118話 初詣の後の意外な出会い
前回からの続きで、新年から3日目の出来事となります。
いつも通りの未香子視点です。
「僕は、車を取りに行ってくるよ。未香達は、ここで待っていてくれ。また未香が、気分が悪くなるといけないからね。未香のこと…頼む。」
初詣を終えた後、兄はそう言い残して、1人だけ車に戻って行く。私が気分が悪くなることが、前提であるのは…引っ掛かりますけれども。私は先程、その件に関しては、否定しましたわよ?…夕月も葉月も、兄の言葉に従い、コクコクと頷いておられて。え~と…。葉月も、知っておられますよね?…何故に、同じく頷いておられますの…。もしかして…葉月も、私を過保護扱いされる派ですの?
参拝を済ませた後は、私達4人は別の場所へと、移動致しましたわ。避難をしたのでして。あの人混みは、時間が経てば経つほどに、更に人気が増えておりましたので、今は神社の近くの商店街へと、移動しておりますのよ。ここならば、最寄りの駅とは正反対の方向なんですよね。商店街もほぼ閉まっておりますし、通る人も疎らなのですわ。
この商店街の入口にならば、今日は車も、一時停車ぐらいならば出来そうですし、ここで待つことに致した次第ですわ。本来ならば…待つ方が苦痛ではありますけれど、兄1人が車に戻る方が早い、ということになりまして。
但し…私達3人は、あまり人気のない場所で立っており、偶に通り過ぎて行かれる人達に、「何をしているんだ?」というような怪訝なお顔をされて。振り返ってまで見て来るお人もおられて、非常に居た堪れない気分でして。実際に声を掛けてくるお人はおられなくとも、葉月がご一緒でなければ、声を掛けたそうなお人も見受けられたぐらいで。葉月のお顔を、拝見されるまでは。
葉月の無表情っぷりが、普段より何倍も拍車が掛かっており、私ですら怖いです。夕月も無表情の時には、かなり怒っているご様子で、知らないお人からすれば怖いと思うのですが、葉月は更に迫力がありましてよ…。この様子では、かなりのお怒りモードかと。何故、それ程までに…お怒りなのでしょう?
私は先程から、夕月とお喋りしておりまして、夕月は…葉月の態度には、全く気にされておられないご様子なのですわ。私は、あまりにも不機嫌な葉月のご様子に、気になって仕方がない、と申しますのに…。以前のように、葉月が私に怒っている訳では、ありませんのに…。
漸く兄が車で来られましたので、私達3人はその車に乗り込みます。着物で運転するのは危ない、と思われることでしょうが、兄はきちんと、運転用の靴に履き替えられ、着物の上に服を羽織って、運転の妨げにならないようにと、細心のご注意を払っておられますのよ。わたくしが尊敬するお兄様は、常に完璧ですのよ。
この神社の近くにも、休憩可能なお店はいくつか存在しており、今日は有り得ない程に、何処も混んでいることでしょう。そういう理由のもあり、私達はお兄様のお薦めのお店へと、移動することにしたのであった。
元旦や2日から営業している飲食店は、通常よりも非常に少ない。お兄様お薦めのお店は営業しており、ホッと一安心でしたわ。お店に到着する頃には、11時を過ぎており、早めのランチを取ることになりましたのよ。丁度、私達が食べ終わる頃になりますと、他のお客さん達も徐々に増えて来て、席が全て埋まってしまった為に、私達はなるべく急いで、お店を出ることに致しましたのよ。
兄が支払いを済ませるまでは、私達3人でお店の外にて、待つことにしたのです。その時、駐車場に止まった車から、1人の着物を着た、可愛い少女が降りて来て。そのお人が…誰かに似ておられる気がして、じっとその少女を拝見しておりましたら、私の視線に気が付かれてしまい、その少女が振り返り…私と目が合って。
私と真正面から視線が合った、その彼女は…目を大きく見開き、次の瞬間には私達の方へと小走りで近寄って来られましたのよ。…えっ?!…普段でも危なっかしいお人が、着物姿で走りますと…危ないですわよ。そうでなくとも、そそっかしいのですからね…。
「やっぱり…未香子さんだ!…私も、たった今、初詣行ってきたところなのよ!未香子さんも、これから行くの?」
「…ええ、そうですわよ。もう既に、済ませて参りましたわ。」
「あっ、そうなんだ。…あっ!…私、新年のご挨拶…忘れた!」
私に近寄って来られたお人は、萌々花さんでしたわ。普段とは異なり、可愛らしい着物を来ていらっしゃるものですから、目がお合いするまで…全く分かりませんでしたわね…。それよりも…貴方は、もう少し…落ち着きなさいませね…。夕月達から見られましたら、「自分を、棚に上げているよ。」と…言われそうですわね…。心の中で思うぐらいで、敢えて口には致しませんけれども。
「新年、明けましておめでとうございます。今年も、よろしくお願いします。」
「ええ。新年明けまして、おめでとうございます。こちらこそ、よろしくお願い致しますわね。」
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萌々花さんが改まってご挨拶されるので、私もご挨拶を返します。去年は、彼女とも色々ありましたけれど、今では…すっかりと、気楽なお友達になられてしまったわ…。彼女はあれ以降、私と夕月の邪魔はしない代わりに、3人で仲良くお話している感じでして、私もすっかり…ライバルだということを、忘れております…。
ふと何気に彼女は、私の傍にいる人物に気付き、声を掛けたのですが。何と…そのお相手は、女性物の和服姿の夕月ではなく。男性物の和服姿の葉月、でしたのよ。彼女は大きく目を見開き、凝視した後、驚いた顔つきで…彼に声を掛けられて…。私は単に、夕月にそっくりな男性がいて、驚いたのだと思っておりましたのよ…。
「……北岡君だよね?…北岡君も、一緒に…初詣に行ったの?」
「「「………。」」」
葉月に対して、夕月に話し掛けるようにして…。…ええっ~!?…葉月のことを、夕月だと…勘違いされておられます?…私は、萌々花さんのセリフに、目をパチクリさせる。…あれっ?…葉月を…夕月だと信じておられますけれども、此処には…夕月本人もおられますのに、気が付かれておられませんの?
私は、未だに無言のまま、私達の真後ろにおられる筈の夕月を、振り返って見ますと…。夕月は…ニヤリと笑っておられます…。口元をハンカチで隠しておられますけれど、私には…分かりましてよ…。あのご様子は…苦笑というよりも、絶対に大爆笑の方ですわね…。この状況を、絶対に楽しんでおられますわよね…。
萌々花さんは葉月を、しっかりと仰ぎ見ておられるので、間違いなく…夕月と間勘違いされていらっしゃいますよね…。私達の後ろに立っている夕月には、全くという程、気付かれておられません。…え~と、これは…どうすべきかしら…。
「……君は、誰なのかな?…僕は、今日初めて会ったと思うけれど。」
「……えっ!?……っ!!!………」
葉月は一瞬驚いただけで、落ち着かれておりました。まあ、男装した夕月と間違われたのは、明らかですものね…。ですから葉月は簡潔に、淡々と萌々花さんを知らないという意味を持たせれば、彼女は漸く、目の前の男子=夕月でないと、気が付かれたようでして。先程の驚きを上回るとでも言いたげな、目が飛び出しそうな驚き様に、私も思わず苦笑致しましたわ、心の中で。
萌々花さんも慌てん坊さんですけれど、本物の夕月は…私の後ろで、この状況を完全に楽しんでおられますし、葉月は「僕は、夕月の弟です。」と名乗るおつもりはなく。飽く迄も…別人として振舞うおつもりです。
「……ご、ごめんなさい!……ひ、人違いでした!」
丁度その時、萌々花さんのご両親と思われる人達が、彼女を呼ばれたのもあって、彼女はもう一度「ごめんなさい。」と、葉月に謝罪をされ、「また、学校でね。」と、私にも声を掛けてから、ご両親の元へと走り去られて行きました。彼女はまた草履で小走りされたので、私の方がハラハラ致します。両親と合流され、一緒にお店の中に入って行かれるのを、見送りましたけれど。
彼女と入れ替わるようにして、お兄様がお店を出て来られて、私達のお顔を見られた途端、「何か…あったの?」と訊いて来られます。す…鋭いですわ、お兄様…。ですが…夕月も葉月も、何もなかったと言われるので、私もそういうことにしたのです。萌々花さんにも、ごめんなさい…と頭の中で手を合わせ。
まあ、葉月のことは色々な意味で、学苑の生徒には…知られない方がいいでしょうね…。それでなくても、夕月の男装は有名ですし、例え…私と夕月の友達とは言えども、知られない方が無難ですわね。ご本人達が言いたくないことを、私がバラす訳にはいきませんわ。
夕月を巡っては、実際に中等部では、過激なファンの生徒達もおられた訳ですし、『念には念を入れよ』という諺通り、葉月も絡まれる可能性は…大きいですわね。
萌々花さんには、悪い事をしましたけれど、私個人としましては…どのような理由があろうとも、夕月の味方で居たいのですわ。
ランチの後は、お兄様がリザーブされておられた、クラシック・コンサートを観賞しに行きましたの。自宅で音楽を聴くのも良いですが、偶にはこういう大会場で、本格的なオーケストラの演奏も聴くのも、最高ですのよね~。
音楽鑑賞のその後は、お兄様がまたまた予約されておられた、レストランに参りましたのよ。ワインがとっても合いそうなお料理でしたが、4人共に一応は未成年ですので、残念ですが…お酒は無しでお料理だけ、美味しく頂きましたわ。
しかし、今日は…何かと、色々とございましたけれども、とても楽しい1日でしたわね…。お兄様、またご一緒に連れて行ってくださいませ。おねだりポーズをしながら、お願いしてみましょうか…と、不純な事を考えております、私でしてよ。
初詣の続きとなっていまして、前回と同じ日の出来事となりますね。
未香子の兄は、名前で呼ばれていませんね…。相変わらず、影が薄いかも…。
萌々花が、初めて葉月と出会いました。しかし、夕月と双子だとは気付きません。これがどう影響して行くのか、筆者でも…迷っている最中です。
※この作品については、今回分が今年最後の投稿となります。次回以降は、来年の元旦以降となる予定です。
※筆者の私生活が忙しくなり、来年以降の更新の頻度を、減らす予定となります。応援してくださる方々には、大変申し訳ありませんが、更新頻度・曜日などを未定とする、不定期更新とさせていただきます。
※現在3作品更新中で、その内の1作品は短期間ものですので、そちらを優先させていただきます。




