き着いて来たので、ぎゅっと抱き締め返す。良かった、無事で!
もう少し遅かったらと思うと…。自分の未熟さが嫌になる。
こんな事なら、一緒に買いに行けばよかった。そう思っても、後の祭りだ。
多分、葉月達も、冷や汗をかいていたことだろう。助けに入ることも出来ず、イライラしていただろうな。私の様子で、後悔していると、彼女に伝わってしまった。
「ペア・アクセがあったから、頑張れたのよ。」と言って、私を慰めようとする。
本当に未香子には勝てない。私の騎士がいいと言う、君には…。
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私と未香子は、何事もなかったかのように、その後も遊園地で過ごし、帰る前に、お土産ショップに寄ることにした。
其処で、未香子が内緒にして、私と葉月の為のペア・アクセを買ってくれていた。「葉月が焼くからね。」と言って…。
私が買った物とは、違う意味のペア・アクセ。主に、家族を意識した意味合いの、家内安全のペア・アクセであった。確かに、葉月も焼くだろうけど、朔斗さんも焼くと思うよ?大好きなお兄様とのペア・アクセ、買ってる?
「ありがとう。葉月も喜ぶよ。」
「夕月とペアなら、何でも喜びそうだけれど?」
葉月が焼くという話をされ、私は大爆笑であった。葉月のことも考えて、買ってくれたんだと気が付いたからこそ、笑えてしまったのだ。
本当に、葉月のことが、顔も見たくない程大嫌いだったら、いくら愚痴ると五月蠅いからとしても、こんな風に気を回さないだろう。
葉月‼いい加減に、もっとちゃんと向き合いなよ?自分に素直になりなさい!
お姉様の言うことを、聞き分けなさいな!
どれだけ以心伝心の双子と言えど、心の声は聞こえないのだが…。
その後は、葉月達に、何も言わずに帰宅したけど、どうなったのであろうか?
あのまま、私達の後を付いて回ることが、出来なくなった筈だ。男達を追って行ったのだから…。その上、あの2人が何もせず、帰宅するなんて考えられない。
やはり、私達が帰宅した後も、暫く葉月は帰って来なかった。…間違いなく、後処理をしているのだろうな。警備員も追いかけたから、被害は最小限で収まるかな?
私と未香子に危害を加えた害虫を、あの2人が害さない訳がないのだから。
私も未香子も、これ以上の事は望んでいないのだけど、ね。
まあ、反対の立場なら、私も同じ行動を取るだろうから、責めないけどね。
思っていた通り、その日の大夫遅くになって、葉月がやっと帰宅した。
「夕月、起きてる?」
「あぁ、起きてる。あれからどうなった?」
部屋の戸がノックされたので応答すると、葉月が私の部屋に入って来た。
やはり、あれから直ぐ、男共を2人で追いかけたらしい。
2人組を捕まえて、尋問している途中で、警備員も追いついて来たようだ。
一度全員で、警備員の控室みたいな場所に、行くことになったそうだ。
流石に、全ての事情を話すわけにはいかず、偶々2人で遊びに来ていたら、各々の兄と妹という私達がいたので、傍で見守っていた、と話を合わせたそうだ。
我が家にも未香子の家にも、遊園地側からその後の対応について、電話連絡が入ることになっている。
話しがややこしくなるので、私が女という事だけは、色んな意味から隠しておき、葉月の姉ではなく、 葉月の兄ということにしたと、話していた。
女同士でのデートなんて、色んな憶測を呼ぶから、厄介である。
あの男達の正体が分かったので、彼らの通う大学と彼らの自宅に、遊園地側から連絡された。今回は取り敢えず、厳重注意で済まされることとなったそうだ。
これで次回、同様の問題を起こすと、大学も何らかの手続きをするだろうと…。
2人に摑まってからは、色んな意味で顔色を失くし、大人しくしていたそうだ。
だろうね。顔が物凄く似た葉月が、追いかけて来て。しかも1人は、女顔の私よりも明らかに背が高い男と、もう1人は、外国人風の超イケメン、である。
女顔の反撃が、余程緩かったと感じるような、圧が与えられたことだろう。
私も、未香子の前だからね、是でも控えているのだけどね?
決して、女子だからあの程度、じゃないんだよ?
もう2度と、出会わないことを願う。
私の辞書にも、2度目は絶対にないからね。
いやあ、夕月さん、結構いい性格してますね。そして、葉月君も。あと、もう1人もね。この姉弟を敵に回してはいけません、決して!
夕月も葉月も、普段は温厚なんですけど、夕月は未香子の事で、葉月は夕月の事で、容赦はありません。
あともう1人も、敵に回すと怖いタイプなのです。それ以上は、まだ秘密です。
次回は、また元の本編に戻ります。更新は来年になります。あと少しですが、よいお年を!
※来年となる明日、元旦と2日に、『お正月特別編』(前後編)を更新致します。よろしくお願いします。




