「あかつき」
「“あかつき”?」
紅の漆に金の装飾の刀。
間違いない。
天城家に伝わる神刀「あかつき」だ。
「なんでそれを?
天城家に飾ってあるのは知ってたけど場所は爺さんしか知らないって………」
「爺さま、そんなこと言ったのか」
夕真の言葉にクスッと笑いながら蒼真は刀を見つめた。
「それは嘘だよ」
「え、嘘!?」
「うん。
天城家に飾ってある、っていうのは嘘。
爺さましか知らない、っていうのは本当だけどね」
「じゃあ………どこに?」
「神室」
「寝室?爺さまの?」
「爺さま?
ん?お前、神室って寝る方の部屋じゃないぞ?」
「あれ?じゃあ………心室?」
「心でもない。
神の室、神室だ」
「なにそれ」
「神室。それは」
蒼真の目がきらりと光る。
夕真は息を呑んで次の言葉を待った。
「俺が殺されてたあの日から眠っていた所だ」
「………!」
「常闇もまさか死人に守らせてる、なんて思わないからね
そこが一番安全だと思ったんだろう」
蒼真は深い息を吐くと夕真を見つめた。
「夕真。
俺は闘えない。実体があるわけじゃないからな
だから、今この刀を使えるのはお前だけだ
分かるな?」
夕真は差し出された刀を見つめた。
陰陽師になる気なんてさらさらなかった。
普通の生活を送りたいと何度も願った。
でも。
今この刀を使えるのは自分だけ。
この刀が奪われてしまえば大切なものが全て奪われる。
家族も、仲間も。この世界も。
夕真は刀を握り、強く頷いた。




