表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君の騎士 ~君を守るために~  作者: 無乃海
第二幕 名栄森学苑2年生編【波乱の幕開け】
192/199

番外 誰かにとっては別格な…

 さて、今回は……。どのキャラの視点になる…?

 「…何しに来たんだ、北城 姉弟(きょうだい)? …普段は話し掛けようとしても、そうさせない空気を醸し出し、完全無視を決め込むくせに…。こうしてお呼びじゃない時に限り、邪魔をしに来るんだからな。特に…北城姉!…お前は裏表がなさそうな人畜無害な顔で、男女問わず新人メンバー達を惑わせ、()()()()()()()だ…」


『鬼賀隊』の(かしら)である糸賀は、僕達姉弟の待ち伏せに特に驚きもせず、見たくもない奴に会ったという顔で、眉を顰めた。大きな溜息を吐きつつ、諦めた調子で告げてくる。夕月(ゆづ)を厄介者扱いする糸賀の口調に、僕はイラついた。何故か当人はふんわりのほほんとした口調で、上手く躱したが。その事に調子に乗った糸賀は、今度は僕に話を振ろうとする。


 「…いいや、お前は絶対に確信犯だろ。北城弟も、そう思わないか?」


流石にムッとし、お前は何を言っているのかと、言い返したくなった。夕月(ゆづ)に喧嘩を売るつもりかと、つい冷静さを欠きそうになる。姉が冷静でいる以上、僕に怒る権利はないけれど。だからと言って、此奴に同意するつもりは、微塵もない。


僕からの予期せぬ反論に、糸賀はぐうの音も出ない様子で、睨んでくる。常識のある僕に話を振るつもりが、此奴に聞くんじゃなかったと、すっかり当てが外れたようである。夕月(ゆづ)のことは何でも全部、僕にとっては別格なんだよ。


 「俺は他に成す術もないまま、お前達双子姉弟2人から、子分同然の扱いを受けてはいるが、だからと言って俺は別に、後悔してないぞ。俺は今まで誰にも負けずにいたけど、それはあまりに平凡で退屈な人生だ。そんな時、不良ですらない生真面目な中坊に、真剣勝負で初めて負けた。寧ろ、本気で悔しいと思う傍ら、心のどこかで楽しく感じるとは、な……」


それでも、此奴の見る目は確かだ。こうして夕月(ゆづ)の欲しい言葉を、本心から告げてくれるのだから。本人は愚痴ったつもりだろうが、僕らには誉め言葉にも感じる。曲がった正義を振り翳す者より、どれほど信頼するに値するかと思えた。


暫し夕月(ゆづ)は静観した後、本題に入るとして手厳しくバサリ、諫めた。…否、警告と見做すべきかもしれない。それほど強い口調でありながら、単に忠告程度のやんわりした口ぶりで。これが、夕月(ゆづ)()()()()()()()。自分の方が上だと相手を牽制し、一方で配慮する気配も見せつつ、一切反論させず精神的に追い込む。


話術に嵌まらなくとも、反論はできぬよう封じられるのも、僕達姉弟に勝てない理由だろうが、態と反論しないことも、一理あるだろう。また他にも、全く別の理由があるかもしれないな…。


 「さて…そろそろ良いかな?…君達の頭のお許しが漸く下りたし、鬼賀隊の君達とも、じっくり話し合うとしようか?」

 「「「「「「………………」」」」」」

 「「「「「「……?!……」」」」」」


夕月(ゆづ)は主導権を取り戻し、本題に入ると声高らかに宣告した。自分達のトップが下出に接する様子を見て、僕達姉弟に逆らうべきではないと、この場の半数以上の者達は既に、悟っているだろう。如何にでもなれという態度の糸賀や、息を殺すように様子を窺う古株たちに、今年入会したばかりと思われる、新入りメンバー達だけが理由(わけ)も分からず、呆けた顔をしていた。


 「君達の頭は、弱き者を助け強き者を挫く、常識のある者だ。にも拘らず一般人に迷惑を掛ける行為は、君達側に問題があるということだ。鬼賀隊は自らの居場所を求め、単に同類と心の隙間を埋める場では、ないんだ。糸賀は常に自らの信念を掲げ、法を犯し他人(ひと)を害す行為は、絶対に行わないと誓った。それを破るメンバーがいるのなら、糸賀の信念に賛同する我々も、黙っていないだろうね…」


夕月(ゆづ)は飽くまでも、糸賀を持ち上げる。そうして悪意を持たせず、彼らのリーダーが尊敬するに値する人物だと、丸め込む。確かに糸賀は法を守り、一般人を巻き込まないようにしており、1人の人間として良い奴だ。しかし、奴がどれだけいい奴だとしても、部下達が糸賀の()()()()()()()()とは、限らない。実際に毎年問題が起きるのは、そういうことである。


 「夕月(ゆづ)の言う通り、自分の存在を示した時代は、もう流行遅れだな。今は糸賀のようにさり気なく、迷惑を掛けない範囲で活動するのが、格好つけるということだよ。今の君らは糸賀に、恥を掻かせているだけだ。」


当然の如く僕は、姉の味方である。例え、雨が降ろうと槍が振ろうと、何があろうとも、絶対に……






    ****************************






 「…な、何でお前らのような奴が、偉そうにするんだ!…糸賀さんが下出に出てるうちに、帰りやがれっ!!…糸賀さんは優しいから、あんたらの顔を立てているだけなんだぞ!…それを…いい気に、なりやがって…」


どう見ても新入りと思われる者が、夕月(ゆづ)に飛びかかろうとした。実際には詰め寄って来るなり、手を伸ばし掛けてきたのを、夕月(ゆづ)は軽く躱したけれど。後輩として糸賀に憧れを抱くものの、糸賀の本意を酌み取れぬまま、(いず)れ犯罪に手を染める輩となる、そんな可能性を秘めていた。


夕月(ゆづ)の忠告が憧れの先輩を馬鹿にした、とでも受け取ったらしい。喧嘩腰で大声で怒鳴りながら、今にも夕月(ゆづ)に掴みかかろうとした。どれほど喧嘩が強く、体の大きな屈強な相手だろうと、自らの軽さを生かしつつ、相手の力をも利用する夕月(ゆづ)の戦法は、自らの力に自惚れて過信し、他者を見下し油断した者には、通用するはずもなく…。


新入りの動きを瞬時に読み、スッと体を後ろに逸らすと、上半身を屈めてクルリ回転しつつ、相手の攻撃を避ける夕月(ゆづ)。胸元を掴もうとした若い男の手は、スカッと掴み損ねて空を切る形で、一気にバランスを崩した。前のめり態勢となる一瞬を狙い澄まし、前から見えるようになった背中に、激しい動きで勢いよく強烈な拳を、一撃として叩き込む。


 「……っ!?……ぐっ!!…………ぐわぁは、がはっ………」

 「…馬鹿だな、新入りは…。鬼賀隊を束ねる俺ともあろう者が、何もできぬ一般人をこうも安易に、此処に招き入れるはずもないだろう?…此奴ら姉弟が待ち伏せているのは、分かり切ったことだしな…」


僕以上に姉を見下し、夕月(ゆづ)の一撃を(もろ)に受けた結果、呻き声を上げながら前のめり状態で、床へと倒れ込む。その時、ゴツンという鈍い音もしたけど、当人に痛みはない様子だし、()()()()()()()()しよう……


その後、新入りは今にも吐きそうな声を出し、咳き込んだ。彼の背中には、夕月(ゆづ)の拳の跡がくっきりと、残されただろう。糸賀(かしら)に憧れながら、糸賀(かしら)の本質を見ない者に、糸賀の口調は優しげであれども、向けられる視線は氷の如く、冷ややかだ。


 「……(はくはくはく)…」

 「…ん?…何だ?…恐怖で声が出ないのか?…根性のない奴だな。北城姉弟が本気で洗礼していたら、こんな程度じゃ終わらないぞ。」

 「…ふふっ、そうだね。先程の私の忠告が、理解できないようだ。私はこういう中途半端な輩が、一番許せないんだよ…。何なら今後一切、誰とも喧嘩できぬ程度に、調教しておこうかな?」

 「……っ!!………(ガチガチガチ)…」


新入りは口をパクパク動せど、息がはくはく出るだけだ。半分は単に脅し、残り半分は本心を込め、糸賀の脅しに夕月(ゆづ)も便乗する形で、追い詰めていく。実際に圧倒的な強さを見せつけられ、2人の脅しに本気で恐怖を感じたらしい。ガチガチという音がするほど、唇を震わせて。


 「夕月(ゆづ)も僕もこうした場では、嘘を()かないよ。冗談半分・音半分でも、実行に移さないという保証も、ないんだからね?」

 「…ああ、分かってる。新入り(こいつ)のしたことは、安易には許されない。まだ仲間になったばかりだし、一度ぐらいは見逃してやるが、二度目はないと思え。」


一応僕も、脅しをかけておく。糸賀も一度はチャンスをやると、新入りを制約させることにしたようだ。本来、僕達が口を挟む余地はないが、糸賀は僕達姉弟の意志を尊重してくれる。僕達姉弟と拳を交えたあの時も、飽くまで強い者との勝負に、糸賀が興味を持っただけであり、女子供に手を出すような奴ではない。


 「私も、二度目はないよ。それほどのお人好しでも、ないからね。」

 「此奴には、良い薬になっただろう。一度はチャンスを与えねば、此奴は更に堕ちていくからな。」


夕月(ゆづ)()()()()()()()、非常に珍しい。糸賀もそれは理解しており、だからこそ放り出さずに面倒を見ると、受け入れたのだろう。こうして駄目になっていく人間達を、地獄に堕ちていく仲間達を、身近で見てきたからこそ。


 「糸賀が鬼賀隊を辞めたら、鬼賀隊も解散になるかもな?」

 「…できれば俺も、そうしたくないが…。俺が抜けることで、鬼賀隊が犯罪集団に堕ちるぐらいなら、ケジメを付けさせるためにも、解散させるつもりだ。俺の意志を継ぐ者がいれば、俺はいつでも辞めてもいいんだが…」


僕が放った冗談にも、糸賀は真面目に答えてくる。不良行為をする者が、全て悪だと考えられている世の中で、奴は真剣にケジメをつけようとした。そんな糸賀を慕う部下達も多く、それでも…糸賀の意思を継ぐ者は、いなかった。そのお陰で辞めたくとも、辞められないのだろう。


 「…す、すいませんでした、糸賀さん!…俺、間違っていました、姐さん!」

 「…君の目は、節穴のようだね?……誰が、姐さんだって?」

 「……ひっ?!……ヒイイ~~~!!……すいません、義兄さん!!」

 「……年上から、義兄さん呼ばわりされる理由は、ないんだけど…?」

 「……ヒ~~~!!……す、すいませんでしたぁ~~」


性懲りもなく、姉を姐さん扱いした新入りに、僕の何かがプツンと切れる。怒りから凄まじい冷気を放ち、新入りを震え上がらせた。糸賀が夕月(ゆづ)をどう見ているか、()()()()()()()()からこそ、怒りが増していく。


夕月(ゆづ)も僕も糸賀とは、友達以上恋人未満の単なる友人だ。鬼賀隊の姐さん&義兄さんと、死んでも呼ばれてなるものかっ!!

 今回は、夕月の弟・葉月視点です。新キャラの糸賀(しが)は、引き続き登場。糸賀が所属する鬼賀隊を巡って、夕月が制裁&粛清モードに…。途中で軽い乱闘シーンも起きたけど、出血などのないソフト系喧嘩だし、ギリセーフかな…?


今後の糸賀くんの登場は、殆どないと思われますが、乱闘など騒動に巻き込まれた時に、モブ程度に登場するかどうか、というところでしょうか。要するに、不良の頂点も敵わない強さを、強調する為に生み出されたのが、彼でして……


次回からはまた、舞台は学苑に戻る予定です。


※今回は葉月の語り口調の為、『夕月』は全て『ゆづ』読みとなります。

※会話の中の( )内は、周りの人達に微かに聞こえた音として、敢えて会話中の言葉にして表現しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ