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君の騎士 ~君を守るために~  作者: 無乃海
第二幕 名栄森学苑2年生編【波乱の幕開け】
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42話 勉強会の参加資格は…

 今回は、学苑内でのストーリーとなります。夏休み直前のテスト期間に、焦点を当ててみました。


※振り仮名のない『夕月』は、全て『ゆづき』読みとしています。愛称呼びの時だけに、ふりがなを振りました。

 時間が経つのは早いというが、今の時期はもうすぐ夏休みとなる、7月上旬の頃を迎えていた。そして、学期末テスト期間ということもあり、今は全ての部活動が休止している。


学苑では全学年の生徒達が、テスト勉強に励んでいる。しかし、その中には山勘だけを頼みの綱に、テストに出題される問題を、山を張ってそこだけ勉強する者や、出題予定を絞り込み丸暗記する者、苦手科目は見限り得意科目だけに集中し、安易な道に逃げる者など、迷走した対策をする者達も、それ相応にいた。


無論のこと夕月と葉月は、普段から予習・復習をバッチリ熟していた。テスト前に猛勉強をする、必要は一切なかったが。それでも、テストがあろうとなかろうと、普段と全く同様に取り組んでいる。


 「…あ、あの…北岡君。この部分がよく分からなくて、ちょっと教えてもらってもいいですか…?」


それほど優秀な姉弟2人を、周りの生徒達が放置するはずもなく、この時期ばかりはクラスメイトに限らず、また同性異性を問わず集まってくる。当たり前のことであるが、目的はテスト範囲内の質問だ。あわよくばこの機会に、直接勉強を教わり仲良くしたい…という、少々疚しい目的も()()()()()()()、するけれど。


 「…あっ、ズルいですわよ!……わ、わたくしも幾つか分らなくて、質問していいですか?」

 「…おっ!…じゃあ、俺達も (ついで) に 見てくれよな。数学は数式とか覚えておけば、解ける可能性もあるけど、現国や古典はさっぱり分かんね~。」

 「…わたくしは物理が苦手でして、一度見てくださいませんか?」


こんな風に夕月の元へは、クラスの女子生徒や男子生徒が、休み時間となる度ひっきりなしに訪れた。皆一様に教科書やマイノート持参で、我先に教えてもらおうという勢いで、やってくる。


単に自分1人で勉強するよりも、優秀な成績の夕月に教えてもらおうと、安易な方法を選ぶ生徒もいるようだ。男子は特にその傾向が、強いようだった。何しろ普段から男子っぽい言動の夕月は、男子にとって友人枠に近いのだから。勿論、晶麻のように女子扱いをする、男子生徒が他にもいたには、いたけれど……


 「…北岡。あのさ…今日の帰りにでも、一緒に勉強しないか?」


いつの間にかAクラスの教室に、晶麻・柊弥・光輝の3人が来ていた。あの一件を未だに引き摺る晶麻を、柊弥と光輝は不憫に思う。だからこそ今回、晶麻を焚きつける形で無理やり引っ張り出した。


晶麻たち3人の気配に気付き、夕月を取り囲むようにしていた生徒達が、一斉に背後を振り返る。晶麻はばっちし正面から、夕月と目が合った。これ以上、情けない姿を見せたくない。そんな思いで自らの勇気を振り絞り、一緒にテスト勉強をしようと、夕月に声を掛けたのである。実に…数か月振りに。


 「そうそう。去年までは俺達と北岡達の何人かで、時々勉強会を一緒にやってたよな。今年に入って以降一度もなかったし、久々に俺達とテスト対策しないか?」

 「…俺も苦手科目の対策を、北岡達と一緒にやりたかったが、誰かの所為でできなくなったからな。俺達3人だけで勉強するのも、()()()()()()()()な…」


憎まれ口を叩きつつ本音では、晶麻を本気で心配する2人。柊弥も光輝も友人に話を合わせつつ、それとなく夕月を誘う。去年まで続いた勉強会を、柊弥は単純に懐かしむ風を装う一方で、光輝は親友が夕月を怒らせた所為だ、と皮肉った。苦手な教科の対策ができなくなった、という愚痴を零しながら。


 「…………」


敢えて親友を皮肉るのは、友情という愛の鞭でもあるようだ。親友が横目で見ただけで、しょんぼり項垂れる晶麻を、微笑ましく見守る中。普段人当たりの良い夕月が何故か、笑みを消し強い視線を彼らに、向けていると気付いた途端、周りの生徒達は冷水を浴びる如く寒さを感じ……


 「…ふうん。君らとテスト勉強するのは、あの時以来か…。いいよ。女子友に声をかけておくから、(くだん) の 場所で落ち合おう。」


沈黙したまま夕月は、3人をぐるり見渡してから再び、晶麻を見た。そして、視線を彼らから離す。顎に手を置いて頬杖をつき、渋々といった口調で承諾する。その時の夕月は、彼らをまっすぐ見たようでいて、実際はやや視線を逸らした。


 「…っ!……ああ、後で……落ち合おうぜ。」


晶麻にとっては、許される切っ掛けを与えられ、彼はそれだけで報われた、という風に嬉しげであった。直後、ハッとするように笑みを消し、無理に顔の表情筋を戻そうとしたのか、口元がピクピク引き攣っているのも、周囲の生徒にしっかりバレていたのだが。


 「…晶麻も、少しは報われたようだ。良かったんだよな、これで…」

 「…ああ。本気で許すかどうかは、今後の晶麻(あいつ)次第だな。晶麻(あいつ)()()()()()()()抜けてるし、な…。俺達の苦労はまだ、続きそうだ…」





 

   ****************************






 「ところで…君は、どこが分からないって?」

 「…あ、はい。…え〜と、これなのですが…」

 「…っ、抜け駆けは許しません!…北岡君、わたくしにも教えてください!」


Aクラスの教室では、夕月の机を囲うようにして、生徒達が集まっている。晶麻たち3人の立ち去った後、再び争奪戦が繰り広げられた。絶対に譲れないと鬼気迫る勢いで、女子生徒達が我先にと陣取る。隣の左右の席、若しくは前後の席に、女子生徒達が座り、残りの生徒達は立ったまま、周りを囲んでいた。


陣取った順に礼儀正しく、分からない箇所を質問すれば、夕月は1人1人と向き合うように、分かるまでとことん付き合った。その光景が授業終了の度、休み時間の度に繰り返される。誰かが()()()()()()()、ルールを決めたわけでもなかったが、生徒達は皆率先して、ルールを守ろうとした。少しでも多くの者が、教えてもらえるように。


 「ここはそういう解き方じゃなく、この数式で解いてみて?」

 「はい、北岡君。わたくし、一度挑戦してみます。」

 「北岡君。これは、どういう風に解きますの?」

 「これは、この数式に当て嵌めれば、ほら……解けたよね?」

 「…あ、解けました!…北岡君、ありがとうございます。教え方がとてもお上手でしたので、数学が苦手のわたくしでも、良く分かりましたわ。」


夕月に手ずから教えてもらい、今度は自らが友人に教え、まるで役割分担するような調子で、生徒全員が助け合う。他の生徒が教えてもらう機会を作り、夕月の負担を少しでも減らそうと、配慮した。


1人1問質問に答えるだけでも、ひっきりなしに次々と現れる、生徒達に対応し続けるのは、それなりに気力も要るだろう。夕月自身は平然として、余裕もあるように見えたが、誰かが言い出したを切っ掛けに、暗黙の了解となっている。


 「九条さんも北岡君と同じくらい、教え方がお上手ね。」

 「…ふふっ。褒めてくださって、嬉しいわ…」


未香子もまた、教える側に立たされた。他の生徒に教えることで、自らも復習したも同然の結果に、当人も満更ではなかった。分からない箇所を教えれば、夕月同様に教え方が上手だと褒められ、彼女も内心では嬉しく思う。普段から夕月に厳しく教えてもらったお陰で、教えることも上達したらしい。


…学校の休み時間にほんの少し、教える程度でしたらお優しい夕月(ゆづ)も、本格的に教えてくださる時には、スパルタと申し上げても、良いぐらいですのよ。皆さんは、全くご存じないことですものね……


スパルタ風の教え方の方が、未香子の成績は良かったりする。それに、テストの点数が80点以上何教科か取れば、夕月からプレゼントを貰えたり、遊園地デートだとか様々なご褒美がある。反対に平均点以下を1教科でも取ると、暫くは登下校以外での約束は、反故されてしまう。


夕月(ゆづ)のご褒美は、飛び上がるほど嬉しいことばかりですが、逆に罰を受けることになりましたら、夕月(ゆづ)はちっとも構ってくださらなくて。()()()()()()()()はもう二度と、嫌ですもの。


そんな2人の関係を知らない者達は、常に傍らに寄り添う姿に、未香子に妬み恨みを打つけ、虐めに近い意地悪をしようとした、生徒達もいた。しかし、高校に進学して以降は皆、2人の関係を当然のこととして、受け止めた。それ以上の欲は出さずに、自然に任せるよう接すると、決して未香子を邪険にしないと、心に強く刻む者もいたかもしれない。


 「今日の授業が終わったら、一緒にテスト勉強しようと、飛野達から誘われたんだけど、未香子は…どうしたい?」

 「…え?……う~ん、そうですわね。夕月(ゆづ)は参加なさるのでしょう?…でしたら当然、わたくしも行きますわよ。」


昼食中、夕月から勉強会に誘われた未香子は、クラス中の生徒に聞こえた、あの時の会話を聞いていた。自分が誘われるのは分かっていたが、まさか…どうしたいと訊かれるとは、予想外のことだった。疑問に思いつつ承諾したが、あれはどういう意味かと、不安になる。


…どうして態々、わたくしに確認を?…もし、わたくしが行きたくないと申し上げたら、どうされたのかしら?…飛野君の婚約者候補・箏音(ことね)さん、或いは…わたくしを気遣れたの…?


あの後は普段通り、夕月の様子も戻っていた。未香子にも読めぬほど、夕月の本心はベールに包まれていて、はっきりしない。未香子がこうして1人悩む間、夕月は他クラスの女子生徒数人にも、声を掛ける。


 「うん、行く!…北岡君のお誘いなら、絶対に行きたい!」

 「萌々ちゃんが参加するのなら、私も行くわ。」

 「私も…行きます!…このメンバーで集まったら、何かが起こりそうな、面白くなりそうな予感が…。くふふ…」


中学までのメンバー男女5人に、高校から新たに女子3人が加わり、計8人で勉強会をすることになったが、未香子はまだ知らず。夕月が新たに誘ったメンバーは、晶麻たち3人に受け入れられるのだろうか?


そして急遽、新たにまた別の人物が、()()()()()()()()()のだが…。その事実はまだ誰も、夕月さえ…知らぬことであった。

 勉強が優秀な姉弟として、葉月にも触れていましたが、今回は本編には登場していません。葉月の場合は途中編入ですし、女子は自分から避けていますので、書いても面白くないかなあと、夕月の方だけ登場させました。


さて、肝心の勉強会は…次回に、続きます。


※更新が大変遅くなり、申し訳ありません。色々と事情がありまして、最近やっと落ち着いてきたので、少しずつまた書いていこうと思います。

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