小さな手の温もり
幼稚園からの帰り道。
小さい子たちの手を引いて、引かれて歩く。
夕方、車両通行禁止の時間帯の、商店街を抜けていく道路。
小さな手は腕をまっすぐ空に伸ばして、やっと、私の手の指を2、3本握ることができる。
先を急いでゆく弟と手を繋いでいるのは、彼と同い歳の従妹。彼女に手を引かれる私が反対の手で引くのは、ご近所さんであり友人でもある澄華ちゃんの息子の好一朗くん。彼が反対の手を繋いでいるのがお兄さんの良一郎くん。誰とも手をつなぐ気のない梗一郎くんは、お兄さんたちに背中を押されて危うい足取りで歩いている。
私には二つしか手がないから、それぞれに一人ずつ、ふたりと繋いでいる手。
その反対で、それぞれが別の相手とつないでいる手。
道に広がるのは危ないけれど、子どもたちの体温を感じていると、なんだかいいなぁ、と思うのだ。
ちなみに後ろからは、もうひとりの我が子の祐一朗くんを抱っこした澄華ちゃんがついてきている。距離を置くのは、どうしても治らない彼女の習性みたい。
でも、その顔は嬉しそうに笑っていると知ってる。
「急いでも夕飯は早くならないよー」
なんだか生き急いでいるような、いつも早足の弟に、声をかける。
「てれび!」
返ってくるのは、楽しみにしているテレビ番組を、この幼馴染たちと家で鑑賞したいのだと、そういう返事だった。