表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君の騎士 ~君を守るために~  作者: 無乃海
第一幕 名坂学苑1年生編【1部 春の巻 編】
30/199

番外 ある日の裏事情 その1

 今回も番外編です。あの姉弟のお話として、姉視点としています。

前回のお話を、引き継ぐ内容となっています。前回が何話の裏話か分からなければ、今回ではっきりする事かと。


※現在、見直しの為、改稿しております。当初より少しだけ追加しております。

 内容も分かりやすくなるように、心掛けました。

 改めて、よろしくお願い致します。

 それは、5月の連休中のある日の出来事。


連休中に、何処かへ遊びに行きたがっていた、未香子(みかこ)

偶々、ご両親が仕事の付き合いで貰ったからと、「遊園地のペアチケットがあるから、明日出掛けませんこと?」と、彼女から誘われた。


そのチケットは、5月連休中の期間限定ものであり、連休が終わると、使用不可になる代物であった。要するに、連休中に行かなければ、使用出来なくなる。

しかし、実を言うと、このチケットは、葉月(はづき)が裏で手配したもの、だったりする。連休になる少し前頃から、彼女が遊園地に行きたいと呟いていたのを、しっかり聞いていたからね。多分、自宅でも無意識に呟いていたのだと思う。


この話を知った葉月が、自分に心当たりがあると言い出し、何処からかチケットを手に入れて来たのだった。まぁ、葉月に限って、悪いことはしていないと思うから、特に詮索はしないで置く。

未香子のご両親には、一通りは説明済みである。快く、私達の()()()に、協力して下さっている。有難いことに…。


未香子のご両親も、私も葉月も、実は未香子にかなり甘いと、言ってもいいだろう。ご両親や私は兎も角、葉月は、ああ見えて、未香子にとても優しい。

陰では、なのだが…。年頃の男子だからか、テレがあるのだと思う。


葉月と私は双子姉弟であり、物心ついた頃には、私達2人は既に仲が良かった。

以心伝心のような感覚的なものがあり、言葉にしなくても、お互いの事が理解出来ていた。生まれた時には、既に…。

自分達には、それが至極当たり前のことであり、疑問に思ったこともなく。


私達は一卵性ではないけれど、何故か相手の心の中が、自分の事のように読めると言ってもいい。具体的な考え方は細かく言えば違うけど、双子であるからか、相手の気持ちは自分よりも理解出来ている、というぐらいには。


幼い頃の私達は、いつも一緒に居たので、一番自分を理解してくれる相手でもあった。だから「一生一緒に居ようね。」なんて、思い合っていたこともあった。

その関係が変わったのが、日本に帰国して、未香子と知り合ってから。私達の間には、誰も入れないと思っていたのに、未香子が間に入って来て…。


私は()()()()、一番自分を理解する相手として、大事なのだと理解して。

だけど弟は、私を()()()()()求めていて。

双子だけど、想いが違うことに、今更ながらに気が付いた。体良く、大人達の思惑もあり、引き離されていた私達。これを利用して、私も葉月も、未香子と各々仲良くなっていった。ただ、彼女は、()()()()憶えていないようだけれど…。


その後に、あの事件が起こり、私達も当事者という形で巻き込まれて、私達姉弟の間は、より複雑化してしまった。葉月(おとうと)は、未香子が自分から私を引き離した、という結果的な思い込みをしており、中々素直になれないようである。

それと同時に、自分は未香子から嫌われている、とも思い込んでいる部分がある。

それは、未香子の男性嫌いが治らない、と思っているから、でもあるのだろう…。


私が未香子を大事にするものだから、自分も大切に思うのだと…。

私を巡っては、自分は、未香子とはライバルの位置関係なのだと…。私の想いに気付いても、理解しない矛盾が生じる。

真面目過ぎて、今は、拒否状態に近いのではないだろうか?


葉月は、私と同様、そんなに鈍くないと思うのだが…。()()()()と言う言葉もあるのだから、それと似たようなものなのか…。

対して私は、面白い事に惹かれるタイプであり、苦痛な事でも、何でも楽しい事に変換する楽天的な部分も、持ち合わせている。真面目な弟とは、ほぼ真逆である。


だから、男子として振舞うことに、葉月が思うほどに、大変だとは思っていない。

そして、思ったこともない。確かに鍛錬はきつい時期もあったけど、自分で決めた上で、楽しんで振舞っていることでもある。


その事については、葉月(おとうと)と言えど、()()()()、口出しされたくない!

そう、思っている…。




        ****************************




 私と未香子は、未香子の家の車で出掛けている。葉月は、多分、()()()の運転する車で、付いて来ていることだろう。

()()()とは、未香子のお兄様である『朔斗(さきと)』さん、のことである。

葉月とは、小学部から同じ男子校に通っていた先輩・後輩の間柄なので、いつも一緒に帰省して来るのだ。


朔斗さんは、今年から大学生なので、最近免許を取ったばかりだという。

まるで、この2人の方が兄弟だと思うほど、昔から仲がいい。朔斗さんは、私にも妹のように優しく接してくれる、理想的なお兄さんである。


私や未香子の事になると、この2人は、タッグを組むことが多いと思う。

お互いに心配してくれているのだろうけど、過保護すぎるのは止めて欲しい。

今も2人で、何処からか此方を監視していることだろう。思わず、溜息を吐きそうになり、隣に未香子が居ることを思い出し、気を引き締めた。

その表情が、彼女には険しく見えたのかもしれない。


 「どうしたの?遊園地じゃ、楽しくない?」

 「そんなことないよ。十分楽しんでるよ。ただ、周りに気を配らないとね。」

 「あっ‼そうよね。夕月ゆづは、私の護衛も兼ねてるのに…。私…、完全に足手纏いだったわ。ごめんなさい。」


私は、何時(いつ)もより考え込んでいたようだ。未香子が、私の顔を見上げて覗き込んでくる。未香子に要らぬ心配を、掛けてしまった。

しかも、自分が足手纏いだとしょんぼりして。本当に可愛いな、未香子は。

全くそんなことないのに。保護欲を誘う仕草だと思う。


私は、性別こそ女性ではあるけど、もし本当に男性だったら、本気で付き合いたいタイプかな。恋愛的な意味で。恋人にしたいと、思うぐらいに…。

男性として生まれなかったのは、いろんな意味で残念だと思う。


実際には、私は如何足掻いても()()であり、残念ながらこの先は有り得ない。

()()()()()ても、好きだとは思っている。誰にも負けないぐらい、物凄く大事だと思っている。しかし、未香子には悪いけれど、(いず)れ別々の道を歩くことになる。

私は、其れまでの代理でしかない。

だからと言って、其れまでの守る役は、()()に誰にも譲れないが…。


 「ふっ。じゃあ、()()護衛に徹して、ナイト役は、()()()()()にしてもらうことに、しようかな?」

 「ダメ‼そんなの駄目だから!私は、夕月(ゆづ)が良いんだから!」

 「くくくっ。では、お姫様。()()よければ、お手をどうぞ。」


余りにも落ち込んでいる様子なので、私は皮肉るように語り掛ける。そんな事を言うと一緒に出掛けないよ 、と。すると、彼女は急にアタフタして、否定して来る。

何これ?可愛すぎるわ。未香子は、よく我が儘なお嬢様だと、他者から思われているらしいけど。私からすれば、可愛い我が儘でしかないんだよ。


私に対しての我が儘なら、許容範囲だよ。但し、未香子に限るけどね。

皆、勘違いしていると思うのだが、私は元々、()()()()()騎士(ナイト)であって、他の女子の為にではない。表向きも兼ね、面白いからそう振舞っているだけで…。


冷たいようだが、私は、他者から望まれることは、あまり好まない。

本当の意味で、皆に平等に優しいのは、弟の葉月の方であり、私ではない。

私は単に、()()()()()()()を演じているに過ぎない。


私がそう思いながら、未香子に向かって、左手を差し出す。未香子は、恥ずかしそうに顔を赤くして、「…はい。」と言って、自分の右手を私の手のひらに載せる。

私はその手を握って、指と指の間に自分の指を挟んで、敢えて()()()()にする。

今の私の外見は、完璧な()()()姿()だから、何も問題ない。


未香子が期待していると、私は知っていたからね。それに、答えた形なのだ。

あとは、周りを()()する意味も込めて、かな?

 前回の番外編の、一応は続きとなっています。只、副タイトルは、別タイトルとしました。


このお話は、ある1日の完全な裏話となっています。その為、セリフなど被りますが、一部抜粋のような感じで、全く同じにはしていません。

未香子視点と夕月視点は、別の感情と感想になる訳ですから、ニュアンスが異なるのは当然だと思います。

そういう意味を込めて、敢えて一部変えておりますので、ご了承下さい。



クリスマス特別編、お読み頂き、ありがとうございました。お正月特別編も予定しておりますので、よろしくお願い致します。詳しくは、活動報告の方で、ご報告になるかと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ