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家出少年  作者: 名倉透弥
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第三話

 〜第三話〜


 やはり、失踪扱いの俺が登校した事によって、教室中が一瞬でざわめいた。俺はざわめきを無視して自分の机がどこかを調べてから座った。

「授業進めないんですかぁ?」

 俺がそう言うと、教師も黒板の方を向いて授業を再開したが、誰も授業など聞いていない。俺の事について話し合っている。


 キーンコーンカーンコーン


 チャイムが鳴って、教師が出て行った後、クラスの男子連中は外へ行き、新情報に目が無い女子達は俺に群がって来た。正直迷惑なのだが……


「名倉くんって失踪扱いだったんだよね?」

「あぁ〜そうらしいねぇ〜」

「何があったの?」

「何がって?」

「だから、事件とか?」

「あぁ〜ご想像にお任せしまぁ〜す」

「ちょっと〜すみませ〜ん通して下さい」

 夕紀の声がした。夕紀が必死にヤジ馬をかきわけて俺に近づいてくる。

「あらお兄ちゃん……色々な女の子に囲まれてモテモテなんだねぇ?」

「あ? べ、別にそんな事はねぇだろ?」

「朝にあれだけ夕紀に抱き付いて来たのも演技だったんだね?」

 完全に夕紀の顔が引きつっている。多分……いや、絶対に怒っている表情である。俺のスネを上靴でゲシゲシ蹴りやがる。

「そんな事ねぇってっ! ちょっと来い……」

 俺は夕紀の手を掴んで教室の外に出て行った。


「何が目的だ?」

「目的だなんて……」

「ったく、俺は前々から夕紀だけだって言ってるだろうに……」

「ホントにっ!?」

「あぁ……あの集団も俺の失踪について知りたがってたらしいぞ?」

「そんなのプライバシーなのにねぇ〜」

「ただの家出何だがなぁ……」

「何で失踪になったんだ?」

「さぁ?」

「さぁって……まぁ良いか……」

「学校にはなれた?」

「たった一時間で慣れたもクソもあるかよ……」

「そっか……そうだよねぇ〜……でも、お兄ちゃんが学校に来てくれる様になったら少し嬉しいかな」

「何でだ?」

「だって、お兄ちゃんがいないと学校に行く意味も無いんだもん……友達いないし……」

「そっか……じゃあ俺が友達ってのになってやろうか?」

「やだよ……そんな友達なんかで終わらせたく無いもん……だから友達はいらないし、欲しくも無い……」

「そっか……そうだ、今からちょっと帰らないか?」

「ダメだよっワガママはダメって言ったでしょ」

「ダメ?」

「絶対にダメっ!」

「どうしてもダメか?」

「う……ちょ、ちょっとなら良いかなぁ……」

「ちょっとで良いさ。じゃあ今から帰ろう」

 俺は夕紀の手を引っ張って学校を飛び出した。


 俺は自宅に帰って財布を持ってからまた外に出た。

「ねぇどこに行くの?」

「秘密のお店」

「何が売ってるの?」

「装飾品……かなぁ?」

「ふぅ〜ん……そんなのに興味があるんだ……?」

 俺は店に着くと、適当な値段の指輪を手に取って夕紀にはめてみた。

「うわぁ……綺麗……」

「気にいったか?」

「うんっ!」

「じゃあ俺も……」

 俺は指輪を二つ買ってから店を出て学校に向かった。


「この為だけなら別に放課後でも良いんじゃないの?」

「次の授業が嫌いな教科で……ごにょごにょ、今が良かったんだよ」

「……遅いよ? あれだけワガママはダメだって言ったのに……」

「悪かった……これで終わりにするから」

「本当だね?」

「あぁ本当だ……」

「判った。じゃあ許してあげる」

「あ、これ付けておけよ」

「さっきの指輪……?夕紀にくれるの?」

「お前にあげる為に買ったんだよ……で、俺もはめてペアルックって奴だ」

「その為だけに授業サボったの? バカだよ……」

「バカで結構だ……自覚している」

「そんなバカなお兄ちゃんも夕紀は好きだな」

「ソイツは嬉しいね」

「でもお兄ちゃんは夕紀の事好きなの……? 時々意地悪するし……」

「嫌いな奴に側にいて欲しいなんて言うかよ……」

「じゃあ……もし夕紀が『夕紀を恋人にして』って言ったら良いよって言ってくれる?」

「当たり前だろ? 今更何を言ってるんだ?」

「ウソ……じゃないよね?」

「だ〜か〜ら〜良いって言ってるのに疑うのか?」

「だって……もし冗談とかだったら傷つくもん……」

「冗談じゃ無いさ……」

「本当に……?」

「本当だって……ったく面倒な奴だなぁ……夕紀、俺の恋人になって……」

「良いの?」

「こっちが言ってるんだ。良いのかダメなのかどっちだ?」

「ん〜ダメじゃ無いけど……本当に良いんだね?」

「良いって言ってるじゃん……」

「じゃあ最後にもう一度……訂正するなら今だよ? 後悔とか、夕紀を捨てたりとか絶対にしないって誓える?」

「誓うよ……俺はお前を捨てたり、お前に告白した事を後悔したりは絶対にしないって……」

「ありがとう……こんな何も良い所の無い夕紀だけど……絶対に見捨てたり捨てたりしないで……ずぅ〜っと側にいてて下さい……」

「おいおい、泣いたりするなよ……うれし泣きって奴か?」

「そうだよ……他のどんな女の子にも負けない様に頑張るね……」

「何を頑張るってんだよ……」

「色々……」

「俺はお前に頑張ってもらおうとは思わない……俺は今の夕紀が好きだから……これ以上変わって欲しいとは別に望んじゃいない……」

「でも、他の女の子に負けたく無い……」

「夕紀が他の女の子に負けたく無いと思う理由は何かな? お前が一番になって何が得られるんだい? その一番の価値ってのを俺は理解出来ないから教えて欲しい。別に一等賞の価値なんてくじ引きの景品以外じゃ関係無いね」

「夕紀は……夕紀は良い所なんて無い人だから……人一倍頑張らないと……」

「頑張ったらどうなるんだ? 俺から見たら今のままでも充分だと思うんだけどなぁ……」

「ウソだよ……こんな夕紀に何も良い所なんて……」

「そっか……じゃあ今の夕紀が好きって言った俺の言葉はウソなのか……じゃあ良いよ。わざわざ授業サボらせて悪かったな。もう授業に戻って良いぞ」

 俺は夕紀の指にはめた指輪を抜いてから自分の教室にまで向かって行った。

「今の夕紀の良い所なんて……あるのかな……?」


〜続く〜

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