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君の騎士 ~君を守るために~  作者: 無乃海
第二幕 名栄森学苑2年生編【波乱の幕開け】
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16話 お泊り旅行④ 旅館へ

 5月のゴールデンウィーク、連休中のお話続きです。


旅館に向かうところからの続き、となります。

 4人で街道での散策を終えた後は、再び車に乗り込み旅館に向かう。街道からはそれほど遠くはないが、車でも10~15分程度かかるので、お嬢様らしい未香子に歩いて移動するのは酷であろうと、朔斗は考えていたようである。


旅館では朔斗が手続きするのを任せ、フロントから目と鼻の先のロビーでソファーに座り、女子2人はゆったりと寛ぎつつ待つことにする。葉月は朔斗に付き添い、受付に行く。2部屋取っているので、彼女達の代わりに説明を聞いているようだ。ホテルマンの説明を聞いた彼らは、部屋に移動しようと伝える為、ロビーで待つ彼女達を迎えに行く。


 「僕は兄妹姉弟(きょうだい)同士の方が気が休まるけれど、未香子は夕月(ゆづ)と一緒に居たいだろうし、着替えの点から言っても、()()()()()()()()()()()()から、今回は2人で同じ部屋を使いなよ。」

 「そうだな。僕が夕月(ゆづ)と同じ部屋を、使う訳にはいかないからな。」

 「「………」」

 「…はあ?……何言ってるの、朔兄は……?……それを、僕が許すと思う?」

 「いや、そうなれば、葉月と未香が同じ部屋になるだろ?…それは嫌だなあと、思ってな…。」

 「……っ!?………」

 「………はあ?……何でそういう風に、朔兄は…考えてるの?!」

 「………」


如何やら葉月が、譲ってくれたようである。折角、男女に分かれるという風に纏まりかけたのに、朔斗が余計なセリフを口にする。未香子も一度は頭に浮かんだ思考に、流石は血の繋がった兄妹だなあ…と思いつつ、無言である。夕月(ゆづき)もジトっとした視線を、朔斗に向けていた。葉月はギョッとした後、額に青筋を立てている。


しかし、朔斗は気にしていない様子だ。然も今度は、妹と幼馴染の男子を同室にする想像を、口に出して来たので、当人である葉月と未香子はギョッとする。慌てた葉月は、ほんのり赤くなりながらも否定するように、朔斗に文句を言っていた。


チラリと横に座っている夕月を見た未香子は、兄の思わぬ言葉で真っ赤になっていた顔が、すう~と冷めていくのを感じる。この間の会話の合間、夕月はずっと無言であった。静かに怒りの炎を燃やしているのか、見た目には単に苦笑しているような顔だったが、()()()()()()()()()()と、未香子は気付いて…。


…こ、怖っ!!……お、お兄様。夕月(ゆづ)は、本気で怒っていますわよ。…じょ、冗談も程々になさってくださいね…。


結局、葉月は無言で夕月に、部屋の鍵を押し付けていた。部屋は隣同士なので、何時でも互いに行き来できそうだが、何の冗談だったのだろうかと、エレベーターに乗っている最中も、葉月と未香子は生きた心地がしなかった。部屋の前で其々に分かれ、部屋の中に入ると、普段よりも安い宿という割には、中々良い部屋である。


まるで縁側のようで、そこからの眺めが素敵ですわ。部屋数も2部屋ですし、これでしたらお兄様と同室でも、着替えに困りませんわね。


 「中々の風流な景色だね。遠くまで見渡せるほど眺めも良いし、部屋の広さも其れなりに広いし、これは…朔斗さん、奮発されたのかな?」

 「…確かに。お兄様らしいですわ。」

 「そうだね。一般人には、良い部屋だよ。私達家族は、これより安いクラスの部屋に泊まるから、よく分かるよ。未香子は、こういう部屋は初めてかな?…九条家程の名家ならば、一流ホテルや一流旅館に泊まり慣れているよね。」

 「そうでも…ありませんわよ。見栄を張って一流のホテルも、利用したことがありますが、お祖父様のご自宅に向かう際は、中間のホテルや旅館も使いますもの。田舎に参りますと、ホテルも無い所がありますし…。」

 「…なるほど。それでも、ビジネスホテルに宿泊したことは、ないよね?…我が家はそういうホテルも、利用しているよ。」

 「…ビジネスホテル。お仕事をされるビジネスマンが、宿泊される為のホテルではありませんの?…一般人も泊まれますの?」

 「元々はビジネスマンが宿泊しやすいように、考えられたホテルだと思う。現在はビジネスマン以外の一般客も、宿泊が可能だよ。」


その後夕月は、ビジネスホテルと普通のホテルの違いを、未香子に分かりやすく説明してくれた。当然の如く、未香子達家族は利用したことがなく、興味津々に聞き入っている。夕月が語ったことを簡潔に纏まれば、以下のようだ。


ビジネスホテルと一般のホテルの違いは、料金とサービスの違いにある。低価格の料金で宿泊可能な代わりに、一般ホテルでのホテルマンがしてくれるサービスが、殆ど省略され受けられない。最近は一般ホテルでも過剰なサービスを失くし、宿泊料金もその分は手頃に抑えられているが、ビジネスホテルはそれ以上に簡素化されている。ビジネスマンは朝早く夜が遅いことも多く、チェックイン・チェックアウト時が時間外でも可能にと、受付の簡潔化とリーズナブルな料金が、ビジネスマン以外の一般客にも人気を博している。


 「一切のサービスが要らない場合、こういうホテルの方が気軽に泊まれて、便利なんだよね。」

 「()()()()()()()()()()()()()なの?…この旅館もそうなのですが…」

 「荷物は運んでくれなくとも、この旅館には、他のサービスがあるからね。」


未香子の疑問を解き放った答えに、漸く彼女も納得したようだ。また4人で旅行するならば、ビジネスホテルでも良いかも…と、そう興味を持つ未香子。但し、本人は気付いていないが、今回の旅行でも2泊3日なのに、大きいトランク1つと小さいトランク1つという荷物の多さでは、ビジネスホテルでは狭いかもしれない。







    ****************************






 

 「何をそんなに、持って来ているの?」


未香子が荷解きする傍ら、夕月が興味深げに彼女の荷物を、確認するように覗いてくる。夕月の荷物は、小~中程度のトランク1つだけだ。朔斗や葉月に至っては、各々が小さいトランク1つだけだった。トランクから衣類を出すと、クローゼットに丁寧に掛けて行く。普段は三千(みち)真姫(まき)がしてくれているが、このくらいならば…と見様見真似で、1人でやってみる。不器用と言われる未香子も、先程夕月がやっていたようにと、マイペースで熟す。


…わたくし、多過ぎましたかしら…。それでも、何時も使っているものが、良かったのですもの…。夕月(ゆづ)には、呆れられたかもしれません…。


 「未香子、これも持って来たの?…歯ブラシセットやシャンプーは、ビジネスホテルでも置いてあるのに…。然も、旅行用じゃないね。替えの洋服も、これほどは要らないと思うけど……」

 「歯ブラシセットやシャンプーは、自宅と同じ物が良いのです。着替えも三千さんに相談し、汚れたり濡れたりしてもいいよう、念の為に多めなのですわ。」

 「次回からは、私に相談してくれれば、もう少し荷物が軽くなるよ。」


夕月は部屋に入るなり、女子らしい服装から普段の服装に、男女共用で通りそうな身軽な服装へと、着替えていた。女子2人だけで気軽になりたいようで、口調も普段使いに戻っている。夕月も()()()()()()()()()()()()、未香子も嬉しくなった。


葉月と一緒でしたら、女性らしくするようにご忠告されましたわね。男子同士と女子同士で分かれて、結果的には夕月(ゆづ)も都合が良かったのですね。…ふふふっ。旅行の間はずっとお兄さま達の手前、女性らしい服装と口調になられると思っておりましたので、普段の夕月(ゆづ)が見られて嬉しいです。女性らしい夕月(ゆづ)も好きですが、わたくしはこうして寛がれた風の夕月(ゆづ)が、大好きなのですわ。昔から男の子のように、わたくしを庇ったり助けてくださる夕月(ゆづ)が。…あらっ?…おかしいわ…。出会った当初はわたくしより、お嬢様らしいお嬢様でしたのに…。何時から、()()()()()()()()()()()()


あの頃、葉月とそっくりな2人は、服装で男女の見分けができた。だから、間違える筈がない。それでも未香子は、何か重大なことを忘れている気がする。何かが、頭の隅に引っ掛かっているようだった。ぼんやりとした記憶の中に、忘れてはならない事項があるようで、モヤモヤした気分だ。


 「…急にボ~として、どうしたの?…何か、問題があったのかな?…それとも、疲れてしまっただけ?」

 「…何でもないですわ。ちょっと燥ぎ過ぎて、疲れてしまったようですの。」

 「それなら、少し横になって休む?」

 「…いえ、大丈夫ですわ…。そこまででは、ありませんもの…。」


昔の出来事を振り返るうちに、未香子は呆然としていたようだ。未香子の様子が変だと、心配性な夕月が眉を下げつつ心配げに、ジッと未香子の顔を窺う。少しの変化も見逃すまい、という風に…。実はそれほど疲れておらず、少し疲れたフリをして横になる程には、厚顔無恥ではなかった。慌てて身振り手振りで必死に、大丈夫だと伝えようとして。


 「何となく、顔色も悪いよ。未香子。気分が悪いのを、我慢してる?」

 「……っ!……。いえ、全くっ!…我慢など、しておりません。」

 「私の気の所為かな…。それならば、良いけれど…。」


…不味いです。わたくしが一言でも、気分が悪いなどと申し上げた時には、お兄様が暴走されてしまいます…。それでなくともお兄様は、わたくしのことでは普段から暴走気味ですのよ。わたくしの身の周りではどうしてこうも、心配性なお人達ばかりなのかしら…。お兄様は言うまでもなく、夕月(ゆづ)もそうですし、つい最近は…葉月もそうですのよ。わたくしが気を緩めた途端、アウトかしら…。


 「本当に気分が悪くなったら、早めに言うんだよ?」


未香子が大丈夫だと言っても、顔色が悪く見えるらしい。気分が悪いのを我慢していると思われ、必死に否定する未香子は、夕月が気の所為だと思ったことに、安堵したのだが……。それなのに、そう念押しされてしまった…。何処までも、未香子には甘い3人なのである。


…ううっ。わたくしはどれだけ、信頼されておりませんの…。()()()()()()()()()()()()()()()、見られておりますの…。

 仲良し兄妹&姉弟の4人で旅行中、第1日目の宿泊になりますね。


朔斗が冗談(?)で放った言葉に、3人が各々の反応を…。夕月だけは冷静に無言を通しますが、実は…怒っている?


途中から、部屋の中での出来事として、女子2人だけになっています。未香子は4人の中では一番年下なので、3人からは心配若しくは、溺愛されているようで…。

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