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目覚め
人里離れた世界。
光の溢れた中に水面が揺れる大きな湖。
凪いでいた湖が、突如大きく波立った。
水面に泡が次々と湧き上がり、今まで沈んでいた影が水面に浮き上がる。
「っ、げほ………!」
青年は激しく咳込みながら辺りを見渡した。
「あ、あれ………?
俺………なんで………」
「呼んでるよ」
「え………?」
突然の声に辺りを見渡すと小さな少年がいた。
その面影はどこか昔の青年に似ていた。
「君は………もしかして………」
「呼んでるよ。
君の大切な人が」
「俺の、大切な人………?」
「ほら」
少年は空を仰いだ。
それにつられるように青年も空を仰ぐ。
すると。
「あに、き………」
微かに聞こえた声に青年は瞠目した。
この声は………
忘れることなど一度もなかった。
大切な人。
「行ってあげて。
後悔、しないように」
少年が指差す先。
青年はふらつきながら立ち上がり、ゆっくりと歩き出した。




