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君の騎士 ~君を守るために~  作者: 無乃海
第二幕 名栄森学苑2年生編【波乱の幕開け】
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41話 複雑に絡む想いを隠して

 登校直後の朝の話、続きとなります。さて今回は、どうなる…?


※今回は、振り仮名のない『夕月』は、全て『ゆづき』と読みます。それ以外の読み方は、フリガナを付けました。

 「そんな所で立ち止まるなら、置いてくよ?…部活に寄ってくから、先に行ってもいいかな?」


後ろを歩く弟達を最小限気に掛けつつ、満面の笑みで話す萌々花に、夕月は調子を合わせていた。何故か途中から、背後の気配が感じられなくなり、背後にちらりと視線をやれば、立ち止まっているように見えた。向き合うようにして立つ、弟達の姿が。戸惑うような弟の顔を目にし、夕月は溜息を漏らしたい気分であった。


 「一体何時(いつ)まで…現実逃避を、するつもりなのか…?」

 「…えっ?…北岡くん、何か言った?」

 「いや、何でもないよ。ただ葉月達が立ち止まっていたから、一体どうしたものかと思っていてね…」


彼らが立ち止まる理由に、夕月は()()()()()()()()。だから、弟の態度を焦ったく思うのも当然で、つい小言をぼそりと呟いた。その小言を辛うじて拾い、突然歩みを止めた夕月を見上げ、萌々花は目をパチクリさせ首を傾げる。正直な反応をする萌々花に、ふっと笑みを浮かべるも、夕月は曖昧な口調で誤魔化した。


 「えっ?…未香子さん達、一体どうしたんだろう?…何か真剣に、話してるみたいだね。何か、あったのかな…?」


萌々花は単に視線を追うだけで、夕月の意図には気付かない。視線の先では夕月が告げる通り、葉月と未香子が何故か立ち尽くしていた。何時の間にか、彼らと距離が離れている。彼らが何を話しているのか、どういう表情をしているのか、そうした彼らの詳細な様子までは、ハッキリと見えなかった。


夕月の思惑を知らぬまま、萌々花は本心からどうしたのかと、心配そうに彼らを見遣る。声を掛けた方が良いのかどうか、本気で戸惑っているようだ。彼らの会話の中身まで分からずとも、何か感じ取っているものが、あるのだろう。


 「……………」

 「……っ!?………」


萌々花の本気の心配を余所に、夕月は遠慮なく放置宣告をした。いつまでも立ち尽くすようならば、君達を放置する…という意味の言葉を、含ませる。このまま先に行っても良さそうだが、このまま放置するのは面倒になりそうだ。夕月はそう思っているようにも、見える。


ピクリと葉月は眉を顰め無言を貫き、未香子もまたビクッと肩を揺らし、何とも言えない顔をする。夕月の声はそれほど大きくなくとも、よく通る声だった。自らの置かれた現状に気付くと、気まず気な顔をしながらも、再び歩き出す。


…やっぱり北岡君は、優しい人なんだね。時々冷たい素振りを見せても、未香子さんのことは勿論だけど、弟くんのことも心配なんだね。本当に素敵な人……


これがもし…知り合う前であれば、容赦ない冷たい人であると、感じていたかもしれないが、此処に居る現在進行形の彼女には、夕月は格好良い人物としか映らないらしい。見惚れるように隣を見つめる瞳は、()()()()()()()()ものである。他には何も、映さないのだから。


 「萌々、行こうか。」

 「…えっ?…あっ、うん…」


萌々花に一言声を掛けると、彼らが追い付くのを待たずに、夕月はサッサと歩き出すものだから、萌々花は慌てて隣を陣取る(キープする)。夕月が未香子を待たないこと、彼女もまた夕月の隣に、追いついてこないことなど、本来疑問に思うところであろうに、萌々花はそれらを見過ごしていた。心の何処かで気付いても、無意識に受け流したようにも見える。今だけは隣にいるのが、自分でありたいと……


夕月の声で我に返った、葉月と未香子も複雑な心境になっていた。夕月に関連した話をしたに過ぎないが、何故だかその事実を知られたくない、とも思う。知られた途端に、胸の奥で生まれた微かな想いも、一緒に見透かされそうで。


姉に頼まれただけのつもりが、つい要らぬ世話を焼いたことも含め、双子の姉は弟の本音など疾うの昔に、気付いているだろうと分かっている。会話の中身は正確に分からずとも、弟の気持ちを見誤るはずがない、とも知るからこそ。また未香子も今は、知られたくなかった。一瞬とはいえ感じた、屈折した複雑な想いを。


 「僕は…夕月ほどには、責任感は強くない。だからあれは、義務みたいになっていたようだ。それよりも…今日の未香子は、何時もと違う気がするよ。夕月の隣を誰かに譲るほど、僕に対して()()()()()()()()()()()()()()()()が、あったようだね。普段の未香子と違うからか、僕も調子が狂ってしまったようだ…」

 「…………」


夕月にある程度追いついた後、程々に距離を開けて歩く彼と、平常とは異なり彼の歩みに、彼女は合わせてきた。彼もまた彼女に合わせ、歩く。暫し2人は、無言で歩き続きた。彼女は夕月の背中に、視線を定めたままで。






    ****************************






 葉月は隣にチラッと視線をやると、なるべく普段通り揶揄う風な口調で、話し掛けた。半分冗談っぽく告げながら、半分本音であるかのようだった。あれから何となく2人の間に、どこかぎこちない雰囲気が流れ始めて、少しでもその流れを変えようとしたのも、あるだろう。


普段は怒ったり反論したりと、何かしら反応を返してくる彼女も、今は何故か反応を全く返してこない。況してや、嫌がる素振りさえしなくて…。何時もなら疾っくの昔に、思い切り顔を顰めているだろうと、彼の方が顔を顰めそうになった。


……ううっ。わたくしも全く同じことを、()()()()()()()()()ですっ!…何時もとは異なる葉月のお陰で、最近は…わたくしの調子も、狂わされていましてよっ!…まるで夕月と同一人物のように、勘違いをしてしまいます!!


当人の言う通り、彼の言動に大いに振り回されるも、幸か不幸かあまりに取り乱した結果、見た目では何の変化もないように、周りに見えていた。動揺し過ぎて動きが固まったわけではなく、単に何の行動も起こせなかっただけ。ただ反応できずにいた、それだけのこと。


何の反応もなくスルーされてしまい、未香子にどう対応すべきかと、葉月は冷や汗をかいた。ちょっと会わない間に、新しい顔を見せられたようで、何となく落ち着かない気もして。その後、彼らは一言も話さず、黙々とただ歩いた。


前を歩く2人は会話を続けながらも、何処か上の空であるようだ。夕月は後ろを歩く弟達に、さり気なく気を配りつつ、萌々花は隣を意識しながらも、後ろにいる彼らの現状の様子が、気に掛かっているらしい。要するに4人は各々、何処か別のところに意識を向けている。


 「今から映像部の部室に行くけど、未香子はどうする?」

 「…あっ、わたくしも…参りますわ!」

 「名残惜しいけど、私も部活だから…行くね。北岡君も未香子さんも、また後で話そうね~!」

 「じゃあ、僕も教室に行くよ。夕月、また帰りに…」


それぞれ行く道への分かれ道に、4人が到着する頃には、4人の間に会話は殆どなくなっていた。こうして彼らは、各自の教室や部室へと別れていく。夕月と未香子は映像部へ、萌々花は陸上部へと向かい、葉月は2年生の教室へ向かって。


立ち止まった夕月が笑顔で言えば、未香子は夕月の隣を愛陣取っ(キープし)て、萌々花は慌ただしく走り去る。その寸前、葉月に会釈をする形で。部活に所属していない葉月は、3人の後ろ姿を見送るようにして、暫し足を止めていた。その後、彼はゆっくりと教室を目指し、歩み出す。


 「あの子が、噂の『菅 萌々花(ライバル)』さんか…。天然かそうじゃないのか、一見見分けのつかない女子だな。夕月に…気があるようだが、僕には興味がないようだし、意外と面白いかな。夕月が本気で気に入るのも、十分理解できるな…」


まだ誰も登校していない教室で、葉月は独り言ちた。普段は独り言など零さない彼だが、気持ちを落ち着かせようと、今は敢えて声に出す。頭の中がごちゃごちゃして、普段のように整理できない。本当に()()()()()()()()は、絶対に口にする気はないからだが。


 「夕月に気のある女子の中には、異性の僕が本物だという風な、無神経な視線を向ける者も多い。しかし、菅さんは夕月と僕を完全に切り離し、別人として見ているようだ。本気で夕月に惚れている、と言うべきだろうな。一見して未香子と同類に思えるも、僕達姉弟は同類だと思えないんだが…」


誰も答えてくれない教室で、1人ぶつくさ呟く。低めの声音で、独り言を漏らす彼の様子は、まるで何かを詳細に分析するように、見えてくる。萌々花がどういう少女かを、明白に把握しようとしている、と…。


名栄森学苑に転入後、夕月の代わりとして見ているような、好奇な視線を向けられていると、屡々感じていた。然も、1人や2人という少数でなく、また同性たる男子達からも、好奇心を向けられているようだ。これらの視線に関しては、特に嫌悪を感じていないものの、好き好んで向けられたいとは、思わないだろうか。それでも逆に、本来は夕月に向けられた好意だと、葉月(おとうと)は好意的に解釈することで、更に夕月(あね)を誇りに思うのであった。


…夕月は最終的に、どうするつもりなのかな?…夕月だからこそ、許されている部分があるならば、僕には絶対に許されないことも、当然あるわけで。僕は抑々夕月のように、振る舞う気もなければ、振る舞うこともできないが……


夕月にしかできないこと、葉月にはできないことを各々が、十分踏まえた上でのことである。自分で出来得る範囲で、利用できるものは全部利用してでも、其々の役割に徹してきたつもりだ。ある程度は予測していたとしても、やはり予測不可能な出来事も、あるはずだと理解していても、予想外なことがある。


…夕月がこうなった原因は、僕にも責任の一端がある。それでも僕達は、あの瞬間に戻れたとしても再び、同じ道を選ぶだろう。後悔することになろうと、何度繰り返そうとも同じ道に、進むだろう。


後悔だけは絶対にしないと、心に決めている双子にとって、予想外な出来事も大きな問題でなく、邁進すべき我が道とした。彼らの役割が公になる頃、双子が本来の姿に()()()()()()()、今は神のみぞ知る…であろうか?

 萌々花は葉月を認識しても、変わりませんでした。それが葉月には、新鮮に映っているようです。他の3人も、何かを感じているような…。これから何かが、変わる予感がしているのかも。


今回、やっとキリがつきました。次回はどういう展開にしようか、悩む…



※7月の更新に間に合わせられず、随分とお待たせしてしまう結果に…。更新が遅くなり、誠に申し訳ありません。

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