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君の騎士 ~君を守るために~  作者: 無乃海
第一幕 名栄森学苑1年生編【4部 冬の巻 編】
148/199

幕間2 規格外な人物

 幕間 part2となります。前半も後半も、完全なる第三者視点としました。


お話の内容的には、学苑祭のお話の裏話、ある人物達の学苑祭での出来事です。

 名栄森(なさかもり)学苑の学苑祭最終日。この日の萌々花は、鳴美と郁と3人で回っていた。彼女達のEクラスの催し物は、クイズ大会を行っていてそれはそれは大盛況で、最終日の今日は早めに終了となってしまった。景品がなくなったのを機に、「最終日だし、早めに終了しよう。」と、クラス全員の意見でそうなったのだ。


 「ねえ、萌々ちゃん、郁。1日目にさあ、Cクラスの田尾君の婚約者が、来ていたらしいよ。2人共、知ってたあ?」

 「あ~。私、見ちゃったよぉ。結構可愛い子だったよねぇ。名栄森の中等部に通学しているらしいから、来年入学するんじゃないのかな。」

 「うん。私も見たよ。可愛いと言うか、綺麗な子だと思う。田尾君達も一緒にいたから、分かったんだけど。とっても仲が良いみたいだね。」

 「そうそう~。めっちゃ仲が良かったよぉ。でも、何だか、兄と妹みたいな感じだったけどねぇ。」

 「そうなんだ。だから、何だね…。確か親同士が仲が良くて、親が決めた婚約者だったよね?…だから仲が良くても、兄妹みたいな感じなのかな…。」


鳴美の問いかけに、郁が真っ先に(こた)える。何しろ、郁は光輝と同じ映像部の部員である。同じ部員の情報は、色々と耳に入ってくるようだ。萌々花も偶然見ただけだったが、綺麗なお嬢様風の子だったなあ…と思い出しながら、そう答えていた。しかし、郁が「兄妹みたいだった」と言ったのを受け、鳴美が意味ありげな口調をして来て…。


 「…ナルちゃん?…何か…意味あり気に、聞こえるけど?…何かあるの?」

 「……あのね、萌々ちゃん。今から話す内容に、ショックを受けないでね?」

 「…えっ?……何?…私にも何か、関係あるの?」

 「関係あるかどうかなら、大有りなんだよね…。その田尾君の婚約者さん、彼が居る目の前で、北岡君に思い切り…抱き着いちゃったんだよね……。」

 「……っ!……。き、北岡君に…だ、抱き着いた……。どういうこと…!?」


不意に何かで頭を殴られたような衝撃を、受けた萌々花は。北岡君の人気は中等部からあったことは、未香子さんからも聞いて知っているけど、田尾君の婚約者さんが北岡君に抱き着くなんて、一体どういう心境なのか、意味が分からないよ…と。()()()()()()()()()()…と思いながらも、萌々花は戸惑っていた。


学苑祭の1日目は、3人揃って見学には行けなかった。鳴美は別のクラスメイトの女子達と共に、休憩時間に回っていた。鳴美達も北岡のコスプレを見たさに、Aクラスのカフェに入っていた。光輝達は後からやって来て、婚約者の少女が思い切り北岡に抱き着くのを、しっかりと目撃してしまったのだと…。明らかにショックを受けた様子の萌々花を、郁は若干気にしつつも、興味津々という風に目を輝かせ。


 「…ごめんね。あの日は、言いそびれちゃって…。あの時は誰だかよく分からなかったし、萌々ちゃんがショックを受けるだろうなあ…と思って。後でAクラスの女子から聞いた話では、北岡君の中学での演劇部の後輩みたいで。九条さんとは、北岡君を巡って良く争っていたらしいよ。(ただ)、彼女は『箱崎(はこざき)』が大好きで、憧れているだけらしいよ。田尾君もそういう事を全部、理解しているんだってさ。」


ハッキリ物事を言うタイプの鳴美にしては、珍しく言いにくそうな口調で話して来る。きっとあれから、Aクラスの女子に自ら訊いてくれたのだろう。少女が北岡に抱き着くのは、中等部では日常的であり、有名だったみたいだ。少女は、箱崎のような男装の麗人に憧れているらしく、()()()()()()()()()と鳴美が仄めかすのを聞いて、萌々花も心からホッとする。


 「…そうなんだ、びっくりした…。箱崎かあ…。私は今まで興味がなかったし、よく分かんないんだけど、今なら…ちょっとだけ分かるかも…。」

 「確かにっ!…北岡君は、箱崎っぽい感じもするけれど、やっぱりちょっと違うかなあ。北岡君は『麻琴』に似ているみたいで、それもちょっぴり…違っているようだし…。う~ん、上手く言葉に出来ないなあ…。」


郁は萌々花とは異なり、箱崎という言葉に反応していた。箱崎は、女子だけの有名な音楽学校である。音楽学校を無事に卒業すると、学校が経営している専用の劇団に所属し、ミュージカル劇などに出演することとなる。その為、男性パートも女性が演じるのだ。つまり、男性役を演技する人物は、男装の麗人扱いをされていた。


これ以上、強敵のライバルが増えて欲しくないなあ…。未香子さんには勝てないけれど、それでも()()()()()()()()()()()のよ。将来のことは分からないけれど、今はまだ…北岡に恋をしていたい、と…。


こうして、郁と萌々花は別々の思考に入り込んでいた。鳴美はそんな2人を見て、1人だけ溜息を()き。私は、箱崎も男装の麗人もどちらも、興味ないよね…と。






     ****************************






 郁は以前から、箱崎にもそれとりに興味を持っていたが、だからと言って、箱崎の麗人と『麻琴』というキャラを、同じ類だとは思ってもいなかった。郁から見れば、男装の麗人は演じている役柄というだけで。自分から日常的に男装をする…という意味では、全く異なっていると思っていて。その点からだけで言えば、北岡君は『麻琴』によく似ているんだけどねぇ…。


そう思っていても、北岡と『麻琴』のキャラとは、何となく異なる雰囲気であるとは、理解していた。出会った当初、「リアル麻琴だぁ~。」と喜んでいた郁も、映像部に入部して近くで観察するうちに、「麻琴とは…何かが違う。」と思うようになっていた。何がどう違うのか、何が似てないのか、自分でも()()()()()()()()()()けど、理由は分からなくとも、理屈ではなくても。


もうこの話は終わり…と気を取り直して、()ず3人はAクラスに行くことにした。Aクラスには別々に1日目に行ったけど、3人でもう一度行くことにした。勿論、給仕は北岡を指定すれば、「やあ、萌々達もよく来てくれたね?」と北岡に笑顔で迎えられ、北岡が淹れたお茶を楽しみ、3人共満足げである。


その後は、まだ訪れていなかった催しを中心に、回っている。そして、Bクラスの方へ移動していた時に。自分達より前方の生徒達が話す、会話の内容が聞こえて来て…。それに対して答える、他の生徒の声も聞こえて。


 「あの2人、この学苑の生徒じゃないよね?…カップルで来ているのかなあ?…でも今日の来客は、来年以降の受験生だけよね?」

 「今日は受験生候補だけでは、ないですよ。特別公表はされていませんが、受験生の家族もOKですし、それ以外にもこの学苑の生徒の婚約者、つまり…外部の学校に通学する者も、招待されますのよ。」


萌々花達3人もふっと、その生徒達の目を遣る方を向き…。「…あっ!」と、萌々花は思わず声を漏らしてしまい、慌てて両手で口を塞ぐ。ガヤガヤして賑やかなこの場所では、前方の生徒達には声が届かなかったようで、萌々花はホッと息を吐くと、口から手を放す。それから萌々花は再び、前方を歩くカップルらしき2人に、目を遣る。そこに居たのは、紛れもなく北岡だと気付き…。その北岡と仲良さげに腕を組むのは、儚げな美人で。


 「これ…どういうこと?…萌々ちゃん。あれって多分、北岡君…だよね?」

 「………。どうして…北岡君が、知らない美人と居るの……。」

 「…えっ!?…北岡君が…何?…何、どういうこと?…説明してよ~、ナルちゃん、萌々ちゃん?!」


萌々花同様に鳴美も、カップルのうちのイケメン男子が、北岡であると断定した。萌々花は先程の話以上に、ショックを受け。鳴美は、萌々花の様子を心配し。郁は何が何だか分からず、困惑して。鳴美も萌々花も、先日街で助けてもらった時の姿と今の北岡がダブり、間違いなく北岡であると踏んでいた。隣に居る少女は、鳴美も萌々花も全く知らない生徒だった。そんな2人が腕を組んでいるのを見て、三者三様の理由から困惑していた。


 「お2人共、見覚えがありませんけれど、とてもお似合いですわね~。仲が宜しくて、羨ましいですわあ。」


イケメン男子=北岡とは気付かない女子生徒達は、呑気な会話をしている。これが北岡だとバレた日には、大騒ぎとなるのは目に見えている。3人はこそこそと、自分達だけに聞こえる声で、話していたけれど…。


しかし3人は、北岡達から距離を取ってついて行く、暗い様子の未香子の姿を見てしまったのである。未香子の悲し気な姿に、楽し気に隣の美人と会話する北岡に、萌々花はムッと腹を立てる。()()()()()()()()未香子を除け者にして、他の女子と仲良く見学しているとは、どういうことなのだろうか…と。



午前中は、『麻琴』キャラの衣装をしていた北岡が、今はどうして完璧男装をしているのか。他に何か、理由があるのかもしれない。そうは思うものの、今すぐ北岡に追いついて問い詰めたい、萌々花は…。絶対に後で、北岡君を問い質そう…と、そう心に誓う萌々花だった。


 「ええ~。そんなことが遭ったのぉ?…萌々ちゃんが絡まれていた時に、北岡君が偶然にも助けたなんてぇ。いいなぁ。私も見たかったなぁ。北岡君の勇姿も、北岡君のイケメン男装姿も!…まあ、そのイケメン男装姿は、見れたけどぉ…。」


北岡達は萌々花達の視界から去って行き、漸く落ち着いた鳴美と萌々花から、詳しい話を聞かされた郁は、そうブツブツ文句を言いながら、北岡と『麻琴』キャラとの異なる部分を考える。やっぱり、2次元と現実では違うのかな?…などと、()()()()()()()切っ掛けとなる、郁だった。


そうして唯一、常に現実を見ている鳴美は…。2人を横目に見ながら、「はあ~」と溜息を吐き。アイツは…大丈夫なのかなあ?…と、とある人物を、とある理由から、心の底から心配していたのである。

 幕間・第三者視点(筆者視点ともいう)で、番外編扱いとなります。


Eクラスの萌々花達3人の側から見た、学苑祭の裏話です。


今回の副タイトルは、夕月のことを示しており、主に彼女(?)の周辺の女性関係を、3人が話題としています。『〇〇は見た』的な要素ですね…。


女子グループのクリスマス会にも繋がる、裏話です。第2幕に入る前に、片づけたいお話でしたので、幕間として書いた次第です。

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