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君の騎士 ~君を守るために~  作者: 無乃海
第二幕 名栄森学苑2年生編【波乱の幕開け】
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18話 お泊り旅行⑥ 2日目

5月連休中のお話、その続きです。前回、大浴場入浴後の続きとなります。

 「此処で葉月と待っていたら、先程の女性達に声を掛けられたんだよ。正直に言えば、困っていたかな。僕達が何度女性連れだと伝えても、聞き入れてくれなくてね。嘘も方便と捉えていたようだ。彼女達は恋人探しに来たらしくてね、目を付けられたようだったよ。……ふう~。」


朔斗は眉をハの時にして、本心から困ったと言う顔をしつつそう語った後、溜息を()く。それに対し葉月は、全く動じる様子も見せず、コクコクと頷くだけだ。表情にも出さない葉月に、「…う~ん。何かが違うような…。」と心の中で呟きつつ、試しにと未香子は葉月の腕を掴んでみた。()()()()()()()()()()()()、葉月はギョッとした顔へと変化し、呆然と彼女を見つめてきて。


…お兄様は普段から、誰にでもお優しいですものね。特に女性相手には、強く断れなかったのでしょうね…。それに対し葉月は、全く動揺していない……あらっ?…お顔の表情が、激的に変わられました?…う~ん。先程とは…違いますのね?


 「……っ!?………な、何?……これは、何か意味がある?」

 「…いえ、別に…。ちょっと気に掛かる事情が、ございましたので……」

 「…………」


葉月は目を見張り、暫らく固まっていた。彼の腕を掴む未香子の手元を見て、彼女の顔を見て…と視線を何度も動かしつつ、漸く恐る恐るという様子で話し掛けて来る。「単なる実験ですわ。」とは流石に言えず、『何でもございませんわ。」と応える未香子である。葉月はその答えに対し、眉を顰め頬をピクピクさせ、当然ながら納得がいかないという表情であった。若干、耳も多少赤いような…と、未香子は彼の表情をジッと観察して…。


 「それでは僕達も、部屋の方へ戻ろうか。」


朔斗のその掛け声を合図に、未香子は葉月から手を放すと、今度は夕月の腕にくっついた。暫し呆然としていた葉月だったが、直ぐに何でもないという顔に戻ると、未香子達の後を歩いて行く。ジッと未香子の後姿を見つめつつ…。葉月からの視線を犇々と感じ、未香子は夕月と楽しげに話していても、上の空になりそうで…。


…きっと先程のことが、納得出来ないのですよね…。仕方がございませんわ。何しろわたくしが、一番理由を知りたいぐらいですもの。一体()()()()()()()()()のでしょうね、わたくしは……。振り回して申し訳ございません、葉月…。


朔斗達の部屋に戻れば、夕食の食膳は既に片づけられており、代わりに布団が敷かれていた。朔斗と葉月と共に部屋に入った未香子達は、その後も4人でトランプ遊びの他にも、スマホのアプリゲームなどで対戦する。最後に恒例の枕投げもして、騒ぐだけ騒いで疲れたということで、そろそろお開きに…となる。未香子と夕月も就寝しようと、隣の部屋に戻ることにしたが…。


 「もう、お兄様ったら。一々、お部屋まで送っていただかなくても、宜しいですのよ。すぐお隣のお部屋なのですし、ご心配し過ぎですわよ。」

 「そんなことはないよ。心配し過ぎて、()()()()()()()()()()ね。君達2人が無事に部屋に戻るのを見届けないと、僕が落ち着かないんだよ。」


…もう、面倒臭いお人ですわ、お兄様…。それほどに…ご心配なのですの?…葉月を見習ってくださいな…と、一言申し上げようと致しましたら、葉月も明らかに心配そうなご様子で、ドアからお顔を覗かせ、此方を見ておられますわね。…ああ、葉月も同じなのですの…。本当にお2人共、ご心配が過ぎますわよ。…ふふふっ。


こうして部屋に戻った未香子と夕月は、互いに顔を見合わせ吹き出した。ついつい声を上げて、大笑いしてしまったほどである。


未香子達の部屋も同様に布団が敷かれており、暫く2人は布団の上でゴロゴロとしつつ、兄弟の話で盛り上がっていた。知らぬうちに眠気が襲って来たようで、気付いたら…もう朝という状況である。未香子は完全に、熟睡していたようだ。夕月は既に起きており、縁側に当たる場所で椅子に座り、新聞を読んでいる。


 「未香子の声が途中から聞こえないと思えば、完全に寝落ちしてたよ。上布団を掛けずに眠っていて、一応私が掛けたんだけどね。如何やらそのまま朝まで、寝ていたんだね。私もその後直ぐに熟睡したらしく、つい先程起きたばかりだよ。2人共に、疲れていたんだね。それにしても…よく眠ったなあ。」

 「…ううっ。夕月に布団を掛けていただくなど、大変なご迷惑をお掛けしてしまいましたわ。疲れていたとは申せども、寝落ちしてしまうとは恥ずかしいです…。お世話をお掛け致しました…。」

 「…ふふっ。どう致しまして。」


未香子はすぐさま詫びを入れ、真っ赤になってしょんぼりとする。夕月は戯けた口調で、笑いながら返してきて。こういうやり取りも楽しいですわ…と、未香子が初めてのお泊まりに浮き浮きした、丁度その時。夕月のスマホからメールの着信音がピロンと鳴り、メールを確認した夕月は、未香子の方を振り返る。


 「葉月からメールが届いたよ。後30分ほどで朝食となるらしく、早めに隣の部屋に来るように、と。目が覚めたのならば、隣に行く用意をしようか?」


夕月がそう話し掛けてきたので、慌てて飛び起きた未香子であった。






    ****************************






 「やあ、おはよう。2人共、よく眠れたかな?」

 「おはよう、夕月、未香子。体調は大丈夫?」

 「おはようございます。朔斗さん、葉月。お蔭様でよく眠れましたわ。」

 「おはようございます。お兄様、葉月。わたくしも、ゆっくり休みましたわ。」


隣の部屋を夕月がノックすれは、葉月が部屋の扉を開けた。部屋の奥からは、朔斗が声を掛けてくる。未香子達はきちんと着替えて来たが、朔斗達はまだ浴衣姿である。布団は丁寧にきっちり畳み、隅に片づけられている。こういう几帳面なところは朔斗も葉月も、学生寮で慣れている感じだ。


 「今日も2人共、可愛いね。未香も夕月も、良く似合っているよ。」

 「…もう、お兄様ったら、お上手ですこと…。」


実の兄とは言えども服装を褒められれば、嬉しくなる。相変わらず女性の扱いが上手だと、未香子は苦笑する。今まで兄に()()()()()()()()()()ことに、逆に不思議に思う妹である。


 「おはようございます、九条様。よく眠れましたでしょうか?…もう間もなく朝食を運ばせていただきますので、もう暫くお待ちくださいませ。」


この旅館での責任者と思われる仲居さんが、朝食の用意が整ったことを、態々知らせに来てくれる。そして予定通りの時刻には、朝食が運ばれて来る。何人かの仲居さん達が朝食を運んで来て、4人の前に豪華な食事をズラッと並べていく。


 「どうぞ、ごゆっくり。」


先程の仲居さんが最後に顔を出し、頭を下げ一言挨拶をしてから去って行く。朝食も珍しい郷土料理が並び、4人は楽しく会話しつつ美味しく頂いていた。


 「今日もこれから、出掛けるよ。今日は、遊園地に行くつもりだ。夕方頃にまた此処に、戻ることになる。」


朝食後の小休憩で、朔斗からそう説明を受けた後、直ぐに外出の用意をして4人は旅館を出た。車のナビに予め行先は設定したと話す朔斗は、そういう準備を計画的にする人物だ。朔斗に任せて置けば心配はないと、未香子も夕月達姉弟も安心している。但し、サプライズより()()()()()()()()()()()、敢えて口に出さず。


目的の遊園地は、旅館から比較的近い場所にあるようだ。彼ら4人が宿泊する旅館からは、電車やバスを乗り継いで来るらしい。マイカーで移動した彼らは、乗り継ぎなしで楽だったが。この遊園地は大規模な施設ではなかったものの、それなりに楽しく過ごす4人である。


未香子が周りを良く見渡すと、家族連れや恋人カップルに、女性同士で遊びに来ている人も多い。学生風の男性グループを見つければ、この辺りでは誰もが来るほどの人気があるのかと、納得する。また他の人達からは、自分達がどう見えているのだろうかと、視線を浴びる度に気にして。


都会のような大規模ではなく、一通りの遊具に乗ることが出来た4人は、久しぶりに未成年らしく燥いでいた。朔斗や葉月が()()()()()()()()()、未香子は今までに見たことがなくて、それさえも…未香子は嬉しくて。


遊園地での締めくくりは、4人で一緒の観覧車に乗った。十分に景色を楽しんだ後には、園内のお土産ショップに寄って、今日の記念にと4人で色違いの同じお土産を、買って。旅館への帰り道では、車の中でついウトウトした未香子だが…。


…お兄様もお疲れでしょうに、運転を代わって差し上げられなくて、その上うたた寝してしまいましたわ。…申し訳ございません、お兄様。


旅館に戻ってからは、早めに大浴場で入浴を済ませ、それから4人で共に旅館の夕食を頂く。到頭明日は、自宅へ帰ることになる。遠距離移動となる為、早めに休もうということになり、食事後に少しだけ話して解散となった。その後何時でも眠っても良いようにと、先に就寝の準備をし布団に潜り込んで、未香子は夕月と今日の出来事を楽し気に話す。結局、昨日同様に未香子が先に寝落ちしたらしく、途中から記憶がないけれど…。


…朝までぐっすりと、眠ってしまったみたいですわ。お兄様も葉月も同じく、朝まで一度も目覚めなかったと、ぐっすりとお休みされたようでして。ちょっと、燥ぎ過ぎてしまいましたかしらね。…ふふっ。今から再び運転されるお兄様には、申し訳なく思ってしまいますわ…。


 「あれから葉月が、今日の計画を確認してくれたから、僕はあの後直ぐに休むことが出来た。今日は体力も視力も十分に回復したし、帰途に就く途中でイベントを開催している所があるから、其処に寄って行かないか?」


車を運転し出してから、朔斗はそう告げてきた。もう帰るだけだと思っていた未香子は、勿論異論はなかった。そして夕月も葉月も異論はなく、帰宅する途中で彼の提案するイベント会場とやらに、寄ることになったのである。

 連休中のプライベートな内容です。お泊り旅行第1日目の夜から、2日目の一日分と、3日目の帰途に就くところまで、となりました。


1日目が随分と長くなった為、2日目はご割愛という感じで短くし、2日目の出来事はサラッと流しました。3日目も短いかも…?

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