117話 初詣で引くおみくじで
新年から3日目のお話です。副タイトル通り、初詣に出掛けます。
いつも通りの未香子視点です。
今日の早朝、私・お兄様の兄妹と夕月・葉月の姉弟での4人で共に、お出掛けをしていた。自宅からは少し離れた場所にある、この地域内では有名な神社に、初詣に出掛けていたのである。今日もお兄様の運転する車で、来ましたのよ。4人だけで初詣に来ましたのは、初めてなんですよね。
自宅から直ぐ傍にある、地元の神社の初詣も、それなりの人混みではあるけれど、ここの神社はある程度の知名度もございますので、自家用だけではなく、交通機関である電車やバス、将又タクシーを使用してまで、遠方から来られる人も多くて、人混みが…ヤバ過ぎますわね…。少し立ち止まっただけでも、迷子になってしまいそうなくらいの混み様ですのよ。私の場合ですと、平均身長よりも背が低い分だけありまして、人混みに紛れてしまうと、私の姿は全く見えなくなりますし、人の流れに押されますと…すぐに流されてしまうかと…。
「物凄い人混みだよね。迷子にならないように、2人1組で固まっていた方が、良さそうだね。僕は夕月と先に行くから、葉月には未香のことを頼んだよ。」
「 ……っ!………。」
…ええっ!?……ちょっと、お兄様?!勝手に…ペアの組み合わせを、決めないでくださいませ。…お兄様、聞いていらっしゃるの?……と申し上げたいのですけれども、口がパクパクと金魚のように動くだけで、私の口からは…全く言葉が出て来ませんのよ。然も…お兄様のセリフには、誰も反応しておりませんのに、お兄様はそう結論づけられ、夕月の手を取られ…。サッサと先に、歩いて行かれますのよ。えっ……置いて行かないで、くださいませ~。
「…僕達も、後に付いて行こう。ここで離れ離れになると、いくらスマホがあると言っても、探すのが一苦労だよ。」
「……っ!!………」
いつの間にか、私のすぐ傍に立っていた葉月が、私にそう語り掛け、私の手に自分の手を重ねて…しっかり繋ぎ、少々引っ張るように先導して行く。これで…手を繋ぐのは、水族館の時から数えて、先々月の秋祭りにも…でしたし、3回目となりますでしょうか…。幼い頃に、葉月とも手を繋いだ記憶もありますけれど、それは…今回の数には入りません…。それに…具体的には、覚えておりません…。
去年から、葉月と2人きりで行動することが多くなり、こうして…手を繋ぐことも出来るようになってから、私は必要以上に、葉月を意識してしまっておりまして。葉月は…どう思われているのでしょうね…。
私を引っ張るように斜め前を歩く、葉月をそおっと仰ぎ見て。彼は、ただ前を見つめて歩いている。多分、お兄様の背を追ってみえるのね。置いて行かれないようにと、迷子にならないように…と。ここで離れ離れになるのは避けたい、と思っておられるのでしょう。この人混みの中から兄達を探すのは、大変ですもの。
スマホを持っていても、電話の音が聞こえなかったり、電波の関係で連絡が取れにくくなったり、落ち合う場所も見つけにくかったり、などと色々と面倒そうそうですわ。お兄様は背が高い方ですので、この人混みでも、追う時の目印になりますわね。葉月もそれなりに背丈がありますし、兄の姿を追いやすいのでしょう。
逆に…私は背が低すぎますので、人込みに紛れ込んでしまえば、全く見つけられませんわね…。体力もありませんし、人に流される=迷子になる、という図式になってしまいますわね…。今の私には、葉月だけが頼りなのですわ。
葉月の足は急ぎながらも、私を引っ張る手が強くなり過ぎないようにと、気を付けてくださっているご様子でした。お兄様も、今日は夕月も和装姿ですので、歩くスピードを調整されていることでしょう。それ故に葉月も、ゆっくりと歩くことで、調整されているだけかもしれません。それでも…引っ張られている手も、ちっとも痛くありませんし、背の低い私も、十分について行かれるスピードですわ。
和服姿ということは、履物は草履となりまして、一般の方々よりは履き慣れているとはいえども、鼻緒で足の指が擦れてしまえば、痛みで歩けなくなりますものね。気配り上手なお兄様が、その事実に気が付かれないことはありませんし、葉月も…きっと気付かれておりますわね。
葉月は器用に、人の間を上手く擦り抜けられ、他の人にぶつからないように歩かれております。ですが、私は背が低い所為もあり、私が避ける云々よりも以前の問題として、周りの人々が…私にぶつかって来られます。…ううっ。これは決して、私が運動音痴で避け切れない、という理由ではありませんわよ。ええ、決して…。
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私にぶつかって来たのは、何も…人だけでなく。女性用のバックとか、女性の髪飾りとか、男性の肘とか、エトセトラ……。別に、それ程の痛みはありませんけれど、軽く当たったくらいですから…傷も出来ておりませんが…。それでも、当たる物が多いのは、嫌な気分になりましてよ。これだけ人が多いと、仕方ありませんけれども、それでも皆さん、もう少しご配慮くださいませ。主に、精神的に…どっと疲れが、押し寄せて来ましたわ……。
ある程度の場所まで歩けば、順番に参拝して行くことになりまして、何とかこれ以上は…押されることもなく、無事に参拝を終えましたのよ。これで漸く、目的の神社での初詣の行事は、終了致しましたわね。
その後は、おみくじを引いたり、お守りを買ったり致しました。因みに、私のおみくじは…吉でした。可もなく不可もなく、という状態ですわね。但し、恋愛面では波乱万丈の事態が待ち受ける、と書いてありまして…。…う~む。私、恋愛面では呪われておりますのかしら?…本気で、お払いが必要かしらね…。
お兄様達のおみくじは…と言いますと、兄と夕月が小吉でして、葉月が中吉でしたわね。「夕月と同じおみくじで、まるでお揃いのようだなあ。」と、お兄様は満面の笑顔をされておられます。夕月は…苦笑されてますが。おみくじでお揃いと言われても、嬉しくないですわよ、お兄様…。
夕月のおみくじには、今年は波乱の年だと書いてあり、毎年おみくじ運が良い夕月にしては、珍しいことですわね。お兄様のおみくじには、恋愛に関しては今年も何も変わらない、と書かれていて。お兄様はあまり気にされておられませんが、今年も…報われないご様子ですね。
葉月のおみくじも、恋愛運に関しては、案外と…辛辣な言葉が書かれていました。自分の努力次第では報われそうだと、書かれていましたのよ。葉月が、一体何方と恋をするのか、興味深いですわ…。そう思った瞬間、ある人物が浮かんで参りまして。嫌な…気分になりましたのよ…。
「未香子…。どうされましたの?…お顔の色が…真っ青でしてよ?…この人混みで、気分がお悪くなりましたの?…それとも、おみくじを気にされましたの?」
「…えっ!?…未香、大丈夫なのかい?…気分が悪くなったのならば、すぐに帰ろう。車をなるべく近くに持ってくるから、未香が休めそうな場所を、探そう。」
「 …だ、大丈夫ですわ。私、少し…考え事をしていただけですわ。何ともありませんのよ。」
私は、知らぬ間に…顔色を失くして、おりましたのね。夕月に、気分が悪い…と思われてしまって…。夕月の一言で、お兄様が過剰に反応されますのよ。もう……。大したことではありませんのに…。お2人とも、心配性過ぎですわ…。
私は必死で、否定致します。心配性なお兄様は、このまま直ぐにでも…帰宅されせたいようですわ。嫌ですわ。何日も前から、私は…楽しみにしておりましたのよ。今年は例年とは異なり、御利益で有名な神社に、折角…お参り出来ましたのに…。私はまだまだ、元気でしてよっ!
「大丈夫だ、と思うよ。多分、おみくじを見てから、顔色が悪くなった様だしね。その前までは、顔色は悪くなかったよ。」
「… ええ。…そうなのですわ…。思い当たることがありましたので、不安に…なってしまっただけですわ。」
「そうか…。それならば…いいけれど。本当に気分が悪くなったら、直ぐに言うんだよ。美香は直ぐそうやって、我慢するからね…。」
「はい…。気を付けますわ。」
お騒がせ致しまして、申し訳ありません…。お兄様達に、ご心配をお掛けするつもりは、ございませんのよ。私自身も、あれくらいで…顔色が悪くなるとは、思いませんでしたので。葉月がフォローされたお陰で、お兄様もすんなりと受け入れられましたわね…。ナイスフォローでしたわ。
…ふう~。私は普段から、悪い方へ悪い方へと、考え過ぎですのよね…。顔色を変えてしまう程、悪い考えにならないように、気を付けなくてはいけませんわね…。お兄様も夕月も、私に関することで過敏なのですから、お2人のいらっしゃる場所では、考え過ぎないように致しましょうか…。そうでなくとも、普段からお2人には、沢山のご迷惑をお掛けしておりますのに。
それにしても…葉月は、私の顔色の変化に、よく気が付かれましたわね…。葉月は基本的にこういう時には、冗談は言われませんので、お兄様も信頼されておられるのでしょうね。生真面目な…葉月らしいですわ。最近知ったばかりですけれど、彼は…夕月よりも嘘が下手なのでしてよ。…ふふふっ。
こうして、葉月のことを知って行くことが、1つずつ増える度に、私も…彼のことを身近に感じて。そう考えますと、ズキンと胸が…疼くような痛みを感じまして。私は…見なかったように、気付かなかったように…と、無意識に…自分の気持ちに蓋をしたのです。そうして、また日常に戻って行くのでしょうね…。
新年ということで、初詣に出掛けています。短編でも、初詣は書いているので、同じ内容にならないよう、気を付けました。
未香子の気持ちが、揺れているのは、誰かさんの所為ですね。今の彼女は、おみくじよりも現実が…というところでしょうか?




