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君の騎士 ~君を守るために~  作者: 無乃海
第一幕 名栄森学苑1年生編【4部 冬の巻 編】
132/199

番外 晶麻の事情 【前編】

 副タイトル通り、今回は番外編・晶麻視点となります。前後編の前編です。


久々の晶麻視点ですが、こちらも学苑祭編の意外な裏話を書く予定でした。

しかし、箏音との関係を詳しく説明する必要があり、前編では終始、箏音との出会い編のお話となりました。

 俺には、親というか祖父というか…が約束した、婚約者候補が何人か…存在している。その内の1人が、実は本命の婚約者候補なのだが、俺も乗り気ではないのもあるが、祖父や両親も望んだものではなく、その本命候補を誤魔化す為に、祖父が頼み込んだりして、候補者を名乗ってもらっている。これには、俺の正式な婚約者を決めないようにする為という、()()()()()()()()のだった。


俺の家は、代々続く医者の家系であり、地元に根付いた個人病院である。しかし、祖父の代からは評判の良い医師も招き入れたりと、徐々に大病院へと変化して行った。俺の父も修行として、大きな総合病院などを転々とし、腕に自信を付けて祖父の病院へと戻って来ている。その頃には、俺は生まれていたけれど、まだ幼くて…あまりよく覚えていないのだ。


両親や祖父母から聞いた話では、俺が生まれて1歳の頃に、祖父母の家に帰って来たそうだ。その時に「海外に住んでいるうちの孫も、丁度帰国しておりますのよ。年頃も近いですから、ぜひともうちの孫とお友達に。」と、俺とその人の孫を引き合わせたがった、というお得意様が居て。その頃の祖父母と両親は、何も疑いもせずに承諾したそうで。俺も帰省したばかりで、この辺の知り合いがいないからと、親心からであったらしい。


そのお得意様が…高遠家の祖母で、その人の孫が箏音である。その頃の祖父母は、近所に住んでいて家柄の良い『高遠家』とは、親しくしていた。四条家と分家である高遠家が、うちの病院を贔屓にしてくれていると、誇らしく思っていたらしい。高遠家は、この近辺では1番影響力があり、この地域に住む大勢の人間が、高遠家を持ち上げるぐらいである。


世間的には、高遠家と縁続きになるのを望む家も、多いだろう。しかし、我が家は違っている。祖父母も両親も…恋愛結婚であった。出来れば孫である俺にも、好きな人と幸せになって欲しい…と、思ってくれていたようで。(ただ)の医者の家系である俺のお家は、格式高い家柄でも何でも…ないのである。今は…それなりに大病院に成長して、一応は…お金持ちの分類に、扱われてはいるのだが、祖父母の代では、風当たりが強かった…とも聞いている。


そんな成金みたいな我が家に、高遠家みたいな由緒正しい家柄が、縁を結びたいと思っているとは、夢にも思わなかったそうである。だから安易に、僕と箏音を会わせてしまった…と、両親も祖父母も後悔していた。その頃の箏音は、全く人見知りがなくて、初対面だった俺とも…楽しそうに遊びだしたらしくて。俺はよく覚えていないから、この話を聞かされた時には、意外だなあ…と思っていた。


すっかり仲良くはなって、彼女の両親がまた海外に戻るというので、彼女も日本を去った。そして、彼女の一家が一時帰国する度に、俺の家に遊びに来て。彼女の両親は凄く良い人で、彼女と俺との婚約を望んでいる風には、見えなかったらしく、俺の両親達も、「友達が出来て良かった。」というぐらいのもので。


彼女が帰国する度に、俺達は一緒に遊んでいたそうである。彼女は大人しい女の子だと思っていたから、本当に…俺と遊んでいたのかなあ、とは思っていたのだが。俺は物心ついた頃には、手が掛かるようなヤンチャな男の子であった。俺も微かに覚えているのだが、木に登ったり川遊びをしたり、近所の悪ガキと()るんでいたりと、()()()()()()()()()()()()と言えば、聞こえがいいだろうか。


だからそれまでは…疑問に思っていたのだ。俺も…おままごととか、嫌々でも付き合っていてやったのかなあ…と、思ったりして。ところが、思っていたこととは違い、両親が言うには…その反対で。つまり、箏音は俺と、そういうヤンチャな外遊びをしていたそうだ。外で元気に走り回っていた、と。…へ?…それって本当に、箏音のことなのか?…よもや…別の人物とでも、勘違いしているのではないのか?あまりにも信じられなくて、何度も訊ね返したぐらいである。


しかし、実際に…箏音であったのだ。両親に見せてもらったのは、その頃の写真が何枚か撮られており、俺は初めてその写真を見た時に、衝撃が走ったのを…未だに覚えている。箏音で間違いなかった…。俺と一緒に、泥んこになった箏音が、そこには写っていた。他にも、木に登って木の枝に座っている箏音、たも網を持って蝶やセミを掴まえている箏音など、いくつか衝撃現場のような写真が、見つかったのであった。俺は暫くの間、言葉を失くしていた。


……おいおい。最早…別人だろうが。おままごとをするような箏音は、何処にも居ないんじゃないのか…。何で…こんなにもヤンチャな箏音が、あのお淑やかで大人しい雰囲気の箏音に、なっているんだか…分からん。一体全体、箏音に…()()()()()()()()()か…。






     ****************************






 高遠家の祖母から正式な話として、うちの祖父母に、婚約の件が初めて打診されたのは、俺が5歳になる前頃だったようだ。打診された当初の祖父母の対応は、まさか…と言いう気持ちの方が強く、「またまた、御冗談を…。」と濁していたそうである。しかしその後も、何度も婚約の打診をされた上に、高遠家から依頼されたと話す、弁護士まで登場したことで、漸く「これは冗談ではない。」と、慌てたらしくて…。俺の両親に相談することとなり。


俺の両親が「我が家は恋愛結婚ですので、今から婚約は考えておりません。」と、キッパリ断りに行ったらしが、「では、取り敢えず婚約者としていただければ…」と、高遠家の祖母は…飽く迄も婚約に拘ったそうで。両親としても、この人物とは真面な話が通じない…と、思ったそうである。仕方なく…、箏音の両親に話を通そうと考えた両親だったが、反応は()()()()()()()()()()()()、と…。


箏音の両親は、典型的な政略結婚であり、その所為もあるのか、この婚約話にも呑気に考えていた。婚約してみないと分からない。本人達次第では、婚約を受け入れて結婚もするかもしれない、と。自分達が上手くいった為もあり、子供も大丈夫だろうと思っている様子が、うちの両親にも…伝わったぐらいで。結局、高遠家の方が権力を持っていることもあり、うちのような格式のない医者の家系が、本気で断ることは…出来なかったのである。


正式に婚約してしまえば、()()()()()()()()()()、こちらから断る訳にはいかなくなる。俺に好きな人が出来たというぐらいでは、断れないのである。契約違反だと言われて、莫大な慰謝料を取られるかもしれないし、箏音の名前にも傷がつくことになるので、責任を取らされる可能性が高い。だから、何も対策しない訳にも、いかなかったのだ…。


そこで父と祖父が話し合い、他にも…婚約者候補を作ろう、ということになったのだ。実は…他にもそういう候補者が、何人かいらっしゃるので、我が家の一存では決められない…と、嘘を吐くことにしたのである。本気で調べられたら、直ぐに間に合わせの嘘だと、バレるだろう。背に腹は代えられない状況だったとは言え…。それでも、結果的には…上手くいったようで。これで、彼方(あちら)は諦めるだろうと、俺の両親達も思っていたのに。結果的には、諦めてくれなかったみたいで。


その後の俺と箏音の関係は、婚約候補となったことから、次第に…他人行儀な関係となって行ったのだ。俺は婚約候補になった当初は、まだまだ…子供だったから、それまで同様に唯の幼馴染として、妹みたいな存在としてしか、俺は彼女を…見ていなかったのである。


彼女は彼女で、婚約者候補となった途端に、将来は俺と結婚する…と言い含められていたらしく、俺が物心ついた頃には、そして俺の記憶がある限りは、もう今の彼女に変わっていたんだと思う。彼女は常に、俺とは一線を(かく)して向き合っていた。おままごとをしたという記憶も…ないならば、やんちゃな遊びをした記憶も…なくて。箏音はいつも、お淑やかで完璧なお嬢様となっていた。


俺の祖父母や両親の話では、彼女と再会する度に、徐々に礼儀作法が良くなって行ったそうである、それでもまだ…時々は、ヤンチャで元気な箏音が見られる時もあって。但し、彼女の傍に祖母が存在する時は、何時(いつ)にも増して大人しかった彼女は、祖母に厳しく躾けられていたようで、祖母の前では一度もそういう行動は取らなかった。


だけど…祖母が居なくなった途端に、元気に走り回っていたこともあったそうで。

祖母に…叱られるのが、嫌だったのか、それとも…怖かったのかは、分からないけれど。しかし、高遠家の祖母から、正式に婚約者として検討するように…と、強い主張をされた頃からは、それを境にして…彼女は、すっかり見違えるぐらいに、お淑やかな淑女になって行ったようである。


だけど俺は、()()()()()()()()()()、好感を持てると思っていた。今のお淑やかな箏音のことは、妹みたいにしか…思えない。俺自身は…今現在も、走り回ったり動き回ったりするのが、好きなのだ。本来ならば…部活も、運動部に入る予定だったのに。赤羽根部長から誘われた当初は、俺が演劇部でお芝居をするなんて、全く考えられなかったのだ。だから、当初のうちは…断っていたのに。学苑の噂で、北城が…演劇部に入った、と知ってしまって…。気が…変わったのである。自分でも、自分の行動に…信じられなかったけれど。


俺は…その時には、気になる子が居た…。いや、好きになった子が居た、と言うべきか…。その相手は…勿論、他でもなく…北城 夕月、その人だったのである。

 晶麻視点での番外編・前編になります。


晶麻と箏音との出会い当初の頃も含めたお話が、中心になっています。晶麻だけでは覚えていない頃もある為、晶麻のご両親が晶麻に語ったお話、というもので補っています。


※以下は、補足事項です。

晶麻と晶麻の家族は、夕月達一家と違い、箏音の家の複雑な事情を、全く知りません。知っている事情は、箏音一家が海外に住んでいたこと、箏音の両親が政略結婚、の2件のみです。あと、晶麻は、夕月が四条家の直系であることも、知らないので、高遠家と四条家の関係性も全く知りません。

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