22話 入学後の初テスト
22話のタイトル通りのお話です。学生さんは、もうテスト終わって、結果出てますか?
そろそろ三者懇談の時期ですかね?ある意味、テストより嫌かもしれませんね。
何がって、親に怒られるとか、先生に日頃の態度をチクられるとか…。
優秀だから、そんなことなかったって?羨ましい限りです。
遊園地からの帰り道、真姫さんの運転で帰る道中、彼女にもお土産を渡した。「私にもですか?」と少し驚いていたけど、喜んでくれた。
家に帰ったら、皆にもお土産を渡そうと思っていたのに、どうやら今日の疲れが出たらしく、車の中ですっかり眠ってしまったようで…。
自宅に戻った時に、一度目を覚ましたのだけど、寝ぼけていたみたい。三千さんに勧められるまま、ベットに入って朝までぐっすりだったようだ。
結局渡せたのは、次の朝になってから。でも、両親も三千さん達皆も、喜んでくれてよかったわ。
5月の連休もあっという間に終わり、入学してから初めてのテストが、昨日に引き続き今日と2日間行われた。
テストは…、うん。まあ、あのぐらいなものでしょう。
夕月は小学部からずっと、学年首席をキープし続けている程の、所謂秀才タイプだと思う。不得意科目が特にないって、超羨ましい。
それに比べて、私は不得意科目も多いので、時々夕月に勉強を見てもらっている。
夕月は、とても分かりやすく教えてくれるからね。私が此処まで成績が保てているのも、|のお陰ですわね。
「未香子、テストどうだった?」
「う~ん。いつも通りだと思うけれど…。自信はないですわね。」
「それ位ならいいじゃん!私なんか、山掛けとかもしたのに、全滅かも。」
同じA組のケーちゃんが、話し掛けてきた。ケーちゃんは、中等部でも部活が一緒だったし、高等部でも映像部に入部したので、また一緒である。
同じクラスになったことがなかったから、あまりテストの話をしたことがなかったけれど、どうやら成績はよくないようなのよ。
「私、テスト勉強はいつも夕月としているのですが、今度からケーちゃんも一緒に、勉強しますか?」
「えっ!?いいの?私、多分かなり足引っ張ると思うけど、それでもいいの?」
「いいよ。私の場合はテスト対策というより、復習だからね。未香子がいいのなら、私はOKだよ。」
余りにもケーちゃんが落ち込んでいたから、一緒にテスト勉強しようかと、誘ってみたのです。ケーちゃんは、物凄く驚いていたみたい。
何故か、すぐ傍に居た夕月が返答している。確かに教えるのは夕月の方で、私ではないのだけど…。あっ、私、勝手に誘ったんだった…。
因みに、今日も夕月は制服を着用していない。パンツルックスタイルだけど、一応女子姿の私服である。故に、一人称も『僕』ではなく、『私』である。
夕月も、ケーちゃんには以前から、気を許している雰囲気がある。だから、OKしたんだと思う。
「勿論、私もOKですわよ。大丈夫。夕月は、教え方が凄く上手だから。」
「そうかも知れないけど。私ね、この学校に居られるのが、不思議なくらいテスト悪いからね!」
「ふっ。そういう事を、自分で言うんだね。ふふふっ。」
夕月が笑壺に入ったようで、クスクス笑い出す。うん。主張するようなことじゃないですよね。でも本人は、「本当なのに~。」とか言ってる。
何故、自慢気なのだろうか?
「自分でも、よく高等部に上がれたなあ~、と思ってるんだからね。」
…まだ言ってる。それ、自慢にならないからね。夕月は…まだ笑ってるし。
まぁケーちゃんは、悪い子ではないのよね。演劇部では、いつも脇役と裏方係。
それでも、どんな時も楽しそうに演じたり、走り回ったりいる。
私が毎回のようにヒロインの役ばかりだと、他の子達は文句言ったりしても。
ケーちゃんが、何か文句を言うことは全くなかった。
演技は特に上手な訳ではないけど、本当に楽しそうに演じるから、周りの雰囲気も明るくなるし、お芝居も活きてくる。
高等部からは、映像部に変わってしまったので、セリフ等のやり直しは何回でも出来る。でも、演技自体は誤魔化せない。映像として残ってしまうから…。
その点も踏んで、中等部で演劇部だった元部員も、高等部では入部しない者、若しくは入部出来なかった者も、ある程度居るようだ。
演技が下手でも、裏方や脇役候補として。しかし、主役級以外をやる気がない者は、要らないと言って。赤羽根部長が大分篩い落としたようだ。
赤羽根部長!そのうち逆恨みされて、何か事件とかに巻き込まれないだろうか、と非常に心配なのですが。大丈夫ですか?
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テスト期間が終了したので、夕月と一緒に部室へ向かう。ケーちゃんは、他の部員と先に行っている。実は、高等部から入部した内部生も、若干だけど居る。
中等部でも演劇部はかなり人気があり、赤羽根部長が苦い経験をしたのを教訓に、その後に部長になった者が、毎年のように篩い落としていた。
人気の理由は、勿論『北岡君』目当てである。演劇が好きで入部したいのではなく、北岡君と仲良くなりたい、相手役をしたい、という入部希望者が多かった。
その為、途中入部は取らないようにし、新年度も最低限の募集人数に限定した。
但し、部長が認めた者は例外で、スカウトして入部させることもあるのだけどね。
高等部への進学で、新入生を対象に入部制限が設けられ、やる気がない人、脇役や裏方が嫌な人、自分の役割に文句ばかり言う人などは、元部員でも入部出来ない。
高等部で入部した先輩方や、同期の部員達は、皆自分の役割に誇りを持つような人達ばかりだ。良い感じに纏まったと思う。
部室に入ると、1年生はほぼ集まっていた。上級生は、まだ数人しか来ていないようだ。赤羽根部長も、まだ部室に来ていなかった。
連休中に行った遊園地で、買ったお土産のお菓子を用意していると、男子達が我先にと手を出す。うちの部員って、男子もお菓子をよく食べるのよね。
「これ、誰かのお土産?」
「はい、私よ。連休中に、夕月と遊園地に行きましたの。」
質問したのは、小学部からの内部生、田尾 光輝君で、1年C組の生徒である。
運動は苦手らしく、球技大会では何に出場していたのかは、知らないけど。
性格は穏やかで、控えめなイケメンといった感じ。勉強時など、時々眼鏡を掛けている。中等部では、私の相手役の1人であった。
彼は相手役よりも脇役が多く、裏方も率先してやってくれている良い奴である。
彼には幼馴染の婚約者がいるのだけど、その彼女が何かと言うと、夕月にくっ付いて来るのだ!しかも彼女、私と同じくヒロイン役なのである。むぅぅっ!
只、私達より一つ年下の学年だから、来年の進学予定だけど…。
「えっ、マジ?」
私達の話しに食いつくように聞いてきたのは、飛野君である。飛野君は、夕月に気があるらしいの。本人は隠しているつもりのようだけど、皆にバレバレだからね。
彼も小学部からの内部生で、1年B組の生徒である。小柄な割に跳躍力は物凄く、運動神経抜群系で、特にバスケやバレーが得意のようだ。
彼も、私の相手役の1人である。相手役の友達役という脇役も演じていて、うちの部の実力派の役者でもある。
顔もワンコっぽい可愛い感じなのだけど、性格も明るいので、女子だけでなく男子にも人気がある。嫌みが全くない、爽やか系なのである。
「ええ。夕月が!物凄くカッコ良かったの!」
私がそう答えていると、「何、何?」と、皆が興味深々で聞いてくる。
私は、如何に夕月がカッコ良かったかを、興奮気味で話し出す。傍らで、夕月は苦笑いしてるけれどね。女子達は皆「いいなぁ~。私も見たかった。」と言っているし、男子は面白がっているようだった。
「北岡って、敵に回すと怖いタイプなんだよなあ。」
「そのようだね。今日、初めて会ったんだけど。姉から聞いていたから、何となく分かっていたけどなあ。」
木島 柊弥君が放った言葉に、2年生の『赤羽根 諒』先輩が反応した。先輩とは、入部してから今日初めて会ったのよね。
木島君も、小学部からの内部生で、1年D組の生徒である。彼が、私の相手役として最も多く、脇役の方が少ないと言ってもいいぐらい。彼が脇役を演じるのは、夕月が北岡役を演じる時、ぐらいなものである。北岡が、ヒロインの相手役になるからだ。
彼は部員で一番背が高く、中々のイケメンなのだけど、見た目が冷たい感じがする為なのか、夕月や飛野君の次くらいで、モテる程度かも。
普段の彼は、性格は悪くはないけど、人の嫌がるような事も揶揄うことがあるので、特別仲良くならないと、本心が分かりにくいタイプみたい。本人もぶっちゃけた本心を見せないので、夕月とはある意味似ているのかなぁ?
赤羽根 諒先輩(以降は諒先輩と呼ぼうかな)は、3年の赤羽根部長の年子の弟である。去年、学苑に転入入学した外部生である。
中学までは、他の私学小中学校に通っていたそうで、姉の策略で高校より編入手続きされた、と聞いた。部長‼実の弟にも容赦なしですね!
勿論この部室に居るのは、映像部に半強制的に入部させられ、助監督(現場監督)係を押し付けられたからなんだとか。…う~む。お気の毒に…。
でも全然、そんな話を聞かなければ分からないぐらい、明るくて調子の良い人、もしくは軽い人だと思う。前向きとも言う。
他にも、2年生の外部生が数人居るけど、まだ真面に会っていないのよね。
今日からやっと本格的に部活が始まるので、もう直ぐ会うことになるだろう。
そういえば、高等部に進学してから、赤羽根部長にもまだ碌に会っていない。入部の時は、って?入部届け提出したら、既に入部扱いにされていましたけど…。
部長‼私達の分、勝手に出しましたね!因みに私以外は無論、夕月に、飛野君、木島君、田尾君でしたよ。逃がす気が、全くないですよね?
ケーちゃんの分も出されていたそうな。ケーちゃんは凄く嬉しそうだったけど、逃げられないってこと、分かってる?はあぁ~。(ため息が…)
今回はテストのお話でした。嫌いな物じゃなかった、って?まあ、でも、嫌いとか苦手とかいう人が、圧倒的に多いと思うのですが…。
では、気分を変えて、今回の話の補足です。以前『晶麻』が語っていた2年生の外部生部員の1人です。
まあ、登場人物一覧に載っているので、やっと登場したかと思われているかも。
前から名前が出て来る部長、まだセリフどころか登場すらしていませんね。先に弟がセリフ言うとは。筆者でさえ、見当違いであったよ。
『ケーちゃん』は完全なちょい役の脇役キャラですが、少しおバカで愛されるキャラをイメージしています。
今までは部活が同じでも、クラスが別だったので、特別仲良しではなかった、という設定です。
まあ、中等部では演劇部の部員がマンモス級だったのと、『夕月』狙いが多過ぎて、あまり他の部員と話せなかったというのが、理由です。
特別視なんかすると、女子の嫉妬は恐ろしいので。仲良くしたくても出来なかった、というのが3人(夕月、未香子、ケーちゃん)の本音ですかね。




