21話 私のナイト
連休中のお話を3回に分けていまして、今回で終了です。何とか纏まりました。
最近は、クリスマスとお正月の特別編も作成しているので、自分で書いていて、話がどうだったっけ?状態です。そのうち、ちぐはぐな部分も出て来るかも…。
※現在、見直しの為、改稿しております。当初より550文字程度を追加しております。内容も分かりやすくなるように、心掛けました。
改めて、よろしくお願い致します。
あの後、落ち着いてから、夕月が注文していたクレープを、食べることにした。会計も済ませていたので、軽食のお店の方で預かってくれていたのだ。
他のお客さんから事情を聴いたそうで、「大変でしたね。」と声を掛けられ。
私達が立て込んでいると知り、態々探して、席まで持って来てくれたの。
折角だからと、クレープと飲み物を頂くことにした。中身はアイスクリームではなく、ホイップクリームなので、溶けなくて良かったわ。
夕月と一緒に食べていると、近くに座っている同年代くらいの女子達が、此方をチラ見してくる。「いいなあ~。」と話しながら。
一瞬クレープの事かと思っていたら、如何やら、夕月が助けてくれた時の事を、話しているようで。目が完全に、夕月を追っている。
「あんな優しくてカッコイイ彼氏、欲しいな~。」と、会話するのが聞こえて…。
他にも、此方をチラチラ見てくる女性達の姿が。
さっきの乱闘を見て、「カッコイイ。」とうっとりしている様子である。
全く知らない人達が、「無事でよかったな(ね)。」とか「凄かったぞ(よ)。」とか、去り際に私達に声を掛けて行く。
私は、知らない人に話し掛けられても、固まってしまって。その度に「どうも。」と、夕月が笑顔で対処してくれて、助かったわ。
食べ終わって広場から立ち去っても、歩いている時に、人の近くを通りかかる度に、「さっきは凄かったね。」とか「見てたよ。」とか、側に立っている誰かが、話しかけてくる。お陰で、私は、完全に緊張を解くことが出来ず、黙々と歩くしかない。夕月が恋人繋ぎをして、ギュッと繋いでくれているから、何とか平気なフリが出来ているだけで。
私が、まだ緊張していることを見抜いているのだろう。本当に、夕月は、私のことをよく見ているわよね。私を心底安心させる為に、恋人繋ぎをしてくれていることぐらい、私だって気が付いていますわ!本当に、私には甘いのだから…。
夕月も、適当にしか相手にはせず、かといって無視もせず、微苦笑を浮かべて誤魔化している。
これ以上話し掛けられないように拒絶する意味も込め…。
私を先導しながら歩き、足も止めないようにして、ただ只管、笑顔で返答する。
決して、会話は返さないように。
知らない男子に声を掛けられ、喧嘩を売られたりするのは、よくあるけれど。
知らない女子達に騒がれて、ジロジロ見られるのは、何時もの事だけれど。
知らないおじさん・おばさんの「よくやった」みたいな声掛けは、初めてで。
勿論、声掛けの殆どは、夕月に対してのものなのだけれど。
そうこうしているうちに、漸くこれ以上、誰も話し掛けなくなってきていた。
女子達は、夕月のあの笑顔で、更に赤くなって、きゃっきゃっ騒いではいたけれど…。…笑顔に誤魔化されているわね。
こうして、私達は最終目的地に到着した。そう、私達は遊園地を出る前に、観覧車に乗りに来たのだった。
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私達が、観覧車に乗る人の列に加わると、先程の絡まれた時に居た人が、若干並んでいるようで。「あれっ?」とか「さっきの…」とか、声が聞こえてきた。
私達も、いい加減放って置いてほしいので、何も気が付かない、何も聞こえないフリをしている。列に並んでいることもあって、直接は話し掛けては来ないけれど…。…何を期待しているのかしらね?
視線が痛い。前からは、チラチラ振り返って見て来るし。後ろからも、何だか視線が突き刺さる…。気にした方が負けなのだわ。気にしない、気にしない。
そうしているうちに、漸く自分達が乗車する順番がきて、観覧車に乗り込むことになって。私は席に座ると、やっとホッと息を吐く。知らない人達に見られることは、よくあることではある。だからと言って、慣れるものでもない。
夕月は、私の前の座席に座って、私を心配げにジッと見つめてくる。
やっぱり、まだ心配しているのよね。夕月といい、お兄様といい、心配性過ぎるのよね。私だって、昔のままの泣くだけの私ではないのに…。
私は、夕月を安心させたくて、心から笑顔になって話し掛けた。
「大丈夫だよ。人込みで疲れただけよ。」
「うん。そうだね。流石に、僕も疲れたよ。何時もは、もっと遠巻きに眺めるだけで、話し掛けて来ないのにね。まあ、仕方ないのかな?あれだけ目立ってしまったのだからね。」
夕月も、笑顔というよりも苦笑をしている。何時もの姿なら、まだ気を抜けるのだろうけれど、今日は1日中男装しているうえに、男装時はバレないように声を低くしているのよ。余計に疲れているのだろうしなぁ。
私達は、その後は特に話をせず、観覧車からの外の景色を眺めていた。特別何処かの場所が見える訳ではなかった。でも、やっと落ち着いたというのもあり、のんびりと景色を堪能していた。
先程、観覧車に乗ったばかりだと思ったのに、もう終点のようである。観覧車の扉が外から開けられ、私達は地上に降り立った。夕月が手を引いてくれるままに、私も共に歩き出す。乗る前とは違い、降りた時は誰も居なくて、ホッとする。
「帰る前に、出入り口前の土産ショップに、寄ろうか?」
「うん、寄る。」
癒しのアクセは、遊園地の奥側にあるショップで購入した。だから、出入り口側のショップは、まだ入っていないのだ。それに私は、まだ何もお土産さえ買っていないもの。私だって、夕月に何かプレゼントしたいのよ!
観覧車は遊園地の奥の方だから、まだまだ歩かなければいけない。時間も掛かるから、夕月とお話しながらゆっくり行けばいいわよね?
観覧車に乗る前とは違って、私達のことを知る人は少なくなっていた。それでも、遠巻きで「あの人達、そうじゃない?」とか、話している声が聞こえたけれど、特に話し掛けては来なかった。ほっ、ギリ、セーフ…。
夕月も私も、聞こえないフリをして通り過ぎていく。絡まれた時の事を知る人も殆ど居なくなり、呼び止めて来る人も少なくなって、先程よりジロジロ見てくる人も減ったかしら?
そうこうしている内に、ショップに辿り着いていた。ショップ店内には、まだ人が沢山居る。皆、お土産選びに夢中になっていることもあり、こちらに注目している人は、ほぼ居なかった。良かった。これで、私も、お土産とプレゼント選びに、集中出来そうね。
三千さんや真姫さん達にも、何か買っていこうかな。勿論、両親とお兄様にも買うわよ。夕月も、家族にお土産を買うみたいだし。
私は夕月に気付かれないように、そっと離れて買い物をする。先程、プレゼントしてもらったのだから、今度は私が、何か素敵なプレゼントしなくては!
「夕月!助けてくれてありがとう!これ、私からのプレゼント。」
私達は、遊園地を出る手前のベンチで、真姫さんと待ち合わせをしている。
待っている間に、私が今買ったばかりのプレゼントを、夕月に手渡した。
夕月は、驚いた様子で目を見張った後、いつもの優しい笑顔で「ありがとう。開けていい?」と、訊いてくる。そして、封を開けて中身を見ては、目を丸くしている。
「これって…。もしかして、葉月とのペア・アクセ?」
「うん、そうなの。本当は、私とペアにしようかと思ったのですけれど、さっき夕月がプレゼントしてくれたアクセがあるもの…。」
「だから、弟にも、って?」
「だって、葉月って、私と夕月がペア・アクセ持っていると知ったら、五月蠅そうですもの。」
「あははっ!確かに!絶対、愚痴るだろうね。はははっ…。」
夕月は、心底愉快そうな声を出して、大笑いしている。『葉月』のことになると、本当に嬉しそうなのだもの。焼いてしまうわ。
『葉月』は、夕月の実の弟である。2人の仲の良さは半端ではなく、私でさえ、間には入れない時があるぐらいなの。そして私が、唯一本気で妬く相手なのよ…。
「でもね、私のナイトは、夕月だけだからね。夕月が、私のたった1人のナイトなの!」
暫く続いた5月連休中のお話も、今回が終了となります。題名が本文に出せて、満足しています。
今回は『未香子』側が題名(特に副題)を意識させています。
新しいキャラの名前が出てきていますが、当分は登場しません。本格的には後半で活躍する計画になっております。
番外編をいくつか考えていますので、その時にちらっと登場するかもしれません。『夕月』の弟ですから絡みとかで。
次回ですが、また学苑での話に戻ります。前半にこの話で回収出来なかった分が、チラッと含まれていますが。
皆さんが嫌いなアレの話です。えっ?大好きだった?得意だった?まあ、そういう人も若干居るでしょうが、嫌いな人が多いと思いますよ。そろそろ時期的にも、アレの時期じゃないですか?




