違和感
「無視すんなよ~」
「…」
「なあ、なあ」
「…」
いい加減うるさい、と言ってやろうとして口を開きかけた澪の足が止まった。
「おわっ!」
そんな澪の背中にもろにぶちあった夕真が抗議の声を上げる。
「急に止まん…」
「静かにしろ」
「・・・っ」
いつもと違う澪の声色。
反論させない何かがあった。
不服そうな夕真を振り返ることなく、澪は口を開いた。
「・・・お前は何も感じないのか?」
「は?なにか、って?」
「は!?
お前それでも・・・!」
言いかけてあわてて口を閉じた。
いけない、これは禁句だった。
機嫌を損ねるし、本人はまだ蒼真から受け継がれた未だ眠ったままの能力に気付いてない。
でも・・・
澪は唇をかみしめた。
もし、自分の感が当たっているのなら。
「…夕真、今から俺が、走れ!って言ったら全力で家まで走れよ?」
「おっ、もしかして競争?
よし、わかった!今日こそ俺が勝ってやる」
活きこんで準備体操を始める夕真に、澪はそっと息をついた。
よかった、まだ気づいてないようだ。
このまま気づかなければいい。
夕真が家にさえたどりつけばあとは問題ない。
なにしろ天城家は代々伝わる陰陽家。
家の周りには微弱な妖さえ入れないほどの結界がはられているのだから。
「いいか、行くぞ?
・・・走れ!」