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君の騎士 ~君を守るために~  作者: 無乃海
第一幕 名栄森学苑1年生編【3部 秋の巻 編】
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90話 秋祭り その3

 秋祭りのお話、part3です。まだまだ続きます。


いつも通り、未香子視点となっています。

今回は、昼間のお祭り会場での出来事です。後半からは、夕方以降から4人で行く為の、前提でのお話部分ですね。

 私達は、ある出店の前で、立ち止まっていた。天然石を使ったという、手作りのアクセサリーや小物が並べてあり、若い女性達が商品を手に取って見ていた。

私も例外ではなく、女性陣に混じって、1つの商品を手に取っていた。


 「わあ~。…素敵……。」


それは、吸い込まれそうなほど綺麗な、深い海のような色をしていた。手に持つとずっしりした重みがあり、手に乗る大きさの割には、それなりの重みを感じる。

その石を、覗き込むようにしてよく見ていると、光線の加減次第で、深みの色が違っていて。ジッと見ていると、海の中にでも気分になる。


 「それ、気に入ったの?」

 「うん。何だか、海の中にでもいるような…、吸(・)い(・)込(・)ま(・)れ(・)そ(・)う(・)な(・)気がするの…。深みのある青が綺麗…。」


私が手に持ったまま、暫くジッと眺めていたものだから、夕月(ゆづ)は、私が物凄く気に入ったと、思ったのだろうな。私の感想を聞くと、夕月(ゆづ)は出店の店員に声を掛け、「すみません!このアパタイトの髪飾りを下さい。」と、現金を出している。

…え?…えっ?…夕月(ゆづ)が買ってくれるの?…あっ、支払っちゃった…。


店員さんが、「値札だけ、切り取りますね?」と私に声を掛けてから、値札を取り外してくれる。すると、ボケっとしていた私の手から、天然石の髪飾りを手に取って、夕月(ゆづ)が、私の髪にその髪飾りをつけてくれた。「うん、似合ってる。」と言いながら。私の顔を覗き込むようにして見ながら、にっこり笑って。


周りに居た女性達が、そのような私達を見て、きゃあきゃあ騒ぐ。羨ましそうに、「彼氏が優しくていいなあ。」とか、「彼氏、カッコイイ!」とか、「あんなカッコ良くて可愛い系の彼氏、欲しいな。」なんて、色々と私を羨ましがっている声を上げていた。私は…真っ赤な顔をして、夕月(ゆづ)を見上げていた。


恥ずかしくなって、夕月(ゆづ)から目を逸らし、顔を下に向けた。その時、ふと目に入った物があったのだ。それは、天然石が付けられているお守りだった。お守り風にした物に付けただけのものだけれど、その中から1つを、咄嗟に選んで手に取ると、店員に手渡して購入する。私も、現金をある程度持って来て、良かったわ。


店員から受け取ると、私はくるっと夕月の方を振り向いて、買ったばかりのそのお守りを、夕月(ゆづ)に向けて差し出した。夕月(ゆづ)は、目をパチクリさせて、「ん?」と首を僅かに傾ける。不思議そうなキョトンとした顔をする様子が、年(・)下(・)の(・)少(・)年(・)っ(・)ぽ(・)い(・)感じで、超可愛い。


 「誕生石、アメジストだったでしょう?アメジストのお守り、見つけたから、貰ってくれる?」

 「ありがとう。誕生石、覚えてくれていたんだね?嬉しいよ。大事にするよ。」


私が選んだお守りには、2月の誕生石であるアメジストが付いていた。

夕月(ゆづ)は、2月10日生まれだからね。夕月(ゆづ)にその事を伝えると、もう蕩けそうな笑顔で、私の手から受け取ってくれたのだった。大事にするって、言ってくれて…。

そして、他の女性の視線を感じながら、私達はその出店を離れて行く。


後ろでは相変わらず、女性達が「いいなあ。」と羨まし気に騒いでいる声が、私の耳にも入って来る。先程の店には、カップルと思われる男性も少数いて、夕月(ゆづ)の行動に「うわっ~。気障っ。」と、呟いている人もいたけれど。うん、まあ、確かに男性側から見たら、気障なのかもしれないわ。でも、これが夕月(ゆづ)らしいと思っているから、私としては、気障だとかカッコつけみたいだとかは、全く思っていない。


今日は秋祭りだから、人が大勢歩いているので、迷子にならないようにと、夕月(ゆづ)と私は手を繋いでいる。残念ながら、恋人繋ぎではなくて、普通に手を繋いでいるだけ。それでも、私には嬉しいことである。例えそれが、迷(・)子(・)に(・)な(・)ら(・)な(・)い(・)為(・)の防止策だとしても…。夕月(ゆづ)の温もりが伝わってくるようで、擽ったい気分である。


夕月(ゆづ)が柔らかい微笑みを、私だけに向けてくれる。今は完璧な男装姿だから、手を繋いで歩いている私達は、カップルにしか見えないようである。時々、「何だぁ。彼女持ちだあ。」とか、「ちぇっ。彼氏いるのかよ。」とか話している、男女の声も聞こえてきて。こういう時、私って幸せだなぁ、と身に染みて感じていた。






     ****************************






 一旦、夕方までには自宅に帰る必要があるので、私達は待ち合わせ場所に向かっていた。お祭り会場の付近は、歩く人が多い為、車は通行禁止になっている。

無論、一時的でさえ、路上駐車も禁止されていた。幹人(みきと)さんは、行きに駐車した場所よりも、少し離れた所に駐車して待っていた。


私達が乗り込むと、すぐに出発する。早めに会場を出た筈だけれど、やはり人混みが凄くて、中々出口の方に向かえなかったのだ。その為、待ち合わせ時間よりも大分、幹人さんを待たせてしまっていたようである。でも、幹人さんは嫌な顔一つせず、私達に楽しかったですかと、訊いてくる。


 「とっても、楽しかったですわ。昼間にも来て、よかったですわ。」

 「そうですか。それは、何よりですね。」


私が、楽しかったと報告すれば、彼は運転しながらも、ニコニコ顔で応答してくれる。私達が待ち合わせに遅れたことで、謝罪しても、彼は、この人込みでは仕方がないと、苦笑するぐらいで怒ったり責めたりしない。まあ、それはね、彼がうちの使用人だという理由も、確かにあるかもしれない。だけど、彼は基本的に穏やかな人であり、このぐらいでは本気で怒ることはないだろう。


幹人さんが色々と話し掛けて来て、これらに応答しているうちに、あっという間に家に到着した。幹人さんは序でとばかりに、先に夕月を降ろし、それから自宅に戻って来た。私も急いで部屋に駆け戻り、浴衣に着替えることにした。と言っても、私は自分1人では着られないので、三千(みち)さんに着付けをしてもらう。真姫(まき)さんも着付けが出来るけれど、やはり三千さんの方が、着(・)崩(・)れ(・)し(・)に(・)く(・)い(・)のである。


今日着て行く浴衣は、白地に赤い椿の柄が入った、可愛らしい着物である。

もっと華やかな浴衣も持っているのですが、有名なデザイナー作の物だったりするので、庶民的ではない。ああゆう場所には、それなりに合った物を身につけていないと、お金持ちだとすぐバレて狙われてしまう。子供の頃は、そういう事を知らなかったから、よく誘拐されそうになったりしたわね。それも、全部、夕月(ゆづ)が助けてくれたのだけれど…。…昔から、迷(・)惑(・)を(・)掛(・)け(・)て(・)ば(・)か(・)り(・)ね、私は。


 「お嬢様、これでお仕度は終わりましたよ。本当に、よくお似合いですねぇ。」

 「ありがとう、三千さん。髪型は、真姫さんにお願いしても、いいかしら?」

 「そうですね。呼んで来ましょうかね。」


そう、折角、夕月(ゆづ)に髪を結ってもらったのに…。結局、昼間の人混みで、崩れてしまったの。真姫さんに、同じ髪型にしてもらえないものかしら?

真姫さんが来てくれたので、夕月(ゆづ)が結ってくれた、先程の髪型をお願いして見る。

すると、真姫さんは見様見真似で、夕月(ゆづ)と同じ髪型にしてくれた。崩れかけていた髪を、少しだけ手直しして、元通りにしてくれたのよ。ほっ…、よかった~。


そうして、用意ができた頃に、夕月(ゆづ)も支度をして、私の部屋にやって来た。

「わあ~。夕月(ゆづ)、綺麗~。その浴衣、とっても似合っているわ!」と、私は声に出して、感嘆する。夕月(ゆづ)は、照れ臭さそうに笑いながらも、「その浴衣、未香子(みかこ)にはとっても似合っていますわね?」と、女性らしい言葉で褒めてくれる。…ふふっ。

何だか…とても照れ臭いですわね。


夕月(ゆづ)は、青地に薄い紫の朝顔が描かれた、一般的な浴衣を着ていた。有名なブランド物ではないと思われる。でも、毎年、私と同じように違う浴衣を着用しているから、見る度に目の保養になりますのよ。然も、私と被(・)ら(・)な(・)い(・)よ(・)う(・)に(・)し(・)て(・)いるみたいなのよね。そういう情報は、母親同士からのようでして。


そうこうしているうちに、お兄様と葉月(はづき)が帰省した模様です。葉月は、一度自宅に帰ったようで、支度をしてから来ると、夕月(ゆづ)の携帯電話に連絡が来た。お兄様は帰って来るなり、私の部屋を直撃して来た。戸をノックして、私が「はい。」と返答するなり、戸を開けて入って来る。


 「未香(みか)、ただいま。もう、支度が済んでいるんだね。その浴衣、とっても似合っているよ。未香は、何着ても似合っているけど、特に着物は良く似合うよね?」

 「お兄様、おかえりなさい。…もう、お兄様ったら。一々そのぐらいで、大袈裟なのですわ。着(・)物(・)姿(・)が(・)似(・)合(・)う(・)のでしたら、夕月(ゆづ)もそうですわよ?…ねえ、夕月(ゆづ)?」

 「おかえりなさいませ。朔斗(さきと)さん。お邪魔しておりましてよ。」

 「…!…。…ああ。ただいま…夕月(ゆづ)。もう…来ていたんだね?…てっきり葉月と一緒に来るかと、思っていたよ…。」


お兄様は、部屋に入って来るなり、私の浴衣姿を見ては、べた褒めである。妹を溺愛し過ぎて、まるで彼女のような扱いである。お兄様に褒められても、余り嬉しくないので、夕月(ゆづ)に話題を振ってみました。着物姿と言えば、夕月(ゆづ)なのですもの。

初めて会った時も…着物姿でしたのよ。お兄様はこの時初めて、夕月(ゆづ)も居ることに気が付いたようであり。明らかに驚いた顔になり、今までの満遍の笑顔が消え、代わりに…戸惑い気味になられて。あらっ?…お兄様ったら、妹の溺愛している姿を見られて、動揺していらっしゃるわね?


私は、狼狽えている兄の姿を、ニヤニヤして眺めている最中で。お兄様は、今は夕月(ゆづ)との会話で手一杯のご様子で、私の様子に全く気が付かないでいる。だから、私は、そういった意味で、中(・)々(・)見(・)ら(・)れ(・)な(・)い(・)兄(・)の(・)姿(・)を、堪能していたのだった。

 秋祭りのお話、part3となりました。やっと夜のお祭りに行くという準備段階で終了しています。思いのほか長くなってしまいました。


やっと、久しぶりにお兄様の登場です。次回は、双子の弟、葉月も登場予定です。

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