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君の騎士 ~君を守るために~  作者: 無乃海
第二幕 名栄森学苑2年生編【波乱の幕開け】
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43話 勉強会に参加させて…?

 夏休み直前のテスト期間、続きとなります。学校以外で、男女数人で勉強会をすることに……

 「僕も君達の勉強会に、参加していいかな?」


彼らの前に突然現れ、にっこりさわやかに笑いながら、彼はそう言った。思いもしない人物の登場に、彼らは全員揃って目を丸くする。噂の渦中の人物が、まさかこんな形で()()()()()()()()


抑々こうなった原因は、昔みたいに勉強会をしないかと、晶麻が夕月に話を持ち掛けたことにある。今も晶麻を無視していて、きっぱり断ると思われた夕月が、あまりにもすんなり了承し、晶麻達の方が気が抜けたという。


中学の頃から定期テスト前には、晶麻・柊弥・光輝の3人と、夕月と未香子の2人の男女合わせ5人で、その通度勉強会をしてきた。勉強会の場所は学校外が多く、家から近い図書館も多いが、一番利用した所は彼ら5人が、お気に入りだった店である。何故ならそこは穴場であり、テスト勉強をするのに一番適していた。


今回の勉強会は、夕月が最近お気に入りの少女、萌々花とその友人達も誘ったことから、いつもより賑やかな勉強会となりそうだ。萌々花達とは高校で出会い、急速に親しくなったにも拘らず、晶麻と箏音の一件も知る彼女達を、敢えて夕月は誘ったのかもしれない。


 「……懐かしい。最後に来たのは、いつだったかしら…」


男子は男子で、女子は女子で連れ立ち、下校してから待ち合わせ場所に、集合することになっていた。そして下校時間となり、夕月達は集合場所に向かう。遠目に目的らしき建物が見えてくると、懐かし気に目を細めつつ、未香子はポツリ呟いた。


感嘆した様子で溜息を吐き、目をウルウルさせて。暫く両手を胸に置き、思い出に浸る彼女を。そんな愛らしい仕草に、夕月も目を細めながら、「…ふっ」と笑みを零した。それは、()()()()()()()()


…うわあ、綺麗な笑顔…。天使の微笑み…って、こんな感じなのかな……


萌々花の友人である鳴美と郁は、建物の外観に気を取られており、未香子の様子どころか夕月の表情にも、全く気付かない。だけど…萌々花は、ばっちし目撃していた。思わず…という風体で零した、夕月の自然な笑みを。優しくいとおしげに見つめながらも、微笑ましく見守るような顔で、微笑んだのを…。


それはほんの数秒であったが、萌々花にとって短くも長くも感じられる、印象深いと言える時間でもある。それほどに強烈な残像を残す、インパクトの強い笑顔だったというのは、間違いないだろう。


…人の笑顔には、その人の性格や本音が見える、と何処かで聞いたことが、あるようなないような…。こんなにも人によって、全く違うイメージになるなんて、今更ながら気付かされたよ。笑顔の人を見て可愛いと、思ったことは当然あるけどね。これほど釘付けにされたことは、生まれて初めてかも……


優しい笑顔だなあ…と感じれば、その人が優しいからだと思えた。それなのに夕月に対しては、計算したような完璧さを、何故か当たり前のように求めていた、と気付いた。但し、今の笑顔は全く計算のない、平凡な笑みだと思われたが。


しかし、いつも以上に温かみのある、一層眩しい笑顔だと感じる。見た瞬間は只管見惚れていたが、次第に自分の知らない別の感情も、押し寄せてきた。自らに向けられてもいないのに、胸がキュンとして鼓動もドキドキし、何故か胸の奥まで熱くなってくる。


……ううっ、どうしよう…。北岡君のあの笑顔に()()()()()()()で、私の胸の鼓動が止まらない…。こんなにドキドキしてると、北岡君に知られたら…恥ずか死ぬ!


夕月にとって計算した行動は、至極当然なことだ。実際日常では、敢えて計算した上で行動している。頭の中で計算したデーターを基に、完璧に成し遂げる知能犯みたいに。それでも、この時ばかりは夕月も、幼馴染の久々の明るい思考に触れて、本心から笑みが零れていた。

 

 「此処に来るのは、君達は初めて?」

 「私は…初めてかな~。ナルっちは、来たことある~?」

 「いいえ、私も初めてよ。何だか凄く変わった…お店みたいね?」

 「…萌々は、どう?…来たことが、ある?」

 「…へっ?…あっ、ううん。勿論、初めてだよ…」


胸のドキドキを抑えようと、心の中で葛藤していたから、彼の人から突然呼ばれたことに、心臓が止まるほどギクッとなる。何とか平静を装って、無事にやり過ごしたけど。萌々花は邪念を振り払うように、心の奥に仕舞い込む。初めから何も見ていないのだと。


夕月の完成された笑顔は、至高の微笑みのように、時に相手を惑わせる。女性らしく軟弱に見せる傍ら、相手を惑わしつつ油断させて。男女問わず惑わせる笑顔が、

当人に誘惑する気はなく、当人が意識しておらずとも。





 

   ****************************






 「……っ?!…は、葉月!?…ど、どうして……」


先に目的の店に到着し、夕月達は男子が来るのを待っていた。突然、彼女達の背後から、誰かが声を掛けてきて。その声に聞き覚えがあった美香子は、思わず真っ先に振り向いた。


……えっ?……夕月とそっくりな口調の、この声は……


振り返った彼女の瞳に、想像通りの人物が映り込む。目が合った途端、穏やかな笑みを浮かべる彼に、つい動揺し声が裏返った上に、どもってしまった。夕月はゆっくり振り返った後、呆れた顔で深々と溜息を吐く。しかし、驚いた様子は全く見られないけれど。


 「…はあ~。何で此処に、葉月がいるの?」

 「僕も、テスト対策したくてね。夕月と未香子が、他の生徒と勉強すると聞いたから、僕も仲間に入れてもらおうと、思って…」


外面的には、葉月は穏やかだ。但し、鳴海と郁だけは「態とだな…」と、違和感を感じていた。抑々どうやって、勉強会のことを知ったのか。何故、待ち合わせ場所が分かったのか。自分だけが上級生なのに、下級生の勉強会に来たのか。…等々、疑問が尽きないほど……


 「北岡君の弟くん、結構面倒な性格なんじゃない…?」

 「今日の勉強会に誘われて、ほんと良かったあ。弟くんの登場で、更に面白くなりそうだねぇ…」


鳴海は肩を竦めた後、郁の耳に小声で囁いた。ところが郁は、鳴海とは別の話題を出し、会話というにはちぐはぐで、話が全く成り立たない。鳴海としては想像するだけで、迷惑だと思っていたが、郁はそれなりにこの展開を、楽しむ余裕があるらしい。性格が真逆ならば、趣味も真逆ということだ。


()()()()()()()()負の視線に、本当に気付いていないのか、それとも本当は気付いているのか、当の葉月の瞳に移しているのは、夕月と未香子の2人だけ。2人以外には何も、要らないとでもいうように。


…えっ?…北城…先輩?……何で??


萌々花は葉月の登場に驚くも、夕月に感じた熱のようなものは、彼の登場ですっかり冷めていた。何故か葉月をジッと見つめても、夕月のように心乱されることもなく、彼を夕月の代わりとして、見る気はない。


一部の女子生徒達が、葉月に色めいてはいたけど、北岡の存在が強すぎる2年生達には、夕月と葉月を同一に見る者はいない。また1年生も同じく、葉月に困惑する者も少なくない。北岡という夕月の存在が、あまりに()()()()()()()()


 「北城先輩は、北岡君がお好きなの…?」

 「お2人は本当に、実の姉弟…?」

 「…もしかして、禁断の愛…?!」


実は一部の生徒達の間で、禁断の姉弟愛ではないのか、という噂がある。禁断の姉弟愛でなくとも、それに近いのでは…と疑う生徒も、いたりする。また一方的に弟が姉に恋している、と考える者もいれば、実は姉も弟に恋している、と考える者もいた。


若しくは、妄想を大きく膨らませ、同性愛並びに姉弟愛として、勝手に応援し始めたり、こっそり見守ったりしている。流石にこの状況を、葉月は本気で嫌がるだろうが、夕月は悪乗りしそうである。


 「邪魔をする気は、ないよ。夕月達と一緒に勉強できれば、僕はそれで十分なのだから…」

 「…此処まで来た以上、手遅れ…か。どうせ葉月のことだし、私達だけで帰ることに、心配し過ぎなんだろ…?」

 「…未香子もいいよね?…僕がいても…」

 「…夕月が許可なさった以上、わたくしもこれ以上何も、申しませんわ…」


飽くまでも姉達と勉強したい、と葉月は言い切った。彼が来なければ、別々に帰宅していたことだろう。夕月は肩を竦めると、淡々と弟に許可を出す。双子姉弟のやり取りだけを目撃したら、弟を1人で帰らせることに、姉も同様に懸念していた、とでも誤解されても仕方なく、そういう言い回しにしか聞こえない。


葉月は夕月そっくりの口調で、未香子を揶揄うように確認した。揶揄われたと気付いた彼女が、素っ気なく返す。果たして2人は、仲が良いのか悪いのか。すると今度は夕月が、萌々花達に許可を求め…。


 「ナルと郁も、いいかな?」

 「う~ん。北岡君が決めていいよ…」

 「うんうん。私も別に、いいよぉ。大勢の方が楽しそう。」

 「…郁、忘れてない?…テスト勉強だからね?」

 「もう、なるっち。分ってるよぉ。」


どう考えてもおかしい。彼だけ学年が違うのに、私達の間に入ってまで、態々一緒に勉強したいからと、追いかけてくるなんて…。萌々花や郁は兎も角、鳴海だけはそう思っていたに違いない。鳴海が納得できない顔でいる、その一方で郁は好奇心を抑えられず、にやにやと口角を上げていた。


 「萌々も、いいかな?」

 「……あっ、うん。勿論、OKだよ。え~と、先輩。今日は、宜しくね。」

 「…ああ。こちらこそ、宜しく…」


実は萌々花も、何とも言えぬ違和感を感じていたが、表面上は後輩らしく礼儀正しい態度で、彼に挨拶をする。すると葉月が、少し戸惑った様子を見せるも、同じく挨拶を萌々花に返してきて。


……何、この違和感は…。それに…何故だか、先輩…弟さんのことは……


葉月達の会話やちょっとした仕草に、何かちぐはぐさを感じていた。何が違うというのか、彼女にもまだ分からない。それでも1つだけ、確信していた。夕月を好きになったとしても、葉月を()()()()()()()()、現状に…。

意外な人物が乱入しました。彼も転校してきたばかりで、親友のような関係の友達とか、まだあまりいなくて寂しいのかな、と思って書いていました。(当然ながら当人は、違う理由からです。)その辺りも、番外で書けたらいいなあ、と考えているところでしょうか。


さて、波乱の勉強会(?)は、次回も続きます。



※振り仮名のない『夕月』は、全て『ゆづき』読みとなります。『ゆづ』読みの部分のみ、ふりがなを振っています。

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