105話 クリスマス会の打ち合わせ
クリスマス直前の頃での出来事に関してのお話です。
今回は、楽しい出来事の筈だったのですが…、終了間近に暗雲が……。
いつも通り、未香子視点となります。
「ねえ、皆さん。このメンバーで、クリスマス会をやらないですか?」
あとは、終業式を待つのみになっていた、とある日のこと。唐突に、萌々花さんがこのようにお話を切り出されましたわ。…はい?!…このメンバーで、クリスマス会をしますの?…それならば…私は、夕月と葉月と兄とで、毎年クリスマス会をしておりますが、…何か?
「うん。いいねえ~。楽しそう~!…是非、やりたいよねぇ!」
「うん、うん。このメンバーではやったことがないから、やりたいよね!」
萌々花さんの提案に、郁さんが真っ先に賛成し、ケーちゃんも乗り気になっている様子であった。今ここに居るのは、女子のメンバーだけ。私と夕月を筆頭にして、ケーちゃん達3人と萌々花さん達3人、計8人の女子が一緒に昼食を取っている。
今年は、学苑で昼食を食べるのも、今日が最後なのである。明日からは、午前中のみの授業で終了することとなり、今週で2学期も終了することになっていた。
「良いんじゃない?…あっ、でもクリスマス当日は、私も用事があるから、参加出来ないからね。別の日にしてよね。」
「そうよね。私も、当日以外ならば、OKかなぁ~。」
「そうだね。私も未香子も、クリスマス前夜と当日は、既に予定が決定しているんだよ。それ以外の日程は、一応空いているけどね。」
「ええ。夕月の言う通りですわ。」
鳴美さんが賛成しながらも、クリスマス当日は無理だよ、とさり気なく当日はお断りされていて。よっちゃんも同じく、当日以外をご希望のようですわ。夕月も私と顔を見合わせてから、自分達も当日以外でならば、と同意しておりまして。
そうですわね。私達は、お兄様達とご一緒に、お出掛けすることになりますもの。
クリスマス前後は、いつも4人でお祝いしておりますからね。空けておかなければいけませんのよ。
「それならば、クリスマスよりも早めに、やればいいんじゃないかなあ?…例えば、終業式の次の日辺りとか…?」
せっちんが、具体的に日にちを提案して、ここにおられる皆さんが、その日でいいと同意されましたので、終業式の次の日と正式に決定しましたのよ。…うふふふ。このメンバーで、クリスマス会ですのね?…これはこれで…楽しそうでは、ないですの?…女子ばかりの集まりですから、女子会という感じですわね?…ふふふっ。
「あとは…場所だよね。クリスマス会をする場所は、私のバイトしている親戚のお店、っていうのは…どうかなあ?…貸し切っては無理なんだけど、実は…奥には個室もあるんだよね~。その奥の個室ならば、貸し切っているのと同じように、私達だけしか入って来ないから、ゆっくり出来るんじゃないかな。防音も完璧だから、隣の部屋にも聞こえないし、安心だよ。」
萌々花さんが、クリスマス会会場となる場所を、提案をしてくれる。…まああ~。萌々花さんのバイト先には、以前偶然に行きましたけれども、個室があるとは…全く気づきませんでした。個室は予約制だそうでして、空いてさえいれば、普段から使用出来るということでしたわ。
萌々花さんの意見には、誰も反対されませんでした。このメンバーでのクリスマス会場となりますと、そこそこの広さが必要ですものね。この学苑の生徒となれば、それなりの会場を使用しなければなりません。安全の為にも。彼女が、すんなりと場所の提供をしてくださったので、あっという間に決まりましたわ。私も、あのお店ならば大歓迎ですの。先日、萌々花さんと口喧嘩した際の、あのアンティーク風のお店も、気に入っておりますのよ。また…行きたいですわね。
後でよ~く考えてみましたら、別に、我が家でも構わなかったかもしれません。
ただ…この時期は、あの兄と葉月が帰省する頃ですのよ。何しろ、面倒臭い人物が2人も居るのですわ。出来るだけ…彼らには、このメンバーとは関わって頂きたくありません。
特に…葉月には、誰も会わせたくなくて…。何故ならば、夕月とそっくりだから…ですわ。夕月に似ているのは、双子なのですから…それだけのことなのですのに。似ていて…そっくりでも、当然のことですのに…。何故…こんなにも、夕月にそっくりな葉月を、ご紹介したくないのでしょう?…自分自身が…よく理解できませんのよ…。
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クリスマス会場は、萌々花さんのバイト先の茶店に決定した。しかし、だからと言いまして、お店の料理だけを飲食する必要はない、というでして。持ち込みも可能だと聞き、私達は分担して、料理やお菓子などを持ち込むことになった。
昼食後の休憩時間だけでは、持ち合うものがダブらならないようにと、具体的に決める時間はなく、翌日は特に部活の練習もない為、このメンバーで初めて寄り道することになったのである。
帰り道に、女子が8人も固まって歩いていれば、当然の如く、目立ってしまっているようで。実際には、誰も話し掛けて来なかったが。この異様な雰囲気の中、話し掛けられる強者がいたとしたら、逆に尊敬に値しますわね。最近の郁さんは、それなりに有名になりつつあるようで、あの独特の会話には、大方の生徒がついていけないようである。…まあ、お気持ちは、よおく分かりましてよ…。
飛野君達イケメン男子3人も、同様で。この前の学期末テストで、彼らは、私達女子と一緒にテスト勉強した時に、郁さんの会話のズレに、面食らっておられましたもの。今日も遠目から、私達の方を見ておられましたが、話し掛けては来なかったのは、そういうことでしょう。ぷっ、ふふふ…。
今から何処へ行くのかと言いますと、今日は…例のお店に行くのです。そう、あのアンティーク風のお店ですわ。クリスマス会の持ち合うものを決めようと、そういうお話になったものですから、私が提案しましたの。あのお店がいい、と。
萌々花さんも、まるで自分のお店の如く喜んでましたし、夕月も郁さんも鳴美さんもOKでしたので、今から行くことになったのですのよ。楽しみですわ。
ケーちゃん達3人は、初めてですのよ。私達5人が太鼓判を押すものですから、興味津々のご様子ですわ。きっと…お気に召すことでしょう。ぞろぞろと、ほぼ制服姿の女子生徒達が歩いておりますと、何だかとても…人目を引くようですね。
道行く人達の殆どが、私達を振り返って見て来られます。まあ、夕月と鳴美さんの2人は私服組ですが、私達の中では、浮いているかもしれませんね。鳴美さんは、制服の方が目立つからと、時々私服で登校しているそうですが。私は反対に、制服の方が落ち着きますわ。私服は…ブランド物ばかりで、余計に目立ちますもの…。
お店に到着した途端、ケーちゃん達3人がその外観を見て、早速「わあ~。」と盛り上がっておられます。お店の中に入ってからも、「わあ~。すっご~い。」と、いつになく盛り上がられておられますわね…。いつも落ち着いているせっちんも、今回ばかりは、「凄い、凄い。」と目を輝かせていますわね。確かに、ここまでアンティーク調の軽食屋さんって、中々見かけませんものね?
ここで例の如く、萌々花さんが「これ、全てレプリカなのよ。」と説明されれば、
今度は呆気に取られて、呆然とされておられます。レプリカと聞いた当初は、落ち込んでいたせっちんも、暫くすると、「これはこれで素敵ね。」と満足そうに眺められていて。ふふっ。そうですわね。これはこれで、味わい深いのですわ。
お店に入ってから暫くすると、バイトと思われる若い女性が、注文を取りに来る。
私達は各々、軽食を注文することに。今日から午後の授業がない為、昼食はまだでしたのよ。ここで済ませることにして、皆さんでワイワイと、こういう風に昼食を取りながら、何かを決めるのも悪くないですわ。今までにこういうことは、お兄様達と4人でしかしていなくて、初めての経験ということに浮足立っていた。
これは…後で知ったのですが、ケーちゃん達も同様だった。私達、名栄森学苑の生徒は、ある程度の家柄の子息達ばかりであり、学校帰りに寄り道すること自体が、殆どないのである。小学生・中学生の間は、学校だけではなく親からも、寄り道は禁止されていた生徒も多い。高等部に入学して漸く許可が下りたのだと、ケーちゃん達も語っていた。郁さんも学校は違うものの、やはり禁止だったらしいもの。
この中では、中学時代から寄り道をしていたのは、萌々花さんと鳴美さんだけである。2人は、それぞれの地元の公立中学だったので、一応禁止されているものの、バレない程度に寄り道していたんだと、語っていた。案外、公立の方が退学の恐れもなく、バレたらバレた時のこと、と開き直れるらしく。…なるほど。お嬢様みたいに誘拐されるリスクは、少ないのですね…。まあ、実際にバレた場合は、学校から罰が与えられることもあるそうですが。
うちの学苑で、先ずそういう違反をすれば、バレれば確実に…転校を促される、と思いますわ。私学全部がそうだとは言えないのですが、案外と公立よりも私学の方が、規則が厳しかったりするものなのですよ。
このように語り合ったりしている時、突然、店の入口に近い場所から、誰かが怒鳴るような大声が聞こえて来た。それは、この店の店員に対して、男性が怒鳴るような大きな声で、何か文句を言っているようでして。私は一気に、昔のことを思い出してしまい、身体が強張り始めて、声が…出せなくなる。私の身体全体で嫌な予感を感じて、私は…真っ青になりながら、小刻みに震えていた。
今でも、大人の男性が…怖い。男性の怒鳴り声が…怖い。あの時を…思い出して。
もうすぐクリスマスということで、女子会ならぬ、クリスマス会を実行することになったのですが。…というお話になっています。
前回と違い、女子だけの集まりをしようと、クリスマス会として計画中です。
イケメン男子はお呼びでない?
お話し結末で、未香子が悪い予感だと言っていますが…、申し訳有りませんが、次回はそうなる予定です。その為、気分が悪くなりそうな未香子は、未香子視点をお休みとし、次回の視点は、萌々花が代理で行う予定です。




