98話 学苑祭 2日目
学苑祭2日目のお話しです。あと少し、学園祭のお話が続く予定です。
今回は新しいキャラは登場せず、平穏な模様?…です。
さて、本日は、学苑祭2日目である。2日目は、学苑の生徒の保護者とその親戚が、招待されている。昨日は、礼奈の前触れなしの登場で、私も夕月も振り回されたのだから、今日は、私が夕月と楽しく過ごすつもりなの。ふふん。礼奈が悔しがるぐらいの楽しい時間に、して見せますわよ!
実は昨日、礼奈が去った後、漸く行列が落ち着いて来たので、交代してもらった私と夕月は、休憩を取ることになったのである。各クラスを覗いては、案外と空いていたGクラスの『ファッションショー』の見学と、Hクラスの『クラス劇』を観賞して来た。Gクラスには、被服部の部員が多くおられるようでして。ファッションショーはその部員達が中心になり、自分達が作った衣装を着ることで、宛ら有名モデルのファッションショーのような華やかなショーとなっていた。斬新なデザインも多くて、デザイナー若しくは、洋服メーカーなどへの就職を目指したり、また中には…モデルの道を目指したり、という生徒も存在しておられるのかしらね?
クラス劇の方は、簡潔に言わせていただきますと、学芸会とかの発表会のような素人お芝居でしたわね。私達映像部の演技と比べてしまえば、子供騙しにしか見えませんが、決して比べてはいけませんのよ。本来ならば、このようなものなのです。お芝居の内容も童話のお話でしたから、今日・明日来られる幼いお子さま達には、分かりやすい内容できっと喜ばれることでしょう。
今日は時間があればなのですが、Eクラスの『クイズ大会』への参加と、Fクラスの『たこ焼き屋さん』のたこ焼きを購入して、制覇したいところですわね。
2年生と3年生の方にも回りたいイベントがありますのよ。1年の残りのイベントは、明日にまた制覇する予定で…。2年生と3年生のイベントは食べ物系のお店が多く、昼食は今日も買い食いで済ませる予定なのですわ。1年生とは異なり、かなり本格的な料理もありますもの。食べるのが楽しみですわ。
昨日とは反対に今日の午前中は、教室の方での接待をすることになっていた。
教室の入り口の所で、笑顔でお客様を出迎えておりますと、Aクラスの保護者と思われるお客様が、真っ先にAクラスにいらっしゃってくださいます。我が家の両親も、今日は忙しい中いらしてくださいましたわ。私のコスプレには気付かれておられませんので、私からお話し掛けることにしましたの。…ふふっ。
「まあ、まあ。我が娘ながらも、とっても似合っていますわね。」
「確かに…良く似合っているね。だけど…青い髪に染めたのかい?…う~ん。私は…何と言えば良いのやら…。…ああ。私の未香が……。私はこれから…どうしたら、良いのか……。」
お母様は私だと気付かれた途端に、目を大きく見開かれて驚かれた後、それでも直ぐに愉快そうにコロコロと笑われて、私の姿を褒めて下さったのです。大ウケされていらっしゃいますわね?…それに対し、お父様は同様に目を見開いて驚かれた後に、暫し固まっていらっしゃいましたわ。漸く元に戻られたと思いましたら、今度は顔を引き攣らせておいでで、トンチンカンな事を仰いますのよ。はあ~、と溜息を吐きながら、これからどうしたらいいのかと、本気で悩んでいらっしゃるご様子なのですわ。
…お父様。何か…早とちりされておいでですの?…まさかと思いますが、私が自分の髪を青く染めたのだと、本気で…思っていらっしゃるのでしょうか?
この青い髪は、鬘なのですよ。…あの~、お父様?…聞いていらっしゃいます?
私はそうお話し掛けたのですけれど、お父様は聞いておられないようですのよ。
お母様が目を半眼にされながら、首を振られて「放っておきなさいな。その方が面白くなりますから。」と、呆れていらっしゃいますね?…後で面倒になりそうですから、お母様からご説明をお願いしますね?
夕月のご両親もいらっしゃいましたわ。ですが、夕月のコスプレ姿を拝見されていても、殆ど冷静にご対応されておられたのは、驚きですわね…。まるで…もう慣れているというご様子でしたわね…。夕月の男装自体に馴れていらっしゃる、ということなのかしら?…私も、ご挨拶させていただきましょう。
「…あらっ?…未香子ちゃん…なのかしら?…青い髪とが、とても変わったお姿ですのね?…まるで青い薔薇のように、とても愛らしいですわね。」
「そうだね。初めて見る姿だけど、何かの意味があるのかい?」
夕月のご両親がいつものように、私にも話し掛けてくださいます。しかし、私達がコスプレしているということが、よく理解されていらっしゃらないご様子でした。私も、コスプレのことを今回初めて知りましたし、コスプレ自体も初経験ですからね。両親や保護者の方々には、上手くご説明が出来ませんですわ。
夕月のご両親も私の両親も去った後に、あの厳しい四条のお祖母様が、お1人でいらしたのですわ。腰が抜けるほど…驚きましたわよ。夕月は、冷静に対応されていましたけれど、大丈夫なのでしょうか?…お祖母様は気付かれなかった…ということは、ございませんわよね?
私のお祖父様とお祖母様も、いらしてくださいました。コスプレも可愛いと褒めていただき、照れ臭くなりましたわ。夕月の北城家のお祖父様も、お見えでしたわ。私達のAクラスの担任に気軽に話し掛けていらして、本田先生はとても慌てたようなご様子でしたわね…。北城家のお祖父様と本田先生は、もしかして…お知り合いなのかしら?
****************************
私と夕月は暇を見つけては、他のクラスの出し物を見に行ったりしている。
予定通りにたこ焼きを食べて、ゲーム大会にも参加して。ゲームには、射的で的を狙って点を稼いだり、その点次第で何か景品を貰えたり。他にも、色々なミニゲームがあったりと、他のお客との対戦型、店の人(つまりCクラスの生徒)との対戦型などもあり、十分に楽しめましたわ。
私達がFクラスに買いに行った時には、千明君がたこ焼きを焼いていたところでして、彼が焼いたものを貰いましたのよ。…ふふっ。普段とは異なりまして、女子みたいに軽い雰囲気が、今日は鉢巻きして懸命に焼く姿になられて、男の子らしく見えましたわね。男の子らしい千明君は、別人みたいでしてよ?
Eクラスの郁さんが「今なら空いているよ~。」と折角そう教えてくれましたのですから、『クイズ大会』に参加してみましたわ。クイズを解く度に移動する為、時間が掛かりましたが、夕月と一緒にクイズを解いて回るのは、とても有意義な時間でしたのよ。夕月も楽しそうに活き活きと、クイズを解かれていましたわ。
童心に返ったみたいでしてよ?…うふふふっ。
その日の最後には、映像部の舞台会場で私達のお芝居を披露して、本日の学苑祭は終了となった。生徒達の保護者の前で演技をするのは、ちょっぴり…恥ずかしいのですが…。自分の両親にじっと見られますことに、何となくむず痒いようなと言いますか…。四条のお祖母様も、拝見されていらっしゃるのかしら?…今日の夕月の演技は男子役ですから、演じにくくないのでしょうか?
挨拶をする為に再び舞台に並んだ時、拍手喝采をしてくださっている観客の中に、ふと…見覚えのあるお顔を見つけたような気がしまして。…有り得ませんわよね?気のせい…ですわよね?…今日は休日ではなく、平日なのですもの。他の学校に通っておられるお兄様と葉月が、こちらに帰って来られる訳がありませんわ。
私の…見間違いですわよね?
「ねえ、夕月。私、今日の舞台後の挨拶時に、お兄様と葉月に似た人を見たのです。でも…、流石にお兄様と葉月が、私達の学苑祭に、帰って来られる訳がありませんのに…。私ったら、見間違えたみたいですわね?」
上演が無事に終了した後、帰宅しながら報告を致しましたら、夕月が急に黙り込んでしまって。…あらっ?…どうされましたの?…私は不思議に思いながらも、夕月のお顔を下から覗き込むようにして見上げれば、夕月が何とも言えない表情を浮かべていて。…何でしょう?…この表情には、どういう意味がありますの?
「…夕月?…どうされましたの?…私、何か可笑しなことでも申しました?」
「…う~ん。未香子が、今日見た人物のこと…だけどね…。多分…それ、本人達だろうね…。2人は時折、私達の様子を心配して見に来ているみたいだよ。未香子の見間違えではない…と思うよ。実は、私も…学苑祭の時に、チラッと姿を見たんだよね…。」
「 …!?……。…ええっ!?…お兄様と葉月が…本当に、来ておられましたの?私達の様子を見に来ている…とは、どういうことですの?!」
夕月は苦笑しながらも、意外な返答を私に返して来られて。その回答には…頭を抱えてしまいたい、憂鬱な気分になりましたわ…。…はあ~。…お兄様と葉月は…何をされているのですの?…本当に時折、こちらまで帰って来られているのですの?私を、ただ単に子供扱いされていますの?…それとも、夕月のことも心配で、ということですの?…ですから、お兄様は葉月も巻き込んで…おられますの?
そういう時、学校の授業は、どうされているのでしょうね?…まさかと思いますけれども、欠席されてまで…来られておられますの?!
あまりの衝撃の事実に、私の頭は…クラクラしておりますわ。今度帰省された時には、お兄様には…お聞きしたいことが、山ほどございましてよ!
是非とも正直に…お答えくださいませね?
学苑祭2日目が終了しました。学苑祭part3となります。
一応、未香子視点の2日目も無事終了でしました。
今回は、表向きは平穏に終了しています。朔斗と葉月が来ていたかも?…ぐらいですね。多分、次回からの方が波乱の展開になるでしょうね…。




