19話 恋人繋ぎしませんか?
今日のお話は、学苑のお話ではありません。学苑外でのお話となっております。
1話分では語れなかったので、分けました。
暫くこのお話が続きますが、よろしくお願いします。
※現在、見直しの為、改稿しております。当初より650文字程度を追加しております。内容も分かりやすくなるように、心掛けました。
改めて、よろしくお願い致します。
入学してから初めてのテストが、5月連休後に行われることになっている。
今回は主要科目だけなので、何とかなるでしょう。私は、苦手科目が少ない方ですからね。体育の実技は、超苦手だけれど、ペーパー試験の方は割と良い成績なの。
社会人の5月休暇は、10日も続くような長期休暇になることが多い、とよく聞きますが。休暇が長いので、家族旅行に行く人も多いらしいですわね。しかし、私達学生は大人とは違い、連休が途中で途切れ、また連休という具合ですものね。
大人の方が羨ましい限りですわ。
小学生の頃ならば、学校を休んでも大丈夫かもしれないけれど、中学生・高校生になるに連れて、連休後のテストなどの勉強の為、学校を休む訳にはいかなくなる。
1日でも休めば、勉強が分からなくなってしまうこともある。長い連休中は、宿題も沢山出ることが多くて。学生にとって、夏休み・冬休みよりもキツイかも…。
さて、4月の健康診断と球技大会も、無事終了しました。今は連休中の為、学苑も休暇中である。今年も連休中には、宿題が沢山出ており、その一部は課題もあったりする。
連休初日に、夕月と一緒に丸1日掛けて、宿題をほぼ終わらせている。
2日目には、宿題の残りを制覇して課題に取り掛かった。
3日目には、その課題もまとめたりして仕上げている。その後は、ただ只管、テスト勉強を暗記するということではなく…。
暇を見つけては、夕月と2人でお出掛けをした。私達が住む市外で、この地域では、1番大きな都市である街に。
街中をぶらぶら歩いては、時々ビルなどの建物の中に入り、衣類や靴や化粧品などのショップを覗いて見て回り、ウインドウショッピングしたり。
お洒落なお店での食事や、休憩する為に喫茶店に入って、美味しいケーキと紅茶でお茶したり。
可愛い小物屋さんで、アクセサリーや文具などの小物や筆記用具を買ったり。
今日も、夕月と2人、これから我が家の車で、休憩がてらのお出掛けをするのである。車の運転は、真姫さんにお願いしているし。
今から行く処は、電車だと2時間以上は掛かる場所であり、マイカーの方が自由が利くのだ。送迎してもらった方が、融通も利くしね。
それに、学苑以外に行く場合は、色々とセキュリティ上の問題もある為、成るべく基本乗用車での移動を行っている。当然のことであるけれど、学苑が禁止しているのは、飽く迄通学上でのことだけですから。
「未香子お嬢様、夕月様がお見えになりましたよ。」
私の部屋の戸がノックされ、真姫さんが戸の外から話し掛けてくる。「今、行きます。」と返答して、鏡の中の自分を見て最終確認する。
うん、服装OK。髪型OK。バックの中身もOK。お金はこれで足りるかしら?
ええ、これで大丈夫。
バックを持って部屋を出てから、階段を下りて行く。玄関まで歩いて行くと、外出用の完璧に男装をした夕月が待ってくれていた。
うわぁ~。学苑での北岡君の時の男装も良いけれど。私は、今日の男装の方が、物凄くカッコイイ ‼ と思いますわ。でも、これは私だけの特権なのよ。
学苑や電車で見かける女子には、絶対に見せない男装なの。うふふふっ。
学苑での演技用男装と、外出用男装では、微妙にカッコよさが違うのですわ。
このような夕月の姿を、学苑の生徒達に見られたら、それこそ大変な騒ぎになってしまうでしょうね。それほど、今の夕月の男装は危険ですわね。
そのような妄想をしていると、私がうっとりするような満面の笑顔で、夕月が私の方に片手を差し出す。これは、夕月の「エスコートするよ」の合図なのである。
「では、出掛けようか?僕のお姫様?」
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今日は、両親が仕事上の付き合いで貰った遊園地のチケットで、隣の県にある遊園地に遊びに来ている。ココの遊園地に来たのは、久しぶりだわ。
真姫さんは、この近くに知り合いが住んでいるということで、私達が遊園地で遊んでいる間は、別行動をしてもらうことにした。
本当なら護衛が必要なのだけど、私の場合は、いつも夕月が傍にいてくれるから、特に必要がない。夕月は、一通り武術が出来るの。だから、下手な護衛だったら、夕月の足手纏いになってしまうのよね。
私1人で行動する際は、真姫さんか幹人さんが護衛をしてくれる。この兄妹は、護衛も兼ねていて、護身術などの武術を身に着けている。
真姫さんは、私用の別行動に恐縮していた。私は、ただ車で持ってもらう方が悪いからと、時間潰しをして欲しいと、こちらからお願いをした。
結婚した友人がこの近くに住んでいる、と真姫さんに前々から聞いていた。
会うのを勧めたところ、その友人と会えることになった、と。真姫さんも嬉しそうにしてくれたし。只の時間潰しにならなくてよかったわ。
今、私は夕月と、ジェットコースター系の乗り物の列に並んでいる。
連休中なので、かなりの混雑ぶりである。某有名テーマパークとは違い、優先チケットなどが存在しないので、只管列に並ぶしかないのよね。
私はどちらかというと、絶叫系アトラクションよりも、メリーゴーラウンドやティーカップとか観覧車など、幼い子供でも利用できる乗り物の方が好き。
友達は皆、子供っぽいって言うのよ…。いいのですわ。別に…。
何とでも言って頂戴!(開き直った)
しかも、最近の絶叫系アトラクションは、宙返りは当たり前で、高いところから思いっきり落ちるのとか、グルグル回転するのとか、振り子のように右に左に大きく揺れるのとか…。ううっ…。怖すぎる…。
他にも、映像とリンクしていて、本当に体験している錯覚をさせるのとか、恐怖の館みたいなのとか…。大人でも、十分怖いと思うけど…。
何で、こんなに怖いのが多いの?もっとのんびり景色見ながらで、いいじゃない?
本当に怖すぎて、夢にまで出て来そうよ…。
今更悩んでも仕方のない事を、グルグルと頭の中で考えていた、私の心の声が聞こえたみたいに、夕月がクスッと笑って、私の顔を覗いてくる。
「未香子は、相変わらず絶叫系が苦手だね。これは宙返りはしないから、そんなに怖くないよ。」
「でもこれって、確か長さがあるって有名なヤツでしょう?」
「うん、まあね。長い方ではあるけど、日本一とかではないから。」
「でも、通常よりも長いってことだよね?その分、怖さが増すわ~。」
思わず、「はあぁ~。」と溜息が零れる。それを見て、夕月がくすくす笑う。夕月は絶叫系平気だから、いいでしょうけれど!
笑う夕月を睨み付けていると、「大丈夫だよ。」と無責任な言葉を返してくる。もう!何が、大丈夫何でしょうか?!
「大丈夫。今日は、手をしっかり握っていてあげるから。」
そう言って私の手を取ると、自分の指を絡めて恋人繋ぎにしたのだ。
キャー、恋人繋ぎ~!憧れの恋人繋ぎですわ!夕月がしてくれるなんてっ!
私の顔は今、思いっきり真っ赤になっているだろう。声には出していないけれど、心の中で思いっきり叫んでいますもの!
その時、後ろから「ケッ ‼ 見せつけやがって。」という、呟きのような小さな声が聞こえてきた。列に並んでいるので、多分すぐ後ろの人だと思う。
今日は、夕月が完璧な男装をしているので、完全に男女のカップルだと思ったのだろうな。何だか嬉しい。そう思われるのって。
私は、聞こえないフリして、流石に後ろを振り向くことはしなかった。チラッと、横に立っている夕月の顔を見上げる。夕月もバッチリ聞こえたようで、苦笑いしながら、その目が「後ろを見るな。」と言っているようだった。
絶対に見ないわ。睨まれたり絡まれたりしたら、嫌だもの…。
私も、目でそう答えたつもりで。…通じたかしら?
30分ぐらい並んで、やっと自分達の番になった。30分だったら早いって?
そうかも知れないけれど、30分も絶叫系を待つのは、十分長いのです…。
ギャー。然も、選りに選って最前列とは!私達の前に、誰も座って居ないなんて!怖さが増すのよ!夕月ったら、ワクワクしたりしないで~。
ジェットコースターが動き出してからの、記憶がない……。どうやら、記憶が飛んだようですわ。余りの怖さに…。
だから、ジェットコースターが終了したのにも、全く気が付かず、ボーとしていたみたいである。夕月が肩を揺すってくれるまで……。
「未香子!もう着いたよ。終わったから、降りよう?」
「えっ!あ、うん…。」
「大丈夫?ごめんね。先頭で怖かったよね?少し休もうか?」
「うん…。夕月が悪いわけじゃないよ。私がツイてないだけ…。」
「う~ん?何か重症だね、コレは。先に、癒し系の所に行こう!」
夕月がまた恋人繋ぎをしてくれて、まだ呆然とする私を先導して歩く。私達が歩く前方に、私達と同じくらいの男子が4・5人固まって、立っているのが見えた。どうやら、次に行くアトラクションの相談をしているようだ。
私達が横を通り過ぎる時、「あっ、さっきの列の前で、いちゃついた奴らだ。」と、話す声が聞こえる。
そうか、この男子達が後ろにいたのか。絡まれるかもと少し緊張した。でも、何も言って来なかったので、ホッとする。よかった…。
夕月は気にせず、ドンドン歩いていく。どこに行くのかな?さっき、癒し系とか何かとか、言っていたような。
「着いたよ。ちょっと、テンション上がる物を、買おうか?」
「へっ??テンション上がる物?」
夕月が、私を連れて来た所は、お土産とか売っているショップだった。
まだ来たばかりなのに、もうお土産買うのかしら?
疑問に思って夕月を見つめていると、何か探すように見て回り、目的の物を見つけたようで、何かを手に取ってそのままレジに向かう。
私は訳も分からず、そのまま手を引かれて、一緒にレジに連れられて行く。
夕月がレジで会計を済ませる時に、私は、その何かを見つめる。夕月が何を買ったのかが、それを見てやっと分かったわ。幸福が来ると言われているアクセサリーで、それと同類のペア・アクセサリーだったのだ。
ある日、この遊園地に男女数人で来ていた、その内の1人の女性が、偶々そのアクセサリーを気に入って買った、という。
そして、一緒に遊んだ内の1人の男子も、同じアクセサリーを買ったことを後日知り、そこから意気投合。その後、付き合うことになった。
再びデートで遊びに来た時に、そのアクセサリーの柄違いをペアで購入。そして今度は、結婚することになったらしい。
その2人の恋愛話が友人達に伝わり、誰かが同じように幸運を求めた事から、一気に幸せのアクセサリーとして有名になった、と聞いたことがある。
遊園地側がそのことを知って、元は別々で売っていたものを、ペア・アクセとして売るようになったそうである。カップルとかには、特に大人気らしい。
因みにそのアクセサリーは、幸福のアクセ、友情のアクセ、癒しのアクセ、幸運のアクセなど多種あり、男女限らず同性同士、つまり友人同士にも人気がある。
また、家族で買いたくなるペア・アクセもあるそうな。
夕月が買ってくれたのは、癒しのアクセだった。しかも、夕月とペアなのよ!確実に、テンションが上がったわ!超う・れ・し・い!
「これで、癒しになるかな?」
「うん、うん!もの凄く嬉しい ‼ テンション、上がりましたわ!」
「そう。それは良かった。」
もう、私が飛び上がらんばかりに、満遍の笑顔で元気に答える。すると、夕月は、目を細めてフッと笑って、私の頭を撫でてくる。うわ~。その笑顔、癒されるぅ。
何時もの夕月より、男装した夕月の方が数倍イイ~ ‼ (うっとり)
この後は、私が好きなアトラクションに行って、いっぱい癒しを貰いました。
怖い思いした甲斐が、ありましたのよ~。ルンルン!楽しいですわ~。
今回から、暫く5月連休中のお話で、続きのお話となります。主人公達のプライベートな話の内容となっております。
恋人通しのような関係を意識して、書いています。この寒くなった季節に、暖かい時期の内容は、結構キツイものですね。
前々から、自分でも気づいていたことなのですが、後書きとかで書こう書こうと思って、忘れていたことがあります。
誰かの目線で書く時に、その人物に合うよう、少しずつセリフを変えています。
『未香子』のセリフが、統一性がないとか、お嬢様の言葉じゃないとか、実は思っていたという方もいるかもしれませんが、あれは態となんです。
最近のお嬢様は、特別な上流階級のお嬢様なら兎も角、案外庶民と変わらない言葉使いだと知ったことから、その事実を採用しました。
まあ、未香子ぐらいのお金持ちなら、割と沢山いるという事で。
他の人物も同じ理由で、庶民的だと思えば一般的な男女の言葉で、性格的な物も含めて上級階級の人物に近づくほど、丁寧な言葉使いになるよう、心掛けました。
(一番お上品な言葉使いは、意外な人物なんですね。)
ただ、男子の場合は例外として、大体性格的なもので決めました。大人の男性ではない、という理由で語り口調だけ丁寧にした人物もいますが。
未香子もお嬢様教育を受けているので、お嬢様言葉は喋れますが、一番目線の多い語り手ですから、いつもその口調では堅苦しい、という理由で不採用にしています。
ですから、時々気分でお嬢様言葉になる、という設定です。後、お嬢様言葉ばかりでは襤褸が出ますからね。分かって頂けたでしょうか?




