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君の騎士 ~君を守るために~  作者: 無乃海
第一幕 名栄森学苑1年生編【4部 冬の巻 編】
144/199

123話 お別れ上演会

 映像部の3年生のお別れ上演会、というお話です。


※第一幕は、あと少しで終了となります。その後は、第二幕が始まる予定です。

 早いもので…2月に入りました。今日は久しぶりに、3年生全員が登校しているようですね。実は、今日が3年生の最終登校日となりました。明日からは、完全に自主登校になり、国公立を目指す受験生以外は、登校されないようですわ。


今日のこの日の為にと、()()()()()()()()()()と、映像部ではお別れ上演会を開催することと、なりました。今回は、何時(いつ)ものような演劇ではありません。ひと工夫凝らした趣向で面白くしようと、新部長・諒先輩が提案されましたのよ。新しい試みなのは良いことですが、ぶっつけ本番の演技も含まれており、私達にとっても初めての試みなのでして…。上手く演じられるか、不安な部分もあるのですよね…。これで…大丈夫なのかしら…?……不評でなければ、良いのですけれど。


3年生の皆さんには、卒業のお祝いも兼ねており、3年生生徒に限り、無料で鑑賞することが可能です。これも、新部長の新しい試みの1つでして。赤羽根前部長からは、「諒は、まだまだ甘いわね。」と零されたそうですけれど。前部長は、相変わらず手厳しいようですね…。


今日の授業は3年生に合わせ、1・2年生も短縮授業となっており、上演会をする丁度良い機会となりました。会場には、既に授業を終えた生徒達が、押しかけて来られていますわね。今日は3年生が優先的に、舞台前から順に席を取って行くことに。次に2年生が、その次に1年生が、という席順となりますわ。この演劇用の会場は、全生徒が収容出来るようにと、席も十分な余裕で確保されており、会場はただっ(ぴろ)い造りとなっていますのよ。


…ふう~。素人の演劇に、どれほどお金を掛けているのやら…。遠縁の小父(おじ)様とは言え、何を考えていらっしゃるの?…と、問いたくなるぐらいの大会場でして…。小父様はこういう面白いことを好まれており、案外会場のどこかで、他の教師陣に混じって、見ていらっしゃることでしょう、きっと…。


今日は特別な上演ということもあり、教師陣も見に来られておりますわ。普段の上演では、暇をされている教師が見に来られますけれども、本日は3年生のお別れ会も兼ねているものですから、教師陣も積極的に鑑賞される模様ですのよ。まるで、授業の一環のようですわ。ほんの少し…緊張しますわね。


今日の観客席も、ほぼ満席となっている様子です。今日は教師陣がいらっしゃる分だけ、何時もよりも観客が多く感じます。意外と…我が学園の教師は、沢山いらしたのですね?…これでは、遠縁の小父様がいらしておられるかどうか、全く分かりませんわね…。そう思っていた矢先に、小父様の姿が…。…ああ。あのような目立つ所に、小父様が……。堂々と見ていらっしゃいました。小父様のことを知らされていない、他の教師や生徒達にバレても、私は…知りませんわよ?


…さて、今回の主役は……私ではありません。千明(ちはる)君でもありません。夕月(ゆづ)でもありませんし、イケメン3人組でもありません。では、誰が主役なのか…と申しますと、実は…()()()()()()()()()()なのですわ。


観客の3年生で、演技してみたいと立候補された人の中から、なるべく多くの人選をしまして、相手役として映像部部員の1人と組み、舞台上でお芝居しましょう…という企画ですのよ。一応は台本がある為、私達部員は事前に練習を重ねていますが、3年生の生徒さんは、今日この場で選ばれることになります。ですから、完全な素人さんを相手とする訳で、私達のフォローは必須なのですわ。若干の不安が、拭いきれませんわね……。


何せ…初めての試みですもの。先輩達が失敗されても、私達が上手く誤魔化せればいいのですが…。先輩達に対し、その相手役は1人だけですが、勿論他のメンバーもフォローしますわ。先輩達が出場すると言っても、沢山のセリフがある訳でもなく、出番も1人に付き1回だけ。大抵は通りすがりの人物、生徒達の1人として。なるべく沢山の人に演技してもらう為、脇役でもチョイ役なのですわ。


但しお1人だけ、主役に抜擢されるお人がおられます。流石に、舞台経験未経験者には厳しいですので、赤羽根前部長にお願いする…と満場一致しておりますのよ。無論、彼女は何も聞かされておられませんが。…ふふふっ。諒先輩も、粋なことをされますのね。


前部長・祥子先輩は、総監督の傍ら、脇役ばかり熟されておりました。今回、どのような演技をされるのか、()()()()()()()()()おりますわ。






     ****************************






 「では、今選ばれた3年生の皆さんは、舞台裏へお集まりください。そして、我が部前部長『赤羽根 祥子(しょうこ)』先輩。同じく舞台裏へお越しください。」


諒部長が、会場の隅々まで響き渡るように高々と声を上げ、3年生の先輩方の名前を読み上げられます。そして最後に、彼の姉でもある前部長の名前を読み上げられます。前部長はキョトンとされた表情で、暫し呆然とされていて。…わあ、先輩の表情が…可愛い。普段と異なり、とても普通の女子らしい一面でした。1年間…いえ、中等部でもそういうお顔は、拝見したことがありません。


それでも、すぐに真顔となり表情を引き締めて、弟を 一睨(ひとにらみ)されてから舞台裏に消えて行かれます。「後で覚えていらっしゃい。」という言葉が、聞こえて来そうでしたわ…。最終的に選ばれた先輩達は、ワクワクされていたり、緊張されていたり。お芝居には無関係の人ばかり選ばれたようですし、今回が初演技という人もいらっしゃるでしょうね。


観客席では選ばれなかった先輩方や、今回は応募出来なかった1年生と2年生の生徒達が、選ばれた先輩方を羨ましがっている声が、舞台の奥まで聞こえて来ます。友人・知り合いのお芝居を楽しみにされている、生徒達の応援する声も聞こえて来て、観客席でも悲喜交々(ひきこもごも)で盛り上がっている雰囲気でした。


さて暫くは、少人数での短めのお芝居を演じている間に、先程選ばれた先輩方に、お芝居する役柄のセリフと動きを、簡単に指導していきます。長々と指導する時間もない上に、そこまでの技術を素人に求めていない訳でして。最悪、セリフや演技を忘れられたり間違えられたりしても、私達映像部員が()()()()()()()()()、ということなんですのよ。ふう~。責任重大なのは、私達部員なのよね…。


但し、主役の赤羽根先輩に関しては、セリフも演技も多いので、大変だと思いますが…。元部員ですし、監督もされていた訳ですし、私達のフォローは特に必要ではないですよね?


軽くセリフ合わせして、演技も確認しているうちに、時間稼ぎ用の演技は終わったようでした。幕が下りるとすぐ、裏方係が片づけ始め、次の小道具をセットしていきます。裏方の責任者になった多々野(ただの)先輩が、的確に指示されて舞台を創り上げていかれます。もう彼も、慣れたものですね。セットが終わり次第、再び幕が上がって、愈々本番の劇が始めることになるのです。


 「……ああ。これで、皆さんとお別れなのね?…あなた達とは、これからは別々の道を、歩むことになるわね…。本当に寂しくなるわ……。」

 「卒業しても、僕達は友達だよ。これからも、ずっと……。」

 「そうよね?…また…すぐに会えるのよね?」

 「…いいえ。それは無理だわ。卒業後はきっと、別の人生を歩むことになるんだもの。そう頻繁に会うことは、出来ないと思うわ。だから、そんなに簡単に軽々しい言葉を、言ってはいけないわ。今は寂しいけれど、前を向いて歩いて行かなければ…。」

 「……ええ。そうよね…。寂しいけれど、お別れなのね…。」

 「ええ。皆さんも、お元気で…。」


初舞台の為、緊張された先輩達もおられますが、何とか大きなミスもなく、自分の出番を終えて行かれましたわ。自分の出番が終わると、責任を果たしたというかのようにホッとされ、舞台の袖で上演を見学されているご様子です。部員も同じく、自分の出番が終わった者は、見学気分でお芝居を眺めておられます。私はまだ出番がありますけれども、前部長の演技が気になって、舞台袖で見ておりました。


やはり…監督されていただけあり、短時間であの長いセリフを、丸暗記しておいでです。演技も完璧ですし、感情をきちんと込めてます。赤羽根先輩は飽く迄も自ら脇役に徹し、()()()()()()()()()()()されていたのですね。本当に…素晴らしい演技です。


今日のお芝居の内容は、現実同様に卒業生に焦点を当てており、3年生の先輩方には感情移入されやすいものでした。上演の途中から、観客席の方からすすり泣くような声が、あちこちから聞こえて参ります。実際に演じておられる先輩方も、涙を浮かべてみえたりと、感情移入されておられます。今日の上演も、大成功となったようですね?


上演が終了し幕が下りると、観客席からは物凄い拍手の音と、すすり泣く声が更に大きくなり…。出場された先輩達も共に、映像部部員と舞台上に挨拶に出ますと、3年生だけでなく1・2年生も少数が泣いていて、出場された先輩達を褒め称えては、大歓声となりました。こうして、今学年のお別れ上演会は、無事に終了したのでした。


赤羽根先輩も涙ぐんだお顔で、諒先輩にはしっかりと文句を言われておられましたわね…。ふふふっ…。赤羽根先輩も、感極まれたご様子ですし…。先輩が涙ぐまれるお姿なんて、想像も出来ませんでしたわ。今日は意外なお姿を拝見して、彼女も私達と同じように()()()()()()()()()~、と改めて感じたり…。


赤羽根翔子先輩。また今度お会いする日まで、お元気でっ!……いつの日にか、先輩の夢が叶いますことを、心から応援してますね。それまで…どうか、お元気で。

 もうすぐ卒業式ということで、卒業生を送り出す為に、お芝居でお別れ会をしよう…というものでした。


いつも通りの未香子視点ですが、珍しく夕月が登場しません。そして、赤羽根前部長の演技を、最後に見たいという全部員達の意見から、上演の主役は彼女となりました。1年生は卒業式に出席出来ないので、卒業式のお話が書けないかな~っと。


気が向いたら前部長達の卒業式も、番外編などで誰かの視点で…書きたいなあ…。

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