111話 魅惑する少年
前回の引き続き、クリスマス会当日となります。今回、他の女子と合流します。
いつも通り、未香子視点です。副タイトルは、誰のことでしょう?
今日は生まれて初めて、女子友だけでのクリスマス会である。イケメン少年に変身した夕月が迎えに来てくれて、私はときめく。先程から、夕月がかっこいいセリフを言ってくれたものですから、私は今にも倒れそうなぐらいに、クラクラしておりましたわ…。滅多に見られないウインクも、この姿でされましたならば…。
そうも…なりますわ。
夕月は、男性が何かのイベント的なパーティに出席するような、ブランド物の紺のジャケットと、淡い水色のパンツを着こなしていた。柄の入ったエンジ色のネクタイも、しっかりと結んでいる。…はああ~。もう似合い過ぎていて、私は…眼福なのですわぁ。どこからどう見ても、青年になりかけた年頃の少年ですもの!
対して私は、清楚な雰囲気の白と薄いクリーム色の、ツートーンカラーのワンピースを着用している。可憐な可愛さを演出したら、こうなりましたの。別に、夕月が男装して迎えに来るとは、思っていた訳ではなく。いつものようにパンツルックだろうなあ…ぐらいには、思っておりましたけれども。そういう理由で、童顔の夕月に似合う服装を、どうしても着たかったのですわ。結果的には、それが功を期したようでして。これでしたら、イケメン少年になられた夕月と並びましても、それほどは見劣りしませんわよね…。
「未香子も…そのワンピース姿が、よく似合っているよね?…やっぱり、僕が完璧に男装して、正解だったみたいだね。いつもの洋服では多分、釣り合いが取れていなかっただろうなあ…。エスコートも、不格好だったかもしれない。」
「そ、そのようなことは…ありませんわ。夕月は、いつも素敵ですもの!…ただ今日は…そ…その、い…いつもより何倍も、す…素敵ですわ…。まるで…王子様みたいですもの……。」
「ふふっ。褒めてくれてありがとう。今日の未香子は、何時にも増して…とても愛らしいね。まるで、この世に舞い降りた…花の妖精みたいだよ。」
「……は、花の妖精?!……あ…りがとうございます…。」
お花の妖精なんて例えられて、私は舞い上がってしまいました。それに……。
今の私の姿でしたら、きっとお似合いのカップルにも、見えるのではないでしょうか?……うふ。ふふふふっ。にやにや笑いが…止まりませんわ。嬉し過ぎて…。
「さて、そろそろ出かけようか?…僕のお姫様。」
そうお道化たように言っては、夕月は私に手を差し伸べてくる。男装した時はいつも、エスコートしてくださるのですが、今日のエスコートは、理想の王子様が迎えに来てくれたような、雰囲気ですわね…。夕月は全ての所作が綺麗だから、こういう仕草もとても、様になっておられますわね…。セリフも一々、王子様が仰るような赤面するセリフを、ポンポンと吐いてくださいますし…。これが他の男性でしたならば、歯の浮くようなセリフだと、逆に白けてしまったでしょうね…。これは…夕月だからこそ、こういう歯の浮くセリフも、似合うのですわね。…ふふふふっ。
今日は、真姫さんの手が離せないそうでして、幹人さんが送迎してくれることに。幹人さんは私達の姿が見えた途端、車のドアをスッと開けて待っていてくれる。
夕月のエスコートで後部座席に乗り込み、私の後から夕月も乗り込む。幹人さんは、それを確認してからドアを閉め、運転席に乗り込んで車は走り出した。
「今日の夕月お嬢様は、男性にしか見えませんよね?…夕月お嬢様が…女性だと知っている私でも、今日は別人だと勘違いしそうでしたよ…。」
「そう?…ありがとう、幹人お兄さん。化けた甲斐があったかな。今のは、僕にとっての最高の誉め言葉だよ。」
「…しかし、そういう姿をされていると、葉月坊ちゃんと瓜二つですね?最近、葉月坊ちゃんにお会いしていなかったら、本当に夕月お嬢様だとは、気が付きませんでした。…危なかったです。」
「…ふふっ。最近は、葉月とそっくりだと言われることが、少ないんだよ。」
車が走り出して暫くしてから、幹人さんが夕月の男装について、話しを振って来られました。幹人さんは、私のことは勿論お嬢様と呼んでいるけれど、夕月のこともお嬢様と呼び、葉月のことは坊ちゃんと呼ぶ。2人が四条家とは関係ないと話しても、幹人さんは呼び方を変えなかった。自分にとっては、そういう存在だと断言して。それに対し、夕月と葉月は、幹人お兄さんと気軽に呼んでいて。…う~ん。
幹人さんが言うように、私から見ても、今日の夕月は…葉月そっくりなのですわ。背丈や体つきは…そっくりとは言えなくとも、その他は見た目だけならそっくりなのですよ。夕月の男装時の時に話す、低めの声も良く似ていますのよ。葉月の存在をあまり知らない人でしたなら、十分に誤魔化せそうなぐらいには。それでも…。最近、葉月と話せるようになり、色々と小さな違いにも、気が付いてしまった所為なのか、遠目では騙されても、近場では…2人を間違えることは、ないでしょう。
そう考えている間に、幹人さんが運転する車が停車した。今日の会場となるお店に着いたようね。さあ、クリスマスという名の女子会会場に、乗り込みましょうか?
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私達がお店の中に入れば、店員も近くに居たお客達も、振り帰る。此方を見た人達は、店員もお客も女性の方が多い為、イケメン少年状態の夕月が入って来たことに、騒めき出した。中には、ボ~となられて見つめて来られる、若い女性もおられまして。肝心の夕月は、全く気にする素振りもなく、私を手を取り…エスコートしたまま、近くに居た女性店員に近付き、話し掛ける。
「今日のクリスマス会の予約をされた菅さんは、此方に来られていますか?」
「……! …は…はい!…『菅 萌々花』様ですね?…ご、ご案内致します!」
若い女性の店員さんは、イケメン少年に話し掛けられ、顔を赤く染めながら、慌てふためいて返答されまして…。…ふう~。先程までの私と、同じ反応ですわね…。夕月が…かっこ良過ぎて、バイトの店員さんも…噛み噛みでしたわね…。
店員さんが案内してくれた先の個室には、もう既に私達以外の皆が集まっておられました。ドアを開けて中に入った途端、中に居た全員が此方を振り向き。此方を見た途端に、目を見開き…固まってしまいましたわね。皆さん、私をエスコートしている隣の少年に、目が釘付けになっております…。これが世に聞く、目が点になった…という状態なのでしょうか…。誰1人一言も発せず、口をポカンと開けられて固まりましたわね。もしかして、この少年の正体…分かっておられませんの?
気になって隣の人物を見上げれば、満面の笑顔を見せて、皆さんを魅了しておられて…。…うっ。これは……。態と…魅惑されてます?…それとも、単に面白がっておられるだけ?…どちらにしましても、楽しんでおられますのよね……。こういうところは、姿形が変わられましても、夕月らしい…のですのよ。
イケメン少年を見つめておられた面々の視線が、そのまま流れるように、隣で立っております私の方に移動して。私の様子を見てから、ハッとされたような表情に変わられ、その後は再び…隣の人物に視線が移って。そうして漸く、この場の全員が何かに気付いたように、期待された顔をされ…。
「……もしかして……き・た・お・か・君?!」
「うん、当たり。…そんなに僕の顔、違って見えたのかなあ?」
萌々花さんが代表するように、名前を確認するかのように、イケメン少年の正体を確認するように、恐る恐る訊ねて来る。満面の笑顔を更に微笑ませながら、応える夕月…。実に…楽しそうなお顔で。
「「「ひゃあっ!男装レベルじゃない!」」」
「「「ぎゃあっ!カッコいい!」」」
…と唯々…驚いておられる派と、唯々…見とれておられる派の、真っ二つに…分かれましたけれども。
「今日は、女子だけでお祝いするクリスマス会なのに、何でそれ程に完璧すぎる男装なの?…どう見ても、イケメン男子が1人混じっているようにしか、見えないじゃない…。これで…女子だけって言っても、おかしくない?」
「…う~ん。そうは言うけど、本当に女子だけだと、何か遭った場合に対処出来ないよね?…1人ぐらいは、男子が居た方がいいでしょ?…かと言って、本当に男子を呼ぶのは、違うとは思ってね。…じゃあ僕が、完璧に男装すればいいかな…と思ってね?…可愛い女子ばかりなんだから、何か遭ってからでは、遅いよ?」
「………。」
鳴美さんが真っ先に我に返り、夕月にズバリと苦言をされまして。私にも説明していた内容を、このメンバーにも説明されたのですが…。当然ですが、こういう気障なセリフに慣れていない皆さんは、真っ赤になって。いつもは冷静な鳴美さんさえも、口を金魚のようにパクパクされましたわ。返す言葉が…ない模様です…。
萌々花さんは「や~ん。」と両手を頬に当てて、身体をクネクネさせられ…。
よっちゃんやせっちんは、腰が抜けたようにしゃがみ込まれ、ボ~とされてます。ケイちゃんは「おおっ!」と盛り上がられ、郁さんは「ひえ~!」と大袈裟に驚かれながらも、お顔付きから察するに…テンションマックス、ですわね…。………。十人十色と言うお言葉通り、様々ですわね…。各々のご対応が…違いましてよ…。
……夕月。女子会メンバーの彼女達まで、魅了されて…どうされるのでしてよ?!それでなくとも、萌々花さん・礼奈・箏音さんにと、ライバルが多めですのに…。これ以上…私の敵を、増やさないでくださいませ!……むう~~!(※拗ねてしまい、口を尖らせている状態で。)
クリスマス会当日 part2です。
夕月の男装が半端ない仕上がりとなっていて…。
前半は、迎えに来た夕月と未香子からの遣り取り、後半は、会場に着いて…という内容ですね。メンバーと合流する前も後も、若い女性達を手玉に取って行く夕月。さてさて、彼女の真意は…何処にあるのでしょう?




