表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君の騎士 ~君を守るために~  作者: 無乃海
第二幕 名栄森学苑2年生編【波乱の幕開け】
166/199

14話 お泊り旅行② 寄り道

 5月のゴールデンウィーク、連休中のお話です。


今回は、学苑外のプライベートな内容となります。

 旅館に到着する時間にはまだ早いなあと、夕月(ゆづき)と未香子が思っていたら、1日目は植物園に立ち寄るプランであるらしい。


植物園には、去年の学苑の校外学習で、お菓子工場見学の後の自由行動で、植物園の見学に行ったことを、彼女達は思い出す。彼女達は懐かしいと言い合い、嬉しそうに燥いでいるのを見て、朔斗も葉月も自らのプランに満足する。


実は彼女達が、校外学習で植物園に立ち寄った事実を、彼らも知っていた。彼女達が懐かしがることも、計算のうちである。このプランは、朔斗が1人で計画を練っていた時から立ち寄るつもりであり、葉月も大賛成であった。彼女達が目をキラキラさせて、植物園の外観を見つめるのを、彼らも…微笑ましいものを見るように見つめて。此処まで来ると、()()()()()()()()()()()()良いだろう。


お兄様のサプライズは何時(いつ)でも、完璧ですわね…。わたくし達が去年の校外学習で植物園に立ち寄りましたことを、ご存じだったかのようですわ。…ふふふっ。


…ふう~。未香子は気付いていないようだけれど、これは間違いなく…ご存じだったことでしょう。間違いなく、葉月は知っていたからね。相変わらず…2人共、見事なシスコンだよね…。プラン的には…満足だけれど。この植物園の近辺には、有名な旅館が幾つかあるけれど、朔斗さんのお話から考えれば、今回は…そういう有名な旅館ではないらしい。流石に私も、今日宿泊する予定の旅館までは、これ以上の推測が出来ないかな…。


このように未香子と夕月では、心の中では正反対の感想を、持っていた。未香子は純粋に兄を信じており、夕月は朔斗と葉月の2人の性格から、彼らのしそうな行動を熟知していた。そして夕月は、そこまでの事柄を憶測していた。


今日の夕月は普段とは違い、女性らしい服装をしている。もう何年も男の子っぽい口調や態度で過ごし、その上偶に男装もしているので、すっかり普段の方がお気楽な雰囲気だ。とは言えども…夕月の場合は、元々の女子らしい口調や仕草も、また反対の男子らしい言動も、その気になれば何時でも、使い分けることが可能だが。


女性らしい服装の場合は、元々もお嬢様らしい口調と仕草に戻る夕月だが、今回は完全なプライベート旅行ということで、気を抜いていた。それに…未香子が、夕月の男子らしい言動を気に入っており、飽くまでも()()()()()()()()()()、というのが夕月の本音と言えようか…。


それならばどうして、今日は女性らしい服装をしているのか…と言えば、朔斗と葉月の所為だと言えるだろう。夕月が男子っぽい服装をするのは勿論のこと、男装をすることは…彼らに拒絶されていた。


彼らは2人共、夕月が未香子の為に男子っぽく振る舞うことには、本音では猛反対していた。こうして彼らと共に出歩く際には、自分達が一緒に居るのに男装は必要ないだろう、と言い包めてくるのだ。実際に朔斗も葉月も、物凄く喧嘩が強くて負け知らずであったので、夕月が未香子を避難させたり守るだけで、問題がないということである。流石の夕月も、この2人には敵わない。


相変わらずお兄様達は、わたくし達2人のことになりますと、少しでも危ないことをさせたくないのでしてよ。わたくし達に甘いと申しますか、過保護と申し上げた方が宜しいのでしょうか…。本当に、ご心配し過ぎなのですわ…。


こうしてお泊りで暫く一緒に行動するということは、夕月の服装も女性らしい服装に限られていた。夕月も無理やり男子っぽく振る舞うことで、彼らに心配をかけさせることは、決して本意ではない。けれども…約1名だけは、不満があったけれども…。それでも、夕月も未香子も本気で、文句は言う程ではないと…。


植物園に入場した彼ら4人は、珍しく未香子と夕月が横に並び、朔斗は案内するかの如く先頭を、葉月は最後尾を其々が歩く。要するに、男子側は女子側を護衛するように、歩いていた。


先頭を歩く朔斗は植物園を案内するかのように、次はバラ園に行こうとか、次は温室に行こうとか、行く順番を予め決めていたようだ。しかしそれでも、決して無理矢理従わせるつもりはなく、飽くまでも妹達の気持ちを優先して。最後尾の葉月は朔斗とは別の意味で、後ろを歩く。この前の秋祭りのようには混んでいなくとも、迷子にならないよう、何か()()()()()()()()()()()()、気を配っている様子が見られた。


秋祭りの時には別々に行動していたのに、今回の旅行では4人で一緒に行動するようだ。秋祭りの時は周りにカップルだと見られた方が、(かえ)って好都合だったのだろうけれども、今回の旅行では別に、カップルに見せる必要はないだろう。そう思いながらも、ちょっぴり…残念な気がする未香子は。


わたくし達4人の場合、私&お兄様の兄妹と、夕月(ゆづ)&葉月の姉弟でカップルになりましても、別に構いません。但し、お兄様&夕月(ゆづ)と、葉月&わたくしのカップルでは、以前は…不満でしたのに…。ちょっぴり期待を致しましたわたくしは、どうしてしまいましたのかしら?


但し、夕月(ゆづ)&わたくしのカップルは兎も角も、お兄様&葉月のカップルには、色々な意味で絶対に…なれませんし、なって欲しくはございません……。






    ****************************





 「植物園の薔薇園には、様々な種類と多彩な色合いのバラが、植えられておりますのね。とても美しい光景ですわ。」

 「そうですわね。此方の薔薇園は、素敵ですわ。未香子は、薔薇のお花が好きでしたわね。わたくしは、温室に咲く可愛らしいお花が、好みですけれど。」

 「夕月(ゆづ)のお好きな小さなお花も、わたくしは好きですわ。」


未香子が一番好きな花は、薔薇だった。幼い頃に読んだ本にも、王子様が登場する物語に、女性へのプレゼントで薔薇の花束が出てきた。恋愛物語に夢見る少女だった彼女は、好きな相手から薔薇の花束を貰うことに、未だに憧れていた。それが…夕月であれば良いのに、と思うほどに。


 「今までは、赤い薔薇が一番でしたけれども、ピンクの薔薇も愛らしくて、白い薔薇は素敵な魅力がありますわ。黄色の薔薇は想像よりも美しく、青い薔薇や黒い薔薇の存在は、今回初めて拝見させていただき、感動を致しましたぐらいですわ。私個人と致しましては、白い薔薇が特にお気に入りとなりましたわ。」

 「…そうですね。わたくしも赤い薔薇とピンクの薔薇以外は、殆ど拝見をしたことがございませんわね。特に青い薔薇は、初めて拝見を致しました。薔薇には色ごとに異なる花言葉がございますけれども、未香子はご存じですか?」

 「…えっ?…あ…貴方を、あ…愛しています、では…ありませんの?」

 「それは、赤い薔薇の花言葉ですね。お花の色が異なりますと、花言葉も()()()()()()()()()()()のよ。またお花の色以外にも、薔薇のつぼみも色ごとに各々別の意味を持っておりますわ。また…薔薇の棘にも、花言葉がございましてよ。」

 「…まあ、そうなのね。わたくしは全く、存じ上げませんでしたわ。それでは白い薔薇にも、別の意味がありますのね?」

 「ええ、勿論ですわ。白薔薇には『純潔』とか、『私は貴方に相応しい』などという意味が、ございますの。未香子にぴったりなイメージですわね。白薔薇の君とは、貴方のことのようでしてよ。」


白薔薇の花言葉の意味として、『純潔』と『私は貴方に相応しい』とでは、相手に抱くイメージが全く異なりそうだ。『純潔』ならば相手に抱くイメージは、無垢な相手だと思うだろう。また『私は貴方に相応しい』ならば、高慢な人物だと思ってしまいそうだ。それならばまだ…『()()()()()()()()()』と言われた方が、納得出来そうな気がする…。


大好きな人から、高慢な女性だと思われたくないですわね…。夕月は何方の意味での花言葉を、わたくしのイメージだと仰られたのかしら…。この場合、『純潔』ですわよね、きっと…。


朔斗は夕月の言葉に、「確かに、納得だな。」と頷いているが、葉月は無言のままなので、この場合は自分に都合が良い方に考えようと、未香子はそう思うことにして。私が白薔薇ならば、夕月には可愛らしいピンクが似合うだろうと、ふと…そう思い付いて。


 「夕月(ゆづ)には…ピンクの薔薇がお似合いですわ。花言葉は残念ながら、存じませんけれども…。」


ピンクの薔薇の花言葉は、未香子は知らない。「僕は、知っているよ。」とどこか嬉しそうな顔で、朔斗が彼女達の話に相槌を打つ。彼もまた、夕月にお似合いの色だと思っているようだ。


 「ピンクの薔薇の花言葉は、『淑やか・上品・感銘』だったかな。夕月(ゆづ)にはどの花言葉も、しっくりくる花言葉だと思う。夕月(ゆづ)の為にある言葉みたいだな。」

 「…ふふふっ、朔斗さんったら…。買い被り過ぎですわ。わたくしには、過ぎた花言葉でしてよ。」

 「そんなことは、ないよ。葉月も未香も、そう思わない?」

 「勿論ですわっ!…夕月(ゆづ)にピッタリな花言葉ですわ。」

 「そうだね。我が双子の姉ながら、しっくり来るよね…。」


お兄様が…薔薇の花言葉を、ご存じなどとは…。()()()()()()()()()()、お使いになるおつもりでしたのかしら。……ん?…まさか今のは、夕月(ゆづ)を…口説かれておられますの?……わたくしの思い違いでしょうか、お兄様?


つい半眼の目で朔斗を見つめる未香子だが、夕月は穏やかな笑顔を返しつつ、謙遜しているようだ。朔斗だけでなく、未香子や葉月にまでそう言われて、夕月は苦笑するしかなく…。


4人だけでこれほど長い時間を過ごすのは、初めてかもしれない…。今迄は未香子が葉月を敵視していた所為で、2人1組に分かれての行動が多かった。例え4人で一緒に居たとしても、未香子と葉月が会話することもなく、ほぼ皆無で…。だから4人で居ることが、これほどに楽しいことだとは、知ることもなくて……。


…初めて知りましたわ。葉月と居ても、楽しいこの時間(とき)を………

 学苑の生徒達は全員、登場していません。仲良し兄妹と姉弟の4人で、初めてのお泊り旅行となりました。旅行話が暫く続く予定です。


なんだかんだと言いながらも、未香子もこうして4人で一緒に居ることが、大好きのようですね。少しずつ、未香子の男性恐怖症も、癒えているのかも…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ