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君の騎士 ~君を守るために~  作者: 無乃海
第二幕 名栄森学苑2年生編【波乱の幕開け】
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17話 お泊り旅行⑤ 大浴場

 今回も5月のゴールデンウィーク、連休中のお話続きです。


旅館に入ってからの出来事、となります。

 宿泊する旅館で男女別の部屋に分かれ、其々が部屋で暫く休んだ後、朔斗&葉月の部屋にて共に夕食を取ることになる。夕食は隣の部屋に用意することを、旅館の仲居さんが夕月&未香子の部屋に、態々知らせに来てくれた。


 「お隣のお客様とご一緒に、お夕食を摂られるとお伺いしております。今からお隣の部屋に、お食事をご用意させていただきますので、お早めにお隣の部屋へお越しください。」

 「はい。ありがとうございます。すぐに参ります。」

 「では、ご用意させていただきますので、失礼致します。」


夕月が代表して返答すれば、仲居さんは丁寧なお辞儀をして去って行く。お兄様達のお部屋で食事をご一緒致しますのね…と、未香子はワクワクしていた。兄の部屋に気軽に行きたくても、赤の他人である彼も居る、然も…()()()()()()()()()()葉月に、どう対応すればいいのか分からない。これが自分の家族だけならば、既に部屋を見に行っていただろうと…。


 「未香子、お隣のお部屋に参りましょう。」


そう声を掛ける夕月は、普段の服装に近い楽な服装に、既に着替えていた。いつの間に…着替えられましたのかしら、と疑問に思う未香子に、夕月はその疑問に簡潔に答えてくれる。


 「…ふふふっ。先程から、暫くウトウトされておられましたわよ。未香子も長時間のドライブで、お疲れのご様子でしたわね。」

 「…っ………」


…ああ。わたくし、ウトウトと…してしまったのですね…。…ふうっ~。確かに初めてこのメンバーで旅行することに、然も…お泊りなどとは、お兄様からお話を伺ってからずっと、この日をどれだけ楽しみにしておりましたことか…。その所為で前日から寝不足でしたことやら、今日1日で燥ぎ過ぎてしまったことやら、色々と事情がありますけれど…。


 「これ以上遅くなりますと、誰かさん達が余計にご心配をされますわね。」

 「そうね…。お兄様も葉月も、心配性ですものね…。」


未香子は夕月と目が合うと、兄達のことで苦笑しつつ、余計な心配をされないうちにと、隣の部屋に移動する。隣の部屋では既に、朔斗と葉月が寛いだ状態で、2人が来るのを待っていた。部屋には4人分の席が用意されており、テーブルには食事の用意が着々と進んでいるようだ。


彼女達が来るのを待っていた男性達も、食事の席に着く。朔斗と葉月が隣同士で座った為、未香子と夕月も隣同士に座れば、自動的に夕月は葉月の前に、未香子は兄の前に座る形となり…。


自分の前に座る妹に、朔斗は嬉しそうに微笑み返し、どういう料理が用意されるのかを、詳しく説明してくる。一人鍋のような料理も用意されており、仲居さん達が残りの料理を運んで来た時に、その鍋に火をつけてくれて。


 「それでは、ごゆっくりお召し上がりくださいませ。全ての食事を終わられましたら、そのままで結構です。また後程、こちらで下げさせていただきます。何かございましたら、そちらの内線専用のお電話にて、お知らせくださいませ。」


朔斗がお礼を伝えたのに続き、残りの3人も礼を言う。仲居さんは簡単に説明をしてから、お辞儀をして去って行くと、4人の視線は自然に目の前に食事に移った。鍋以外の料理も湯気が出ており、食欲を誘っている。


…美味しそうですわ。お兄様のお話では、この地域の特産品を取り入れた、純和風のお料理なのだとか…。普段はわたくしが見掛けないような、お料理もありますわね。あら、これは…とても美味しいですわ。これも、味付けは薄味ですのに、わたくしの好みの味ね。……う~~ん、とても美味しいっ!


このように、未香子だけではなく他の3人も、美味しくいただいていた。朔斗は大学生になったことで、()()()()()()()()()()()()()()、1人だけビールを飲んでいる。葉月は今年高校3年生、夕月も年齢は葉月と同じであるし、未香子は高校2年生なので、残り3人はまだ未成年ということで、ジュースを飲んでいた。


残念ながら成人後も、お酒は飲めそうにないですわ…と、未香子は心の中でひっそりと呟く。何しろ、バレンタインチョコのお酒入りタイプを、数個食べただけで酔ってしまうほどに、お酒に弱い。両親と兄と共に参加したパーティで、アルコールの含まれる大人用のシャンパンを、シャンメリーと間違えて飲んだこともあるが、一口飲んだだけなのに顔を真っ赤にし、呂律は回らないし、足元はふらふらして倒れそうになるし、完璧に酔っぱらってしまった…。


あの時、朔斗が直ぐに気付いたお陰で、醜態を晒すことなく済んだ。もう二度と飲みたくないと、未香子が誓ったのも無理はない。逆に朔斗は、子供の頃からちょくちょくと間違えた振りで、大人用のシャンパンを飲んでいた。グラス1杯ぐらい飲んでも全く酔う素振りもなく、顔も赤くならないのでバレなくて。きっと将来は、酒豪とかの領域に入るのかも…と、未香子は思い出し笑いをしていた。


葉月と夕月までもが、シャンパンを飲んだことがあるようで、成人後は3人で飲み会をするかもしれないと、未香子は少々羨ましい気分になる。自分も多少は飲めるようになりたい…と思いつつ、あの時のことを思い出せば、止めておこうと…。


朔斗は明日も運転するので、飲酒運転の可能性を考え、グラス1杯だけに制限していた。適度に話しつつ食事を済ませ、未香子達は部屋に戻った。その後は、大浴場のお風呂に行こうと4人で移動する。決して、()()()()()()()()大浴場に…。






    ****************************






 4人で大浴場へと移動し、男女別の入口に分かれて入った後、未香子はホッと溜息をきそうになる。別に一緒に入る訳でもないのに、未香子は何となくそわそわ気分であったからだ。兄と夕月が居ても平気なのに、葉月には…別の感情が唐突に湧き出て来て、自分でもこれが何なのか分からずに。


中のお風呂は大きな浴場だけではなく、外にも出て行けるようになっており、露天風呂がいくつか用意されていた。こういう時ぐらいしか来れないと、全部制覇する勢いで、未香子は夕月と回ることにする。


 「未香子、慌てると転ぶよ。」

 「大丈夫ですわ。わたくしも、()()()()()()()()()作りません。」


露天風呂には樽風呂や檜風呂もあり、夕月と2人で一緒に入浴する未香子は、出る部分がしっかり出ている夕月と、まだあまり出ていない自分を比べ、ちょっぴり悲しくなっていた。それでも、童心に帰ったような気分で燥ぎ、夕月に忠告されたりして。裸で転ぶなど、一生の不覚となるような事態は避けて。


 「お風呂の後は、やっぱり浴衣ですわね。」

 「そうですわね。未香子は、良くお似合いですわ。」

 「そう仰る夕月も、とても似合っておられましてよ。」


お風呂も満喫した彼女達は、満足して浴場を出ることにした。旅館内ならば何処へでも、旅館が用意する浴衣を来て、出歩くことも可能だというので、入浴後は2人揃って浴衣に着替えた。この後、兄達と合流するのかと思うと、急に気恥ずかしい気分になる未香子は…。急にドキドキして来た…と。


 「思っておりましたよりも、長居をしてしまいましたのね…。葉月達は、待ちくたびられておられることでしょう。」

 「お兄様も葉月も、待ってくださっておられるかしら?」

 「それならば、大丈夫でしてよ。わたくし達のことを、とてもご心配しておられましたから…。」

 「……心配?」


お風呂を満喫し過ぎて、自分達が考えていた以上に、時間が経っていた。もう待ちきれなくなって、部屋に帰ってしまったかも…と、未香子は思っていたのだが…。夕月は何故か、絶()()()()()()()()言いたげで。未香子達2人を心配しているらしいが、何をそれほど心配することがあるのか、と…。


未香子が小首を傾げると、すぐ傍で見ていた夕月がクスクス笑う。普段からは考えられないお上品な仕草で、手を口に当て。未香子も家柄から言えば、そういう仕草をするべきだろうが、わたくしにはそういう仕草は似合わない、そう思い込んでいる所為で、試したこともないが。


大浴場の暖簾をくぐり出れば、朔斗と葉月は…其処に居た。但し、知らない女性達数人に周りを囲まれ、完全に絡まれている様子だ。朔斗はにこやかな笑顔で、やんわりと追い払おうとしているが、葉月は…かなり冷たい仕草である。


あまりにも冷たい素振りの葉月に、未香子も…動揺していた。女性に誘われても全く目を合わせず、女性達に腕を絡まれても動揺せず、嫌そうに冷たく振り払っていて。未香子は信じられないものを見る目で、ジッと見つめていた。


あのような葉月を、初めて拝見致しましたわ…。夕月が女子生徒達に振り撒く笑顔を見慣れた所為で、葉月も同じなのだと、勘違いしておりましたのね。


 「…ごめんね。待っていた連れが、出て来たようだ。」


朔斗が夕月に気付き、女性達には一言そう告げてから、葉月と共に慌てた様子で妹達の方へと駆け付けて。


 「ごめんね、逆に待たせてしまったな。」

 「…いえ。たった今、出て参りましたのよ。大変お待たせ致しまして、申し訳ございません。」

 「いや、それほど待っていないよ。2人共、その浴衣がとても似合っていて、可愛いなあ。葉月も、そう思うだろ?」

 「そうだね、朔兄。よく似合っている。偶には、お揃いの浴衣も良いね。」

 「…お揃い?…なるほど、そういう手もあるね…。今度、花火大会に出掛ける時には、()()()()()()()()()()()しれない……」

 「…いや、朔兄。それはそれで、ちょっと……」


案の定、朔斗が彼女達の浴衣姿をべた褒めし、葉月も照れ臭そうに褒めた。未香子がチラッと先程の女性達に目を向ければ、気に入らないという顔をして、彼女達を睨んでくる。その後、彼らがふと気付いた時には、あの女性達は消えていて。それに気付いた彼らは苦笑しつつも、内心ではホッとしたのであった。


…お兄様も葉月も、モテすぎですわ…。妹として…幼馴染として、複雑です…。


 仲良し兄妹&姉弟の4人で旅行中、第1日目の旅館内での話です。


食事を済ませ、お風呂に入った後に問題が…。朔斗は4人お揃いならば、こうして自分達に割り込まれない=邪魔が入らない、という意味で捉えていますが、葉月は似合う似合わないの観点から、難色を示しました。今回のような浴衣は兎も角、華やかな浴衣や洋服とは違うので。


普段の未香子は男運が悪く、良い意味でモテておらず、容姿は美人でも自分がモテる要素がない…と信じ、兄達がモテることに複雑な気分でして…。


以上、本文に書いてない補足でした…。

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